愉悦少女ノ魔女裁判   作:保温と後光

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23日目:-魔女裁判(後)-

ノアが、語り始める。

「のあはそんなことしてないよ。のあが魔法でできることは、お絵描きすることくらいだもん。お絵描きでもないのに魔法を使うなんて。そんなのできるわけないよ」

ノアの発言にヒロが毅然と反論する。

 

「いいや。君が絵を描くことでしか魔法を使えなかったとしても、君が【魔法で雨を降らせられなかった】なんてことはないよ」

「......どういうこと?」

「君は、絵を描いただけなんだ。ドリッピングという表現技法。高い所から絵の具を落として描く技法を使ってね」

「......!?」

 

ノアの息を呑む音がした。ヒロは続ける。

「中庭には噴水があり、濁っていたが大量の水があった。君はその水を画材に、中庭というキャンバスに絵を描いただけなんだ。それで雨と同じ現象が起こり、足跡を上書きするように絵を描いた。違うかな、ノア」

 

ノアはしばらく黙り込む。その後

「......どうかな?」

ノアは、笑った。

「確かにのあなら、ヒロちゃんの言う通り雨を降らせられたのかもしれないけど.....けど、だからって本当にのあが雨を降らせたことにはならないよね?偶然雨が降っただけなら、誰でもアンアンちゃんを殺せたんじゃないかな?」

 

確かに、筋が通っている。ノアは語り続ける。

「そもそも、ナノカちゃんにヒロちゃんが言う【隠れてアンアンちゃんを殺した真犯人】なんているのかなぁ。ヒロちゃんが突き落としたあと、それがバレないように嘘をついている可能性もあるよね。じゃあナノカちゃんも共犯かな?」

 

━━━尻尾を出した。それを指摘するのは私ではない。

「......待って、ノアちゃん。確かに揉み合いになって、そのあとあの子はベランダから落ちてしまった。でも、ノアちゃんはさっきこう言った。

【ヒロちゃんが突き落とした】って。どうしてヒロちゃんが突き落としたと思ったの。ベランダにいたのは、ボクなのに」

 

「......なんでだろうね。わかんないや」

沢渡ココの千里眼で見た『ベランダからは見えず現場から見える位置』にノアはいたのだろう。恐らくは、狂言の共犯か。

 

「ノア。どうやら君はいろいろ知っているようだ」

「どうかなぁ。ヒロちゃんの方が知っていると思うけど?」

「......白状してもらおうか。君のついている嘘を。できないなら......私から暴かせてもらうよ」

 

私はここで、口を出す。

「ではまず二階堂ヒロと桜羽エマ。君たちの付いている嘘を先に暴かせて貰おう」

二人の息を呑む音が聞こえた。

 

「恐らくだが、城ヶ崎ノアがそう思った理由は一つ。実際に現場を目撃していたから。それであれば説明がつく。確か、ラウンジに来た時にはヒロ君はエマ君に支えられて来ていたね」

そこに、レイアもそういえばと付け加える。

 

「確かに、私がアンアンくんの死体を見つけて、中庭から戻って来た時にも、ヒロくんとエマくんは共にいた」

レイアの発言から、その信憑性は高まった。そしてキレイの発言には、食い付いて来た人物もいた。

 

「━━━うん!そうだよ。のあ、図書館から出て来た時に、見ちゃったんだ。ヒロちゃんがアンアンちゃんを突き落としているところ」

ヒロは息を呑む。ノアは続ける。

「アンアンちゃんを殺したのは、ヒロちゃん。エマちゃんがヒロちゃんを庇っているだけ。のあはね......ヒロちゃんが犯人だって告発するよ」

 

ヒロは、覚悟を決めたように前を見据える。

「......いいだろう。その告発......正々堂々、叩き返してやる」

嘘に嘘を重ねれば、真実は曇ってしまう。嘘を暴き、真実を突き止めるには、嘘ではなく、真実を突きつけなければならない。後は、見据えるとしよう。二人の喧嘩の行末を。

 

「さっきも言ったけど。のあ、図書室から出た時に、ヒロちゃんとエマちゃんを見たんだ。そしてちょうど見ちゃったの。ヒロちゃんがアンアンちゃんを突き落としたところ。

のあ、怖くなって逃げ出しちゃった。こんなこと言ったら、ノアも殺されると思って、ずっと黙ってたんだ」

 

今まで黙っていた理由も告げて言った。そこにエマの必死で反論を行う。

「で、でもノアちゃん!鉄柵は途中から折られていたし、ナノカちゃんたちの検証で、ハンモックに落ちた可能性が高いことも、そして血は血糊だったことも合わせて、アンアンちゃんが自作自演を行っていた痕跡が残ってた!客観的にヒロちゃんがアンアンちゃんを殺してないことは事実だよ!」

 

その発言にも返す。

「ヒロちゃんとエマちゃんが、後から偽の証拠を作ってでっち上げることだってできるよね?死亡推定時間の時、誰も中庭には近付いていない。殺した後、中庭に細工をして、そのあと“偶然雨が降った”なら、成り立つよね。ヒロちゃんとエマちゃんは共犯関係なんだよ。

 

ノアのアトリエのベランダが壊れてたって証言も、エマちゃんがしてたよね。アンアンちゃんは事故死だったってしたい時に。ヒロちゃんを庇ってたんでしょ?」

 

「そ、それはっ......!!」

エマは言葉に詰まる。ノアは畳み掛ける。

「だからのあに殺人の罪を押し付けて、処刑しちゃおうとしてるんだね。そんなの......のあは許さないよ......」

 

「ノア、そう君が語るのを待っていた」

「......えっ?」

ヒロは語り続ける。

「君の主張によれば【犯人は現場に工作を行ったがその足跡は雨によって流された】ということだ。間違いないかな?」

 

「......そうだよ」

ノアが認め、それにヒロは笑みを浮かべた。

「......なら、やはり君が犯人だ。雨は偶然ではなく、君の魔法によって引き起こされた現象━━━それを証明する証拠が、存在するのだから!」

 

「【雨はノアの魔法によるものだった】という証拠、それは......!」

>ミリアの写真

 

「そ、それって......!おじさんが間違って撮っちゃった写真......!?」

「ああ、そうだよ」

ミリアの驚きにそうヒロが答え、写真の説明をする。

ミリアの写真は、死体発見の30分前に撮られた写真であり、噴水に水は満ちている。それに対して

 

「しかし、事件後には噴水の水は枯れてしまっている。それは事件後の死体写真からも明らかだ。直前に雨が降ったというのに、水は増えるどころかすっかりなくなってしまっている。これこそが、魔法によって雨が引き起こされたという証拠だよ。30分足らずの間に、私とエマが二人で水を抜くなんて不可能にも近い」

 

ヒロは、続ける。

「君の主張は、事件後の工作は、雨により痕跡が流された。だが、提示した通り、【雨】は自然の雨ではなくて噴水の水だった。なら、その雨を降らせられたのは一人しかいない。最初から、中庭に潜めもしたからね。雨を降らせ、現場に工作をした君は、君の推理だと何者になる?」

 

ヒロはノアを追い詰める。ノアは黙ったままだ。

「答えは1つだ。あらためて言おう。君が犯人だ。

━━━城ヶ崎ノア!」

 

ノアは、閉じていた口を開く。

「......どうしてかな?のあ、失敗しちゃったみたい」

「ノ、ノアちゃん......!」

「ノアくん、キミは......!」

二人を筆頭に、多くの者が震えている。何故、仲の良かった二人だったのに、アンアンを殺したのかと。

 

「......ヒロちゃん。すごいね。花丸、あげちゃうよ!」

「......ノア、どうしてそんなことを」

ヒロが思わず口に出す。それに、ノアがこう答えた。

 

「......さあ、どうしてだろう?アンアンちゃんのこと......殺したくてしょうがなかったから、かな?

アンアンちゃんの描いたこの事件の絵......とーっても、綺麗だったね!」

こうして、アンアンの皆を驚かせるだけの作り物の死を、本物に塗りつぶした犯人は、見つかった。




【魔女図鑑:人物】
[ことみね きれい]
囚人番号671番。  誕生日:12月28日
15歳
【魔法】奇跡 洗礼詠唱
一つのリンゴを全員に行き渡るように渡す。
水をぶどうジュースに変えるなど
神の子と近しいことができる。
それだけではなく、実現可能な範囲ならどんな願いも叶えられる。

言峰キレイが会得している人造魔法
この地に縫い止められし魂を、使用者の慈悲により強制的に主の元へと送り届ける魔法。
あくまで【なれはて】限定であり、魔女には効果がない。

敬虔なるシスター、目が死んでいる。
今回、手出しは少なかった。ナノカに頼まれ手伝ったことと、少しだけ終盤にエマとヒロの嘘を暴いたこと。
この事件において、横槍を入れるのは無粋と判断した。だからこそ今回は、推理中に犯人を追い詰めることもなかった。
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