愉悦少女ノ魔女裁判   作:保温と後光

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自らの本音に蓋をして、空っぽにしてしまった外界との繋がりを絶ち、口を閉ざした少女の口が、開かれた。


虚言無心外界

そう言ったアンアンに向き直る。

「理由を聞かせてもらえるかな」

アンアンはこちらを睨むように言った。

「.......逆だ」『わがはいには協力する理由がない』

「元の生活......外の世界.......そんなものが本当に、必要なのか?」

 

アンアンは語り始める。

「たしかにここはロクでもない場所にも見える。だが......だからといって本当に帰る必要はあるのか......?魔法が使えるからと、奇異の目で見られることもわずらわしい人間関係もない。

......案外、ここで暮らす方が楽かもしれない」

その楽観に対して、私は真実を突きつける。

 

「そう簡単な話じゃないんだ。この牢屋敷に長くいれば、魔女因子により殺人は必ず起こる......。現に君は私の知る過去の中で殺されていた」

アンアンは思わず歯噛みしたが、反論する。

「し、しかし......その言葉が真実だとその言葉が真実だと保証することはできま「できるさ」......!!」

 

彼女の言葉に被せて、私は言った。

「沢渡ココ.......。彼女なら可能なはずだ」

ココは目を丸くした。

「は......!?あてぃしが!?」

その言葉に首を縦に振る。

 

「以前の君は、並行世界の【魔女化した沢渡ココ】の情報を、配信を通じて取得していた」

私もそのアーカイブであるが、見ていた。

「そして、ある人物の見識だが......君の魔法の本質は【並行世界の観測】と言っていた。なら、私の話が真実という証人に、なってくれる筈だ」

 

まっすぐ見据えると、ココは困惑したように。

「【べつの世界のあてぃし】......【並行世界の観測】.....?難しいこと言うなっての!!でも一生こんな格好ってのもやだし━━やりゃあいいんでしょ、やりゃあ!ほら、インカメで配信始━━」

 

瞬間、ココが青ざめ、冷や汗をかいて嗚咽を漏らす。

「だ、大丈夫ですかココさん......!?」

......そう言えば、以前のナノカも情報量の過多により、脳に負荷がかかり魔法が使えない状態になった。その状態にココもなっている.....?

 

「うぷ.....そんなん頭の一気に入りきらん.....って.....!あっ.....幻覚見えてきた......剣道場にいるブルマ姿のメルルとエマっち......長髪のロリっ子二人に剣道着姿のおばさんが......っ!怒鳴られたっ.......!!」

「ココさん!?」

「どうしてボクまで!?」

 

魔女化による並行世界の観測は全てを見通しているのかもしれない。そして脳に負荷がかかり過ぎて幻覚まで見え始めている......!

「ココ、無理をさせてすまない。休んでいてくれ」

その言葉に、ココは笑い始めた。

 

「......はぁ?こんなん.......なんでもねーし。だから......あてぃしだけ仲間外れにすんなよなっ!」

そう言って、笑って見せた。

「......ココ」

その言葉が頼もしい。

 

「......たしかにヒロっちの言う通り、ここはやべーとこみたい......。空気が悪いのか、それともストレスか知らないけどさ。そこのヒッキーなんて別の世界じゃ殺す方も殺される方もやってんじゃん」

思わずアンアンが息を呑んだ。

 

「お前さ......!ここにいたら、絶対すぐに死ぬ運命なんだよ......!勝手に恨まれて殺されて、勝手に恨んで殺して......!

あてぃしはたった今、それを見てきた!ヒロっちの証人にでもなんでも.......なってやんよ!」

 

アンアンは、どうにか反論する。

「うぐっ.......!そんなの.......次は長生きするかもしれない......!」

それをココは一蹴する。

 

「ムリムリ!絶対無理!お前みたいな触ったら折れるメンヘラモヤシ地雷、ナチュラルに狂言自殺なんか企てるサムい奴!物理的にも精神的にも扱いきれねーわ!ミリアのおっさんみたいな爆弾処理班でも無理だっての!」

 

「ぐぅ......!?」

「お、おじさん爆弾とかべつに詳しくないけど......!」

「比喩だっての!わかれそんぐらい!」

言葉の攻撃力が高い。その言葉にアンアンが激昂したらしい。猛烈な勢いで捲し立ててくる。

 

「う、うるさい.......!貴様にわがはいの何がわかる......!黙れ、黙れ......黙れ黙れ黙れ......!!

わがはいの命令を......【聞け】!」

「マズい、彼女の魔法は【洗脳】......!言葉による暗「【黙れ】!」ぐっ.......!(このままでは、議論が......!)」

 

そんな中で、アンアンの声が響いた。

『黙らずとも良い。言葉を発せよ皆の衆。自由に話すがいい』

「......マーゴ!」

「貴様っ.......!」

アンアンが、マーゴの方を睨む。

 

『他人の言葉に行動を支配される必要などない!思うがままに議論せよっ!』

「宝生マーゴ......!」

「【モノマネ】で暗示の打ち消し.......私が前にいたあの場所で、君がやっていたことだったね」

マーゴは思わず目を丸くした。

 

「あら、私そんなことをしていたの?」

「ああ、君がサッカーの監督をやっている時に」

「......随分と前の時は仲良しだったのね。私たち」

マーゴはアンアンに向き直る。

 

「どうしたの?アンアンちゃん。議論を続けたら?それとも......。魔法がなかったら、他の人とお喋りすることもできないのかしら?」

アンアンは取り乱したように叫ぶ。

「.......貴様らの事情などわがはいには関係ない......!

わがはいを......【巻き込むな】!!」

 

そこに落ち着いた様子で口を挟む者がいた。

「いいや。君にもぜひ参加してもらいたいものだ。君が何故この牢屋敷にこだわっているのか、何故外の世界に対しての未練がないのか「【黙れ】!」

その殻に閉じ籠るわけを「命令を【聞け】!」ぜひ君の口から、聞かせてもらいたいところだ」

 

彼女の命令に納得していないのか、キレイは淡々とアンアンに対して話を詰めている。

「ナノカ、頼んだ」

私は今のうちに協力を仰いだ。彼女はこくりと頷くと、魔法を発動し、そしてぽつりと呟いた。

 

「......【魔法の暴走】ね」

アンアンは驚愕し、ナノカの方へ向いた。

「あなたは......恐れているのね」

「......違う」

 

ナノカは語り続ける。

「あなたの魔法に常時晒され続けてきたあなたの家族は、みんな自我を失い、操り人形と化してしまった」

「違う!わがはいは望んで傀儡とした!それがみんなにとっての幸せだったんだ!」

その言葉は、強がりのようにしか思えない。

 

「意思のない人形となった両親を見て、あなたは人と関わりを持つのをやめた。賢明な判断と言えるわね」

アンアンは叫んだ。

「うるさい......!黙れ!わがはいのことを......知ったような気になるな!!」

 

「そうだね。だからこそ君の話を聞きたい」

キレイは、変わらずにそう言った。

「私たちが知ったのは君の過ちのみ。夏目アンアン個人については知らないことだらけだ。君は何故外界から目を逸らし続け、殻に閉じ籠ることにしたのか。君の口から聞かせてほしい」

 

「うるさい!!わがはいがどうしようが貴様らには関係のない!!外の世界を見る必要はない!理由などいらない......!!」

彼女は自らの罪から殻に籠っているのだろう。なら、無理にでもその殻をこじ開ける。

 

「.......罪は消えない。君は忘れたいのかもしれないが、君が両親を壊した事実は残り続ける」

「うるさい!そんなことなど.......わがはいは知らない.......!」

構わずに続ける。

 

「向き合わなくてはいけないんだ。自分の罪と.......己の罪から目を逸らすな!アンアン」

......横から、頼りになる声が聞こえた。

「.......その通りだ。君は1度、自身の心を【直視】すべきだね!」

アンアンに対して、魔法を使ってくれた。

 

「(......何も言わずとも、合わせてくれたか)」

「......ふふ」

目を閉じて、そう笑っていた。

「......ありがとう」

聞こえないくらいの声量で、ぼそりと言った。

 

 

現実を直視したアンアンは、顔を青ざめている。

「違う......わがはいは......わがはいは......!」

感情のままに、アンアンが叫ぶ。

 

「わがはいは静かに暮らしたいだけだ!大衆どもに理解される必要も、理解する必要もない!

わがはいには仲間も、幸福も、ぬくもりも.......そんなものに価値はない!求めていないんだ!」

 

その言葉を否定するように、口を挟む者がいた。

「いいや。君は一度壊してしまったからこそ、その価値をよく知っている。一度得たものを失うその喪失感を味わいたくないからこそ、君は殻に閉じこもっている」

「......ち、ちがう......!わがはいは......!」

 

私は、追撃した。

「違くないさ。私の経験では、君には仲の良い友人ができていた。君の創作を元に、大勢で力を合わせて劇をしたりもした」

「な......に.......?」

 

「君は、その価値を十分に理解している。その価値のあるものを、両親との幸せな家庭を壊してしまったように、もう一度自身の手で壊してしまうことを恐れているんだ」

「......違う!!」

アンアンは強く否定した。

 

「違うのであれば、どうして殻にこもろうとする!自ら幸福を遠ざけ、不幸な自分という悪酒に酔う依存性の患者。それが今の君だ。違うかな」

「わ、わがはい......は.......」

言葉に力が籠っていない。それを見過ごす、キレイではなかった。

 

キレイは、語った。

「ただの一度の敗走を以て、ただの一度も理解されない。彼の者は常に一人。自身の内界で孤独に眠る」

そう語ったのちに、アンアンを見る。

「君が創作者であれば、考えるが良い。君が今、それを続けた際に、どのような人生を送るのか......」

 

アンアンは、唖然として、段々と、顔を青ざめる。

「......ぁ.......ぁぁっ......!」

キレイの詩めいた言葉を、自身に置き換えて想像してしまったらしい。体を抱え、震えている。

 

「何故震えているのかね?それが君の望む未来の先のはずだが......ああそうか。君は眠っていたのか、なら未来が見えるはずもない」

 

私は、アンアンに対して言った。

「君が幸福を拒絶し続ける限り、君の今考えているその未来からは逃れられない。それで良いなら、孤独の中、その悪夢を見続けるがいい!」

「い........やだぁっ.......!!」

 

アンアンの姿が変わる。

白い髪は驚くほどに伸び、少女の片目を覆い隠す。耳の方から山羊や羊のような角が伸び肩は黒く染まっていた。アンアンは、泣き続けた。

「そんなの、やだ......!こんな魔法、いらなかった......。普通に、生まれてれば......パパも、ママもおかしくなんて、ならなかったのに......!」

 

私は、アンアンに希望を持たせるように呼びかけた。

「なら、私についてくるんだ。ナノカの姉と同じく.......君の魔女因子も取り除いてやる」

 

眠っていた少女を起こして、残りの魔女候補は5人。しかし、説得は、厳しいものになってきていた。

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