愉悦少女ノ魔女裁判   作:保温と後光

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これより、尋問が開始される。

━━━━【審問開始】━━━━



人類断罪法廷【尋問】

(エマ視点)

 

ユキちゃんが、言った。

「おかしいと言うなら、なんでも説明してあげましょう、エマ」

「じゃあ......聞かせてもらうね」

ボクはそう言ってから、ユキちゃんに言った。ボクがとっても気になっていることを、全部。

 

「最初に引っ掛かったのは、どうしてキミが【魔女を殺す魔法】を手放したのかなんだ......。だってボクの魔法って、キミの計画を実現するための最後のトリガーだったんだよね?

ならそれを他の人に......しかもキミが憎む人間相手に渡しちゃうのって、なんだかおかしくないかな?」

 

そう、おかしな点はそれだった。それだけじゃない。

「それにそもそも......どうしてキミはわざわざ恨んでいる人間の近くにいたんだろう?それって、とっても辛いことなんじゃないのかな?」

ユキちゃんは淡々と答えた。

 

「......まず私が人間の中に潜んでいたのは、さきほど言ったように確実な手段を取ったからに過ぎませんよ。天変地異を起こしたとしても、方舟に乗った人間が生き長らえてしまうかもしれません」

 

「なるほど、ノアの方舟か」

「のあ?」

「君ではなくてね?......確かに、60億を超えた人類を君一人の手で滅ぼすとなると非常に手間がかかり、確実に生き残りは出てくる。だからこそ、魔女因子を作ったわけか」

 

......ユキちゃんは、それに頷いて言った。

「ええ。その通りです。詳しく説明しますね?」

語り始める。確実な遂行をするために近くで観察し、魔女因子をばら撒いたこと。不意に魔女化する子が出てくるから、コントロールするために近くにいたこと。

 

そうしてユキちゃんは言った。

「エマに魔女殺しの魔法を与えたのも、友人のフリをしていたのも......“全ての出来事”は、必要なことでした。何もおかしなことではありませんよ」

>君が死ぬ必要はなかった。

 

ユキちゃんは、嘘は言ってないけど......質問の一つには、明確に答えていない。それは、『ボクに何故【魔女殺し】を与えたのか』その質問に答えていない。

......それは多分、キレイちゃんのやってたことと同じ。本質に迫ることは話さないことで、ボロを出さないようにしている。

 

「(......それなら、まずは行動の矛盾を指摘して、話を聞き出すんだ)」

ボクは、ユキちゃんに向き直った。

「本当に、そうかな。じゃあどうしてキミは......自殺なんかしたの?」

 

ユキちゃんは、黙った。......まただ。ずっと見ていたけど、たまにユキちゃんはこうして黙る時がある。ボクは、話を続けた。

 

「キミは魔女因子の拡がりを確認するために人の世の中に紛れ込んでいたって言ったよね。でもキミはそれを途中で放棄したんだ。それはいったいどうしてなのかな」

ユキちゃんはまた、少し黙って、答えた。

 

「必要なくなったからですよ。魔女因子は全ての人に行き渡りました。あとはエマが魔女となれば、魔女を殺す魔法が、すべてを殺し尽くします。だから私はエマへ、残っていた最後の力を分け与えたのです。私自身が計画に必要なくなったから、切り捨てた......それに何か問題がありますか?」

 

ボクは考える。ユキちゃんの行動の、何が問題なのかを。そしてボクは、答えを出した。

>魔法を渡すこと

「もちろん、問題はあるよ」

ボクは、はっきりと口にした。

 

「それは、キミ自身がこの計画をコントロールできなくなるっていう問題だ」

【残っていた最後の力を与えた】と言った。

だとしたら、ユキちゃんは不老不死の魔女のままだったはず。なのに計画の最後の鍵を他の人に渡し、そのあと、肉体を失ってしまう。

入念に用意した計画にしては、おかしい。

 

ヒロちゃんも、気がついたように声を上げた。

「......そうか。前の世界で、私はユキの声を聞いた。さきほど彼女自身が言っていたように、エマが死ぬとユキの計画はしばらく停滞してしまう......」

そのリスクを取ってまで、魔女候補でもないボクに魔法を与えたことになる。その理由があったと推測した。

 

でも、ユキちゃんは否定する。

「......そんなのは、ただの気まぐれです」

気まぐれ。同じ言葉を聞いた......けれど、自覚がない気まぐれじゃなくて、何かを知っていて、それでいて目を逸らしている。

 

そこで、キレイちゃんが口を開いた。

「なんらおかしなことではない。桜羽エマに魔法を与えた理由も、それはすでに彼女の口によって説明されている。復讐に燃えた彼女が行き着いた先の、灰として」

キレイちゃんはまた、代理人として立ち塞がる。けれどその瞳はやっぱり、ボクたちに対する信頼があるように見えた。

 

━━━━【審問開始】━━━━

 

「彼女の求刑は、この島の魔女たちに人類が行ったように、人類も絶滅させること。つまりは復讐だ」

ユキちゃんも、それに頷く。

「......ええ。同胞を殺されてしまった怒り、悲しみ、恨み、憎しみ。それらを晴らすため、人間たちにどんな酷い死に様を迎えてもらうか考え続けて来ました」

 

キレイちゃんは、続ける。

「そうして行き着いた先が、桜羽エマだ。君の手によって託したのだろう。その引き金を」

「(ボクに、託した?)」

 

ユキちゃんは、答えた。

「人間であるエマの手によって人類が絶滅を迎える。それこそが私の考えた、私の完璧な復讐なんです。それは端的に言えば、【感情的な行動】と分類されてしまうでしょうね。

......でも、みなさんも好きですよね?感情のままに振る舞うのは」

 

その言葉に、ノアちゃんは同意した。

「のあも“嫌なこと”はしないよ」

>ユキも嫌だった。

 

ボクは、考えたことを言った。

「ユキちゃんの言葉が正しいなら......ユキちゃんは【自分で人間を殺すのが嫌だった】ってことにならないかな?」

 

ノアちゃんも、続けて言った。

「そうだよねー。ユキちゃんが嘘をついてないなら、【やりたいことしかしてない】って事になるし、のあと一緒だね!

......でもそれって【やりたくないことはやらない】ってことでもあるよね?のあもね、先延ばしはよくしちゃうなー」

 

ユキちゃんは黙って考えた後に、答えた。

「いいえ、私はどちらでも良かっただけです。人間が自滅しようと......そうでなかろうと」

それに、少女たちも反論した。

 

「......そいつはおかしいな。

【どちらでも良かった】ってんなら、尚更不確実な方法は取らねーんじゃねぇか?」

アリサちゃんの言葉に、シェリーちゃんも同意した。

「確かに妙ですよね。まるで本当は人間を滅亡させたくないような......そんな風にも感じてしまいます!」

 

ユキちゃんは、答えた。

「そんなことはありませんよ。結果的に、遅かれ早かれ人間が滅亡するのは変わりませんし......。それに私には、復讐をする理由があります。魔女たちのために、私はこの世から、人間を消し去らなくてはなりません」

 

そこに、ココちゃんが反応した。

「はーい、ここで重大発表しちゃいまーす!!」

「じゅ、重大発表!?」

何を話すと言うんだろう。

 

「いやー。いざって時に備えて、情報を秘匿する......キレイっちがやってたことだけど、これすっごく楽しいわ〜」

笑顔で言った後に、話し始めた。

 

「あてぃし、島の大魔女からメッセージを預かってんの。あ、あんたじゃない別の......お前を心から心配してる奴」

ユキちゃんは、歯噛みした。

「島の......大魔女.......」

 

ココちゃんは語り始める。

「そもそも、この島は停滞してて、悪い予言もあって、みーんな滅ぶ運命を受け入れてたんでしょ?」

「......そんな、ことは......」

図星を突かれた。真実を知るものが、そこには居た。

 

「そいつ、言ってたんだよ。【人間への復讐なんて、望んでない】って」

ユキちゃんは、目を丸くして驚いていた。

「そいつ、お前に幸せになって欲しかったって。大切だったんだろ?それでこんなことしてさぁ......裏切ってんじゃねえよ!!ばーか!!」

怒りを露わにして、ココちゃんが叫んだ。

「あ、なんならさ。あてぃしとかおっさんの魔法使ってみなよ。あてぃしの言葉が嘘じゃないって、わかるから」

 

ユキちゃんは、黙った。けれど

「......今更知っても、遅いんです。私は止まらない......止まってはいけない......人類滅亡の願いを......叶えるために......!」

 

もうユキちゃんは止まらない。止まることはできない。自分が今まで抱いて来たそれが無駄になってしまうから。

......でも、今わかった情報で、味方にできるのが、一人増えた。

「━━キレイちゃん」

 

席的に隣にいるキレイちゃんは、こちらに向いた。

「手伝って。キミは、死者の無念を晴らすために戦ってるんでしょ。でも島の大魔女は、みんな復讐なんて望んでなかった。なら、キミがユキちゃんに与する理由は、ないはずだよ」

 

そこに、キレイちゃんは答えた。

「ふむ。まあ私が居なくても......君たちであれば、答えへ辿り着くだろうが......よろしい。死者に寄り添うのが、今の私の生き方だ。

では一つ、アドバイスだ。月代ユキは魔女という種族ではあるが、感受性も何もが違うわけではない。私よりも人間らしいのではないかな」

 

そこに、ボクは考えた。

「(ユキちゃんが、ボクたちと同じ......)」

キレイちゃんは、言った。

 

「彼女は矛盾を抱えている。殺さねばならないという使命感と復讐心......そして......これ以上は、まだ言うべきではないか...中々に、彼女の矛盾は芳醇だ」

 

楽しそうに、笑う。キレイちゃんらしいと思った。

「(......ユキちゃんを、止める)」

決意を抱いて、ボクはユキちゃんに向き直った。

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