賭博堕天録カイジ 24億日常編   作:筆先文十郎

1 / 9
賭博堕天録カイジ 24億日常編

 2026年1月11日。

 深夜。潜伏している一軒家でカイジは安物のコタツに潜り込みながら缶ビールを開ける。

 プシュッ、という音が空しく響く。

「なぁ……俺達、いつになったら逃げきれるんだ……?」

 机に顔を伏せながら泣き崩れるカイジにチャンとマリオは困り果てる。

「カイジさん、またその話ですか?」

「そうですよ、カイジさんがやけ酒したところで事態は動きませんって」

「お前らな……」

 缶ビールを一気飲みするとカイジはバンッ! と机に叩きつけるかのように置く。

「俺達はまだ目的を果たしていねぇ……もし24億脱出編(このマンガ)が長期休載なんかせずに毎週進んでいたら……俺達は南の島でバカンスを送っていたはずだ……! それなのに、なんで俺達はこうして帝愛以上にご近所トラブルに恐怖する生活を送っているんだ……!?」

(いや、マリオ(僕)がデパートで袋の鼠になった際、たかだか数時間のことで数巻も費やした作者なら絶対今も逃亡生活を描いていると思いますよ……)

 そう思った二人ではあったが、言ってもどうにもならないと諦めカイジをなだめる。

「ま、まぁ……細かいルールとかこの辺の独自ルールを守らないといけないというのはキツイですよね……」

「僕なんてこの間の町内掃除で掃きが甘いって怒られましたし……」

「そうだよ! 帝愛より隣人の方が怖いってどういう状況だよ……! そもそも作者が完結させずに連載をストップしたせいで『24億日常編』という二次創作が作られるハメになってんだよ……!」

 カイジは飲み終わった缶ビールをゴミ箱に投げ入れる。缶ビールはゴミ箱の角に当たって弾かれる。その缶ビールをため息をついたチャンが捨てる。

「まぁ、でも僕らはまだマシな方だと思いますよ、カイジさん。世の中には一晩の麻雀で10年以上やっていた……なんて話があるんですから」

「確かに10年以上同じ卓で同じ相手と血を失う恐怖と戦っているのと比べたら……」

アカギ(そっち)は休載ありつつも何だかんだ言って完結しただろうが……!」

 天井に向かってカイジは叫ぶ。

「俺達は長期休載中。休載ということは物語は一歩も進行していない。進行していないということは帝愛の連中に捕まることがない。と同時に帝愛の追撃という恐怖が終わらないということ……! だからこういう風に日常を送るしかないということ……!」

 ズルンッと鼻を啜りながらカイジは続ける。

「俺達はいつまでこんな生活を続ければいいんだ!? 帝愛よりゴミ捨てや掃除とか近所トラブルに怯え、帝愛からどう逃げ切るかじゃなく近所のスーパーで店員が半額シールをいつ張るかを他の客と争う生活を……!」

「……」

「……」

 かける言葉が見つからず呆然と自分を見る二人をよそに、カイジは再び机に顔を埋めた。

 

 

 

「頼む……作者……! 俺達を……動かしてくれ……!!」

 小さくもはっきりとしたカイジの切実な願いが作者に届くか否かは……誰も知る由はなかった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。