なんかジェイソンの見た目と能力持って転生したのでハッピーエンド目指して頑張ります   作:YONATSU

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大変お久しぶりですね。ゲヘナ編で脳破壊されたYONATSUです。
今回はヒナとの絡みを(多分)多めに書きました。
それではどうぞ!


ヒナとの再会

アビドス高校対策委員会 先生side

 

あれから無事生徒会室の掃除を終え、ユメたちとティータイムをしていた。

 

ガララ

 

「おはよう、みんな……ふぁぁ~~」

 

バイトあがりであろうセリカが教室に入ってきたがとても眠そうだ。

よく見ると目の下にうっすらと隈もある。

 

「おはようございますセリカちゃん。また完徹バイトですか?」

 

「うん。倉庫の荷物整理とかチラシ配りとかいろいろ。」

 

「えぇ!?セリカちゃんダメだよ、そんな無理しちゃ!ほらこっちおいで。」

 

「なに?そんなに無理してるつもりはないんだけど──」

 

「えい!」

 

「わっ!?ちょっ、何するのよユメ先輩!」

 

ユメがセリカを手招きし、それに応じるセリカ。

椅子に座るユメの前に来たセリカは突然ユメに抱き着かれた。

 

「こら、暴れないの!セリカちゃんはいまはしっかり休まないと!」

 

抱きつかれ顔を赤ながらユメを突き放そうとするセリカ。

そんなセリカを離すまいとユメは抱きつく力をさらに強める。

 

「くっ!……ん……な、んで…眠く…」

 

セリカはしばらく抵抗するが程なくして全身の力が抜けたように手がダランとなりヘイローも消えていた。

 

「あらら、セリカちゃんもユメ先輩の抱擁の餌食になっちゃいましたね⭐︎」

 

「えっと……絞めた訳じゃないよね?」

 

「はい!ユメ先輩はただ抱きついただけです。ユメ先輩の抱擁はどんな人でも眠らせられるんですよ。しかもとてもいい夢が見れるので私も不眠気味になったらお世話になってます⭐︎」

 

「ふふ、昔ホシノちゃんにもよくやってあげてたんだよ!先生も後でする?」

 

「い、いや大丈夫かな。今はあんまり眠くないしね……。」

 

眠ったセリカの膝枕をしつつユメは私にもどうかと勧めてきたが、流石に生徒の模範であるべき先生が女性に抱きつかれている絵面はまずいのでやんわり断っておく。

 

 

しばらくして

 

「ん、おはよう。」

 

「皆さんおはようございます。って!?セリカちゃん大丈夫ですか!?」

 

「おはようございます、シロコちゃん、アヤネちゃん。セリカちゃんは完徹バイト明けでしたのでユメ先輩が眠らせた状態ですね。」

 

「そ、そうですか、よかったです……。また襲撃に遭ってしまったのかとヒヤヒヤしてしまいました……。」

 

「昨日の巡回は私がしていた。特に襲撃とか銃撃戦は起きてなかったから大丈夫。それよりユメ先輩達はティータイム?」

 

「そうだよ。さっきまでユメ達とここと生徒会室を掃除しててね。終わったからみんなでお茶してたんだ。」

 

「シロコちゃん達もどうですか?」

 

「ん、いただく。」

 

「では、私もいただきます。あっ、そうです!大ニュースがあるんでs」

 

シロコ達が席につき、アヤネが何か言おうとした瞬間───

 

ドゴゴゴゴゴゴーーーーン!!!

 

近すぎずされど遠すぎない場所で耳を劈くような爆発音がした。少ししてやって来た爆発の衝撃は教室の窓を強く揺らしその威力を物語る。

 

「な、ななな、何が起こったの!?」

 

その音でセリカが目を覚まして飛び起きた。

 

「あの方向……アビドス市街地の方です!」

 

「まさか襲撃?」

 

「衝撃波の形状からするとC4爆弾の連鎖反応と思われます。少し確認してみます。」

 

そう言いアヤネは端末を操作し始めた。

同時に私は嫌な予感がした。こういう時だけは私の感は当たりやすいのだ。

 

「……爆破地点確認。柴関ラーメン!?柴関ラーメンが跡形もなく消えてしまいました!」

 

「はあ!?どういうこと!?なんであの店が狙われるのよ!」

 

「戦略拠点でもなく、重要な交通網でもないのに。一体誰が……。」

 

どうやら感は当たっていたようだ。

柴関ラーメン……今はひとまず大将の無事を確認するのが最優先だ。

 

「……新たな情報を取得しました!ここから13km地点に迫撃砲部隊を確認!所属は……ゲヘナ風紀委員会!?」

 

「な、なんでゲヘナの風紀委員会がここにいるの!?」

 

「さっきの柴関の爆発、風紀委員会が原因?」

 

「今はそれどころじゃないでしょ!早く柴関ラーメンに行かないと!」

 

「そうだね。じゃあ出発しよう!」

 

「私、ホシノ先輩に連絡します!」

 

「私はジェイソンさんに連絡してくる!」

 

各々が行動を開始し、私もシッテムの箱を手に取り情報収集をしようとしたその時

 

「先生少しお話よろしいでしょうか?」

 

アヤネが声をかけてきた。

 

「うん、大丈夫だよ。」

 

「ありがとうございます。先ほど言いかけたことなのですが、エアさんから連絡がありまして商談が成立しました。」

 

そうか、ジェイソンはうまくやったみたいだね。

でもなぜアヤネは今そのこと私に?

確か今回商談で購入したのはアビドス市街地。そしてゲヘナ風紀委員会が砲撃したのもアビドス市街地。

なるほど。言いたいことはなんとなく分かった。

 

「分かったよ。もしもの時は私がオブザーバーとして交渉の席に立ち会うから安心して。」

 

「え!?これだけの情報で私の言いたいことが分かったんですか?す、すごいですね……。」

 

「そんな大層なことじゃないよ。さて、私もいくつか情報収集しようか。手伝い頼むよ、アロナ。」

 

そう言いながらシッテムの箱を起動する。そして青髪の見慣れた少女が姿を現した。

 

”はい!このスーパーアロナちゃんにお任せください!”

 

==========

場面は砲撃直後に戻り、ジェイソンside

 

ギシギシ……ドーーン!

 

『何とか穴は開けれたな。大将、八百屋、大丈夫か?』

 

「ああ、俺はジェイソンさんが覆いかぶさってくれてかすり傷だけだが、八百屋君は……左足が折れちまってるな……。」

 

「何のこれしきですよ大将。書類が無事ならかすり傷で……っ!?」

 

なんとか建物の外に二人を逃がすことはできたけど、八百屋は強がってるけど重症だな。

近場にシェルターがあるから逃がしてやりたいが迫撃砲の発射の阻止をしないとさらに被害が増える……。

 

「おい!大丈夫か!!」

 

ん?この声……まさか!

 

「柴の店の方からえらくでかい爆発音がしたから来たがこりゃひでえな……。」

 

「父さん……。」

 

「八百屋!お前…大丈夫か!?」

 

「!?」

 

『八百市!ここは危険だ!そいつらをシェルターまで運ぶ!手伝ってくれて。』

 

「わかった!ほら、片貸せ。柴、歩けるか?歩けるならシェルターまで案内してくれ。」

 

「……ありがとう。」

 

「俺は問題ねえから付いてこい。」

 

よし、さっさと運ばないといつ砲撃が来るか分からんからな。

そ言えば、便利屋は?

 

「けほっ……な、なにが起きたの?」

 

「ハルカの仕掛けたC4に迫撃砲弾が直撃して誘爆したんでしょうね。」

 

「おーさすがハルカちゃんお手製のC4爆弾。跡形もなく吹き飛んじゃったね!」

 

「許可が下りてないのに爆破してすみません すみません すみません すみませんすみませんすみませんすみませんすみません」

 

んー俺はト〇とジ〇リーでも見てんのかな?

便利屋のとこだけきれいに残ってやがる……。

まあいいやアイツらはアイツらでなんとかするっしょ

 

「ここだ!ほら、早く入りな。」

 

「ほら八百屋、ここに座れ。ジェイソンさん、コイツらの状態は?」

 

『大将は擦り傷のみで軽傷、八百屋は左足を骨折した。応急ではあるがすぐに処置する。』

 

しばらく辺りを物色し、手頃な板と棒、ロープを持って来た。

八百屋の左足に板とロープで添え木して固定する。

んでもって棒とロープで簡易的な松葉杖も作っておいた。

 

『足は頭より高い位置にしておけ。あとは何か冷やすものがあればよかったんだがな……。今はやむ得ない。あとその松葉杖はもしここが危なくなった時に使え。』

 

「分かった。感謝する、ジェイソンさん。ほら八百屋コイツを使え。」

 

「ありがとう、父さん、ジェイソンさん……。」

 

八百市は法被を丸めて八百屋の頭の下に置き枕代わりにした。

それを確認し、俺はシェルターの外に出ようとする。

 

「ジェイソンさん!今は外は危険だぞ!」

 

『心配するな大将。今攻撃を行っている奴らと話をしてくるだけだ。それにこれしきのこと、俺にとっては危険でも何でもない。』

 

「そうかい……。あまり無茶はしないでくれよ。俺は店のことは何とも思っちゃいねえからよ。」

 

そう話す大将の顔は言葉とは裏腹に悲しい雰囲気を帯びていた。

 

『大将。まさか店を諦めようなんて思ってないよな?』

 

「!?」

 

『悪いが、アンタの引退は延期してもらうぜ。せっかくこの辺の土地を買い戻したんだ。それに俺はアンタの店で食うラーメンが好きなんだよ。アビドスのアイツらもな。だからよ、俺たちのわがままに少し付き合ってくれ。』

 

「そうだぞ柴!俺もお前の店で飲むのが週末の楽しみなんだからよ。老耄の楽しみ奪う罪は重いぞぉ。」

 

「もし、復旧が苦しいようでしたら自分ができる範囲で支援しますので良ければご相談ください。」

 

やはり原作同様、店を諦めよとしていたようだがそうは行かない。

示し合わせた訳でもないのに三者三様のフォローが入った。

 

「みんな……すまねえな。らしくないことを言っちまった。もう少し頑張ってみるよ。」

 

よっしゃ!大将も本調子、とは言えねえけど大分元気になったな。

じゃ、迫撃砲部隊にあいさつに行きますかね。

と、その前に

 

『”エア、少し頼みたいことが──”』

 

《──確認、すぐに取り掛かります。》

 

よし、じゃあ行きますか。

 

『じゃあ行ってくるとしよう。安全を確保できたら迎えにくる。それまでは、ここにいろ。』

 

「分かった。ジェイソンさんも気をつけてくれ。」

 

テレポート!

 

ヒュン!

 

==========

アビドス市街地外縁部 ゲヘナ風紀委員会迫撃砲陣地

 

「本隊より連絡!第二射を実施せよとのことです!」

 

ここはゲヘナ風紀委員会の迫撃砲陣地。

先程柴関ラーメンを破壊した元凶である。

 

「了解した!全員砲撃用意!」

 

計6門の迫撃砲が発射準備に入る。

指揮官が手を上げ発射を命じようとした時

 

『待て』

 

その場にいる全員の頭に文字が流れる。

それと同時に軍用のブーツが大地を踏み締めこちらに向かってくる音がした。

 

「バカな!?見張は何してたんだ!」

 

恐る恐るといった様子で音の方を見ると、そこには防弾チョッキと戦闘服に身を包み不気味な仮面をつけた大男がいた。

指揮官をしていた風紀委員が本来いるはずのない来客に驚愕の声を上げる。

 

『お前達、連邦生徒会の法令で他自治区への理由無き攻撃は禁止されているのを知らないのか?』

 

突然の問い。

指揮官は一瞬思考が停止する。

当たり前だ。彼女達の持つ古い(・・)情報ではここら周辺はすでにアビドスの自治区から外れているのだから。

自分達が砲撃したのはカイザーが管理しているゴーストタウンのはずだ。

 

「な、何を言っている。そっちこそ知らないのか?ここはカイザーが保有している土地だぞ!」

 

だからこそ彼女達は自分達に正当性があるという自信があった。

まさか砲撃の数分前に土地がアビドスに戻ったとも知らずに。

 

『ついさっきまでは、な。先程カイザーとの取引でここら一帯はアビドスの元に戻った。これが証拠だ。』

 

「……。」

 

「それが何の証拠になるんだ!どうせ捏造だろ!」

 

「そもそもアンタ誰だよ!」

 

「そうだそうだ!」

 

それでも目の前の大男は自分達の自治区だと主張し、証拠といい契約書まで掲げた。

周りは偽物だ何だと騒いでいる。

しかし指揮官は違った。彼女は感が鋭く状況、空間把握に長けていた。

彼女の感はあの契約書が本物だと告げていた。

もしそれが本当だった場合を隊長は考える。

いや考えるまでもなかった。自分達はとんでもないことをやらかしたことになるという考えにすぐ至った。

自分の感が間違っていると否定したかったが彼女の背筋が凍る様な感覚がした。この感覚がした時、彼女の感はほぼ当たるのだ。

 

"まずいまずいまずい……。どうする?イオリに知らせる?それともアコ行政官に?いやまずは部隊のみんなを止めないと!何となく、この人と戦っちゃダメな気がする……。"

 

「ちっ、埒が開かない!私たちは忙しいんだ!さっさと帰れ!」

 

指揮官は自分の責務を全うすべく思考を巡らせるが、痺れを切らした風紀委員がジェイソンに銃を向け脅しをかけ始めた。

 

「ちょっ!?」

 

「ねぇ、もうめんどいし適当に気絶させとこうよ。」

 

「確かに、やっちゃおうか!全員攻撃開始!」

 

指揮官の静止も虚しく風紀委員達は攻撃を開始した。

 

3分後

 

"やっぱり、私の感は当たってたか……。"

 

地に伏した指揮官は力無く周りを眺める。

文字通り死屍累々。

自分を含む風紀委員全員が地面に倒れていた。

 

"それにしたってなんてスピード……。誰の銃弾も当たってなかった。風紀委員会でも上位の実力を持つ護衛の弾でさえも……。これはとんでもないとこに喧嘩売っちゃたわね。"

 

自らもショットガンで応戦したが手応えなし。逆に頭に一発もらいすぐに戦力外となった。

朦朧とする頭で状況を整理していた。

 

『制圧完了だ。ん?……どうした。……分かった。すぐそちらに向かう。』

 

当の大男は何もなかったかの様に端末と会話をしどこかに消えていった。

 

「いいな……。私にも……あんな強さがあればいいの…に……。」

 

少女はポツリと羨望を呟きながら意識を手放す。

 

==========

アビドス市街地外縁区

 

エアから報告を受けて外縁区の廃ビルの上に来た。

俺が迫撃砲部隊を制圧してる間に頼んだこともやってくれたようだし。

 

サーチ

 

俺の脳内のマップに赤い点がうじゃうじゃと現れ始めた。

 

”おう……。エアの言う通りえげつない数いるな。八個中隊くらいか?まあまだアコちゃんは指示出してないみたいだし要観察か。動きがあったらすぐこっちも動かないとな。あ、そういえば”

 

『エア、ユメたちの状態は?』

 

《監視カメラをハッキング。……確認しました。現在、ゲヘナ風紀委員会の二個小隊と戦闘中。先生の指揮も相まって優勢です。》

 

さす先。しっかりみんなを導いてくれてるみたいだね。

 

《ただ……》

 

ん?なになに?

エアが続きを言おうとした時

 

《報告。先生から着信です。》

 

お、ナイスタイミング

丁度俺も話したかったからね!

 

『繋げてくれ。』

 

〈「つながった!ジェイソン!無事?」〉

 

開口一番俺を心配する問いが聞こえた。

こういうのが好かれるとこなんだろうな。

 

『ああ、無事だ。だが紫関が砲撃された。大将とカイザーの重役は無事だが、重役が砲撃で左足を骨折した。それ以外の紫関にいたやつらも無事だ。』

 

〈「!? ……分かった。ひとまず現場に取り残された人はいないみたいだね。ジェイソンは今どこにいるの?」〉

 

『今は外縁部で風紀委員会を監視している。奴ら八個中隊も連れてきている。もしもの時は俺が時間を稼ぐ。』

 

〈「八個中隊!?彼女たち(風紀委員会)の主張だと便利屋を捕まえに来たみたいだけど明らかに規模がおかしいね。」〉

 

うーん、まあ本当はあんさん確保のためにこの規模用意したのが正しいんだけどね。

言わんけどね。言うと俺が怪しまれるし。

 

〈「あっ、あとジェイソン。」〉

 

『? なんだ?』

 

〈「ホシノがどこにいるか、知らない?」〉

 

…………。

は?

 

『何!?』

 

〈「!? びっくりした!」〉

 

思わず叫んでしまう。

 

『すまん、取り乱した……。俺も把握していない。こっちでコンタクトを試みる。そっちは……風紀委員会で忙しいだろう。対処に集中してくれ。俺は俺でこの騒動を収拾するために動く。そっちは頼んだ。』

 

〈「りょ、了解。アビドスの子達は任せて!コンタクトが取れたらこっちにも連絡して。」〉

 

『分かった。』

 

電話を切る。

 

いや、ちょ待て……待て待て待て待て

ホシノが消える理由ないやろ!

黒服は一応こっち側だし……

なんでだ、何があったんだ……ホシノ

 

『エア、ホシノの電話に繋げ!大至急だ!』

 

《了解。回線を繋げます。…………。応答なし。再度接続を試みます。…………。応答なし。》

 

…………。確実に何かがある。

すぐに探すべきか?いや、ホシノのことだ。何とかして戻ってくるか?

 

《ホシノさんの端末にハッキングを試みます。成功。現在地を検索。…………。確認。カイザーPMC本社。》

 

は??

エアの報告を聞い俺の中の火山に一瞬で火が付いた。

 

『ki ki ki ki…ma ma ma ma…ki ki ki ki…ma ma ma ma…』

 

あいつら…………ついにライン超えやがったな……。

 

《マ、マスター落ち着いてください。ホシノさんは現在PMC本社を離れこちらに向かってきています。》

 

俺の怒りに思わずエアが怖気づいてしまう。

そんな状態でも彼女は俺を落ち着かせるために報告の続きを教えてくれた。

そうだな、俺が一人で癇癪を起しても事はいい方向にはいかないだろう。

それに、まだ事実確認もできてないしな。

 

『……ふぅ。すまんな、エア。ありがとう。』

 

《いえ、大丈夫です。私はひとまず情報収集を行い、ホシノさんの身に何が起きたのかを調べます。》

 

『了解した。……ん?』

 

エアがホシノのことを調べてくれるらしい。俺はそのことに感謝しつつ、なんとなくでサーチを起動した。

するとマップの端の方からものすごいスピードでこちらに向かってくる点が見えた。

 

”これは……来たっぽいな。彼女が。原作より速い到着じゃないか、これ?”

 

テレポート

 

==========

アビドス市街地外縁区 ヒナside

 

面倒くさい。

 

砂漠化した市街地を爆走するヒナの脳内の思考の9割をこの感情が支配していた。

風紀委員会の仕事を終え本部に戻ろうとした時、匿名で通報があった。

なんでもアビドスに風紀委員会が攻撃を仕掛けてきたと。

最初はいたずら電話かと思った。しかしその通報の内容はやけに細かかった。

三個小隊規模の迫撃砲部隊が市街地に砲撃を行った。

名簿を確認すると丁度三個小隊分の迫撃砲部隊が遠征に出ていた。さらに調べると八個中隊規模の歩兵と医療班、狙撃部隊も遠征に出ていた。

夏の合宿でもないのにこの規模で遠征することは基本無い。*1

この遠征の許可に誰が判を押したのか確認すると…………私だった。なぜ押した覚えのない書類に私の判が押されているのか

私はすぐ部下に問う。

彼女はすんなりと答えてくれた。

アコだった。それを聞いた私は思わず天を仰いだ。

彼女は優秀だ。努力家で状況観察と戦術指揮能力に秀でた彼女はよく私の補佐をしてくれている。だが稀に……いやよく空回りする。

努力家であると同時に自信家で感情的な一面もありよくトラブルを起こす。

今回も何か先走ってトラブルを起こしたのだろう。

 

”それにしても、アビドスなんて久々に来たわね。”

 

2年前、まだ雷帝がゲヘナを支配していた時代に一度来たことがあったがそれ以来訪れることはなかった。

私の頭には1人の顔が浮かんだ。

 

”そういえば彼もアビドスだったわね。最近話題になっているけど、隠れるのをやめたのかな。”

 

ふと、そんなことを思いつつひたすら走り続けた。

 

”!?”

 

気配がした。

足を止め気配のする方向に銃を向ける。

 

「誰?」

 

廃墟となったコンビニに向けて問う。

するとつい先ほど頭に浮かんだ人物が姿を現した。

 

『久しいな、ヒナ。』

 

「ジェイソン……。」

 

ジェイソン・ボーヒーズ。

自分の記憶の姿と若干違うが特徴的な仮面は健在だった。

かつて雷帝を支援していたアルカード一家の殲滅作戦で共同戦線を張った謎多き傭兵。

その正体はアビドスの借金返済に手を貸す聖人(狂人)

そして私達ゲヘナが小鳥遊ホシノと同様に最警戒対象に指定している人物。

 

「私に連絡を寄越したのはあなたね?ジェイソン。」

 

『そうだ。ひとまず話は移動しながらだ。』

 

ジェイソンの提案に頷きつつ再び走り出した。

 

『一つ聞きたいんだが、あの大軍を指揮してるのはアコだろ?』

 

どうやらジェイソンにはお見通しだったようだ。アコが指揮してるのはことまでバレてるなんて。

 

「ええ、ご明察よ。はあ……何でこんな忙しい時期に問題が増えていくのかしらね……。」

 

『エデン条約か。トリニティとの和平条約、だったか。まあ、お前達なら上手くやれるだろう。』

 

「さすがね。そのことまで知ってるなんて。」

 

『一応裏の世界にも多少顔をつっこんでる身だ。あっちだともう話題の中心になってるぞ。それはそれとして先に言っておくが今回の事後処理は厄介になる。』

 

やはり傭兵というだけあって裏の世界にも顔をきかせているようだ。

……。後半何か聞きたくないことが聞こえた気がした。

 

「はあ……。聞かせて。何があったのか。」

 

それでも私は風紀委員長。部下の不始末は私が責任を持たなければならない。

 

『端的にいえば風紀委員会が俺たちの自治区に攻撃を仕掛けた。』

 

もう既に帰りたい。

 

『流石に端折りすぎたな。少し詳しく説明する。まず、お前達が攻撃した場所は1時間前まではカイザーの土地だった。』

 

「つまり、攻撃する直前に土地がアビドスに戻ったという認識でいいの?」

 

『正解だ。攻撃が始まるほんの数分前、カイザーインダストリーの理事と俺がサインした書類がこれだ。』

 

ジェイソンが一枚の書類を差し出してきた。

旧アビドス市街地の売買における誓約書

内容はタイトルの通り過去に売られたアビドスの土地を購入する。要するにアビドスに土地が戻ってきたというわけだ。

 

『そしてこの書類にサインした直後に俺たちがいた店が迫撃砲で吹き飛ばされた。そしてカイザーインダストリーの理事は砲撃の二次被害で左足を骨折した。まあつまり言い訳はできんということだ。』

 

「……。」

 

予想の斜め上をいく被害報告に本日二度目の天仰ぎ

 

『アビドスの生徒達には俺が説明しよう。彼女達の許しを得られるかはお前達次第だ。だが、大将や街への砲撃に関してはお前達でどうにかするしかない。流石にこれは俺だけじゃどうしようもできないからな。せいぜい会場を用意するくらいだ。あと一番の問題は──』

 

「カイザーインダストリーの理事に重症を遭わせたこと、でしょ?」

 

『そうだ。結果がどうなってもお前達はカイザーに一つ弱みを与えてしまうことになる。まあ、その辺はマコトが何とかするだろう。』

 

ここにきて意外な名前が出てきた。

 

「あら、結構マコトのことを買ってるのね。」

 

『仮にも数回話しているからな。たまに……少なくない回数で言動がおかしくなることはあるがあいつの信念は一貫している。そしてその信念に反することには徹底的に反抗するやつだ。……どうした、そんな顔して。俺があいつを高く評価してるのがそんなに意外だったか?』

 

ハッと我に帰る。

確かに内心驚いていた。ゲヘナの生徒会、万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)の長である羽沼マコトは文字通りの自由人だ。

生徒会長という立場でありながらすぐ私利私欲に走り、トラブルを起こしその責任を私達風紀委員会になすり付けてくる。

それだけ聞いたなら彼女に高い評価など付くはずがないのだ。

しかしジェイソンは違った。少ない回数の接触で彼女の信念を見抜いていた。

 

「ごめんなさい。まさか顔に出てるなんて思わなかったわ……。私もその評価には賛成よ。私達(風紀委員会)と私利私欲が絡まなければ彼女は優秀なのよね。……絡まなければ……。」

 

脳裏によぎるのはマコトが行ってきた嫌がらせの数々。

正直風紀委員会の活動よりこっちのほうが厄介だ。

また今回のことで仕事が増えると思うと頭が痛い…

考えるだけ無駄ね……。話題を変えましょう。

と言っても何を話そうか。

そう思っているとふとある人物のことが頭に浮かんだ。

 

「そういえばシャーレの先生?という人がアビドスにいるらしいけどどうなの?」

 

一週間と少し前、チナツの報告書で見た人物。連邦捜査部シャーレの顧問の先生。

失踪した連邦生徒会長が残した超権限(不確定要素)

何となくアコの目的が分かった気がするするわ。

 

『先生か?そうだな……良く言えば聖人、悪く言えば狂人と言ったところか。』

 

「あら、あなたがもう一人増えたのね。」

 

『おいおい、俺は割とまともな方だと思うぞ。」

 

「まともな思考ができる人間が9億の借金返済に進んで協力すると思う?」

 

『……。そう言われるとぐうの音もでんな……。』

 

「彼、あなたと同じ外の世界から来たみたいだけど大丈夫なの?」

 

『いや、大丈夫じゃない。あいつは俺と違って銃弾一発が命取りだ。』

 

「連邦生徒会長は鬼か何かなの?一番キヴォトスに連れてきてはいけない人間な気がするのだけど……。」

 

『彼女の意図は測りかねるが、あいつは俺ができる限り守るつもりだ。と言いつつ今はアビドスの子達に任せてしまっているがな。』

 

「私の部下達が申し訳ないわね。アコの狙いはおそらく先生の保護と予想してるわ。」

 

『同感だ。便利屋を捕まえるにしてはあまりに規模がデカすぎるからな。まあ、あいつなりにお前の負担を減らそうとしてのことなんだろうが、裏目に出たな。』

 

「私を慕ってくれるのはうれしいけど、空回りは何とかしてほしいものね。」

 

『自覚できれば多少は変わるんだろうが、いつになるのやら……。……そろそろ着くぞ。』

 

「分かったわ。」

 

そう返事をし、私はスマホを取り出して通信を開く。

 

==========

アビドス市街地 

 

〈「なるほど……。」〉

 

ホログラムに映る少女はぽつりとつぶやく。

アビドスと便利屋の目の前には多数の風紀委員会の生徒たちが倒れ伏していた。

 

「第一中隊、全滅です!退却し、再整備に入ります!」

 

「第三中隊、これ以上の続行は不可能!補給のため、一時撤退します!」

 

周りでは同じく風紀委員会の怒号が響く。

 

事の経緯は紫関砲撃の直後までさかのぼる。

紫関の爆撃を確認して現場に到着した時、倒壊した紫関に便利屋68がいた。

彼女達は犯人は自分たちじゃないと主張したが先の戦いでの印象のせいか、アビドスの生徒達は全く信用せず今にも銃撃戦が始まりそうな状態になった。

そんなとき突然横からの弾幕が戦闘中のアビドス生徒達と便利屋を襲った。

その場にいた全員が困惑している中彼女達を取り囲むように多数の部隊が展開した。

展開した部隊の正体はゲヘナ風紀委員会だった。

部隊のリーダーであろう褐色肌の生徒、銀鏡イオリが便利屋を自分達の方に引き渡せ、と要求した。

しかし、アビドスの生徒達は拒否した。

理由は単純。便利屋はアビドスの自治区内で問題を起こしたため彼女達の扱いはアビドスが決める権利を持つからだ。*2

この返答に対して返したイオリの答えは便利屋とまとめて制圧することだった。

アビドスはすぐに臨戦態勢をとった。

対する便利屋、というかアルはまさかまさかでアビドスとの同盟を提案してきた。*3

最初こそアビドスの生徒(主にセリカ)が断固として拒否していたが、先生の説得の末一時的な同盟を結び、風紀委員会を倒すに至った。

ちなみにその過程で何度もかけていた電話にジェイソンがようやく出てくれて風紀委員会の規模を把握した。

 

その後、事情徴収のために会話を試みようとすると、どこからともなくドローンが飛来しホログラムを映し出した。

そこに映ったのは青色のジェリーフィッシュヘアに整った顔立ちの少女だった。*4

風紀委員会の行政官にしてゲヘナヨコチチハミデヤンの天雨アコである。

突然の行政官の襲来に周りは困惑するがアコは状況を淡々と説明した。

内容は便利屋の捕縛をしに来たとのことだった。

しかし、その説明を否定するものが現れた。

カヨコである。

彼女の主張曰く今現在の風紀委員会の運用は非効率的であり風紀委員長らしくない。そして自分たちを相手取るには人員があまりにも多く集団を相手取ることを想定しているかのようだ。そのため、今回の騒動はアコの独断であり、真の目的は先生であると。

自分の真意を見破られたアコは外周に待機させていた部隊を展開し黒幕よろしく経緯を話し始める。

トリニティとのとある条約締結に当たりシャーレの先生は危険な不確定要素でありどのような影響を及ぼすか分かったものではないと、保護に託けたようだ。

当然アビドスの生徒達はそんなこと認めるわけはなかった。

アコも当然この返答を予測しておりすぐに指揮に移行した。

 

さすがに四個中隊相手には厳しいかと思われたが、そんなことはなく先生の指揮のもと全員無事な状態で風紀委員会を撃破した。

そして先ほどの会話に戻る。

 

〈「……。なるほど、だいたい把握できました。シャーレの力、必要になるであろう兵力……。予想を遥かに上回っています。……素晴らしいですね。決して甘く見ていたわけではないのですが、もっと慎重に進めるべきだったかもしれませんね。それでも決して無敵というわけでもありません。弱点も見えましたし……おおよその戦況は読めました。このあたりをもう少し押していけば……折れるのは、時間の問題ですね。」〉

 

アコは不敵な笑みを浮かべながらぶつぶつと状況分析を行う。

 

〈「第五、六、七、八中隊。後方待機をやめて、突入してください。」〉

 

そしてこの戦いに大手を掛けるべく最後の一手を打った。

 

「風紀委員会、第三陣を展開してきました!」

 

「はあ……はあ……まだいるの?」

 

「この状況でさらに投入……!?」

 

「ひぃん……さすがに、腕が限界だよぉ……。」

 

「た、大したことないわよ!まだまだ戦えるんだから!」

 

「確かにまだいけるけど……これはもう、アコの権限で動かせる兵力を超えている。ということはこの襲撃、アコの独断じゃなくて、まさか……。」

 

「……風紀委員長が?」

 

「えっ、ヒナが来るの!?無理無理無理!?逃げるわよ、早く!!!」

 

「いや、そうは言ってない……落ち着いて、社長……。」

 

先生はアコの地位や権限の正確な大きさを知らない。しかし、このカヨコ達の反応を見るにこの状況はかなりまずいようだ。

ジェイソンの情報的にはこの攻勢が最後なのは確かだ。

しかし、先ほどの戦闘はすべて見られていた。

どう対策されるか分からない以上これ以上の戦闘は避けたい。

 

再び周囲に多数の風紀委員が展開した。

 

〈「ふふっ……これ以上は流石に……。委員長に知られてしまったら、イオリと仲良く反省文ですね……。さあ、では……三度目の正直と行きましょうか。風紀委員会、攻g」〉

 

〈「アコ」〉

 

アコが攻撃の開始を宣言しようとすると、突然通信に割り込む氷のように冷たい声。

続いてアコの映っていたドローンの映像に新たな人物が姿を現す。

癖っけの強い長髪は足元まで伸び、四つの角はそのひび割れからはアメジストのように淡く輝く光が漏れ出し、その目は獲物を見定めた蛇のように鋭い視線を向けていた。

名前を呼ばれたアコを含む風紀委員全員が困惑と同時に大量の冷や汗をかいていた。

 

「ひ、ひ、ヒナ委員長!?」

 

「委員長?」

 

「あ、あの人が……?委員長ってことは、風紀委員会のトップ……?」

 

〈「い、い、委員長がどうしてこんな時間に……?」〉

 

〈「アコ、今どこ?」〉

 

〈「わ、私ですか?私は……そ、その……えっと……げ、ゲヘナ近郊の市内の辺りです!風紀委員会のメンバーとパトロールを……。」〉

 

あからさまに動揺しながらその場しのぎで嘘をつくアコ。

アビドスの生徒達は白い眼を向けていた。

対するヒナはと言えば変わらず鋭い視線でアコを見ているがその圧は増している気がする。

 

〈「そ、それより委員長はどうしてこんな時間に……出張中だったのでは?」〉

 

〈「さっき帰った。」〉

 

〈「そ、そうでしたか……!その、私、今すぐ迅速に処理しなくてはいけない用事がありまして……後ほどまたご連絡いたします。い、今はちょっと立て込んでいまして……!」〉

 

〈「立て込んでる……?パトロール中なのに珍しい。何があったの?」〉

 

〈「え?そ、その……それは……。」〉

 

〈『ヒナ、そこらへんにしといてやれ。』〉

 

言い訳の退路がどんどんふさがれていくアコはついに言い淀んでしまう。

その時、通信からもう一つ『声』が聞こえた。

その場にいた全員の思考が停止した。

しかし考える間もなく、

 

〈「ええそうね。もう直接聞けるから。」〉

 「ええそうね。もう直接聞けるから。」

 

通信で聞こえていた声と重なるように鼓膜に直接響く声。

声が聞こえた方を向けば映像に映っていた小柄な少女、ヒナともう一人、ホッケーマスクをかぶった大男がいた。

 

「「「「ジェイソン(さん)!?」」」」

 

「い、い、い、委員長!?……と誰?い、一体いつから!?」

 

『これだけの数によく耐えれたな。さすが、お前たちだ。』

 

「……アコ。この状況を、きちんと説明してもらう。」

 

視点変わってジェイソンside

 

はいというわけで現場に到着しますた!

うん、みんなしっかり困惑してらっしゃいますね。

アコちゃんなんて顔面蒼白になってるし。

うーん、この人にしゃべってもらわんと話し進まんのだが……

 

「そ、その……これは、素行の悪い生徒達を捕まえようと……。」

 

まだ、言い分け続けr、って言ってもこれも一応は目的の一つだもんな……。

まあ、もうおらんのだけどね。

 

「便利屋68のこと?どこにいるの?今はシャーレとアビドスと、対峙しているように見えるけど。」

 

「え、便利屋ならそこに……。」

 

残念、もういません。

俺達がついた瞬間に退散してたよ。

 

「い、いつの間に逃げたのですか!?さ、さっきまでそこに居たはず……!」

 

「……。」

 

「え、えっと……委員長、すべて説明いたします。」

 

「いや、もういい。だいたい把握しているから。」

 

「え?」

 

急に素っ頓狂な声出すじゃん。

でもそうか

だって今まで必死に取り繕おうとしてたのにこれ言われたらそうなるか。

 

「だいたいのことはジェイソンから聞いたから。」

 

全員の視線を感じるんゴ……。

 

『まあ、なんだ……。運がなかったな。』

 

「……。」

 

「不安要素の確認と排除を目的とした政治活動の一環なのは理解できるけど、それは万魔殿の仕事よ。ひとまず、詳しい話は帰って聞くわ。通信を切って校舎で謹慎してなさい。」

 

「……はい。」

 

アコちゃんは通信を切った、と。

さて、ここからが俺の仕事の時間だ。

 

「じゃあ、改めてやろうか。」

 

「ちょっ、シロコ先輩!?」

 

おいこらシロコォ

せっかく話し合う空気感だっただろうが。

 

『シロコ、正座は何時間がいい?』

 

「ナンデモナイ。」

 

俺倫理観とか含め結構ちゃんと育てたと思うんだが……。

これが砂狼の血か……。

 

「私は争う気はないわ。」

 

「じゃあ何?あの変な服装の人の代わりに言い訳でもしに来たの?」

 

「そのつもりもないわ。」

 

そう言いヒナは頭を下げた。

 

「アビドス自治区の武力行使および無断侵入、そして市民に被害を出したことについては私、空崎ヒナより、ゲヘナの風紀委員会の委員長として、アビドスの対策委員会に謝罪するわ。」

 

三大校の一角の治安維持部隊の長が廃校ぎりぎりの学校の生徒に頭を下げる、この行為がどれだけ異例なことかこの場にいる全員が理解していた。

風紀委員だけでなくアビドスの面々も驚いた。

 

「ま、待ってくれ委員長!アビドスの自治区ってどういうことなんだ!」

 

「言葉のままの意味よ。あなた達が立っているこの場所はれっきとしたアビドスの自治区。つまり私達は事前通達なしで無断兵力運用を行いながら侵攻してきた侵略者というわけ。」

 

「な!?」

 

『まあ、補足してやるならお前達が侵攻してくる直前に取引で戻ってきたのが事実だ。』

 

「え、ここ私達の自治区になったの?」

 

「はい、先ほど言おうとしたことがそれだったんですけど……襲撃の対応を優先して遅れてしまいました。すみません。」

 

「大丈夫だよ!いろいろバタバタしてたから仕方ないよ!」

 

いや、ちゃうねん

俺も別に嵌める気とかなかったんよ……。

純粋に風紀委員会来るの今日なの忘れてただけで……。

だってここ来たの2年前よ?

細かいことまで覚えとれんて……。

 

「もちろん何もせずに許しを請うなんて虫のいいことをするつもりはないわ。そちらが提示した賠償でも私への罰でも甘んじて受け入れるつもりよ。私たちが壊した店の再建の資金提供やインフラの修復でもなんでもするわ。」

 

「……。」

 

こういうことをすぐ言えるところが彼女をリーダーたらしめているんだろうな。

でもな……、その選択肢はこの子たちにあんま響かないんだわ。

んでアビドスの子達もまさかそこまで言われるとは思ってなかったのか気まずそうな雰囲気してるし……。

せめて何か反応してあげて……。

 

「うへ~、こいつは何があったんだか。すごいことになってるじゃ~ん。」

 

ふぁっ!?

 

「!!」

 

「えっ!?」

 

「ほ、ホシノちゃん!?」

 

「ごめんごめん。ちょっと用事が長引いちゃってね~。少し遅れちゃった。」

 

ホシノ……。

無事でよかった。

……とりま後でがん詰めは確定か。ここ(自治区)に侵攻してきた

 

「それでもせめて連絡には反応してよ!どれだけ心配したと思ってるのよ!」

 

「ほんとにごめんね~。……で、ゲヘナの風紀委員会は便利屋を追ってきたのかな?」

 

「表向きの目的はそうだったわ。」

 

全くこの子は……。

すべてしょい込もうとするからめんどくさくなるってのに。

 

『こいつの部下が少し暴走してここ(自治区)に侵攻してしまってな。こいつはその尻ぬぐいで来た。一応さっき謝罪はしたんだがな、お詫びになんでもすると言ったんだがお前達にはあまり望ましくはないだろう?』

 

「うーん、まあ確かに望ましいことじゃないよね~。……でも何も受け取らないっていうのも何か遺恨が残りそうで嫌だし、壊したところの修復くらいは頼もうかな。」

 

「そう、分かったわ。人員を手配するから後日話し合いの場を設けるわ。」

 

「あっ、あと、アビドス生徒会委員長として、ゲヘナ風紀委員会委員長の謝罪を正式に受け入れるよ。」

 

「感謝するわ。小鳥遊ホシノ。」

 

「でも、街の人達への謝罪は別だよ~、風紀委員ちゃん。謝罪の場は設けるから首謀者の子達を連れて指定した日に来てね。」

 

「……。話は聞いていたけど、1年生の時とはずいぶん変わったわね。」

 

「へぇー、私のこと知ってたんだ。」

 

「情報部にいた頃、各自治区の要注意生徒達をある程度把握してたから。あと、依頼でゲヘナに来たジェイソンから話を聞いてたから。」

 

ギクッ

 

「ジェイソン!?風紀委員ちゃんに何話しちゃってるの?」

 

『す、すまん。思わず話してしまった……。』

 

「彼にあなたのことを聞いたら嬉々として話してくれたわ。まあ、聞かされた話はほとんどのろけだったけど。親馬鹿ってこういう人のこと言うんだな、って思ったわ。」

 

「ジェーイーソーン?」

 

いやちゃうんすよ!

冷徹無慈悲とか、孤高の狼とか俺の印象と180°違うこと言われて思わず語りつくしてしまっただけなんすよ!(目そらし)

添い寝おねだりされたとか、水族館に連れてったら天使みたいな笑顔してたとかそんなこと話してないですよ~(口笛~♪)

 

「ふふふっ、ほんとあなたは見ていて飽きないわね。……私もやることはやったしイオリ、撤収準備、帰るわよ。」

 

「りょっ、了解!」

 

ヒナの指示と共に風紀委員会はすごいスピードで撤収準備に入る。

 

「ジェイソン。」

 

ん?どしたヒナさん?

 

『なんだ?』

 

「共有しておきたい情報があるの。」

 

あ、砂漠のカイザー基地のことかな?

なら先生も一緒の方がええか。

 

『分かった。どうせなら先生にも共有しておきたいから一緒にいいか?お前も、話しておきたいだろ?』

 

「ええ、そうね。いいわよ。」

 

よっしゃ

そしたら先生呼んでお話しましょうか。

 

少し移動

 

『それで、伝えたいことってのはなんだ?』

 

ほんとは知っとるし何なら個人的に下調べ済だけどね☆

 

「カイザーコーポレーションのこと、知ってる?」

 

「……ざっくりとは。」

 

『ある程度は。』

 

「そう……。これはまだ万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)も知らない情報だけど。……あなた達には知らせておいた方がいいかもしれない。……。アビドスの捨てられた砂漠……あそこで、カイザーコーポレーションが何か企んでる。」

 

「アビドスの砂漠で?」

 

『……。』

 

「そう。カイザーコーポレーションと問題は起こしたくないから深くは調べてないけど、PMCが周りを守っていた。もし関わるつもりなら注意した方がいい。」

 

「PMC……。」

 

『分かった。情報感謝する。』

 

「いいのよ。私もあなたにはよく助けられてるから。……。小鳥遊ホシノが羨ましいわね。あなたのような大人が近くにいるのだから。」

 

あらら、嫉妬しちゃったかな?

っていうか助けほしかったら呼べって再三ゆうとるんやけどな……。

 

『何度も言ってるだろ。手助けが欲しかったら連絡しろって。少しはまけてやるからよ。』

 

「……今度からそうさせてもらうわ。日にちが確定したら連絡して。明日でも大丈夫だから。じゃあまた、ジェイソン、先生。」

 

ヒナと風紀委員会はえげつない速さで退散していった。

その後大将や八百屋を回収して病院に送り届けておいた。

 

==========

アビドス高校 対策委員会教室 先生side

 

ここ最近、ずっと忙しい1日を過ごしている気がする……。

風紀委員会が去り、対策委員会の子達とジェイソンとアビドス高校に帰ってきた。

 

「というか、ジェイソンさんはどこにいたのよ!連絡しても全然でなかったし。」

 

セリカはジェイソンを問いただす。口調は厳しいが心配していたのが見て取れる。*5

 

『すまん……。紫関を砲撃された後、大将達を救助したりヒナに通報したり砲撃元を叩いたり外縁部にいた大軍を監視したりヒナの出迎えと説明をしていた。』

 

「結構動きまわってたんだね……。」

 

「そういえば気になってたんだけどジェイソンさん、風紀委員長ちゃんとどこで知り合ったの?」

 

ユメがジェイソンに問う。

 

『最初に会ったのは2年前、とある組織からの依頼でアルカード一家のせん滅を依頼された時だ。』

 

「あ~、あれか。」

 

ピンとこない単語が出てきた。

 

「アルカード?」

 

『そうか、当時のゲヘナを知っているのはユメとホシノだけだったな。簡単な説明になるが、当時のゲヘナはとある一人の人物による恐怖政治が行われていた。』

 

ジェイソンは一泊おいて説明を続ける。

 

『その名は雷帝。奴は目的のためには手段を選ばん。拷問、人体実験なんでもするやつだ。そしてその雷帝を援助していたのが当時ゲヘナに拠点を構えていたアルカード一家だ。』

 

なるほど。少し空き時間にキヴォトスの歴史を調べる必要がありそうだ。

 

『話を戻すがそのせん滅の依頼を遂行しに現地に向かうとそこにはゲヘナの生徒達がいた。どうやら依頼主は彼女達にも情報を流していたようだ。で、その生徒達の統率を取っていたのがヒナだった。これが知り合った経緯だ。』

 

「雷帝という名前初めて聞きましたね。」

 

『それはそうだ。ゲヘナ内では言論統制が行われ、今の1、2年で知っている者はいないだろう。俺自身も絶対に外部に漏らさんように釘を刺された。だから、このことは他言無用で頼む。』

 

雷帝……。今度アロナに協力してもらおう。

 

「なかなかやばそうな内容ね……。」

 

『この話はここまでだ。今日も全員疲れただろう。家に帰ってしっかり休め。』

 

「はい、では今日は一旦解散して、また明日学校で状況の整理をしましょう。」

 

「……うん、そうだね~、アヤネちゃんの言う通りだよ。今日はもう解散、明日また教室で。」

 

「そうしましょうか。」

 

「そうね……、早くシャワー浴びたい……。」

 

「ひぃん……。明日は腕が筋肉痛だよぉ~。」

 

今日もみんないつものように解散していった。

 

「さあ~て、今日はおじさんが巡回か~。がんばろ~。」

 

『先生。』

 

みんなが去っていくのを見守っているとジェイソンに話しかけられた。

 

『今夜、少しいいか?』

 

==========

その日の夜 対策委員会教室

 

「ふいー、さてこんなものは忘れてさっさと行きますかね~。」

 

時計の針が日をまたぐ頃、ホシノの手には封筒が握られていた。しかし気持ちを切り替えるように頭を横に振り、封筒を仕舞い、扉に向かう。

扉の取っ手に手をかけ開けようとした瞬間ホシノは手を止めた。扉の向こうに気配を感じた。

しかしホシノは一瞬ためらうしぐさを見せた後そのまま扉を開けた。

 

「やあやあジェイソン。あ、先生も~。こんな夜中にどうしたの?」

 

『……。』

 

ホシノはいつものようにふるまいジェイソンに問うが返答は沈黙。

 

「……。さすがにジェイソンはごまかせないよね……。」

 

『分かっているならいい。少し話に付き合ってくれるか?』

 

「おお~、デートのお誘いかな?」

 

『……。』

 

ホシノはおちゃらけて見せるがジェイソンは無反応だった。

 

「分かった。いいよ、入って。」

 

もうごまかせないと分かったホシノは素直に二人を招き入れる。

 

「それで、お話って何を話すの?」

 

『単刀直入に聞く。カイザーに何を言われ、何をされた?』

 

ホシノの肩が微かに震えた。

 

「それは……、いくらジェイソンでも言えない……。……お願い、私のことは放っておいて……。」

 

ジェイソンは参ったな……、というように後頭部を掻く。

ホシノは断固として話さないという姿勢だ。

先生も何とか聞きだしたいが策なしといった様子である。*6

その時、

 

「クックックックッ。何やら、面白い状況になっていますね、ホシノさん。」

 

「!?」

 

突如として教室に響く不気味な笑い声。

振り向けばそこには全身を黒色のスーツに身を包んだ異形頭がいた。

 

『いつからそこに居た』

 

「あなた方が教室に入った直後からです。……あぁ、お初お目に掛かりますね、連邦生徒会長が残した超権限であり不可解な存在、シャーレの先生。」

 

「あなたが……黒服……。」

*1
万魔殿のタヌキが命じた可能性もあるけど……

*2
あと疑惑(ほぼ確信)だが紫関を砲撃した可能性があるため従いたくなかった節もある

*3
後の匿名インタビュー「同盟を提案した理由?前まで敵だった人達が共通の敵を倒すために協力するのは最高にハードボイルドでしょ!」

*4
服装に関してはノーコメで……。

*5
後でジェイソンがスマホ見たら大量の着信来てたらしい(ちなみに先生だけつながったのはアロナを通じてエアに連絡したから)

*6
事前にジェイソンからある程度の情報は聞いている




さて、皆さんはゲヘナ編を読みましたか?私は感情の緩急が激しすぎて脳が壊れましたね、はい。
この(私が書いている)物語において雷帝はかなり重要な要素(主人公君がアビドス中心に行動してるから)なので詳細が待ち遠しい限りです。

高評価、コメントいただけると作者が喜びます。
次回、かなり先になるかもですがお待ちください。
ではまた!

皆さんにお聞きしたいのですが4000~5000字の短めと7000~8000字の長め、どちらの方が読みやすいですか?

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