愉悦少女ノ魔女裁判   作:保温と後光

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【タイガー劇場】
「キレイちゃんの魔法、あそこまで強かったんだ。......それにしても、ヒロちゃん......あの殺害計画はバレるよ絶対......」
「そうですね......あれほど雑な犯行は過去でも他に......大魔女様?どうかしましたか?何か考え事でも......?」
「━━━ああ。いえ、大丈夫ですよ。メルル」
「麻婆いい空気吸ってるなぁ。よーし!今回は何事もなかったし!じゃあみんな続きやるよー!!」
「アンアンちゃんの劇の前予習!完成前にfateルート完走するぞー!おー!!!」


18日目:協力

あの事件から2日、色々なことがあった。

ナノカとキレイのあの事件は、4人の間での秘密になった。私の【偽証】により、キレイは中庭で強風により飛んできた小石に頭をぶつけ、そのまま血を流して気絶したということにした。ノアの魔法の蝶で傷跡を確認できていなかったことから、どうにか丸めこめた。

 

......シェリーのみ、最後までその信憑性を疑っていたが。皆大きな事件は存在していなかった。という事実にしていたので、渋々納得してくれたらしい。

......キレイは死ぬほどココに怒られ、暫くしがみつかれていた。

 

また、アリサによってナノカのリボンが返却された。湖に落ちていたのを拾っていたが、色々あって返せていなかったらしい。

 

「......ごめんなさい。あなたのことを疑って。でも、あの湖で、あなたが拾ったのを、私は知った。......お願い。こんなことを言える立場じゃないけど、返して、くれないかしら」

「......そのリボン。そんなに大切なのかよ」

「......お姉ちゃんの、リボンなの」

 

キレイのアドバイスにより、ナノカはアリサにしっかりと説明をすることになったらしい。私も見守っていたが、その反応は意外だった。

「━━━先に言えよ!!」

「え......?」

「そんなに大切なリボンだったなら言えって言ったんだよ......!ほら、これ.....!もう落とすんじゃねえぞ!」

 

ぶっきらぼうだが、しっかりと折り畳まれていたリボンをナノカに突き出す。それにナノカは目を丸くしていたが、受け取って言った。

「......ありがとう。あなた、思ったよりも優しいのね」

「......あぁ!?」

「言峰キレイの言った通りだった」

「━━━言峰ぇ!!」

 

少しばかり、揉め事もあったが...

「良かったね、アリサちゃんとナノカちゃんが仲直りできて。ね、ヒロちゃん」

「......ああ」

横で話しかけているエマに、空返事で返す。先日までの殺意とは別に、私はキレイの言葉がどうにも耳から離れない。

 

━━━桜羽エマは、精神の病を患っている。

可能性としての話だが、私はそれを可能性の話として捨てることがどうしてもできなかった。キレイとすれ違う度に、嗤われている。

......この話は、別の時にしよう。

 

また、アンアンの劇についてだが、更に追加でココとナノカが途中参加することになった。ナノカはその時にアリサとの揉め事が勘違いだったと謝った。そして、ミリアにも個人的な話で謝っていた。

ココが参加した理由も理由で、キレイに随分懐いていたらしい。

 

「キレイっちから目を離したらどうなるかマジわかんねえから、あてぃしも手伝う。......おいヒッキー!危険な真似させんなよ!!」

ココは定点カメラ兼裏方として、ナノカは役者として参加することになっている。

 

そして、私とナノカは協力関係を結ぶことができた。空いた時間で情報共有や、牢屋敷の探索などを行うようになった。

「......全ての元凶が、大魔女」

「ええ。以上が、私の知る情報の全てよ」

牢屋敷にまつわる情報を、共有された。

 

「何故だ。何故私に、その情報を?」

ナノカは、目を伏せて言った。

「......私でも分からない。けれど、あなたならこの牢屋敷......魔女の秘密の全てを暴けると思った。......それに、言峰キレイからも。私は、もっと人に頼ることを知るべきだって。だから、あなたに協力して欲しい。頼めるかしら、二階堂ヒロ」

 

「......ああ。私にできることなら。力になろう」

そうして、私とナノカの協力関係は成立した。

......良いことばかりであったが、悪い点もある。

ナノカの魔法【幻視】が使えなくなった。厳密に言えば、使えるらしいが、脳にダメージが蓄積されていて、見ようとすると頭痛が起こるらしい。

 

キレイ曰く

「当然だ。魔女であれば多少の無茶は効くが、今の黒部ナノカは人間だ。彼女のためにも、魔法の使用は控えた方がいい」

説得力のある言葉に、ナノカは従ったようだ。

 

しかし、今まで視た内容は覚えているらしい。

言峰キレイの殺害未遂により、急激に溜まったストレスから爆発的に強化された魔法で得たものを挙げると

 

氷上メルルの目的は、大魔女を探すこと。

本来、魔女化する前に私たちは国の管轄で殺処分されることが決まっていたのを、メルルの目的のために生かされていたこと。

大魔女が魔女因子をばら撒いたことで、人間は魔女化するようになってしまったこと。

 

「......確かなことを言えず、ごめんなさい」

申し訳なさそうに、ナノカが言った。

「いや、ナノカ。君のおかげで、確かなことが分かった。大魔女を見つけ出し、裁く。これが、私たちの進むべき道だ」

「......ええ。そうね」

 

互いに頷き合い、決意を抱いた。

 

━━━━━

 

空き時間。私は中庭で練習をしているレイアを見ていた。私が劇の参加を止めた理由は、エマを殺すことに支障が出るため。しかし......その必要が薄れ、見極める必要がある以上。断る理由もなかった。

 

「(レイアの言っていたように、信頼関係を築くことも必要だ。レイアの提案は正しい。先日のキレイとナノカのような事件を起こさないためにも、仲を深めるべきだろう)」

何よりも、ナノカによって知らされた事実。彼女たちは、被害者なのだ。魔女化の危険があるが、いつ何をきっかけにして起こるか分からない。

 

━━━なら、正しく救われるべきだ。

......恐らく、あの時のマーゴに対するキレイも、同じ気持ちだったのだろう。多少は、自分のためでもあるかもしれないが。

私は一歩、楽しそうに話しているノアとレイアに近づいた。

「......レイア。少しいいかな」

 

二人は私を見る。その前に私は、言った。

「劇の制作なんだが、私も何か協力をさせてくれないか」

レイアが一瞬、驚いたように呆けた表情を浮かべる。

「ほ、本当かい、ヒロくん!?」

興奮気味に両肩を掴んでそう言った。

 

「そんなに驚かなくても良いんじゃないか?後、顔が近いな」

「いいや、これは驚くべき......というより、喜ばしい申し出だよ!ああ、なんて素晴らしいんだ!」

私の冷めた態度を気にもせず、レイアは仰々しく喜びを露わにする。今にも歌い出しそうな高揚ぶりだ。

 

「......それで、私は何をすればいい」

「少しばかり待っていてくれたまえ!!今娯楽室にいるだろうアンアンくんに丁度いい役がないか聞いてくる!ああ、楽しみだ。ヒロくんと舞台に立つことができるだなんて......!とても良い絵になるだろうね!」

「待て、私は舞台に立つとは一言も━━━!」

 

私の言葉は届かず、レイアが2階に行ってしまった。

......場に残ったノアが、話しかけてくる。

「楽しみにしてるね!ヒロちゃんが、劇に出てくるの!」

「......まったく」

呆れてため息をついたが、自身でも、笑顔を取り戻すことができた。




【本日の処スノート】
......随分と、牢屋敷の空気が良くなったように思える。そしてナノカも、一度は魔女化による殺人衝動により心を蝕まれていたが、寝て起きたら、何故かなくなっていったらしい。
━━━その理由に心当たりはあるが、言わないようにした。
私は、劇に参加することにした。レイアと私のダブル主演。正義の味方を志す少女と、その少女に召喚された騎士。
......そしてラスボスがキレイと、もう一人らしい。中々に楽しそうだ。アンアンの脚本は。
ノアの絵と合わせて......とても楽しみだ。
では、準備を色々手伝うとしよう。
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