世界は、たった一人の少年の「怒り」を燃料にして、未曾有の破滅へと加速していきました。
1. 「救世主」という名の投下
日本政府は、国際社会からの猛烈な圧力に抗いきれず、カイを「人道的支援」という名目の最終兵器として海外派遣することを決定しました。
輸送機のハッチが開かれ、高度一万メートルからカイが放り出されます。その手には、政府が回収を諦め、カイ自身が固く握りしめたオーブリング。
「ガァァァァァァァッ!!」
落下しながら、カイは言葉にならない咆哮を上げました。空中で放たれた赤黒い稲妻。雲を割り、ニューヨークのビル群の合間に着地したのは、かつて銀幕で見たヒーローとは似ても似つかぬ、漆黒の破壊神でした。
2. 蹂躙される世界都市
サンダーブレスター(カイ)のアクションは、もはや「戦闘」ではありませんでした。それは「解体」でした。
• ニューヨーク: 自由の女神像をなぎ倒して進む溶岩怪獣の喉元を、オーブは背後から掴みました。そのまま力任せに首をねじ切り、噴き出したマグマを浴びながら、首のない死骸をエンパイア・ステート・ビルへと叩きつけました。
• パリ:
凱旋門を占拠していた翼竜怪獣に対し、オーブは一切の躊躇なくビルを根こそぎ引き抜き、バットのように振り回して撃墜。墜落した怪獣の翼を一枚ずつ引き剥がし、絶叫する怪獣の口内にゼットシウム光線を零距離で叩き込みました。
逃げ惑う人々は、その光景に腰を抜かしました。
「助かった……のか?」
「いや、あいつの目を見てみろ……怪獣を殺すのを**『楽しんでいる』**ように見える」
3. オーブリングの真実
カイの精神は、オーブリングから流れ込む「ベリアルの記憶」に完全に侵食されていました。
リングは、触れる大人たちの指を焼き切り、声を奪い、ただカイという「激怒の器」にのみ、全宇宙の闇を注ぎ込んでいます。
『……聞こえるか……。お前を兵器扱いし、家族を瓦礫に沈めた世界だ……。怪獣だけではない、全てを平らげてしまえ……』
オーブリングの中心部で、不気味な瞳がこちらを覗いているように見えます。カイはもはや、自分の家族がどこにいるのか、自分がなぜ戦っているのかさえ曖昧になっていました。ただ、目の前にある「動くもの」を破壊することだけが、胸を焼き尽くす怒りを鎮める唯一の手段でした。
4. 特撮ファンたちの絶望
ウルトラマンを作ってきた円谷プロの社員たち、そしてバンダイの社員たちは、モニター越しにその惨状を見て泣き崩れていました。
「私たちが子供たちに伝えたかったのは、こんな力じゃない……」
「CSMは、大人が夢を懐かしむためのものだったはずだ。どうして、あんな殺戮の道具に……」
ネット上では、かつてオーブを応援していた子供たちが、画面の中の「黒いオーブ」を見て怯え、大切にしていたソフビや玩具をゴミ箱に捨て始めていました。「ウルトラマンは怖い」「ウルトラマンは悪魔だ」という認識が、世界中に蔓延していきました。
5. 終末の始まり
ロンドン、エッフェル塔、万里の長城。
各地で怪獣の死骸が山をなし、その頂でサンダーブレスターが天を仰いで咆哮を上げます。
しかし、そこに現れたのは、新たな怪獣ではありませんでした。
空が、ガラスが割れるようにひび割れました。
そこから溢れ出したのは、さらなる「空想の産物」たち。カイの怒りが、現実と空想の境界線を完全に破壊してしまったのです。
「ガァァァァァァァッ!!」
返り血を浴びたオーブリングを構え、カイは次なる獲物を探します。
その背後で、気絶から目覚めた弟がテレビ画面に向かって「お兄ちゃん、やめて……」と泣き叫んでいることも知らずに。