愉悦少女ノ魔女裁判   作:保温と後光

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【証拠品ファイル】
桜羽エマの死体
エレベーター内部で発見された。死因は胸部をレイピアによって貫かれたことによるもの。また、手足には何かで縛られた痕跡が残っている。

蓮見レイアの死体
エレベーター天井裏で発見された死体。死因は後頭部を強打されたことによるもの。

天井裏の様子
蒸し暑い。薄まった血液が広がっていた。ハンナの作ったエマのぬいぐるみも、そこに落ちていた。

エレベーター
2人乗り。それ以上は動かなくなりブザーが鳴る。床には血を拭ったような跡と、レイピアで付けられたと思われる傷がついている。

浮いていた髪の毛
天井裏の上で浮いていた金髪の毛。何かを縛っていたような痕跡があるが、千切れていた。


30日目-魔女裁判(前)

こうして、裁判が始まった。先程までは絶望的な顔だった二階堂ヒロも、今では少しは元の調子に戻っている。

「それでは......話し合いを始めましょうか!」

シェリーの言葉に、アリサが待ったをかける。

「ちょっと待てよ。いったいなんについて話し合うってんだよ......」

 

「それはもちろん、起きた殺人事件についてですよ!おふたりの無念を晴らすためにも、犯人を見つけないといけませんよね!」

「さ、殺人事件......!」

シェリーのその言葉にハンナが体を震わせる。

「つ、つまりアリサちゃんが言いたいのは、【どっちを議論するか】ってことじゃないかな?死体は......2つあるからさ」

 

ミリアのその発言に、ココがいう。

「別にどっちでも良いんじゃねーの?結局どっちも探ることになるんだからさー」

投げやりだが、確かにその通りだった。

 

「そうですね!ではまずは情報を推理しましょう!犯人を全て明らかにするまで......議論を続けるんですよ!」

キレイは、ようやく口を挟むことにした。

「ではミリア君にナノカ君。現場の情報について説明を頼む」

 

2人はそれぞれ説明をする。

「じゃあ、まずはおじさんから。エマちゃんはの死体の状況について話すね。エマちゃんの死体は、エレベーターの中で発見された。死因はおそらく、胸の刺し傷。レイアちゃんの持つレイピアで刺されたものだと思う」

そこにナノカが付け足す。

 

「エレベーター内部には、血を拭ったような形跡......私たちが乗った時には、気が付かなかったけれど。それと、レイピアによるものと思われるエレベーターの傷が確認されているわ。どれも、いつ付いたものかは分からないけれど」

それにシェリーが付け足す。

「ええ。私たちはエレベーターに乗る時、注意してみていたわけじゃありませんからね」

 

ミリアが続ける。

「死亡推定時刻は......おそらく発見時から1時間以内。レイアちゃんから教えてもらった聞きかじりの知識だから、自信はないんだけど......変わったところと言えば、腕とか足に縛られた痕があるくらいかな」

さらにミリアは話を続ける。

 

「そして......次にレイアちゃんの死体だけど。レイアちゃんは、エレベーターの天井裏で発見されたよ。後頭部には、硬いもので殴られたような痕跡があって、死因もこれだと思う。エマちゃんと同じく、死後1時間以内みたい」

 

「ふむ。つまり二人は殆ど時間を経たずに殺された可能性が高いということになるね」

そう話を聞いたキレイがまとめた。ハンナも、それの後に話し始める。

 

「もう1つ......エレベーター前には怪しい証拠がありましたわ」

「ああ!アレですね!」

そうして、ハンナによって提出された。

 

「それは......ハシゴですね!!」

「え......?それってハシゴじゃなくて、脚立じゃないかな......?」

「高い所に登る物なのは一緒です!本質を見ましょうよ、ミリアさん!」

ミリアは困惑した様子だった。

 

「どっちでも良いから話進めろよ!!」

「そうですわ〜!これには発見時、血痕もついていましたわ」

ココが話を止めて、ハンナが話を進めた。

「つまり、この近くで何らかの犯行が行われていたということですね!死体が発見された現場はどちらもエレベーターの中......少なくとも、この周辺で2人が殺されたことは間違いないということです!」

 

「つかさー。結局の所お前らの中に犯人いるんだろ?」

ココが、投げやりながらもそう言った。

「......そうだろ。おめえらの中で完結してる話だろ。ウチは関係ねえ。事件に関われねーんだからな」

「私はココ君と用事があって行動を共にしていてね。こちら側の無実は証明できる」

 

それぞれの動きを整理する。

エレベーター組は全員が思い思いに行動していたため、互いのアリバイ証明は不可能。ナノカも休み休み出会ったためにヒロのアリバイ証明はできないし、最後にいつ、エマとレイアに会ったかも不明瞭。

エレベーターは、帰りが1人ずつしか乗れずに、ヒロを除く4人が登ってから、エレベーターは地下に戻る。そこで初めて、ヒロが口を開く。

 

「......そして私の前でエレベーターの扉が開いたとき。そこには、エマの死体があった」

ヒロは説明を続ける。辛そうに、だが我慢を続けて。

 

「だがエレベーターは1人乗り制限......そのまま上に運ぶのは無理だ。だから私はそこで一旦現場の写真を撮り、エマを下ろして上へと向かった。そこで待っていた3人に事情を話したんだ。......私は、裏に犯人が潜んでいると考えて、天井裏を確認した。そこには......レイアの死体があったんだ」

 

「......なるほどな」

黙っていたアリサが口を開く。

「だけどよ、単純に考えるなら......【犯人は最後に乗った二階堂】。この考えであってるか?」

 

ヒロは毅然と反論する。

「もちろん、それは否定させてもらう。最も怪しい容疑者だということは理解しているつもりだ。だからこそ、私が拘束されたわけだからね」

「なら、それ前提で話させてもらおうか。誰が桜羽と蓮見の2人を殺したのか......な」

 

ここでキレイが語り出す。

「では、整理しようか。まず、入った順番はハンナ、シェリー、ナノカ、ミリア、そしてヒロの順番。そしてヒロ君が来る前には、桜羽エマの死体はなかった。合っているかね?」

 

その言葉にはシェリーが頷いた。

「そうですね!私とハンナさんがその順番を確認しています!その間に死体はありませんでしたし、隠れる場所もありませんでした!」

それにアリサが言った。

「じゃあやっぱり、犯人は二階堂でしかねーだろ。他の誰にもできねーんだからな」

 

それに、ヒロは反論する。

「いいや、エレベーターの中にはいなかったが......その外。そこには私以外がいた可能性がある。そう、たとえば、【頭上】とかね」

「なるほど!エレベーターの天井裏ですね!あらかじめ、調べておきましたよ!」

 

そう言ってシェリーは様々な証拠を提出する。

「とまあ、犯人がその場所を利用したのは間違いないでしょう。なにせいろいろな痕跡が残っていましたから!エマさんのぬいぐるみに、血と思われる液体。そのほか、とくに気になるものはありませんでした。

ですが、これだけ証拠品が残っていますからね!犯人がそこにいた可能性はありそうです!」

 

「【犯人は天井裏にいた】......本当に、そうなのかな」

ミリアが、ぽつりと呟いた。

「と、言いますと?」

「おじさんが気になってること、話すね」

 

語られたのは、エレベーターについて。

1人しか乗れずにいた。つまり重量的に犯人がエレベーターに乗る余裕はなく、誰1人として潜むことはできなかった。

そして、シェリーとハンナ、それにナノカも話を続けて、上の階にはハンナたちがいたので、エマを乗せることもできなかった。

 

しかしそれにもヒロは反論した。しかし、どことなく苦しそうな表情で、そして思い出した顔。

「いいや。潜むことは可能、だった。そこには、レイアがいたんだから。......死体として、だけどね」

 

あの懲罰房での会話は外でキレイも聞いていた。エマに殺意があったことは事実であり、確かに考えとしては間違いではなかった。

それにシェリーが同意する。

「たしかにヒロさんの言っていることはごもっともです。ヒロさんが入る前にエマさんは死んでいた。よって【犯人は同乗していたレイアさん】という推理ですね」

 

その発言に、異議なしを唱える者がいた。

「うん......もう、いいんじゃないかな。レイアちゃんが犯人......でさ」

ミリアが、そう言った。仲間を2人を殺した人がここにいることが信じられない。当然のことだった。これ以上誰かを処刑したくない。当然のことだった。

 

しかしそれに、意外な者が異議を唱えた。

「おっさんにヒロっちさぁ。それマジで言ってる?」

ココだ。投げやりになっていたそれが一転、敵を見据える目でこちらを見ていた。

「と、当然だよ!現場の状況から言って、2人が相打ちになった可能性がゼロとは言えないし!」

 

ミリアは慌てて反論するも、ココの目は冷めていた。

「重量制限。さっきおっさんが言ったことじゃん」

それ以上言う気がなさそうだったので、キレイは追記した。

 

「君の考えによれば、2人が同じ場所で死んだことになるね。ではその時、桜羽エマの死体、もしくは蓮見レイアの死体はどうなる?」

「そ、それは現場に......あっ!」

ミリアが、自身のミスに気がついた。

 

「そうね、2人が同時に天井裏で死んだとすれば、その死体は確実に天井裏に残る。なら、そもそも私たちが上に戻ることすらできないもの」

それにナノカが追加で証言した。つまり、レイアが何らかの方法でエマを浮かせでもしない限りは、ミリアの推理は破綻する。

 

キレイは、続けてミリアに対して言う。

「蓮見レイアが犯人だったことにすれば、それで誰も死なずに済む。それは確かにその通りだ。だが、それが納得いかない者も、ここにはいる。ココ君や、悩んで答えを出したヒロ君のように。それにもちろん、私も同じことだ。その答えには同意しかねる」

 

話を続ける。

「自身が犯人ではないというように考え抜き、一つの回答を出した二階堂ヒロとは違い、君のはただの、楽な方へ逃れようとしているに他ならない。だからこそ沢渡ココは怒っている。それだけの話だよ」

ミリアは口をキュッと閉ざして、ココに向き直る。

 

「......そう、だね。ごめんね、ココちゃん」

「......分かったなら、エマっちにレイアを殺した犯人さっさと見つけろよ」

そう言ってまた投げやりになった。

 

「......つまり結局、二階堂にしか無理ってことだろ?」

アリサがまとめた。結局そういうことになってしまう。

「ああ、その認識に相違はない」

 

頭に手を当てて、ヒロが悩む。そこに

「ふっふっふー。......どうやらエレベーターの人数制限問題について、お困りのようですね?」

ヒロは呆れながらも、シェリーに言った。

「何か情報を持っているなら、隠さずに話してくれると嬉しい」

 

「はい!実は、ゴクチョーさんに確認しておいたんです!あのエレベーターがどのように動いているのかを!」

それに全員が反応するも、シェリーは変わらない様子で答えた。

 

「ただ単純に、何も変わらないから話していなかっただけですよ」

そうしてシェリーが、話を始める。エレベーターは【多数が一度に乗れない】ような改造をしている。何かあった時のシステムで、誰が乗っても【2人までなら動く】パラメータに設定されていたらしい。

 

「......何度言わせやがる。結局の所、殺せたのは、二階堂だけってことだろ。誰もエレベーターには乗れなかった。なら、犯人は1人。最後まで地下にいたおめえだ。違うっていうなら......ウチらが納得するような反論、してみせろよ!」

 

 

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