夏目アンアンの死体
心臓を鉄柵により背中から貫かれ即死。発見時は死後30分から1時間以内ほど経過している。大量の血痕があるが、劇で使用された血糊の可能性が高い。また、ベランダが壊れていたことから、ノアのアトリエより落ちたことが推測される。
鉄柵
周囲の鉄柵が幾つか折れている。誰かが動かした跡と、夏目アンアンの死体に刺さっていた鉄柵が外れていたのでそもそもそこに落ちたかは定かではない。
現場検証
胸像を投げてみた所、胸像は近くにあるアリサのハンモックの残骸へと落ちた。これにより、落ちた遺体を誰かが動かした可能性がある。
また、千里眼より中庭を見渡せて、かつベランダからは見えない位置に誰かが潜んでいたことは否めない。
ココの証言
娯楽室から雨の音がした。中庭で雨が降っていたとのこと。しかしキレイは夜、常に外に出ていたが、雨は降っていなかった。
キレイとヒロは、互いに並んで最後に裁判所にやってきた。一人は拘束されているが。
生き残っている他の少女たちも、すでに揃っている。全員が処刑台へと立ち、ヒロに対してそれぞれ複雑な視線を投げかけている。
そして、ゴクチョーの宣言より、始まる。
「それでは、魔女裁判開廷です!」
━━━━━
全員の空気が重い。目の前には自白をした二階堂ヒロ。これを行う意味はあるのか、という形だ。そこで、彼女が声を出した。
「では、張り切って裁判といきましょうか!」
いつもと変わらない様子で話す。落ち込んでいても意味はないと達観している彼女らしかった。しかし、周りはあまり乗り気ではないが、そこに異議を唱える者がいた。
「議論する意味は、あるよ。検証しよう......誰が犯人なのかを!」
その言葉に、諦めかけていたヒロが目を見開く。そこに更に、エマに賛同する者がいた。
「ええ。二階堂ヒロが犯人と自ら認めていたとしても、真実がそうであるとは限らない。最有力候補の事件から、覆ったのは宝生マーゴの事件の時にもあったでしょう」
黒部ナノカ。二階堂ヒロが無実であると考えている彼女がエマの声に賛同した。エマの一言から広がっていくように、次々と賛同の声が上がっていく。その言葉に、二階堂ヒロも現実感を取り戻したようだ。
レイアが、現場の状況を整理する。
殺されたのは夏目アンアン。レイアが中庭から見つけた。死因は鉄柵に心臓を背中から突き刺されての即死。発見から死後30分から1時間以内。
次に中庭の状況。死体の周囲には大量の血痕が残されていた。アンアンは鉄柵の上に落下したと考えられる。近くにあったハンモックの残骸は、アリサが作ったものが壊れたのだろうとアリサ自身が言った。
昨夜は雨が降っていた影響か、中庭がぬかるんでおり、足跡などは発見されていなかった。しかし、なぜか噴水が枯れていた。
そこでキレイは語る。
「少し、宜しいかな?私は事件後、ノアのアトリエのベランダの柵が壊れていたのを確認している。恐らくは、そこから落ちたものと思われる。どうかな、蓮見レイア」
レイアはそこで頷く。
「ああ。柵が壊れ、そこで足を滑らせて鉄柵により突き刺されて死んだ。アンアンくんは【事故死】だったと考えるのが自然だろうね。例えば、ベランダが壊れていたとか」
「んー。昨日の時点では、アトリエのベランダは壊れてなかったと思うけどなぁ......」
ノアがそう言ったのに、エマが反論する。
「そ、そんなことないと思うなっ......!ベランダの柵......壊れてた気がする......!」
あまりにも必死である。ヒロが頭を抱えているのが目に見えた。
「ノアの見ていたことと、違うけど......」
そこに、ヒロが発言した。
「ノアが最後にベランダを見たのはいつだ?」
それにノアが反応した。
「えーっと.....昨日かも!のあは今日、アトリエに行ってないよ。今日はいっぱいお絵描きしてて、見えなかったし」
「なら、ノアが見ていないのも無理はない。なにせベランダは、私が今朝、壊してしまったのだからね」
エマが思わず驚く。恐らくは偽証だろう。
いや、確かに二階堂ヒロは最後に見回りをして最後に合流した。その点から見ても説得力はある偽証だった。
壊そうとしていたわけではなく、朝出番が来る前にアトリエを確認して、忘れ物がないかを確認。そこで老朽化が進んだベランダを見て、柵だけでも修理しようとしたが、時間が来たので中途半端に済ませてしまったとのことだった。良く頭が回ると思う。
「今回はそれによって不幸な事故が起きてしまったようだ。もしそれが原因だとすると、大変申し訳なく思うよ」
レイアがそれに動揺したようで
「じゃ、じゃあヒロくんが原因で......?」
「そうかも知れないね」
私はここで、その偽証に乗ることにした。
「確かに、アトリエには叩かれたような跡が存在した。それが修理の途中の痕跡であった、ということか」
正確には蹴られた跡だが、嘘は言っていない。ヒロは目を見開いたが、それが好機と知り言葉を重ねた。
「ベランダの修理......うん!今朝に壊れていたなら、ノアはわかんないかも!」
「納得してくれたのなら問題ないよ」
この事件を二階堂ヒロは事故として終わらせようと試みた。しかしそれで終わるほど、ここは甘くない。
「ちょっと良いかな!」
佐伯ミリアが声を上げる。
「......確かにおじさんも、この事件が事故であって欲しいけど。だけどおじさん、気になるものを【目撃】しちゃったんだ」
そうしてミリアが語り始める。
「ちょうど、死体が見つかる30分前のことだったかな。あのとき、おじさんはココちゃんと娯楽室で映画を見てたんだ。それでふと外を見たら、星空が綺麗なのが見えたんだよね。思わずスマホで撮影したんだけど......」
そう言って、ミリアが写真を提出する。
「これに、人影が二人写ってるんだ!この二人が、事件当時現場にいたアンアンちゃんと、もう一人。アンアンちゃんを突き落とした犯人なんじゃないかな!」
ミリアがそう言った。それにココが追記する。
「あー、おっさんの言ってることはあってると思う。あてぃし、「見てみてココちゃん。星が綺麗だよ!」ってな感じで一緒にベランダ行ってさ、そこでおっさん写真ミスってやんの。それで撮ったのがそれってこと」
二階堂ヒロの思い詰めたような顔と、桜羽エマの何かに気がついたかの顔が見えた。
「なるほど、これは重大な証拠ですね!これをもとに、レイアさんの推理の方向性を修正させてください!」
こうしてシェリーの推理が始まった。
「ミリアさんの撮った写真には、2人の人影が写っています。つまり現場には、被害者であるアンアンさんに加えてもう1人の人物が存在していた。つまり、犯人しかあり得ません!犯人はアンアンさんをベランダに誘い出して、突き落とした。これは明確な殺人事件ですよ!!」
そう高らかに宣言した。それにヒロは反論する。
「......いや、そうとも限らない」
「と、言いますと?」
「ミリアの写真が示すことは、当時現場近くに2人の人間がいたということのみだ。べつに、目撃された2人が犯人と被害者だったと証明されたわけでもない」
それに、アリサが反応する。
「......けど実際に夏目は死んでんだろ。それについてはどう説明するんだよ」
「仮に突き落とした人物がいたとしても。殺意があったとは言えない。アンアンが落ちた高さは2階。確実に殺せる高さではない。それに、彼女の死因は【墜落死】ではない」
それにレイアが賛同する。
「ああ。骨が折れていたりはしていなかったよ。あくまでも死因は、背中から刺さった鉄柵によるものだね」
ヒロは続ける。そこにたまたま刺さっただけ。アンアンはベランダから落下したかもしれないが、それはたまたま落ちただけかもしれない。
偶然落ちた先にあった鉄柵が胸を貫通してしまっただけだと、二階堂ヒロは主張していく。そこに、反応するものがいた。
「二階堂ヒロ。少し良いかしら」
口をずっと閉ざしていたナノカだ。
「そもそもの話、落ちた先に鉄柵がたまたまあった。これは本当のことなのかしら」
そこには、シェリーが反応した。
「ええ。私もそれは変だなと思いました!そう思って調べたんですが、最近動かされたような跡が残っていたんです。現場写真を見ればわかりますが、鉄柵が曲げられているのが見えますよね!動かされた跡が残っていたんですよ!ですから、これはトリックだったんです!」
そうして、犯行方法を語る。
「犯人は、アンアンさんを突き落とす前に鉄柵を歪ませていたんです。そして鉄柵の上に向けてドーンっ!突き落とされたアンアンさんは背中からグサーっ!......っと亡くなってしまった。つまりこれは他殺......!事故ではなくて、殺人事件だったんですよ!」
確かに筋の通った推理ではあった。しかし、ナノカの目はしっかりと前を見据えていた。
「ええ。しかし、私はしっかりと現場を見て確認した。その推理がどう間違っているか。それを証明してあげる」
こうして、裁判は続く。
今回は短めです。遅れてすみません