愉悦少女ノ魔女裁判   作:保温と後光

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遅れました
後ミスりました(中)


23日目:-魔女裁判(中)-

黒部ナノカが、語り始める。

「私は、沢渡ココ、言峰キレイと共に現場の検証を行ったわ。ベランダから落ちた被害者はどこに落ちるのか、というものよ」

「え!?三人でそんなことをしてたんですか!?」

シェリーが驚いた。

 

「ええ。検証の結果をお願いするわ」

頼まれたので、キレイは答えた。

「ああ。私はアトリエのベランダから胸像を投げた。現場は保存されている為に問題はないと思ってね」

少し騒がしくなったが、続ける。

 

「その結果だが、胸像の落ちた場所は現場で壊れていたアリサくんのハンモックのあった場所付近に落ちていた。大体ベランダから落ちたらどう落ちるかで落とした為、大体は合っていると思うがね」

そこにナノカが繋げる。

 

「落ちた場所と死体の位置は異なっていた。つまり、現場には何者かがいて、その人が死体の位置を動かした可能性があるわ」

それにはミリアが反論する。

「で、でもおじさんが撮った写真には二人しか写って無いわけだし、潜んでいたっていうのはないんじゃないかな?」

 

そこにココが返答する。

「でもおっさん星に夢中で実際に二人しかいなかったって見たわけじゃないじゃん?あくまで写真の中に二人写ってるだけで写ってない所にもう一人いてもおかしくないっしょ。」

「う......確かに、そうだね......」

 

しかし反論するものがいた。

「いいえ!ナノカさんの証言はおかしいです!このスーパー名探偵シェリーちゃんが、その推理の穴を開けて見せましょう!」

「あなた、今回やけに張り切ってますわね」

シェリーの推理が、また始まる。

 

「その現場検証ですけど、人と胸像。大きさも重さも違うので実際にそこに落ちていたかは分からなくないですか?それに、もしアンアンさんが移動していたのだとしたら、血痕はハンモック側にある筈ですよね!ですがあるのはアンアンさんが倒れていた場所にあります!ですので、ナノカさんの推理は見当違いってことになりますね!」

 

ナノカが唇を噛み締める。反論ができないらしい。

「それに、犯行現場にもう一人いたという証拠もないからね。現場はぬかるんでいたにも関わらず、足跡が一つもないのだから」

シェリーはキレイの言葉に頷いた。

「ええ!強い雨によって足跡含めた痕跡は流されてしまっています。ですから誰かがいたという証明も難しいですね!」

 

キレイが、先程得た情報をまとめる。

「つまり、シェリー君は“血痕の位置と雨により足跡がない”ことから、その推理を否定しているわけだね?」

「ええ!その二つを覆せない限りは━━━」

そこで、待ったをかける者がいた。

 

「......えっと。どうしました?ヒロさん」

二階堂ヒロの方を見ると、何かに困惑しているような、考えているような素振りが見えた。

「特に何もいうことが無いのであれば、話を続けますけど」

その言葉にヒロは語り始める。

 

「悪いね。少しだけ考えをまとめるのに時間がかかってしまっていたんだ。けれどシェリー、その二つを、私は一度に覆してみせる」

「本当ですか!?ぜひやってみてください!」

ワクワクした様子で、シェリーが言った。

 

「では、言おうか。雨が降っていた為に、痕跡が流れたと言っていたのにも関わらず......夏目アンアンの血痕が残っているのは、どういうことかな?」

「......あっ!!」

シェリーは、自身の推理の穴に気がついたらしい。しかし、すぐさまその情報を取り入れて、反論した。

 

「確かに、それはおかしなことですけど......ベランダに近かったから、アンアンさんの周りだけ雨が降らなかったんじゃないですかね?」

そこに差し込むように、キレイが反論する。

「いや。夏目アンアン周辺は雨によって濡れていたはずだ。そうだろう?蓮見レイア」

 

「ああ。私もアンアンくんに触れたが、雨によって濡れてしまっていた。だから雨が降らなかったというのもおかしな話だね」

レイアがキレイのパスに返した。それを受けたキレイが更に発言する。

「ちなみに、あそこにあった血液は劇にも使用した血糊だと思われる。触れた所で鉄の臭いはなかった。それに水に流れないからね」

 

ヒロがそれに乗っかった。

「確かに、現場は暗く、レイアは検死ができると言っても素人だ。雨上がりの屋外で、臭いがしていなくても不自然ではないからね。キレイのいう通り、血糊である可能性が高い」

レイアがそれに反論した。

 

「待ちたまえ!二人の言っていた通り、血糊だったとしよう。誰が、どうしてそんなことをしたんだい!?アンアンくんは背中から鉄柵が貫通して死亡していた。死体の状況から言って、出血は間違いなくあった筈。本物の血があるのに、血糊を上から重ねて偽装する。そんなことがあり得るのかい!?」

 

その問いに対して、ヒロは深く長考した。その隣で、エマが何かを決意したかのような目をしていた。

「......ヒロちゃん.......ごめんね」

そう言ってエマは、目を見開いた。

「みんな、一つだけ言いたいことがあるんだ。ずっと黙っていたんだけど......ミリアちゃんの写真に写っているもう一つの人影は、ボクなんだ」

 

全員が思わず唖然とする中、エマが話す。

アトリエのベランダにいて、夏目アンアンが落下したこと。それで下を覗き込むと、レイアが発見した時のように、血まみれだった。

「これが、ボクがみんなに伝えたかった目撃証言だよ」

確実に何かを掴んだ目をしていた。

 

しかし当然、場の疑いはエマに向かっていく。夏目アンアンを殺した犯人として疑われる中で、一人、声を上げる者がいた。

「━━━黒部ナノカの証言を思い出して欲しい」

二階堂ヒロだ。

 

「現場検証によれば、落下したものはハンモックの残骸近くに落ちたと言う。それを真実とするのであれば、答えは簡単だ。アンアンは、落下時には死んでいなかったことになる」

そこにアリサが反応した。

「ちょっと待てよ。ウチのハンモックの残骸に落ちた場所に夏目が落ちたからって、それがなんで死んでなかったことになんだよ」

 

ヒロは続けて語る。

「簡単な話だよ。君は雨風によってハンモックが壊れたと言っていたが......壊れた原因は、アンアンが落ちた衝撃によるものだったんだ」

そこにココが混乱した様子で語りかける。

「どゆこと?なんでそれでヒッキーが死んでなかったってなるのさ?」

 

ヒロは答えた。

「簡単な話だ。アンアンは、狂言自殺をしようとしたんだよ」

全員が目を見開く。

「狂言自殺だって!?アンアンくんが!?」

ヒロは頷いていた。

 

「前に、アンアンはこんなことを言っていた。

『ああ。劇が成功で終われば後は、残った殺人事件という不安の杞憂すらも、わがはいが吹き飛ばしてくれる......!』

これこそが、狂言自殺の目的だったんだ」

...ここは、私の出番だろう。

 

「では、夏目アンアンの計画を私が纏めよう。

まず、目撃者は桜羽エマ。夏目アンアンが落下する時、落ちた先にあったアリサ君のハンモックを用いて安全に落下した。

その後、血糊を撒き、折られていた鉄柵を胸に添える。それで桜羽エマは、夏目アンアンが死んだと考える。その後に姿を現すことで、殺人事件などもう起こらないと笑い飛ばそうとしたのだろう。趣味が悪いね」

 

キレイがそう笑顔で言った。

「━━━やっば。アイツ」

ココが、絶句していた。とても良い表情だ。

「でも、実際にアンアンさんは死んでいます。つまり、それが正しければナノカさんの言っていた通り、潜んでいた真犯人がいることになりますね」

 

シェリーがそう話をまとめた。エマはそこからアトリエに入ってしまったため犯人は見ておらず、レイアが来る間にアリバイがない人がその候補になる。

「その時は皆夜遅く、思い思いに過ごしていた。アリバイを証明できる人は限られてくる。無論、私もそうだが」

 

「あ、あてぃしとおっさんはここが共犯じゃない限り絶対無理〜。犯人乙〜」

ココがそう調子に乗った。

「おじさんとココちゃんは娯楽室でずっと映画を見ていたよ」

 

「私からは目撃情報を。外を回っていたアリサ君やナノカ君を私は視認している。その時は私はずっと畑にいたからね。それで慌てて洗濯物を取りに来たハンナ君も目撃してるね」

キレイは、目撃情報を上げていく。

 

そこで、ココが気がついた。

「あれ、所でキレイっち雨に濡れてないんだよね。なんで?あてぃしとおっさん、ずっと中庭から雨が降ってる音聞いてるし見てるんだけど」

ヒロがその証言で、何かに気がついたらしい。

 

「ありがとうココ。おかげで良く分かったよ」

「へ?」

「先程まとめられていた通りだ。ナノカ、アリサ、ハンナ。君たちは外に出たが雨は確認していないね?」

三人がそれぞれ同意する。

 

「では、答えは簡単だ。雨が降っていたのは、中庭だけになる」

「そんな狭い範囲にのみ雨が降るなんて、あり得るんですの!?」

ヒロの発言にハンナが反応する。

キレイは、ここで追い詰めることにした。

 

「二階堂ヒロ。この事件の犯人は、自分がいたという痕跡を洗い流す為に人為的に雨を降らせた。大量の水を操ってね。そうでなければ、現場にのみ雨が降るなど本来であればありえない。

━━━では、それができるのは誰かな?」

 

ヒロは、苦虫を噛み潰した顔をする。

「...そんなことが可能なのは。ノア、君だよ」

「......え?」

ノアがそんなことをいう。

「君しかいないんだ。【液体操作】の魔法を使って、大量の液体を操作し、雨を降らせることができるのは」

 

ヒロは葛藤をしているらしい。しかし、それに反してノアは冷静に、こう返した。

「のあ、そんなことしてないよ?それにのあ......そんなことできないもん」

 

彼女はいつもと変わらない様子で、話す。

「のあの話.....聞いてくれる?」

裁判は、佳境に入る。

 

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