「さぁまもなく第4コーナーに差し掛かるところ、団子状態のまま全員が足をためているようです。」
私は中段を様子を伺いつつ内ラチに近いところで疾走している。
だけど今日は雨も振っている上に不良バ場なため、足がとられて滑りやすいので走り方に注意が必要になる。
今日の9Rで芝もかなりふまれて走るには分が悪い。
私はどちらかといえば不良バ場や重バ場方が調子よく走れる。このペースで走り抜ければ終盤にはだいたいの子が外に向かうから内側が思いっきり空いて一気に末脚を見せて今日のレースは私がもらった。
でもその油断があんなことになるとはあの時の私はそんなころ微塵も思っていなかった。
「ここだぁ!!」と最終コーナーをぬけて先団の子たちが外側にばらけて勝機を見出したその矢先私の左足に激痛が走った。
ピピピピピピピピピ
起床するためのアラームが鳴って目が覚めた。
「はぁー最悪。あの時の
そう言い聞かせた。
私は赤羽のぞみ。ウマ娘ではあるがこれはわたしが人として親からもらった名前でウマ娘としてトゥインクルレースに出るときはヒダノカストルという名前で走っていた。
身長は158cmで私の毛色はトゥインクルレース時代は頭髪も尾も綺麗な黒鹿毛だったのだけど引退してから灰色に近い毛色になったことで毛色は葦毛だという事がわかった。
耳飾りは右耳付近に白と黄色の二色リボンと同色の耳カバーをしている。
あとクラスのメンバーの中じゃかなり巨乳(B87)だったらしくクラスの子や同じ葦毛の後輩に羨望のまなざしを向けられることが多かった。
今考えるとよくあれだけデカイモノをぶら下げていても(当然今もぶら下がっている)走ると痛いや肩がこる等の事もなくすごせたなと思う。
戦績は2勝クラスまではいけたけどオープンにはあと一歩届かなかった。
OP昇格の掛かったレースで第4コーナーをぬけた後で左足に激痛が走り一気に減速し競争中止。
医者の診断で重度の骨折。日常生活するぐらいには回復はできるがトゥインクルレースで走り抜けるのは無理だと判断されて私はそれを聞いて2~3週間ほど悩んでトレーナーさんと契約解除を申請した。
といっても罵声を浴びせるようなひどいモノでなく悩みに悩んで言葉も慎重に選んで円満に終わるように言葉にした。
トレーナーさんの示してくれたトレーニング自体は私に会っていてメキメキ成長できる実感もあっただけど、私の足が思いのほか脆かったらしく、トレーナーさんですら気づかないほど負担が掛かっていたようだ。
引退したことをトレーナーさんのせいにするほど荒んではいなかったがやはり私自身は割り切ったつもりだったけど不定期で悪夢を見るほど割り切れてはいなかった。
その後は骨がちゃんとくっつくまではおとなしくしてリハビリの許可が出たら必死に努力して走らないウマ娘並には一般生活ができるほど回復はしたけど、やはり走れないのは虚しいのである程度は力をセーブして走ったりはしている。
やれやれ、今日仕事なのにあんな顔のまま仕事なんて出来ないから気晴らしにジョギングしてくるかと顔を洗ってランニング出来る格好に着替えて私は一度家を出てランニングに向かった。
気晴らしに往復15km程ランニングで走ってきたその帰りに朝食を調達した後に家でなく近所の公園で朝食をたべていた。
うーむランニングと美味しい朝食を食べて気はまぎれたけどそれでも仕事は行かなければ。
私は朝食で出たゴミを最寄りにダストボックスがなかったのでそれを家に持って帰り家のゴミ箱に棄てて、シャワーを浴びて出てきた後動きやすいラフな格好になって軽めにストレッチをして涼んだ後に仕事にいける様にサイクリングウェアに着替えた後私は必需品とサイクリングヘルメットをもって家を出て日の仕事に向かう為に自転車(ウマ娘の脚力に耐えられるかなり高いロードバイク)にのって向かうことにした。
東京ドーム
今日の仕事する場所であり、私は観客席でビール売り子をしている。
といっても大学生が講義やサークルの合間を縫ってのバイトではない。
(自前の足で走るのが駄目ならロードバイクで走ろう)と入院中に昔ジュニアクラブの恩師に言われて、それに興味を持ちロードバイクのレースや競輪など競技自転車で走り抜けるためにに競輪学校の入学費や移動費を稼ぐためにトレセンを去った後定職には付かずに暫定フリーアルバイターである。
私はあくまでビールの売り子は仕事の一つで他にも新聞配達をはじめ、ウーマーイーツ等ウマ娘として生まれた体力と走力をフルに使って出来る仕事は何でもしている。
もちろん法に触れるような仕事はしていない。
そして仕事をしていない時はロードバイクに必要な筋力付けをしている。
「おはようございます。」
ビール売り子の子達が集まる控室に行くとトレセンの後輩がいた。
といっても学内では面識はなかったけどバイト先で頻繁に会う確率が高い子である。
「おはようございますなの!カストルちゃん。」
「おはよう、アイネスちゃん。また同じ現場になったね。」
彼女はアイネスフウジンといい一応私の後輩にはなるけど私がトレセンを去った後に一般高校から編入してきたウマ娘なので、学内で面識がないのはそういった理由である。
比較的美人が多いウマ娘ではあるがそばかすのある美少女であり私とも引けを取らない程スタイルもいい
因みに格好はトレセン制服ではなく、ウマミミとサイドテールが出せる帽子にオレンジのショートパーカーに黒インナーシャツにジャージパンツとアクティブに動ける格好である。
売り子のユニフォームはまだ着ていない。どうやらアイネスちゃんも数分前に到着したようだ。
彼女がバイト戦士をしている理由は実家に仕送するという理由らしい。どうやら親の稼ぎだけでは母の病院代だけでかつかつなのでそれ以外にかかる資金の補いのためである。
アイネスちゃんは今年メイクデビューして良いトレーナーさんに巡り合えたようで、バイトしながらもトレーニング出来るかなり容量の良いやり方が出来て且つ理解のあるトレーナーさんである。
ただ、そのアイネスちゃんのトレーナーになった人はトレセンに入ってすぐにウマ娘と担当トレーナーの喧嘩別れに近い契約解除の場面に出くわして意気消沈していたところをアイネスちゃんと会って紆余曲折あってトレーナー契約を結んだようだ。
私は続けるかあきらめるか悩んで契約解除をトレーナーさんを傷つけないように言葉を丁寧に選んだけど、やっぱトレーナーに当たり散らしたくなる気持ちもわかる。
「はいなの。今日もよろしくなの。」
「そういえばアイネスちゃん、まだ言ってなかったわね。メイクデビューおめでとう。」
「ありがとうなの。」
私とアイネスちゃんは頻繁に現場で遭遇することから仕事始める前にお互いの身の上話等で意気投合して今ではすっかり中のいいウマ娘である。
私はアイネスちゃんがバイトし続ける理由は知っているし、逆に彼女も私がバイトしている理由も引退した理由も話した。
「まぁアイネスちゃんのトレーナーさんの話を聞いている限り貴方に無茶なことはさせないのは聞いていてわかる。けどね、老婆心から言わせてもらうけど足の怪我だけは注意してね。」
「あはは、まるで親戚のおばさんみたい、でも大丈夫なの。ウチのトレーナーは優しいから、少し頼りないけど。」
まぁ今の所は大丈夫そうだ。
私たちは売り子のユニフォームに着替えた後始業前のミーティングに集まり今日は真夏のデーゲームで所謂伝統の一戦でありお客さんの入りは相当に期待できることもあり、いつもより売り子の子たちが3倍近くいる。
ミーテングも終わりそれぞれの担当する場所等が割り振られお客様が入場してくる時間になった。
やはり伝統の一戦だけありお客さんの入りはかなり多い。
スターティングメンバーが発表される前にはビールだけでなくスポーツ飲料もテナント店の飲食物も飛ぶように売れていくし私たちの背負っているビールサーバーも中身がemptyになるなんてしょっちゅうだ。ちなみに一般のヒトと私たちウマ娘の抱えいるビールサーバーでは2倍近く容量が多いのににもかかわらずそれでも空になりやすい。
そんな中私がティガーズ側の応援席に売り子として入ったら2人のウマ娘が目に入った。
ウマ娘が野球観戦なんてそこまでマイナーな趣味じゃないのでそんなに気にしなかったが、目に入った理由は2人とも球場に来るには場違いともいえる高そうな服を着ていた。
一人は鹿毛のショートのウマ娘で、もう一人は同じ葦毛のウマ娘であるが耳先だけ黒くティガーズウマ耳用の穴を空けたファンキャップをかぶり他のファン同様に
「「かっとばせー!!!ユ・タ・カ!!」」
と声高々に応援していた。
「あぁそれ、ライアンちゃんとマックイーンちゃんなの」
と丁度私とアイネスちゃんの休憩時間がかぶった時にその話をしたらアイネスはそう答えた。
どうやら話を聞いているとライアンさんとは寮で同室で同期。マックイーンさんとは同期らしい。
「いいなぁ私も同期の同室の友人でライバル欲しかったな~友人はアイネスちゃん含め結構いるんだけどね。」
「アハハ、そればっかりは仕方ないの。」