愉悦少女ノ魔女裁判   作:保温と後光

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【タイガー劇場】
「ん、初めてやるかも、こういうゲーム」
「え、エマさんも初めてなんですか...?」
「ゲームというより、小説ですかね?」
「その通り!古き良きノベルゲームなのだー!」
「選択肢で私たちと会えるんだからネ⭐︎」


12日目-探索-

翌日。

私は目を覚ますと同時に起き上がり、ベットから降り立つ。どうやらエマはまだ眠っているようで、そっと息を吐く。顔を合わせたくない者と同室なのは、どうにも息苦しい。

牢の開場時間と共に、通路に出た。今日は朝から、牢屋敷を探索することを決めていた。

 

「(私は、エマを殺す。その為には、正しい計画が必要だ)」

こうして、様々な場所を探索していった。

 

━━━━━

 

そこからは、色々なことがあった。

森の中。湖まで行き、ナノカと共にリボンを探して、お菓子を作ってくれる約束を取り付け、ゴクチョーから逃げていることを知った。

「二階堂ヒロ。あなたなら......」

そんなことを、何か言いたげな素振りで帰っていった。

 

 

シャワールームで、ココに遭遇。防音であることと、ノアの正体がストリートアーティスト、バルーンであること。

「あてぃしはもう、2度と死にたくないんだよ!」

ココが2度と、と口を滑らせて、何かを隠していることを知った。ダストシュートは、何か使えるかもしれない。

 

 

中庭では、レイアとノア、アリサがいた。

レイアとノアは劇の練習。ノアはスプレーアートだけではなく、絵の具を使った絵も芸術的だった。最近は魔法も上手く動かせるようになったらしい。レイアの演技とノアの背景。レイアは、私にも届くように、舞台を作り上げたいらしい。上演する時は見ると約束した。

 

「━━━問おう。あなたが私のマスターか」

「すごーい!本当のレイアちゃんじゃないみたい!」

レイアが劇のワンシーンを演じ、ノアが目を輝かせているのを見て、私もほんの少し頬が緩んだ。

以前のような親しさは薄れても、今の私にとって、大切な存在であると改めて思った。

...アリサは、寝るためにハンモックを作っていた。悪いことではないが、縄の軋む音が、どうもあの事を想起させ、逃げてしまった。

 

━━━━━

 

特に印象に残ったのは、後の二つだろう。

ノアのアトリエと、娯楽室だ。

 

ノアのアトリエでは、ハンナとエマが作業をしていた。

全身の青い衣装、少しばかり露出の多い衣装と目隠し、侍のような衣装、赤い外装と黒い内側の衣装、騎士のような鎧の塗装と青い衣装、とても強そうな衣装と、7つを並行して作り上げているらしい。

 

「やれやれですわ。どうして私が衣装作りなんて......」

そう言いながらも、ハンナは慣れた手つきで布を縫っており、裁縫が得意と思われる。

広くて使いやすく、材料や衣装を置くスペースがあったからこそ、ここを選んだらしい。ノアが運んだような多くのペンキがあった。

 

「それで、劇の演目なんですけれども...アンアンさんのオリジナルストーリーらしいですわ」

「...オリジナルストーリー?」

「ええ、なんでも影響を受けて創作意欲が増したとのことで、アンアンさんがとても張り切っていますわ。詳しいことは本人から聞いてくださいまし」

 

確かに、と周りを見ると...武器や武装のようなものが木製だが用意され、塗装されている。

「あ、それはキレイちゃんが作ってくれたんだよ!凄いよね、ちゃんと拘ってるんだ」

槍や剣、そして双剣や弓、3mはある長い刀など、しっかりと作っていた。

 

「(エマを殺す際の武器に......できるか?)」

そう思って触れてみたが、突き刺さるほどの重さや人を殴り殺せるほどの重さがあまりなかった。

「エマさんは3役兼業、なんにしろ人数が足りないので全員で出るって話になったみたいですわね」

「う、うん。演技を覚えるのは大変だけど......」

 

私は、エマ達から離れて、室内を調べる。清掃の必要がありそうだが、ゴミはしっかりと捨てているのだろう。ベランダから中庭を見下ろすと、真下には、先の尖った鉄柵が伸びていた。

すると、シェリーが現れた。......キレイの衣服が山ほど積もってもってきている。

 

「もってきましたよ!!黒と青の布!!」

「これ、全部キレイちゃんの...!?」

「こんなに要らねえですわ!?というかなんでこんなに用意されてるんですの!?」

エマとハンナが驚いている中、シェリーが答える。

 

「はい、洗濯を簡単にして溜めていたそうです。何かに使えるかもしれないって言ってました!好きにもっていきなさい、と!」

「うぐ...そうだったんですのね...私もそうすればよかったかしら。勿体無いと常日頃思っていたんですのよね...」

「でも、規則違反で罰せられるかも知れませんよ?」

 

アトリエが騒がしく感じて、私は集中ができないとアトリエから立ち去っていった。

 

━━━━━

 

娯楽室では、ミリアとアンアン、そしてキレイが集まっていた。なにやら3人で話し合いをしている。

 

『キレイ、貴様は素晴らしい。わがはいの創作意欲が既に限界を超えて書き記せている。ちなみにこのような展開にしたいのだが』

「それはどうも。ここはもっと主人公の傷を抉るようにして、更にキャラに深みを持たせよう」

『なるほど』

「ちょっと待った待った!残酷すぎ!もうちょっとマイルドに行こう?ね!ね!」

 

どうやらアンアンが脚本を描き、キレイがその物語を更に掘り込んで、ミリアがそれにブレーキをかけている。

見事なバランスで書き続けているらしい。

「劇の台本か?」

私は、声をかけてみることにした。

 

「あ、あぁ。ヒロちゃん。おじさんとキレイちゃんで、アンアンちゃんの台本を手助けすることになったんだ。凄いんだよ、アンアンちゃん」

「壮大な設定と草案。こちらも口を出すのが捗るというもの」

その二人の褒め言葉に、アンアンは頬を赤らめる。3人とも劇に乗り気なようで、とても楽しく書いている。

 

「(目的が出来て、皆が活力を取り戻したように見える)」

レイアの案も、悪くはなかったらしい。

...ふと、アンアンが話しかけてきた。

「...ヒロ」

それは、珍しく肉声だった。

 

「...どうした?」

その言葉に返すように、スケッチブックでこう書いていた。

『ぜひ、ヒロに主役をやって欲しい。正義の味方を志す少女の役だ。レイアと一緒のW主演だ』

...思わず目を見開かせたが

 

「......断る」

ただそれだけ言って、私は立ち去った。

...後ろで、アンアンが項垂れているのが、見えて、胸がちくりと痛む感覚が走った。

 

━━━━━

 

殺人計画として、私はダストシュートを用いた犯行を思いついた。規則によれば、月曜日の15時。燃やされるらしい。

防音性の高いシャワールームでエマを殺し、ダストシュートに突き落とした後、勝手にその死体を焼いてくれる。温度によっては骨が残るだろうが、事故に見せかければ問題はない。

 

私はその確認のために、焼却炉に向かった。大掛かりなそれは、徹底的に焼き尽くすのだろう。ふと、見ると...金属片。前の囚人が残したであろうものに目を向けようとすると。

「あれ?ヒロっちじゃん。こんなとこで何やってんの?」

 

不意に、ココから話しかけられた。見られたのはマズイと思いつつ、私は平然を装って言った。計画に支障はない。

「別になにも。いつもの見回りの一環だ。君こそこんなところに何の用だ?」

 

ココは、自然にこう言った。

「知らんかったの?あてぃしここよく来るんだよね。一人になりたい時...正確には、【推し】から連絡があった時。キレイっち以外は来たことねーから集中して話せるし」

どういうことだ、そう思った。ココは私を邪魔と感じているが、追い出すのを諦めて、自身のスマホを取り出し、耳に当てた。

 

「あてぃしだよ。うん、大丈夫。今日も届いたでしょ?あてぃしからの手紙...そうして笑ってくれるだけで嬉しくて、あてぃしも笑顔になるんだから。...良かった、今日も面白いって言ってくれて。

絶対、絶対帰るからね。じーちゃん。絶対あてぃし、手紙越しじゃなくて顔を合わせて話すから。...え、友達のこと?良いじゃん別に...うん。また明日ね」

 

ココがスマホを降ろし、深く息をついた。軽く鼻を鳴らし、私の事を気まずそうにみる。

「......大体予測はついたっしょ」

「ああ」

ココの魔法は千里眼。ココの写真を見ている...推し、家族と話していたということになる。

 

「...寒い行動だって、バカにすんなよ!?」

私は首を横に振る。バカにするどころか、見直した。ただ、毎日大切な家族の声を聞いているのだとしたら、その気持ちは強いだろう。

「そんなことは思わない」

 

しかし、気になることがあったので聞くことにする。

「そういえば、手紙とはなんだ?」

あっ、という表情をする。

「...キレイっちの魔法」

「キレイの?キレイの魔法は「神の子」と似たようなことができるというものらしいが......それでどうやって」

 

ココは、付け加えるように言う。

「簡単な願い事なら、叶えられるんだって。キレイっち......あくまで道筋が通っていて、可能であったら、その道筋をカットして、叶えることができるんだってさ」

「...それは」

 

あまりにも、強力な魔法だと考えた。そしてそれを黙っていたことに対して、戦慄する。

「......なあ、ヒロっち」

ココが、ふと私に語りかけてきた。

 

「キレイっちを疑ったりする気持ちは分からなくもないけどさ。......あいつかなりいじわるで、人が苦しんでる所見て笑うし、裁判だとあんな感じで人のこと後ろから刺したりするけどさ」

一息おいて、言った。

 

「ちゃんとさ、最後には助けてくれるんだよ。あてぃし達のこと。マーゴも、そうだったっしょ?」

...マーゴの事を思い浮かべる。最後には、魔女となったにも苦しまず、心が救われ、嘘の仮面を外せた彼女の事を。

「......分からない。人を窮地に立たせて、苦しめたと思いきや、人を救うことも行う。キレイの本心は、どれだ」

 

それに対して、ココは言った。

「全部っしょ。全部が全部、あいつなんだよ」

...その言葉を聞いた後。私は焼却炉室をココを一人残して出ていった。

 




【本日の処スノート】
昨日の日記を書いた覚えがない。けれど大丈夫だ。魔女化の傾向は見えないし、私の精神はとても安定している。
私は、魔女にならない。決して。

...劇は、良いものになるだろう。皆が一丸となって
...そして、沢渡ココの秘密と、キレイの魔法の真実。
...いや、考えていても。仕方がない。
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