キレイが沢渡ココと共に外で作業をしていると、死体発見の通知が届いた。全員でラウンジに集合した時には、二階堂ヒロは、夏目アンアンが死んだ時以上に顔色が白く、そして空っぽだった。
そしてこの場には、レイアとエマがいなかった。全員が全員、暗い顔をしている。その場にいなかったことだけが残念だが、二階堂ヒロのその絶望は、限りなくキレイの心を満たした。
そして、事前投票では......最後まで現場にいた二階堂ヒロが選ばれて、拘束されることになった。ナノカは最後まで呼びかけていたものの、その言葉に返すことすらなかった。
こうしてまた、残った者たちで、捜査が始まる。真実を解き明かし、隣人を処刑台へと送るために。
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自然と全員が、現場のエレベーターに集まっていた。それぞれがそれぞれ、調査を開始していた。
ナノカがエレベーター内を、シェリーとハンナがその周りを、ミリアが遺体を調べていた。
ココとアリサは牢屋敷で寝ていることだろう。自分がいない所で起きた事件にはショックが隠せていないのだろう。
「ナノカ君。首尾はどうかね」
ナノカは振り返り、私の方を見た。
「......床には、血が拭われている痕跡があったわ。最初に気がつくべきだったわね。それと、床には蓮見レイアのレイピアでついたと思われる刺し傷が付いているわ」
床を見ると、確かにそのような跡がある。
「それ以外には、特に?」
ナノカは小さく首を振る。
「......二階堂ヒロは、何も口を開かなかった」
ナノカは懲罰房に真っ先に会いに行っていた。しかし、二階堂ヒロは何にも反応がなかったと言う。
「今は放っておけ。二階堂ヒロは、敵がいれば一時的にだが立ち直る。裁判時には戻るだろう」
そうして2人で、エレベーターの天井裏に行った。
そこにはミリアがいて、悲しそうな顔でレイアを調べていた。
「......あ、キレイちゃんに、ナノカちゃん」
「佐伯ミリア。ここで何をしているの?」
ナノカがそうして語りかける。
「......おじさん、レイアちゃんに検死について聞いてたんだ。まさか......レイアちゃんに対して使うとは、思わなかったけど」
そうしながらも、調べていく。
「ふむ、死因は後頭部の強打で合っているかな?」
キレイが死体を見て思ったことを言った。
「うん。それ以外に外傷も変わった所もないし、それで合ってると思うよ。凶器が見つかってないんだけどね」
そうして、3人で天井裏を調べていると、キレイは、空に何か輝くものを見つける。
「......ナノカ君。少し肩車してもらっても良いかね?」
「良いけれど......言峰キレイ。何を」
そうやって私は、空に浮かぶものを掴み取る。
「......ほう」
それは、金髪だった。結ばれているようだが、力をかけたことで千切れてしまっているようだ。ポケットに入れておく。
「もう良いよ。ありがとう」
そう言って3人で私たちは今度、桜羽エマの死体を確認しに行く。
桜羽エマの死体は、二階堂ヒロによってできる限り体制をそのまま戻されている。ミリアは検死をし、ナノカが辺りの探索をする。
エマの外傷も一つしかなく、死因は胸に突き刺さった蓮見レイアのレイピアで間違いがなさそうだ。ナノカは何か見つける。
「これを見て、2人とも」
エマの手足を指差す。手足には何か細いもので縛ったかのような跡が残っている。
「えっと、でもこれは死因とは関係が無さそうだね......レイアちゃんに聞いた話からして、死んだ後についたものだと思うよ」
これ以上に調べることはあまりなさそうだ。
キレイは牢屋敷に戻り、二階堂ヒロの顔を見に行くことにした。
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懲罰房。いつものように二階堂ヒロが拘束されている。
目を完全に見開き、震えている。顔色は完全に白く、精神的に参っているようだ。とても、見ていて気分が良い。
「エマが死んだ......?レイアが、死んだ......?」
そう、ヒロは壊れたオルゴールのように、事実を認識できないように、事実を繰り返し呟いていた。
目を向けるべきものに目を背け続け、ようやく目を向けた頃にはすでに手遅れになっている少女は、壊れかけて尚、その形を保っていた。
彼女にとって支えとなる存在は消えた筈なのに、彼女は未だ魔女とならずに、どうにか存在を保ち続けていた。
「二階堂ヒロ」
そう呼びかける。しばらく経ち、少し冷静になったのか。少女は顔を上げてキレイを見た。進むべき道を無くした、迷い人のように。
そうしてヒロは、自身を嘲笑するかのように、キレイに対して懺悔を行った。もう語る人も居なくなった懺悔を。
「......キレイ。君の言った通りだった。私の逸らしていた真実は、受け入れ難い、ものだった。エマは、【悪】じゃなかった」
壊れた蛇口のように、少女は言葉を吐き続ける。自身が何を言っているのかもわからないままに。それは、己自身の否定だった。
それを聞き届けるキレイの表情は、見えていないだろう。そのキレイの表情は、嗤っていた。何度もチャンスがあった、話しかける機会もあった。なのに何度も後回しにして、その度に傷つけた。
そうして得た結末が、これだった。後回しにした結果、何もかもが手遅れとなってしまった。
自身を支えてくれる半身と呼べる存在が消えてしまった。あの微笑みも、演技のようなあの言い回しも、あの明るさも、もう見れない、聞けない。笑い合いたかった、もっと言いたいことがあったのに。
後悔も懺悔も止まることはない。今の彼女は【正義】ではなく、ただ1人、道に迷ってしまった1人の少女であった。
それをシスターは聞き届けている。懺悔を聞くのは、己が使命であるからにして。これ以上傷付ける必要性が見出せなかった。今のままで、十分壊れているからこそ。
そうして、一通り聞き届けた上で、キレイは語る。
「ああ。その苦悩や絶望は人として正しい。私としては、眩しいくらいにはね。愛した存在に悲しみの涙を流している。......君と共に歩めた蓮見レイアは、間違いなく幸せだっただろう」
少女は思わずキレイを睨む。何かを叫びかけて、その表情を見て思わず口を閉ざしてしまった。その表情に、少女は何を見たのか。
「......さて、二階堂ヒロ。君のその絶望は、とても味わい深い。人生のドン底に陥ったようなそれは、中々味わえるものではない。
......しかし、君は決して折れてはいない。魔女になっていないのが、何よりの証拠だ。では今一度君に問おう。君は、何をするべきか」
少女は、目を閉じる。そうして、目を見開く。
「......どんなに辛い現実でも、直視する。そうしなければ、真実には辿り着けない。私は、真実に辿り着く必要がある。エマのためにも、レイアのためにも、必ず」
その瞳は、危うく壊れかけているが、いつもの少女に戻った。彼女は、裁判中は大丈夫だろう。
キレイは立ち上がり、背を向ける。
「ではまた、裁判で会おう」
キレイは懲罰房を後にした。やるべきことは後二つだ。
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ココとアリサに対しても話をして、ひとまずは落ち着かせた。ココは桜羽エマが死んだショックで、アリサは居ない間に起きたその事件に深く心を痛めていた。
ココに対しては推しについて。アリサに対しては、今やるべきことと、ナノカとココに共有しているある計画を教えることで、未来への希望を持たせることでひとまず落ち着かせる。
そうしてまた、裁判が開かれる。
二人もの人を殺した魔女を探すための、魔女裁判を。
それが、どんなに辛い現実だろうと、真実を追い求めるために。
【魔女図鑑:人物】
[ことみね きれい]
囚人番号671番。 誕生日:12月28日
15歳
【魔法】奇跡 洗礼詠唱
敬虔たるシスター、目が死んでいる。
現場以外に内容がないことと、当時現場にいなかったことであまり推理ができていない。というかこれ以上の情報は皆が集めるだろうとした。
後はココとアリサとヒロの話を聞いて愉しんだ。