TFO 〜transformer onlin〜 作:暁司令官
対面
何も無い。真っ白な空間、そこをキリトの意識は漂っていた。
キリト「ここは……一体……」
自分はついさっきまでヒースクリフ……いや茅場晶彦とゲームのクリアを賭けたデュエルをしていて彼にトドメを刺したと思っていた。
通常なら死亡したらポリゴンの粒子となって消える筈が、ノイズに包まれて消えるという正体不明の現象に彼も意識が飲み込まれ、気がつけばここにいた。
気配を感じて振り向いた。そこには今まで自分の夢に度々現れていたロボットが見下ろす形で彼を見ていた。
キリト「アンタは…」
「ようやく君と話す事ができるな、キリト」
低く落ち着きのある声で話しかけられた。
よもや彼が話せるとキリトは微塵も思っていなかった。
キリト「俺の事を知ってるのか⁈」
「知ってるも何も、君の魂を通して君の人生やその世界の事を我々は見ていた。最も度々君も我々に干渉していたようだが…」
キリト「我々……?干渉……それに魂って……アンタは一体何者なんだ…?」
「申し遅れてすまない。私の名はスターセイバー。超ロボット生命体トランスフォーマーという…謂わば宇宙人の一種だ」
キリト「トランス…フォーマー……」
セイバー「我々は
一見すると気宇壮大にも感じられる内容だがキリトには一つ心当たりがあった。
キリト「それって……もしかして俺が夢で見た」
セイバー「そう、君が見たあの戦いがそうだ。戦いの後我々はボディを失う代わりにスパーク…君達人間で言う魂はどういうわけか残り、この宇宙に散らばって数百万年…長くて数億年以上漂い続けた」
キリト「………」
セイバー「そして気がつけば私は君の魂と同化していた」
キリト「言ってる事の大半が信じられないけど……まぁそれは置いておくよ。てことは俺が……」
セイバー「現実で家族とそういう関係にある事も………無論君がこの仮想空間で見聞きし経験した事も……
キリト「な…!」
セイバー「話を戻すが君はこの一連の事件の首謀者を倒した……の所までは行ったな?」
キリト「あぁ…」
そこまで見られていたのかとキリトはふと疑問をぶつけた。
キリト「なんで手を貸してくれなかったんだ?」
セイバー「……出来ればやりたかったさ。だが…」
彼はそう言いながら胸部のハッチを開けて光り輝きながらひび割れた水色の宝玉を見せた。
セイバー「まだ魂の傷というものが完治し切っていなくてな……すまない。この状態では戦うことはおろか、肉体を具現化すればどうなるか分からない。最悪スパークが崩壊する恐れがある」
キリト「ごめん……」
セイバー「君に責任は無い。だがこうして君と話をしたり助言することはできる。それで言わせてもらうが、このゲームはまだ続く」
キリト「⁉︎」
セイバー「私の長年の勘といったところだろうか…だが大丈夫だ。必ずクリアできる」
キリト「保証は…?」
セイバー「君の仲間と私が教えた事……それがそうだ」
キリト「そうか……ありがとう」
それだけ言い残し、キリトの意識は戻って行く。
不安と安堵が入り混じった表情で彼を見送ったセイバーの元に歩み寄る存在が現れた。
「話は済んだか?」
セイバー「長官…」
振り返った先にはスターセイバーと同様にヒロイックな見た目をした同サイズの
コンボイ「大丈夫か?」
セイバー「不安ではない…と言えば嘘になります。ですが私は彼を信じています。彼のような剣士を私は見た事がない、経験は無論我々に比べたら遥かに浅い。ですが…」
コンボイ「育てれば立派な剣士になる……と?」
セイバー「はい…お恥ずかしながら」
それを聞いた彼はマスク越しとはいえ笑顔を浮かべているかのように応えた。
コンボイ「いや!それでいい。そうやって積み重ねてきた信頼があるから、我々トランスフォーマーは人間達と共存してこれた。確か……ジャン君だったか?彼が君の息子ならあの少年はどんな存在だ?」
彼の問いにセイバーは戸惑う様子も無く少し考えて応えた。
セイバー「そうですね。言うなれば……弟……といったところでしょうか?それとも弟子…?」
コンボイ「……ハッハッハ!いずれにしろ彼はこの世界のキーパーソンだ。信じようじゃないか」
セイバー「はい」
意識を再びアインクラッドに戻したキリト。
どうやらこちらではほんの僅かな、1秒にも満たない時間だったらしく。
突き出した剣の先にヒースクリフ、茅場晶彦の姿は無かった。
キリト「終わった……のか…?」
さっきの話が嘘かどうかは分からないが、目の前の現実を見て彼は思わずそう呟いた。直後、背中に何かぶつかったような衝撃が走った。
振り返るとアスナが涙ながらに抱きついていた。
キリト「アス…ナ」
アスナ「バカバカバカッ……ほんとよかった…キリト君……キリト君………!」
瞬時に自分が彼女に多大な不安を賭けた事を思い出したキリトは両手に握ってた剣を手放し、彼女を抱きしめた。
キリト「ごめん…アスナ でも俺ちゃんと生きてるよ」
アスナ「グスッ…ほんとよかった……キリト君…」
しかしここからもまた長かった。
スターセイバーがキリトに示した通りゲームは彼を倒してもクリアの気配を見せず、已む無くキリト達攻略組はゴールである100層を目指すのだった……