なんかジェイソンの見た目と能力持って転生したのでハッピーエンド目指して頑張ります   作:YONATSU

13 / 14
皆さんお久しぶりです。
まずは長らく投稿できてなくて申し訳ございません。
モチベーションやら相変わらず学業に追われて中々書けていませんでした。
さて今回で過去編は終了です。なんか2万文字言ってる気がしますが、まあ気のせいでしょう。
ではどうぞ!

追記
終盤に少し文を追加しました。


番外編4 守ること、守られること

翌朝 アビドス生徒会室

 

ここはアビドス生徒会が使用している教室。そこには目を覚ましたユメとホシノがおり、誰かを待っている様子だ。おそらくジェイソンだろう。

というのも昨晩寝る前にホシノとジェイソンの間に一悶着あり、現在ジェイソンは出掛けているようである。

 

「……。(チラ)」

 

「ホシノちゃん、心配なら探しに行く?」

 

ホシノは盛りに時計の時間を確認しており、何かソワソワした雰囲気だ。

 

「心配なんかしてません!あれだけ大丈夫と豪語してたんです。ただ早く帰って来ないと朝食が冷めてしまうのでそれを気にしてただけです。」

 

「ふふ、やっぱりホシノちゃんは優しいね!」

 

「やめて下さい、私は朝食に早くあり着きたいだけです。」

 

彼女達が囲む会議用の机の上には3人分の朝食が置かれていた。少し表面の焦げた食パンに焼かれたベーコンと目玉焼き、レタスやミニトマトの入ったサラダとオーソドックスな洋風の朝食である。

時刻は8時半を指しておりちょうど腹の空く時間帯だ。

そうこうしていると生徒会室の扉が開かれた。

 

「あっ!ジェイソンさんおかえりなさい!」

 

「おかえりです。問題なかったですか?」

 

そこに立っていたのはもちろんジェイソンである。ジェイソンはサムズアップで問題ないことを示す。

 

「いきなり街の夜間警備を代わると言われた時はびっくりしましたが、昨日は平和だったようで何よりです。」

 

『昨日も言ったけど若いうちはしっかり寝ときな、本当に。俺は寝る必要ないからいいけど。』

 

「半信半疑でしたがその様子を見るに本当に睡眠が必要ないみたいですね。ほんと、羨ましいですよ。睡眠欲なんてあるだけ無駄ですし。」

 

そう、ジェイソンは今の今まで街の夜間巡回をしていたのだが。そうなった経緯は昨晩まで遡る。

 

==========

昨晩 保健室

 

食事を摂った一行は寝る為に保健室前に来た。

 

「そういえば親子丼に夢中で忘れてたけどジェイソンさんは食べたの?」

 

『あー、実は先にいただいてたんよね。ごめんね。』

 

もちろん嘘である。二人がたくさん食べると予想してたジェイソンは特に作ったものに口をつけていなかった。というかこの人はマスクを外さないと食べれないしそもそも食事の必要がないのでモーマンタイである。

 

「大丈夫ですよ!食べてたならよかったです!」

 

相変わらず太陽の様な笑顔で言葉を返すユメ。これが作り笑いとかではなく素なのだからホントに強い子だ。

そして扉に手をかけ、扉を開けて中に入る。しかし、ホシノだけは部屋に入って来ない。

 

「どうしたのホシノちゃん?寝ないの?」

 

「いえ、そろそろパトロールを再開しないといけないので。ここ最近は運良く落ち着きがありましたが、いつどこで誰が暴れるかわからないのでパトロールに行こうかと。」

 

アビドスの自治を担っている彼女達だが同時に治安維持を行なっているのも彼女達だ。しかし、人数に対して広大なアビドスを2人実質1人で治安維持するのは限界がある。そのため至る所で強盗、窃盗、恐喝などなど様々な悪事が行われやすい場所なのだ。

それでも放っておくわけにはいかないためホシノは週4、1日おきのサイクルで夜間パトロールを行なっている。

ここ2週間ほどユメの捜索と寝たきりで碌にパトロールできていなかったため、もう時期またヘルメット団やスケバンが騒がしくし始める頃だと予想したホシノ。

 

「うーん……まだまだ寝た方がいいと思うよ?ホシノちゃんの隈が濃くて私心配だよぉ。」

 

そう、多少マシになったとはいえ、ホシノの目の下にはまだ濃い隈が残っている。2週間ほぼ寝ずに歩き回っていたのだ、無理はない。

 

「このくらいなんてことないですよ。それよりさっさと行かないと何が起きるかわかりませんから。」

 

そう言いホシノは正面玄関に向けて歩き出そうとする。しかし、それを良しとしない者がいた。

 

「(ポン)!? なんですかジェイソンさん?」

 

ジェイソンがホシノの肩に手を置き彼女を止める。

 

『よかったら俺が代わりにして来ましょうかい?』

 

「いやいや、流石にこれ以上好意に甘えるわけにはいきません!それにここは私達が自治している場所です。他人に頼ってばかりではダメなんですよ。」

 

ジェイソンが代わりを申し出るがホシノはそれを拒否する。自分達の居場所は自分達で護らなければならない、だからこれ以上の介入はしないでほしいと目が訴えかけて来ている。

 

「それにあなたの方こそ何日も寝ずに私達のことを診ていてくれたんですから、しばらく休んでください。場所は貸しますから。良いですよね、ユメ先輩。」

 

「もちろん!ジェイソンさんにはお世話になりっぱなしだったから足りないくらいだよ!」

 

『ご厚意は嬉しいけど実は俺、寝なくてもいい体質なんだよね。というか若いうちは寝れる時に寝といた方がいいよ、ほんまに。』

 

「いや聞いたことありませんよ、寝なくても生きていける人なんて。下手な嘘なんて吐かなくていいですから大人しく休んでいて下さい!」

 

『嘘じゃないんだけどなぁ……。それに寝不足で倒れちゃったら本末転倒だと思うし体調を万全にするまで休むべきだよ。』

 

「そうだよ!ホシノちゃんはしっかり休むべきだよ!私が代わりに行ってくるから!」

 

「不良すら碌に倒せない人は黙っといて下さい!」

 

「ひぃん……。」

 

「はあ、口論している時間が無駄です。……分かりました。今回限りはお任せします。ですが明日からは私が行きます。それでいいですか?」

 

『まあ確かにこれ以上は延長線上になりそうだし、了解。えっと、ルートって決まってたりする?』

 

どちらも譲らないまま話が終わりそうになかった為、ホシノが提案する。ジェイソンも同意したことでこの話はとりあえず落ちがついた様だ。

 

「そうですね……今日はこのルートを回ろうと思ってました。」

 

そう言い、ホシノはジェイソンにA4サイズの紙を手渡す。そこには地図と、ルートが赤線で引かれていた。

 

『あざます!じゃ、行って来ます。ちゃんと寝て下さいよ?いい夜を。』

 

「言われなくても分かってます!さっさと行って来て下さい!」

 

「ありがとう、ジェイソンさん!気をつけてね!」

 

こうしてジェイソンは夜のアビドスに出掛けて行った。

 

==========

時は戻って

 

教室に入ったジェイソンはユメに促され机に着いた。

『お!朝食作ってくれたんですか?ありがとうございます。あと、こんな体質になってるから言うけど、睡眠はしといた方がいいよ。頭の整理とかできるし、何より気分が良くなるからね。』

 

「え?じゃあジェイソンさんは生まれつきそう言う体質だった訳じゃないの?」

 

『そうだよー。この体質になったのは最近だからね。まあ、ちょっと訳ありではあるけど。』

 

「そういえば、私達はジェイソンさんの事について何も聞いていませんでしたね。折角ですしいくつか質問してもいいですか?」

 

『内容によるね。俺は気にしてないけど正直、聞いてて気分の良い話じゃないから。』

 

ホシノは少し身構えてしまった。薄々勘づいていたがやはりジェイソンという人間はかなり特殊な出自をしている様だ。

 

「私達は特に気にしません。ですよね、ユメ先輩。」

 

「うん、大丈夫だよ!私達の悩みをいっぱい聞いてもらったんだから私達もジェイソンさんのお話、聴きたいな!」

 

『了解。でも気分が悪くなったら言ってね。』

 

二人とも軽く頷く。

 

「では、私から。ジェイソンさんのその能力はどの様な経緯で身についたのですか?」

 

一瞬ジェイソンの肩が震えた様な気がする。それもそうだ。この質問は今のジェイソンの本質を問うものであると同時に凄惨な過去を語らざる得ない質問だからだ。

 

『いきなりぶっ込んでくるなぁ。あと、俺は呼び捨てでも構わないからね。』

 

「やはりこれだけはどうしても聞いておきたかったので。呼び捨てに関しては……慣れないので保留します。あと私達も呼び捨てでも構いません。」

 

『了解。じゃあまず前提として俺は外の世界の人間だった。無論銃弾一発で死ぬし、食事とか睡眠を取らないと体調崩すし瞬間移動なんてできない。ただ、一つだけ違うものがあった。その場の環境に適応できる体質。所謂特異体質ってやつだ。』

 

「特異体質……。本などで見たことはありますが本当に存在するんですね。」

 

『そ、実は存在してるんだよ。まあ日常だと温度変化に適応して年中半袖で過ごしたり、怪我に適応してすぐ治るようになったりとか些細なものだったんだ。』

 

「その時点で大分人の域から逸脱してる気がしますけど……。ですがそれでも瞬間移動や再生などの能力の理由が付きません。……何があったんですか?」

 

ホシノはかなり感が鋭い。彼女は既に自分の中で解を得ている。正直的中していて欲しくない解が。

 

『ここからの話は自己責任で頼むよ。辛くなったら言ってちょうだい。俺は外の世界ではごく一般的な独り身の会社員だった。

ある日、出社する為にいつもの時間に毎日使ってる満員電車に乗ったんだ。』

 

ここまではこちらでもよく見る光景だ。出社するための会社員や登校する為に学生がぎゅうぎゅう詰めになって電車に乗る、毎日遠目に見ている光景だ。

しかし話し方から察するにその日は何かイレギュラーが起きたのだろう。そう思いつつホシノは引き続き話に耳を傾ける。

 

『丁度駅と会社の間にある海岸沿いを走ってる時だったかな、いきなり電車が爆発したんだ。俺が乗ってた車両を含む全車両がね。』

 

次いで出て来た発言は真剣な顔で聞いていたホシノ達の顔を一瞬で驚愕と恐怖に染めた。

銃弾一発で最悪死に至る外の世界の人間が密室で絶大な威力の衝撃波と高温の熱を喰らった末路は想像に難くない。当然ジェイソンも例外ではないだろう。

 

『後から知ったことだけど爆破テロに偶然会ってしまってようでね。大勢の人が死んだ。でも俺は運良く生き残った。ドア近くにいたのが功を奏して正面から爆破を喰らった後そのまま車外に放り出されて海に落ちたんだ。そのおかげで燃えてた服はすぐ消火できたよ。でも、その時にはもう手足は動かないし、左目も焼け爛れて見えないし痛みも感じない文字通り瀕死だった。あとはそのまま救助が来るまで浮いてたみたい。』

 

一度話を止めて、二人の様子を確認する。気分が悪そうならここで辞めにしておこうしたが、二人はと言えば見たまんま絶句していた。

それはそうだ。目の前の男は想像していた惨劇のさらに上をいく惨劇に遭ったと聞かされたのだから。運が悪かったなどと言えるわけがない。それでも何か反応しなければとホシノが口を開く。

 

「み、みたいということはそこから記憶はないんですか?」

 

ほぼ無意識に出た言葉。しかしそれは話の続きを促すには十分な反応である。

 

『気絶してたからね。次に記憶があるのは病院のベッドの上だった。目を開けたら、と言っても右目しか開けられなかったけどね。首も動かせないから目で自分の様子を確認してみたんだけど、まあ全身包帯でグルグル巻きにされてることと少し視線が高くなったような感じがしたんだ。これが能力を得た大まかな経緯かな。』

 

そう話を締めくくるジェイソン。

ホシノの予感は一部的中していた。普通に生きていたら再生能力や瞬間移動など必要ない。となれば、身体に大きな変化を及ぼす何かがあったからそうなったと考えるのが自然だった。

今でこそ五体満足で動けているジェイソンだが、当時どれだけの苦労をしたのか想像すら出来ない。最悪今までの生活なんて出来なかっただろう。

何を言うべきか分からない。軽々しく慰めの言葉など吐けるわけがない。

ホシノ達は口を開くことが出来なかった。

 

ポムッ

 

「「!?」」

 

俯きなんとか言葉を選ぼうとする二人の頭に大きな手が置かれた。顔を上げればジェイソンが机の対面から手を伸ばして来ていた。いつもならすぐ払いのけるその行為も今はする気にならなかった。何故かは分からない。だが、なんだか少しだけ安心出来る気がした。

 

"ほんと、この身体は不便だな、伝えたいことをすぐ伝えられないのは……。というかとっさに頭の上に手置いちゃったけど大丈夫よね?……。まあこれに関しては俺の*1運がなかったとしか言えないからな。だからこそこれはこの子たちが気に病むことじゃない。”

 

『大丈夫。これは俺の問題だから君たちが気に病むことはないよ。それよりもごめんね、こんな気分の悪くなるような話しちゃって。』

 

それでも伝えなければならないと、二人の頭から手を放しペンを走らせる。

 

「う、ううん……。気分の悪くなる話だなんてそんな……そんなこと言わないでください。私にはジェイソンさんの辛さを分かることはできないけど……それでもジェイソンさんが私たちにしてくれたように力になりたいんです。ね、ホシノちゃん!」

 

「!? は、はい……そうです、私も力に…なりたいです。」

 

若干自虐的になっているジェイソンの手を取り何とか励まそうとするユメ。ホシノも少し頬を赤らめつつ同意する。

そんな二人の励ましを受けたジェイソンは

 

『ありがとう、二人とも。おかげで気持ちが楽になった気がするよ。』

 

なでなで

 

「わっ!」

 

「ちょ、またですか!」

 

そう書かれたノートを掲げた後再び二人を撫でまわしたのであった。

 

しばらくして……

 

「よし、ひと段落下っぽいしご飯食べよ~!」

 

「賛成です。はぁ、まったく一体いつまで撫でまわされるのかと思いましたよ。」

 

「え?でもホシノちゃんとても心地よさそうじゃなかった?」

 

「一体どこが心地よさそうに見えたんですか!私はただジェイソンさん満足するまで撫でさせてただけです!まあ嫌ではなかったですけど……

 

”いやはや申し訳ないね、俺のわがままに付き合わせてしまって。それにしても、やっぱ高純度のツンデレは最高だな!これは癌にも効くわ。さて、食べますか。……あ”

 

「ジェイソンさんどうしたの?もしかして苦手なものあった?それともトースト焦げてた?」

 

席に着いた一同。ユメとホシノは各々手を合わせた後それぞれ食べたいものを口に放り込んでいたがジェイソンは目の前の食事を見つめたまま固まっていた。そんなジェイソンを見て大半の朝食作りを担当した*2ユメは何か不備があったのではないかとおどおどするがどうやら原因は別にあるらしい。

 

『いや……、飯は問題ないんだよね。問題は俺が食べるために仮面を外さないといけないことなの……。』

 

「仮面を外すだけじゃないですか、それに何の問題g……」

 

そこまで言ってホシノは言葉を止める。何故ジェイソンが仮面を被っているのか、先ほどの話から推察するのは簡単だ。全身火傷でひん死の状態になり左目も潰れた状態だった彼が、仮に退院できたとしても完治する確率はかなり低いだろう。すなわち現在の彼の顔は……そういう状態(・・・・・・)なのだろう。

 

「すみません……。配慮に欠けてました。」

 

『いやいやいや、気にしてないから問題ないよ!問題なのは、そうだね……端的に言えば君たちが食事できなくなるかもしれないことだね。作ってもらって申し訳ないけど俺は食事は遠慮しておくことにするよ。食事も必要ないからね。』

 

そう書かれたノートを見せ席を立とうとするジェイソン。しかしユメが机越しにその腕を掴んだことでそれは阻まれる。

 

「わ、私たちは大丈夫です。だから……そのジェイソンさんが嫌じゃなければ食べてほしいです!それにさっきも言ったけどジェイソンさんの力になりたいんです。ため込むくらいなら私たちに吐き出してください。」

 

ユメは言葉を詰まらせつつも、真っすぐな目でジェイソンを見つめながら自分達に(・・・・)胸の内を吐露してほしいと訴えかけてくる、かつて彼女達が彼にそうしたように。しかしジェイソンの手は動かない。代わりに顔はホシノの方を向いていた。

 

「じれったいですね!大丈夫とさっきから言ってるんですからさっさと話してください!」

 

”俺は……気にしてないわけではないけど、俺は前の体の主じゃない。俺がこれ以上を語るのはおこがましい。……でも、ここまで言われるともう、引けないよな。すまん前の体の主、あんたの記憶、語らせてもらうぜ。ちょっと俺の記憶も混ぜるけどほんと申し訳ないとは思ってるから……。”

 

『……了解。でも、本当にいいの?自分で言うのもなんだけど最悪肉が食えなくなると思うよ……。』

 

「あーもう!大丈夫って言ってるじゃないですか!私たちの心配はいいです。それよりあなたこそ大丈夫なんですか?」

 

『俺は気にしないよ。……じゃあ、外すね。』

 

ジェイソンは席に着きなおし、後頭部に手を回す。

カチッという音とともに後頭部のベルトのロックが外れる。

ヌチャァという音とともに仮面がジェイソンの顔を離れる。

 

「「!?」」

 

ホシノはかろうじてポーカーフェイスを保つが、ユメは思わず顔に出てしまう。しかしそれは恐怖や嫌悪感からくる表情ではなく、哀れみもしくは悲しみからくる表情だった。

そして顕わになったジェイソンの顔は、全面が火傷跡で覆われ、左目の皮膚は爛れて完全に目を塞いでいる。右目も瞼が吹き飛び眼球がほぼ完全な状態で見えており、口周りも衝撃で吹き飛んだのか右半面は歯が丸出しになって傷はふさがっているが筋肉が一部丸見えになっている。

肉が食えなくなるといわれて正直失礼だが納得してしまった。

 

その反応を確認したジェイソンはすぐさまマスクを着けなおしノートを手に取る。

 

『ごめん大丈夫?』

 

「……。いえ……大丈夫……です。その、覚悟はしてましたがやはり……その……」

 

『ひどい顔だったでしょ?気にしなくていいよ。それが正しい反応だから。』

 

「違います!」

 

自分の顔を卑下するジェイソンをユメは一喝して止める。

 

「あ……ごめんなさい。大きな声を出すつもりはなかったんです。でもそんなに自分を卑下しないでください。まだジェイソンさんのこと、あんまり知っているわけではないですが、それでもたくさん苦労してきたことは分かります!だから、困ったこと、辛いことがあったら言ってください!私達はジェイソンさんの助けになりたいんです!」

 

『確かに苦労はした。……でも、悪いことばかりではなかった。……。これは独り言なんだけどね、入院中は生きているのが奇跡だのテロ事件を生き残った豪運の持ち主だのメディアでさんざん持ち上げられたんだ。でもね、社会ってのは残酷なものだ。これ以上直る見込みがないと言われ、リハビリも終えた後、俺は社会に復帰した。まあ、幸い手足は動いたから仕事に支障はなかったんだけどね。でも周りからの目は冷たいものだった。こんな見た目だから当たり前と言えば当たり前だけど、嫌悪的な視線を向けられたり、近づくなと言われたり、ひどいときは化け物とさえ言われた。上司からは皆から苦情が来てうるさいからと辞表を渡され職を失った。誰も味方はいなかった。両親も他界していて兄弟もいない俺は文字通り孤独だった。俺は、そんな生活に耐えられなかった。顔を隠すために捨てられていたこの仮面を拾った。その後は、記憶がおぼろげだがいろんなところを彷徨い続けた。この鉈も正直何時拾ったものかは分からん。町の裏路地を歩き回り山を越え海を渡りその末にたどり着いたのがここ(キヴォトス)だったんだよ。』

 

”ここまでが前の体の主の記憶。俺の記憶じゃないが俺の記憶でもある。わりぃ、やっぱつれーよ、これ。いやマジ思い出したらメンタルボロボロになりそう。ほんま報われねえな……。やっぱ人間って残酷なんだな……。精神が死ぬのも納得だな……。改めてご冥福をお祈りします。そんでこっからは俺の番か。曇らせっぱなしの話は大っ嫌いだからな、流れ変えていくぜ!”

 

ホシノたちに説明するために改めて凄惨な過去*3を思い出す。それはあまりにも救われない記憶(物語)。人間の残酷さを示すアーカイブ。

表情筋も死んでいるのか表情は全く変わらないがどこか辛そうに見える。

ホシノとユメは俯きただ話を聞くことしかできない。

 

『でもね、そんな限界の状態で生きる目的も見失った俺にも、ようやく幸運の女神がほほ笑んだようだった。』

 

二人は不思議そうな顔をしていた。

 

『砂漠を彷徨っているとき、ふと倒れている少女を見つけた。ほぼ無意識に安否を確認し、生きてることが分かった時俺はひどく安心した。その時俺の中で一つの目標、生きる指針が出来た。絶対にこの少女を生きて返すと。そこからその少女とその後輩が通う学校の問題や現状を聞いた。』

 

「それって……」

 

『そう、君達2人のことだよ。』

 

しかし二人は顔を見合わせ首をかしげる。一体なぜジェイソンは自分たちと会ったことを幸運と言ったのか。

 

「私達はまだあなたに何もできていません。なのになぜ……」

 

『確か、俺の助けになりたいと言っていたね。それならもう十分助けになってるよ。例え無意識であっても君たちは俺に生きる目的を与えてくれた。大人に、世界の理不尽に今なお立ち向かう君たちには俺のように絶望してほしくない。俺は君たちの力になりたいと思ったんだ。感謝してる。俺に、生きる希望を与えてくれて。』

 

”これは俺の本心だ。俺だって最初は辛かった。目を覚ましたらいきなり真っ黒い記憶が流れ込んできたんだぜ?誰だって混乱するし辛くなるよこれは。さらにブルアカの世界だと判明した時もどうすればいいのか分からなかった。でもユメに出会えて、ホシノに出会えて俺は目標を作ることができた。アビドスを、いやこの世界(Blue Archive)を俺の知る未来よりも良いものにすること。だから彼女たちには心から感謝してるんだ。”

 

「……。ふふ、本当に変な大人です。……頭を上げてください。むしろそれは私達がするべきことです。」

 

話を終えたジェイソンは二人に向けて頭を下げる。それを見たホシノは静かに笑い、ジェイソンに頭を上げるように促す。

 

「私も感謝しています。あなたがユメ先輩を助けてくれたこと、たくさん話を聞いてくれたこと、私たちは頑張っていると言ってくれたこと……。数えたらキリがありません。」

 

そこに普段から気を張り、悲観的で怒りっぽい少女の面影はない。ホシノの心の大きく頑丈な壁は大きな門へと姿を変え、開いた。彼女はジェイソンという人間を受け入れた。

 

「だから、その……ありがとうございます。」

 

「私も!何回言っても足りないけど、ありがとうございます!」

 

そういい二人は頭を下げる。ジェイソンは改めて誓う。この子たちを、これから入ってくるであろう彼女の後輩たちを決して不幸にはさせないと。

 

「それにしてもジェイソンさんは運がいいよ!ホシノちゃんが微笑んでるところを見れることは滅多にないからね!」

 

「な!?急に変なこと言わないでくださいユメ先輩!っていうか滅多に見れないってことは……」

 

「えへへー。ホシノちゃんが猫ちゃんをなでてるところをたまたま見ちゃってね!えーと、これこれ!かわいいでしょ!」

 

そう言いユメは己のスマホを高らかに掲げた。そこには駐輪場と思わしき場所で日向ぼっこをする猫の隣で腰を下ろし優しく微笑みながら猫をなでるホシノの姿が納めてあった。てえてえ(浄化)*4

「んな!?今すぐ消してくださいユメ先輩!」

 

「えー、こんなにかわいいのに消すなんてもったいないよ!」

 

『おー、いい写真だね〜。』

 

「ちょ!?ジェイソンさんまで!~~~!二人とも知りません!」

 

この後拗ねたホシノを慰めるためにまた一波乱起きることになるのであった。その時のジェイソンの口角は心なしか少し上がっているように見えた。*5

 

==========

5日後 アビドス生徒会室

 

『戻らましたゾイ。』

 

「あっ!ジェイソンさんおかえりなさい!」

 

「戻りましたか。依頼はどうでしたか、ってこの時間で帰ってくるあたり聞くまでもないですね。」

 

『うん、依頼は大成功!勉強の方は順調?』

 

「ええ、おかげさまで。それにしても驚きました。いきなり利息の支払いを変わると言われたときは。」

 

『当たり前じゃないの!学生の本分は勉強なんだから。借金はおろか利息の支払いのためにそこらをおろそかにしているなら変わるのが俺の役割ってもんでしょ。年中無休で不眠不休で食事も必要ない奴は働き手に持って来いだよ。にしてもホシノのことだからもっと渋ると思ってたんだけど。』

 

「まあ普通なら断りますよ。ですが新しい生き甲斐ができたと言われてそれを断るほど私は無慈悲ではありません。それにちょっとだけ信じてみたいと思ったんです。あなたの好意を。」

 

『そうかい……ありがとね、わがままに付き合わせちゃったみたいで。』

 

「大丈夫だよ!あ、そういえばこの前作ってたあれはどうだったの?」

 

『この子のこと?我ながら優秀で助かってるよ。』

 

そう言い掲げられた端末には一つのアイコンが映し出されていた。黒を基調としたひし形でその外枠を二重の白線で囲いひし形の中心には控え目ながらも存在感を放つRがあった。

 

「ああ、丁度同じ日に思い立ったが吉日と小一時間で作り上げた傭兵支援システムとそのメインOSを司るAIでしたっけ。確か名前は……それぞれレイヴンとエアでしたか。」

 

「うん!確かそうだったと思うよ!それにしてもジェイソンさんすごいね!私ちょっと作ってるとこ見てみたけど全然分からなかったもん!」

 

”いやはや、前の体の主に感謝やでほんと。というのも彼の前職がなんとプログラマー!それもかなり偉いとこの研究者でAI関連に長けてる人だったようだ。ただこの世界、地球とは比べ物にならないくらい技術が進んでてその手の人ならAIくらいならパパっと作れちゃうみたい。あ、ちなみに名前に関しては傭兵でパッと思う浮かんだのがこの世界と親和性があるでおなじみのAC、その中でも一番知ってるⅥからとってきたぞい。ちなみにワイは未プレイでネタだけ知ってる人っす。*6

 

『意外と難しくないんだな、これが。今度やってみる?』

 

「うーん、ジェイソンさんの時間を奪うわけにもいかないし……、でも……。」

 

『時間のなら作りたいときに作れるから。遠慮しなくていいよ。』

 

「あはは、ジェイソンさんには敵わないなぁ。分かった!今度お願い!」

 

「いやそれでもあの短時間でこれを作りますか……。依頼の選定とそれを元にスケジュール管理、しかも常時ネットを監視してるから効率よく報酬稼ぎができるシステム。そこら中の傭兵が喉から手が出るほど欲しがりそうな代物ですね。」

 

『でしょうね。まあ、この子をばら撒くつもりは毛頭ない訳だけど。さて、ここ5日で結構大物な依頼を受けたからかなり稼げたよ。一応、君達が作ってくれた口座に入ってると思うから確認してちょうだい。』

 

「了解です。」

 

ホシノが自分の端末を操作して、数日前に新しく作った銀行口座を確認すると、ピシッと固まる。

 

「ホシノちゃん大丈夫!?どうかしたの?」

 

「い、いえ……。問題は無いんですけど……これ本当に貴方だけで稼いだんですか?」

 

そう言いながらホシノが自分とユメの方に端末を見せてくる。いくつかの入金記録がされており、その一番下の合計金額にはキッチリ427万の数字が並んでいた。

 

「私の目がおかしくなった訳では無いですよね?私の目には427万という数字が見えてるのですが……。」

 

『何もおかしくは無いよ。その金額は俺の手で稼いだ金だから。全て入金されているようで良かったよ。』

 

「ていうかすごい量の入金記録だね……。何個あるのかな?」

 

なんのことはない、ざっと30前後の入金記録が書き連ねてある。いや、結構おかしいかもしれない。

 

「私でも1日3つ依頼を受けるだけでも精一杯なんですけどなんですか、一日に平均6つの依頼を受けるって!貴方人間……かは怪しいですけどそれでも限度があるでしょう!」

 

『ははは!これが大人の力ってやつだよ!』

 

「やっぱり大人ってすごいんだね!」

 

「なんで間に受けてるんですか。この人が規格外なだけです。それにしてもたった5日で利息の8割以上ですか……。…私にもそれくらい出来る力があれば良かったです……。」

 

『人間ってのは得意不得意があるからね。俺はたまたまこの手の仕事に能力が合致してうまく行っているだけに過ぎないよ。ホシノにはホシノの得意なことがあるはずだからね。つまり何が言いたいかと言えば、人は一人じゃ何も出来ないということ。だから適材適所で頑張っていこうじゃないの。』

 

ホシノは考える。自分の得意なこと。真っ先に思いつくのは荒事関係。というよりもそれ以外思いつかない。しかし、荒事関係も総合的に考えるとジェイソンに劣る。

 

”私にできること……。荒事も家事も要領の良さも全部ユメ先輩やジェイソンさんに劣っている。私はこの輪において存在意義はあるんでしょうか……。”

 

考えれば考えるほど自分が何も持ち得ていないのではないかと自己嫌悪に陥っていくホシノ。ユメに自分を受け入れてあげてほしいと言われたが、人間、長く染みついた癖というのはそうそう抜けるものではない。

 

”いけません。ユメ先輩と約束したんです。こんな自分でも受け入れると。……あれはーーー”

 

気を紛らわせるために窓の方を向くとそこには便箋が挟まっていた。ユメとジェイソンにはカーテンで見えない絶妙な位置に黒を基調とした白いひび割れのような模様(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)の入った便箋があった。

 

==========

その日の夜

 

すっかりと夜も更けたアビドス高校の一部屋*7で俺は窓から外を眺めていた。

 

”今日も今日とていい一日やったな~。依頼も簡単だし、案外何とかなるのかもな。にしても夜空がきれいだな、ほんと。こりゃコーヒーもうまくなりますわ!よしあと少し休んだらパトロール行くか!”

 

アビドスにとってはとんでもない皮肉だけど街明かりが少ないからよく星が見える。苦味にステータス全振りしたタイプのコーヒーを啜りつつしばしの星空観察にしゃれ込もうとしていた。

 

コンコン

 

”ん?こんな遅くにどしたんだ?二人とも寝てたはずだけど。はいはーい。今行くよ~。”

 

部屋の扉を開けるとそこには寝間着姿のユメがいた。

 

『あら、どうしたのユメ。こんな遅くに。』

 

「夜分遅くにごめんね、ジェイソンさん。えっとホシノちゃん見なかった?私と一緒に寝てたんだけど目が覚めた時いなくて……。」

 

その報告を聞いたとき俺の背筋が凍るのを感じた。

 

「あ、あとこの手紙みたいなのがゴミ箱の外に落ちてたんだけど心当たりってある?」

 

そう言いながらユメはくしゃくしゃになった便箋と手紙を手渡してきた。

その便箋の模様には見覚えがあった。正確にはその模様に既視感があった。黒を基調として白いひび割れの模様が入ったそれは、分かる人には誰かを想起させるには十分なヒントだ。

ブルアカプレイヤーなら誰もが知るヴィラン。ゲマトリアの黒服。

 

『この手紙の内容は見た?』

 

「ううん……。個人情報とか書いてたら大変だからまだ見てないよ。」

 

『とりあえず俺のではないけど見てみるよ。』

 

「わ、私も一緒に!」

 

くしゃくしゃに丸められた手紙を開きユメとともにその内容を読む。

丁寧な字と回りくどい言葉で書き連ねられた文たちを要約するとこうだ。

 

今夜1時頃この座標の建物に来てほしい。利息の支払いに関する話がある。

 

自然と手に力入っていき手紙が悲鳴を上げているがそんなことはどうでもいい。おそらく、否確実にあの腐れ黒卵(黒服)はこの利息に関することでホシノに発破をかけ退学させようとしている。本編でも確実にホシノが断れないであろう条件を突きつける時だけ呼び出していた。

前世二次創作で先生大好きクラブ会員とか言われてたりネタキャラ扱いされてたけど本編でやったことは決して許されることじゃない。聞き分けがいいから見逃されてたけど普通にホシノだまして実験しようとしてたし。

 

「ジェイソンさん!落ち着いて手紙が破けちゃう!」

 

ユメにそういわれハッとして手紙を放す。

 

『ごめん。ちょっとカッとしちゃって。それよりもこっちだね。』

 

「う、うん。ジェイソンさんはどう思う?なんでこの手紙を書いた人は借金のお話なのに生徒会長の私じゃなくてホシノちゃんに送って来たのかな……。」

 

怒っていたことは適当に流し手紙の方に意識を向けさせる。ユメの疑問に関しては俺は答えを知っている。ホシノの身柄だ。黒服はキヴォトス最高の神秘の持ち主であるホシノを自身の実験材料として欲していた。

でもそれを話すことはできない。本来なら俺が知っているはずがない情報だから。仕方ない少し芝居を打つか。

 

『なんだか嫌な予感がする。ユメ、この座標の位置分かる?』

 

「え?!わ、分かるよ!」

 

『すぐに出よう!早く着替えて!』

 

「分かったよ!」

 

”よし!頼む、ホシノどんなことを言われても……あいつの手だけは取るんじゃないぞ……。”

 

「お待たせ!私は行けるよ!」

 

”速!よしじゃあ”

 

『俺の背中に乗って。その方が速いから。』

 

「はい!」

 

かがんでユメをおぶる。

 

『じゃあ道案内頼むよ。』

 

「うん!任せて!」

 

”じゃ、行くぞ!テレポート!”

 

ヒュン

 

「きゃっ!?」

 

==========

どこかの古びたビジネスビルの一室

 

「……。」

 

私は今古びたオフィスビルの一室の扉の前にいる。

 

ガチャ

 

「これはこれは。クックックッ。お待ちしておりましたよ、暁のホルス。いえ、小鳥遊ホシノさん。さて、立ち話もなんですから席にお着きになってください。」

 

扉を開けた先には一人の異形がいた。姿形こそ人の姿をしていて黒色のスーツに身を包んでいるがその顔は人のものではない。黒く無機質な肌に白い亀裂が走り右目の部分だけ発光し亀裂からは靄のようなものが出ている。正直見るだけで背筋がゾッとする。

私はこの異形のことを黒服と呼んでいる。

 

「まずは梔子ユメさんが生きていらしたこと大変うれしく思っていますよ。もし亡くなられていたらあなたがどうなっていたことか……クックックックッ。」

 

「それで黒服、利息の支払いに関することって何?」

 

席について早々ユメ先輩のことを話題に出してきた。呼び出されるたびに思うがこいつはどこから私たちの情報を仕入れてるんだ?ユメ先輩が遭難したことなんて誰にも話してないはずなのに。いや、深く考えればこいつのペースに乗せられる。ひとまず呼び出した理由を聞かないと。

 

「クックッ、少々状況が変わりましてね。ホシノさんは私がカイザーの者であることはご存じでしょうか?」

 

「話題を変えるな。私は利息の話を聞きに来たんだ!くだらない話に付き合ってる暇はないんだけど。」

 

「これはこれは手厳しい。では本題の前に一つ質問を致しましょう。ホシノさん、あなたは先月分の利息の支払いを行いましたか?」

 

「何を当たり前のこt……。ハッ!?」

 

黒服の質問で私は思い出した。ユメ先輩が遭難してからの2週間、私はユメ先輩の捜索に全力を注いでそれ以外のことは全く意識してなかった。そして本来ならその2週間の間に利息の回収が行われるはずだった。しかし今の今まで忘れていた。あまりにもいろんなことが起こりすぎて思い出す暇さえなかった。

 

「思い出されたようですね。そうです、あなた方は先月の利息の支払いを行っておりません。当然あなた方の借金の相手であるカイザーローンからの信頼は大きく落ちました。そこでカイザーローンはアビドス高校に対しこのようなことを要求しようとしているようですね。」

 

そう言い黒服は一枚の紙を差し出してきた。

 

「なっ!?」

 

そこには絶望的な二つの要求が書かれていた。

・利息の増額、もともと560万円ほどだったその額は700万円を超えている。

・契約違反の賠償として1億円の支払いを2週間以内に行うこと。

そしてこの要求に下には、賠償金が支払われなかった場合アビドス高校から退去してもらう、と書かれていた。

 

「そんな……私のせいで……。」

 

私は深く絶望した。こんな額、支払えるわけがない。例えジェイソンさんであっても……。何より、私のせいでこんなことになってしまっていることが私の心をゴリゴリをえぐっていく。

 

「クックックッ、大変お困りのようですね。では、本題に入ると致しましょう。ホシノさん、あなたに、いえ、あなた方にこの要求を満たすことは不可能でしょう。」

 

「何が言いたい……。」

 

こんな状況でも異形は不気味な笑みを浮かべこの状況を楽しんでいるようだった。それが私の神経を逆なでする。

 

「……お気に入りの映画の台詞がありましてね。今回はそれを引用させていただきましょう。ホシノさん、あなたに、決して拒めないであろう提案を一つ。」

 

そう言い黒服は先ほどの紙の上に新たな紙を差し出してきた。視線を紙に落としその内容を読む。

 

「私が賠償金と以前にも提案させていただいた借金の一部の負担を致しましょう。その代わり、ホシノさんは退学していただきカイザーに入社していただく。いかがでしょうか?」

 

文字通り破格の条件だ。私の身一つでこの絶望的な状況を引っくり返せる可能性があるのだ。

以前にも私は黒服から取引を持ち掛けられていた。借金の肩代わりを行う代わりに私が退学する。これでも破格の条件だ。でも私は断った。ユメ先輩を守らなければならなかったからだ。

しかし、今はどうだ?ユメ先輩にはジェイソンさんがいる。私の信頼できる大人が。厄介ごとしか持ち込まない、居ようが居まいが変わらない私よりもよっぽど頼りになる大人が。

だから私は決断した。こんな私でもあの二人の役に立てるように。

 

「分かった。その提案を…………飲むよ……。」

 

「クックックックッ、よい決断です。では、こちらの書類にサインを。」

 

黒服は心地よさそうに笑う。そしてまた一枚の紙、契約書とペンを差し出してきた。

ペンを手に取りサインをしようとし手を止める。

頭によぎるのはユメ先輩とジェイソンさんの顔。

私にずっと優しくしてくれた先輩、私の話を真剣に聞き励ましてくれたジェイソンさん。

分かってる。私が身を差し出さないとすべてが終わってしまうと。

でも……心のどこかで二人と離れるのは嫌だと叫んでいる。

手が震える。目が熱い。私は一体どうしたらいいのだろうか……

 

助けて

 

「どうしたのですか、ホシノさん。サインをするだけで梔子ユメさんの居場所を守れるのですよ?」

 

助けて……誰か

 

「迷う必要はありません。あなたなら懸命な判断ができるはずです。」

 

助けて……助けて……助けて……助けて……

 

『ki ki ki ki…ma ma ma ma…ki ki ki ki…ma ma ma ma…』

 

瞬間、頭に『声』が響く。

次の瞬間ーー

 

ドガーーン!!!

 

オフィス壁を何かが突き破ってきた。

 

「ホシノちゃん!!」

 

==========

 

砂に埋もれた市街地を突き進む。

 

「あっち!あのビルの奥の方だよ!」

 

ユメに案内されながら街中を駆け抜ける。

 

クソッ、テレポートはクールタイムで使えねえし……。序盤で使いすぎた……。*8もっと速く動きやがれ、俺の足!

 

「あれだよ!あの古いビル!」

 

自分の足に鞭打って走り続けていると目的地の古いビルが見えた。

 

助けて……

 

”!? この声、ホシノか!あの野郎ホシノに何しやがった……!”

 

そこに居ないはずのホシノの声が、助けを求める声が確かに聞こえた。

俺の中で、マグマのような怒りがグツグツと湧いてきた。

 

『ki ki ki ki…ma ma ma ma…ki ki ki ki…ma ma ma ma…』

 

その怒りは『声』となり体現される。

 

”サーチ”

 

ビルの二階に二人の反応がある。

 

「え!?何、この感覚?」

 

ユメは先ほどの『声』に困惑しているようだが対応している暇はない。

 

『ユメ。ホシノは建物の二階だ。もう一人正体不明の誰かと対面している。状況は不明だがホシノが危ない状態だ。このまま壁を突き破って侵入する。お前はホシノを守れ。』

 

「ジェ、ジェイソンさん?話せるの?」

 

『そうだ、悪いが今は説明できん。それよりさっき言ったことは理解できたか?』

 

「う、うん……分かったよ!ホシノちゃんは私たちの大切な後輩だからね!」

 

”よし!じゃあ行くとしよう。”

 

ビルの手前についた瞬間両足に力を籠める。

 

「うわあー!!」

 

ドガーーン!!

 

一気に跳躍しビルの2階の壁を突き破る。

突き破った先にはホシノと黒いスーツを着た異形、黒服が対面する形で座っていた。ホシノの目の端には小さなしずくが出来ていた。

背中にしがみついていたユメは着地と同時に飛び降りホシノに駆け寄る。

 

「ホシノちゃん!!」

 

「ユメ先輩!?何でここに!?うわ!?」

 

駆け寄ったユメはホシノの腕をつかみ半ば強引に黒服から距離を取りホシノを守るようにIRONHORUSを構える。その顔にいつもの優しさはなく真剣な顔だ。

そして俺は鉈を抜きユメと黒服の間に入り黒服と対面する。事前の打ち合わせ通りだな。

 

「……クックックッ、予想外の来客ですね。さて、お初お目に掛かりますね。アビドス生徒会長、梔子ユメさん。そしてアビドスの謎の協力者。」

 

やはりというべきか、このピータン野郎俺のことも知っていたようだ。

 

「あなたが、ホシノちゃんに手紙を書いた人なの?」

 

「ええ、おっしゃる通りです。」

 

「じゃあ、なんで利息の話を生徒会長の私じゃなくてホシノちゃんにしてるの。」

 

「梔子ユメさんは遭難から復帰したばかりで少々肩の荷が重いかと思いましてね。それにそんなに警戒なさらずともこれは私とホシノさんの合意の元、結ぼうとしている契約です。やましいものではございません。」

 

無言で机の前まで行き机の上に並べられた書類を手に取る。

利息の支払いをすっぽかしたことに対するペナルティと賠償に関する紙、提案と言う名のユメとアビドスを人質に取った脅迫書、そして無記入の契約書。先ほどの発言と合わせて今の俺の怒りは限界突破の真っ最中だった。

書類を机に叩き付け黒服の胸倉を掴む。

 

『黙れよ、腐れ黒卵。』

 

「腐れ…!?」

 

「え……?ジェイソンさん……声?」

 

『何が契約だ!この脅迫書と法外な値段の請求書のどこが契約だ!』

 

「……ククッ。物は言いようでしょう。それに、先ほども申しましたがこれはホシノさんと同意のもとで行われているのです。同意があるのであればそれは契約として成立していると言えるのでは?」

 

鉈を首筋に当てられてもこの異形は飄々とした様子で持論を述べていく。

 

「それに梔子ユメさんが言うならともかく赤の他人であるあなたには関係のないことでしょう。ましてや大人であるあなたがなぜ彼女たちに付くのです?大人とは本来望む通りに社会を改造し、法則を決めて、規則を決め、常識と非常識を決め、平凡と非平凡を決める者です。あなたなら彼女たちを力で彼女たちをねじ伏せ学校を乗っ取ることだって可能だったはずです。なのにヘリ下り、土下座をし、居場所を与えられた。理解できません。」

 

『こんな脅迫書を見せられて同意するなという方が無理のある話だ。お前はただ「同意」という言葉を引き出させただけに過ぎない。それに何故付くかなんてこいつらを助けたいから、それで十分だろ。』

 

「つまりあなたは彼女たちのために時間を浪費し、その身体すらもささげると……。はっきり言いましょう。その考えは間違っています。大人とは子供の上に立ち自らの利益のために利用する。そういうものでしょう。」

 

『大人が子供を利用する?笑わせるなよ!大人は子供を守り、導き、次に託していくものだ!そんな下らん騙しあいは大人同士でやるものだ。決して子供に向けてやる所業じゃない!……これ以上は時間の無駄だ!ホシノから、いやアビドスから手を引け。今すぐに。そうしたら見逃してやる。』

 

「クックックッ、本当によろしいのですか?私が手を引けばあなた方はこの要求を呑まざる得なくなりますよ?」

 

『それがどうした?こんな金額、2週間あれば余裕で用意できる。分かったらさっさと宣言しろ!二度とかかわらないと。』

 

「……。……いいでしょう。契約は破棄されました。よろしいのですね、ホシノさん。」

 

ホシノの方を見ると彼女は小さくうなずいた。

 

「クックックッ、本来であればあなたとも友好的でいたかったのですがね。」

 

『それは土台無理な話だ。お前は俺の地雷を踏みぬいた。覚えておけ!俺は子供を害する奴には一切の容赦をしない。』

 

「ええ、肝に銘じておきましょう。」

 

それだけ言い黒服から手を放し踵を返して、

 

『ユメ、ホシノ、行くぞ。』

 

二人を連れ扉から出て行った。

 

==========

「……。」

 

ピリリリリリ  ガチャ

 

「久しいな、黒服。なんの用だ?」

 

「お久しぶりですね、理事。早速本題なのですが私はアビドスの件から手を引かせていただきます。」

 

「お前が冗談を言うなど珍しいこともあるものだ。明日は矢でも降るんじゃないか?」

 

「……。最後に助言しておきましょう。トラの尾を踏まないようにせいぜい努力することです。では。」

 

「おい!黒ふk(ツーツー)」

 

「クックックッ、これはしばらくゲマトリアも派手な活動はできませんね。ですがそれは生徒相手での話です。マダムは……聞く耳を持っていただけるかは不明ですが……言うだけ言っておくとしましょう。アビドスの謎の協力者、ゲマトリアはいつでもあなたを見ていますよ。クックックックックックッ」

 

一人の異形が椅子に腰かけた部屋に不気味な笑い声が静かに響く。

 

==========

アビドス高校 生徒会室

 

ここに帰ってくるまで、二人は一言も話さなかった。ジェイソンさんが先導し、ユメ先輩はずっと私の手を掴んで離さなかった。

あの時の光景が今でも脳裏に焼き付いている。普段頼りない先輩が私の前に立ち守ってくれた光景が、こんな私のために黒服と舌戦を繰り広げたジェイソンさんの光景が、ずっと離れない。

 

生徒会室に着いた瞬間ユメ先輩は私に抱き着いてきた。そして泣きながら

 

「良かった!ホシノちゃんが無事で……。」

 

私の無事を確認し安堵の声を漏らしていた。

ふと自分の手が目に入る。その手は小刻みに震えていた。一体なぜ……。

 

トサッ

 

横から音がした。そちらを見ると膝立ちのジェイソンさんがいた。次の瞬間、

 

ギュッ

 

ジェイソンさんも私たちを包むように抱きしめてきた。そして

 

『もう大丈夫だ。ここには怖いものは何もない。一人で、よく頑張った。』

 

頭を撫でられながらそう言われ私の中にたまっていた何かが崩れ落ち涙が溢れてくる。

なぜ震えていたのか分かった気がした。

怖かったのだ。先輩とそしてジェイソンさんと二度と会えなくなるかもしれないことが、日常がなくなるのが、怖かった……。

以前ジェイソンさんになぜこの街に残っているのか聞かれたとき、私は答えられなかった。

でも、今なら答えられる。ユメ先輩と過ごす日常が私は好きだった。だから私はその日常を守るためにこの街に残り続けていたのだ。

 

私は二人に抱きしめられながら泣いた。声が枯れるまで泣き続けた。

 

しばらくして……

 

「グスッ……もう!なんで私に何も言わずに行っちゃったの?」

 

「すみません……。スンッ……二人に迷惑を掛けたくなくて……私一人で解決できると思ったんです……。」

 

「だからって……身売りすることはなかったでしょ!」

 

「でもそうしないと……先輩はアビドスを……。それに居ても居なくても変わらない、むしろ迷惑ばかり掛けてる私なんていない方g」

 

『……。なあホシノ。それ本気で言ってるのか?』

 

私とユメ先輩が泣き止んだ後、私は二人から事情徴収を受けていた。

私がユメ先輩の質問に答えているとそれまで沈黙を貫いていたジェイソンさんが口を開く。

 

『居ても居なくても変わらない?馬鹿を言え。お前が、お前たちがいてくれるから俺はこの新しい日常を楽しく過ごせているんだ。ユメも言ってやれ!』

 

「そうだよ、ホシノちゃん!強くてとても頼りになって、だけどちょっと厳しくて、それでもこんな私を支えてくれる優しくてかわいい後輩のホシノちゃんがいなくなったら私、どうなっちゃうか分からない。それに私が今まで頑張ってこれたのはホシノちゃんのおかげなんだよ!2年生の時はずっと独りぼっちでさみしかった。でも、ホシノちゃんが来てくれて毎日がとても楽しくなったの!」

 

「~~~////」

 

ユメ先輩の怒涛の褒め殺しに私は顔を真っ赤にし悶絶するしかなかった。

でも私はこんなに大切に思われているのだと実感できた気がした。

 

『それにな、迷惑ばかり掛けていると言ったが、それがどうした?他人に迷惑を掛けない人間なんていないしお前はまだ子供だぞ。いくらでも迷惑を掛けていいし、むしろ掛けてくれ。年不相応に大人ぶる必要もないし何よりお前はまだ責任を負えるような器じゃない。この際だから言うがな、お前はもっとわがままになれ。』

 

この言葉を聞いた瞬間私の奥底に眠る何か、無意識に封印していた何かの鎖が切れる音が聞こえた気がした。

 

「いいん……ですか?迷惑を掛けて……。」

 

震えた声でそう問う。

 

『どんとこいだ。失敗したら責任は俺がとってやる。どんどん迷惑を掛けろ。』

 

あぁ、この人は本当にずるい。せっかく心の奥底に封じ込めていたのに

 

「わがままになって……いいんですか……?」

 

『かまわん。できるだけのわがままはかなえてやる。おっとお高いのはやめてくれよ?あんまり金はないからな!』

 

そんなことを言われたらもう、戻れなくなっちゃいますよ。

 

『さて、ホシノ。お前は、どうしたい?』

 

「私は……」

 

私が、したいこと……

それは

 

「私は、ユメ先輩と、ジェイソンさんとこれからも一緒に過ごしたいです!離れ離れになるなんて嫌です!ずっと一緒にくだらなくて、でも楽しいあの日常をまた、一緒に過ごしたいんです!」

 

私は胸の内に閉じ込めていた思いを吐き出した。

 

『もちろんだ。これからもよろしく頼むよ、ホシノ。ユメもな。』

 

「うん!私もよろしくね!ホシノちゃん、ジェイソンさん!」

 

 

 

この日を境に私は、少しだけ自分に正直になった。

 

『戻ったぞ。』

 

「あっ!おかえりなさいジェイソンさん!」

 

「おかえりなさいです。今回の遠征はどうでしたか?」

 

『ああ、無事すべてこなしてきた。そっちも借金の返済は進んだか?』

 

「はい。少ないですが今月は200万程返済できました。」

 

『ちりも積もれば山となる、だ。地道だが頑張っていこう。』

 

結局賠償金の1億円は無事支払うことができた。いや、支払ってもらった。今回の件は私が原因だったのだから私も賞金稼ぎなどでお金を稼いでいたのだが賠償金のほとんどはジェイソンさんが稼いでくれた。あの日の翌日からジェイソンさんは10日程キヴォトス中を駆け回り依頼でマフィアのアジトを壊滅させたり、指名手配犯を根こそぎ刈り取ったりしたらしい。これは後から知ったことだがこの一連の騒動の後1週間ほど、ヴァルキューレの出動件数は激減しキヴォトスの治安は過去最高をたたき出した。マフィアによる抗争やテロが起こらなかったこの1週間は後に”静寂の1週間”と呼ばれたらしい。

そしてジェイソンさんの『声』に関しては本人もわからないらしい。いきなり話せるようになったとか。

 

まあそれは置いておいて、今はいつも通りの日常を過ごせている。これもひとえにジェイソンさんが私たちのために身を粉にしてくれているからだ。

 

『どうした、そんな顔して。不安か?』

 

ジェイソンさんを見たままボケッとしていた私の頭を撫でながらジェイソンさんは問う。この撫でられるのも今となってはとても心地いいものだ。

 

「不安なんかありません。だって私にはユメ先輩とジェイソンさんがいるんですから。」

 

『ならいい。』

 

そう、私には頼りないけど私の心の支えになってくれる先輩と、私たちを守ると誓ってくれた

 

「そ、それと……」

 

『ん?』

 

「……もう少し撫でていてほしいです///」

 

私が唯一心を許した大人がいるのだから、不安なんてあるはずがない。

 

この大人との出会いは私を変えた。

自分という存在が嫌いではなくなった。

少しずつだが街の人たちとの交流も増えた。

少しだけ笑顔が増えた。

一人で抱え込まなくなった。

そして、ほんの少しだけ奇跡を信じようと思った。

 

今の私があるのはジェイソンと出会えたから。今だけはこの出会えた奇跡に感謝しようかな~、と思っている。

 

==========

アビドス高校 対策委員会教室

 

「続きはこんな感じかな~。」

 

「ん、ニンニクマシマシ家系ラーメンよりも濃い話だった。」

 

「ほんとにそう。っていうか今のホシノ先輩、話の中の先輩から変わりすぎじゃない?」

 

「私がここに入ったばかりの時はお話のような感じでしたけど、いつからか今のような雰囲気になりましたよね☆」

 

「うへ~、おじさんにもいろいろあったんだよー。」

 

「ふふ、ほんとちゃんとみんなの先輩になれてて私、とてもうれしいよ!」

 

「ジェイソンの過去……初めて聴いたけどなんと言えばいいんだろうか……」

 

「私達も以前聴いたことが有りましたがその時、私達も似たような感じでした。苦労した、大変だったなどと、そんな軽い反応なんてとてもではないですが出来ませんでした。」

 

『俺としては励ましより、俺にそう言うことがあったと、分かってくれればいい。人生何が起こるかわからないからな。俺はちとマイナス方向に全振りしたようだが、まあそれを超えるプラスが起こったから気にしないがな。反面教師にでもしてくれ。』

 

「そう……だね。ほんと人生何が起こるか分からないからね。私もまさかこの歳でたくさんの教え子を持つことになるとは思わなかったよ。」

 

「先生も大変だねー。こんな日常的に銃撃戦起こってる場所に放り込まれてさ。」

 

「確かに大変だけど、それでも助けを求める生徒がいるなら手を差し伸べずにはいられないんだ。その為なら私は全力を尽くすよ。」

 

『な?言っただろ。コイツは俺の同類だって。』

 

「ほんとにジェイソンさんにそっくりだね!でも先生は銃弾一発でも危ないんだから本当に気をつけてね!」

 

「そう言えばエアちゃんは元気にしてるの?」

 

『ん?あぁ、今は例の取引の交渉を頑張ってもらっているが元気にしているよ。今は忙しくて出て来れないから話せないんだ、すまんな。』

 

「ううん大丈夫だよ。」

 

「それにしても黒服さん、はじめは敵対されてたんですね。確かに変な方ではありますけれども。」

 

『あいつはあいつなりの方法で俺たちの信用を最低限回復させた。だがそれでもマイナスがゼロになっただけで信頼はしていない。今でもお前たちに出される依頼は要チェック対象だ。』

 

「黒服、か。私も一度会っておきたいかな。」

 

『ああ、じきに会えるさ。さて、今日はもう解散にしよう。みんな疲れてるだろうしな。』

 

時刻は既に5時を指しており外を見れば夕日も沈みかかっていた。

 

「了解。」

 

「分かりました。皆さん、お疲れ様です。」

 

「アヤネちゃんもお疲れ様です☆」

 

「みんなお疲れ。うーーん、久々に走り回ったからもうへとへと……。」

 

「お疲れさん。明日もよろしくね。」

 

こうして対策委員会の面々と先生は教室から出ていきそれぞれの家路についた。

 

教室には私とユメ先輩、ジェイソンが残っていた。

 

「この三人で集まるのってなんだか久々だね!」

 

「そうだね~。いつもみんなが一緒だからなかなかタイミングがないよね。」

 

『それにしても懐かしいものだ。まだあれから2年たってないはずなんだがな。』

 

「今思えば本当にあの出会いは奇跡なんだなって実感できるね。あの出会いがなかったら今の私はなかったと思うんだ。本当にありがとう、ジェイソン。」

 

『どうした急に改まって。』

 

「えへへ、なんとなく、かな~。」

 

「私も改めてありがとね、ジェイソンさん。ジェイソンさんがいてくれたおかげで今の私があるんだから!」

 

『ハハハ!改めてそう言われるとむず痒いな。……俺からもありがとな。二人がいてくれたおかげで俺は今日まで頑張ってこれた。これからもよろしく頼む、二人とも。』

 

「「うん!!」」

 

『さて、俺たちも帰るとしようか。』

 

「おー、それならさジェイソン、おじさん疲れちゃったからおんぶしてほしいな~。」

 

『分かった。さあ、乗った乗った。』

 

「よいしょ。やっぱりジェイソンの背中は大きくて安心感があるねぇ~。」

 

「えー!ホシノちゃんだけずるい!私もしてほしいのに!」

 

『わかったわかった。ユメも後でしてやるから落ち着け。大の大人がみっともないぞ。』

 

「ひぃん……。」

 

 

私は今、とても幸せだ。かつての自分に聞かせたらびっくりするだろうか。悲観的だった過去の私にはこんな未来が起こるなんて想像すらできなかっただろう。

大好きな先輩と大好きな大人、そしてかわいい後輩たち、みんな私の大切な人達。新しく来た先生も、まあちょっとだけ期待している。

憂鬱な日々はもう無い。1日1日がこんなにも楽しいんだから。

ああ、明日はどんな一日になるのかな~

 

*1
前の体の主の

*2
ホシノは野菜を切ったりしてお手伝いしてた

*3
前の体の主の

*4
そしてシリアスはないなった。

*5
その後ジェイソンがテレポートを応用して食事できることが発覚したので朝食はみんなでおいしくいただきました!

*6
作者も同じく(やってみたいけど時間とお金がない……)

*7
ユメたちが貸してくれた教室の一つ

*8
ホシノ戦で使いまくってたけどあれは、って?ギリギリクールタイム入らなかったんだよ!




黒服のエミュが死ぬほど難しかった……。
次回からまた本編に戻ります!また期間が空くかもしれませんがお待ちください!
コメントや高評価をいただけると嬉しいです。
ではまた次回お会いしましょう!ではでは〜

皆さんにお聞きしたいのですが4000~5000字の短めと7000~8000字の長め、どちらの方が読みやすいですか?

  • 短めの方
  • 長めの方
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。