(キレイ視点)
あれから、色々なことがあった。やはりと言うべきか、魔法少女たちは社会的に抹殺された存在、辻褄合わせが大変だとゴクチョーが言っていた。
恐らく国が尻に火をつけたように慌てふためき、対応しているのだろう。それを思うだけでとても気分がいい。
地下にいる冷凍されたなれはてに看守が、魔女因子がなくなったことで、元に戻った。しかし、精神的ダメージは計り知れない。
誰もが人を殺し、疑われ、その結果隣人の手で直接魔女として処刑された者たち。諍いが起こらないはずがなかった。
「(あれは非常に楽しかった。もうあのようなものは味わうことができないかと思っていたが......ふふ、ああいった贈り物があるとはね)」
元魔法少女たちのケアは、マーゴとキレイの2人が主に、補助として他の少女たちも回っていた。
......そしてキレイの所業に全員がドン引きし始めたのは言うまでもない。詳しくは言わないが、全員が全員自身のトラウマ・自己嫌悪・劣等感を無理矢理引き摺り出されてメッタメタにされ、その後に自身を見つめ直してどうにか立ち上がっていた。同じ代行者だった少女が何よりもダメージを受けていたのは言うまでもない。
......そして、冷凍保存から解放されたなれはてなかった少女たち。彼女たちについては、キレイ主体に全員で墓を作った。姿を整え、地に埋めて......複数の代行者の少女たち指導の元、丁寧に弔った。
墓を作る際に森から少しばかり木を貰っている時にボロボロになっている少女を見つけて、丁寧に保護をしたりもした。
「(.....そういえば、あの少女は主の元へと行けたのだろうか)」
それは、シャワールームの鏡に囚われていた【魂】の元魔法少女。話しかけたところで何も反応がない。魔法がこの世に無くなったことで存在を保てなくなったのか、或いはまだそこにいて、認識できなくなったのか。
それはそれでまあ良いとして取り外し、少女たちの墓に立てかけて、共に弔うことにした。
他でもないキレイのみが、そこに確かにいた少女のことを知っていたから。それは、気まぐれでもあったかもしれない。
そう過ごしてはや1週間。いつものように食堂へと足を運ぶと......珍しく、ヒロから声をかけてきた。その場には、キレイ以外の13人が揃っていた。全員がキレイを見ていた。
「少し良いかな、キレイ」
「おや、なんだね。また少女たちの諍いでも......」
ヒロは首を横に振り、本題を言った。
「今日、迎えのヘリが来る。1人ずつ慎重に送り届けていくとのことだ」
それを聞いて、キレイは言った。
「そうか。ここに残ると選択したノア君にアンアン君、そしてマーゴ君の3人を除けば......ふむ、一体誰が最初に送られるのかな?」
「「いやおめーだ(よ)!!」」
アリサとココの声が見事に被った。
「......?」
「なんでだって顔してんじゃねー!!」
キレイが首を傾げた様子にココがツッコんだ。
「おめー......お腹の中に子どもいんだろ」
アリサが冷静にそういうと、理解したのかああ、とキレイは頷いている様子だった。
「そりゃあ、あてぃしだって帰りたいけどさ......キレイっちが一番先に帰んないとじゃん?体調とかさ」
ココは珍しく、素直に心配していた。
「......だからよ、早く帰って病院行って安静にしてろよ言峰。......うちもちゃんと、家族と向き合うからさ」
そうアリサは言った。続けて、少女たちが次々とキレイに対して話しかけて続ける。
「ちゃんと、お墓参りもしてあげて下さいね。あなたの一番大切な人に......今なら、無価値でも無意味でもなかったって、わかっているでしょう?」
弟子であるシェリーが、そう言った。
特に交流が深かった少女たちから始まり、様々な言葉が贈られた。今度あの劇を超える傑作を作り上げるだったり、姉の看護への礼だったり、お茶会への招待だったり、今度遊びに行くだったりと。
「......私は今でも、君のことは好きになれない。だが......君の性根が例え悪だったとしても、君は【正しく】あったんだと思う。私からは以上だ。さあ、エマ」
━━そして最後に、大事にそれを抱えて、少女はキレイの元へと歩み寄っていた。
「ボクから......ううん。みんなからの、プレゼント。みんなのためにいろいろ、沢山のことをしてくれて、ありがとう!」
エマから手渡されたのは、不恰好ながら、木の枠で囲まれ、手紙のように蓋をされたそれ。キレイはその中身を見ずに、大切に仕舞った。その中身は何かを、わかったから。
その後は、迎えが来るまで小さな宴が始まった。豪華な食事も何もないが、皆が笑って各々が、好きに騒いでいた。2ヶ月と数日......その程度しか過ごしていないはずなのに、確かな絆がそこに存在していた。
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やがて、キレイはヘリに乗り込み、飛んで帰路についた。下では少女たちが出迎えて、こちらを見上げているのが見える。......やがて互いを見てわちゃわちゃとしていた。そこにはなんの、わだかまりもなく。すべてが解決した、幸せがそこにはあった。
残念だ、と思う心も確かにあった。けれどもキレイは、それ以上を思うことはなく、懐に仕舞った贈り物を取り出す。
それは、以前......桜羽エマに送ったような、少女たち全員の寄せ書きだった。あの12人だけではなく、他の少女も。それに目を通して、小さく息を吐いて笑って......また、仕舞った。
孤島から帰るまでは、かなりの時間がある。まずは墓参り、その次に病院......いや、その前に父への礼が先か。やるべきことは、多くあった。
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父への挨拶、そして礼を終えて......キレイは、墓に、アジサイの花を手向けた。墓は誰も見ることはなく、少しばかり荒れていたので......丁寧に、拭き取った。言葉はなく、ただそれだけのことだった。
去り際にキレイは、一言呟いた。
「......おまえのおかげで、私は答えを得るまで、死なずに済んだ」
......それだけ言って、去ってしまった。寂しく思うが、それが彼女らしいと改めて思う。......どうか、君の未来が明るいことを願う。
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そうして、3年が経過した。たまにこちらに来る、帰還した少女たちが教会へと出向いてきたり、国と少しばかりのいざこざがあったりしたが、子も生まれ、【3人】全員が健やかに育っていた。全員が全員父側に似た髪色の銀髪、可愛らしく育った。......1名ほど、育て方を間違えた気がするが。
私は、久しく少女たちに会うことにした。帰還した少女たちに手紙を送り、全員の日程が合う日を決めた。そしてキレイはヘリに乗り込む。3人の自らの子を連れて。1人の長女が、話す。
「......ふふ。ようやくあえますね。たった3年なのに長かったですが、あなたがいなければ、それすらできなかった。あらためて、ありがとうございます。【共犯者】」
舌足らずながら語りかける少女を、私は咎めた。
「母と呼びなさい。いつもそう言っている筈だが」
「そ、そうです......!私だって、必死に頑張っているんですから......お、お姉様......!!」
そう、長女の腕にぴったりとくっ付いて、甘えながらもそう抗議した次女。未だその呼び方に慣れていないのか、つっかえながらもそう言った。次女は長女に頭を撫でられ、えへへと笑った。
━━そして、最後の問題児。子育てとはかくも大変なのかと実感した元凶......三女、カレンが冷たい目でこちらを見ながら、話し始めた。
「まったく、妄想ばかりに甘えん坊。変な姉を持つと苦労しますね。『でも一番変わってんのあんたじゃん。自分棚に上げてどうするんだよ』うるさいです、黙って下さい。それで、どこに行くんですか?」
二重人格に私譲りの性格の悪さ。まったく、一体どこで教育を間違えてしまったのか。まあいいか、と思って私は、説明する。
「なに、しばらく振りに全員集まって茶をしようと誘ってね。私の友人たちに会いに、と言ったところだ。おまえはそこで色々と揉まれてくるといい」
そう話していると、懐かしき牢屋敷。ペイントが施されながらも、その風貌は変わらない。
こうして、愉悦を抱えた女は【奇跡】を抱え、しばらく振りの友人たちに会いに行く。
......一体、少女たちはどんな反応をするのだろうか。しかしまあ、自身の心が満たされるようなことは......いや、もしかしたら2歳の少女に言い負かされる友人を見て嗤えるかもしれない。
そんなことを思いながらも、地に足をつけ、子どもたちを抱え、背負い、肩車。2名の顔を隠して向かっていく。
少女から大人に変わった所で、彼女の性根は変わらない。ただ愉悦を楽しみに、足を運ぶ。一体どうなるのかは、また別のお話になるだろう。
これは、再会に至るまでの物語である。