「お客さん目的地に到着しました。」
「ありがとうございます。いや~流石ウマ娘の人力車だねぇ。速さと快適さを両方成せる子はなかなかいないよ。それじゃ私は用事を済ませてくるまで自由にしてもらって構わないよ」
「ありがとうございます。」
私は十条あずさ。これは私を生んでくれた親から貰った名前でウマ娘としてトゥインクルレースを走っていた名前もあるけど、あれはトレセン学園にお客さんを運ぶとき以外にはなるべく名乗りたくない。
身長は165cm(耳の長さを含まず)で毛色は栗毛で流星は特になし。在学中はショートのはねっ毛だったけど今はポニーテールができるぐらいには長くしている。
左耳付近に鷲が南十字星をくわえたデザインのイラストの耳飾りをしている。まぁこれはレースに出る前から付けているお気に入りであるため今でも付けている。
私はかつて、トィンクルレースである程度は勝つことのできたウマ娘である。
OPは当然としてG3,G2は条件が揃えばかろうじて勝つことが出来たが、G1に至っては入着すら出来なかった。
私も勝つためにはいかような努力もしたし才能もあると自負していたが、やはりG1を勝つのは私以上に才能がある子や勤勉な天才、更に言うなら文字通り怪物がひしめいている。
私以上に才能がある子ならその倍努力すれば勝てたけど、やはり勤勉な天才や怪物にはどう努力しても勝てなかった。
その事実に打ちのめされ私はトレセンのアスリート科から最初の3年間を終えた後普通科に転身して普通に卒業した後は容姿の良さや人より数倍力があることもあって商社の秘書課から建設会社の作業員等と仕事に関しては引く手あまたではある。
だけど私は、容姿に特化した商社の秘書課のような華やかな仕事は好きじゃないし、土木作業でもよかったが、私と同じ境遇のウマ娘が多くいる人力車を営んでいる会社に就職した。
今いる会社には私同じようにG1こそ勝てなかったが善戦できた子も居れば日本ダービーはとれたがソレ以降奮わないウマ娘も少しいて内の社長夫人がその最たるところだ。
その社長夫人かつては、レースで走るときの名前は高みに挑む皇帝の名で走っていたようだ。
なんというか今日はトレセン学園に用があるお客さんを連れて来たけどまさか旧友に会うことになるとは思わなかった。
「あれ?もしかしてウィンちゃん?」
この人はライトハローといって私のクラスメイトだったウマ娘であるが彼女は私とは違い未勝利でトレセンを去ったが、いまはグランドライブを再興させた一躍時の人になった有名人である。
まぁ昔はハローちゃんが勝てない分私が勝つって躍起になっていた時もあったけど、それでも勝てないレースもあった。
「あ、ハローちゃん久しぶり。それと、今私は(グリフィンウィング)じゃなくて十条あずさの方で働いているから。」
「それでも私にとってはウィンちゃんだから。今日はここに仕事で?」
「うん、トレセン学園に私みたいな車婦ウマ娘の人力車で来たいっていうお客さんを乗せてね。しかも往復で。」
「それにして懐かしいですね。何年ぶりでしょうか?」
「ハローちゃんがトレセンを去ってから連絡していたけど、直に会うのは6~7年ぶりかな。」
「お互い大人になりましたね。」
「まぁね。」と短く返した。
「ウィンちゃんの格好って仕事着?」
私の格好はわかりやすい車婦の格好でうちの会社でウマ娘車婦共通の赤ベースで肩から腕袖までオレンジ線の入った法被にその中は当然黒で会社のネームがプリントされたTシャツ、今日は肌寒いので長袖。
下はスパッツと足袋といかにも車婦ウマ娘な格好である。
「そ、勝負服の生地と全く同じもの使っているから滅多な事がない限り破れない仕様になっているんだ。だから今の勝負服はこれかな」
久しぶりに旧友と再開してトレセン学園内を散策するためにOGではあるが、今はトレセン部外者なのでちゃんと警備員さんに進入許可書を記入して正門をぬけ、何気ない会話をしながらトレセン学園を歩いているといつの間にか練習コースに向かっていおり、そこでは私にとっては名も知らない後輩たちがあるものは坂路コースをダッシュしており、ある子は新規で設置された日本の芝ではないコースを併走しており
「あれ、あんな芝コースあったっけ?」
「ここ半年で新たに設置された欧州芝コースらしいよ。何でもあるダービーウマ娘とそのトレーナーさんが理事長に直に頼み込んで出来たらしいよ。」
「へー校内に欧州の芝が新規で用意されているなんて知らなかった。」
「グリフィンウィングさんが知らないのも当然ですね。最近は欧州G1に挑戦する子が増えましたから。」
そう聞こえたので声のしたほうに振り向くと緑のジャケットとタイトスカートの恰好をした女性がいた。
「あ、たづなさん。お久しぶりです。でもソッチの名前は校外で会った時は言わないでくださいよ。」
この人は駆川たづなさんといって理事長秘書をしている女性だ。噂では人のふりをしたウマ娘らしいけど、歴代の勝利記録にも似た容姿のウマ娘を見たことがない。
トレセン学内都市伝説にはたづなさんの帽子の中を覗こうとしたら異界に飛ばされるだとか記憶障害になったとかいろいろあるらしいが、正直ただモノではないのはわかる。
そもそもたづなさん私が入学していた時からも先代から理事長秘書やっていたからかなり年上だろうと思う。
「今日はお仕事でこちらに?」
「ええ、こちらまでお運びしたお客様がトレセン学園にご用が有ったので戻ってくるまでトレセン学園内は自由にしてよいと言われましたので。」
「また走りたくなりましたか?」
「御冗談を、私は競技で走ることに心折れた者ですので今更ですよ。まぁお客さんを運ぶために現役時よりはトレーニング量落ちてますけど走ることは棄てていません。」
「それは良かったです、では私はこれで。」
そういった後たづなさんはこの場を去った。
「それにしても欧州芝コースかぁ、私が現役の時は欧州芝コースを走るなんて誰も口にしなかったな。」
「仕方ないよ。あっちのコースって芝とダートの両方走れるような子や重馬場が得意な子でなきゃ対抗出来ないって。それより旦那さんとは仲良くやれているの?」
「こらこら(笑)、グランドライブ復刻が成功してその時に支えてくれたフリーだったトレーナーさんと婚前関係でうまくいっているからいいけど、それまでは仕事が恋人よってSNSで嘆いていたあんたがそんな事言えるようなったなんて恵まれているね。旦那とは相変わらずラブラブだよ。」
「私もウィンちゃんみたいな関係になれるかな?」
私がなれるよと言おうとしたら
「こーらぁー!!また侵入しましたね!!」
「わーおたいさ~ん。」
と校舎から不審者を追走しているたづなさんの声が聞こえてきた。
「ナニアレ?」
「さぁ私にもわからない」
「それにしてもあの人たづなさんの疾走をかわせるなんてヒトなのあれ?」
その後校内放送で私の呼び出しがあって私の車に戻った。