賭博堕天録カイジ 24億日常編   作:筆先文十郎

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賭博堕天録カイジ 24億連載?編

 とある作業場

「ふう」

 自分以外誰もいなくなった作業場で、様々な漫画を世に送り出した漫画家Fはペンを置いて大きく伸びをした。

「もう少し描きたいところだけど。腕はもちろん、肩も腰も痛い……ここは外の空気でも──」

 Fの言葉は突然開かれた扉によって止まる。サングラスに黒服という異様な恰好の男達が現れたからだ。

 

 警察。

 

 Fがスマートフォンを取る前に男達は一気に間合いを詰めると、抵抗できないように四肢を抑える。

「は、離ッ!? ──」

 叫ぼうとした口を液体が染み込んだハンカチで塞がれる。ハンカチに染み込まれた薬品を嗅いだ瞬間、Fの意識は自分の意思とは関係なく闇へと落ちていく。

「さっさと運ぶぞ」、「はい」、「証拠は一切残すなよ」

 男達が呟く声が遠くの事のように聞こえた。

 

 

 

「……うぅん、あれ……ここは?」

 Fは目を覚ます。そこは薄暗いコンクリートの部屋だった。立ち上がろうとしたFだったが身体を動かすことが出来ない。この時Fは初めて自分が椅子に拘束されていることに気づいた。

(これは……夢か? 誰が何の目的で……?)

「……わからない」

 しかたなくFは部屋を観察する。この部屋に来るのは初めてだった。しかしFにはこの部屋に見覚えがあった。自身が描いた漫画で金融会社の地下深部に酷似していたからだ。

 

 ガチャッ

 

 重苦しい扉が開かれる。数人の黒服を引き連れ、白髪の髭と鼻に位置する醜いあばたが特徴的の老人が杖をついてFの前に姿を現す。

 老人とは初対面ではあったがFには見覚えがあった。なぜならその老人は自身が描いた漫画に登場する金融会社の会長に酷似していたからだ。

「いやぁ、先生……。先生とお会いするためとはいえ、このようなご無礼を……」

 言葉こそ丁寧だが、その言葉を発する顔からは傲慢さがにじみ出ていた。

「わ、私をどうするつもりだ……?」

 目の前の老人の性格を熟知していたFは震えながらも尋ねる。

「そうそう……先生」

 Fの言葉を無視して、老人は話しかける。

「先生が今描いていらっしゃるゴルフ漫画……あれは実に面白い! 

 プロテストに落ち続ける主人公がスローペースながら心理描写が深く、誰もが共感できる「うまくいかない現実」を描くのが面白さ……。失敗をやり直せるプチタイムリープ能力を得るなど型破りな展開で読者を引き込み……いやぁさすがはギャンブル漫画の巨匠が描くだけあって、誰も見たことないゴルフ漫画……いやぁ、実に面白い……」

「……」

 Fはゴクリと喉を鳴らす。老人は今描いている自分の作品を褒めてはいるが、表情には明らかな怒気を(はら)んでいたからだ。

 まるで長期休載して自分の出番がないことに(いきどお)るマンガのキャラクターのように。

「先生……」

「……ッ!」

 老人の言葉にFは全身に力を込める。

「ワシは賭博堕天録カイジのファンでしてな……。特に24億脱出編は面白い……。続きが見たくてどうすれば読めるのかな、と日々考えるくらいに……。例えば……先生の身内や漫画の関係者を鉄板の上に強制土下座させたり、指先と爪の裏の肉の部分から針を突き刺して出血させ、爪をマニキュアの如く赤く染めたりすれば描いてくれるのではないか……そんなことを考えるくらいに……」

 その光景を想像したのか、老人は心の底から嬉しそうに涎を流しながら笑う。それに反比例するかのようにFの身体から恐怖で汗が流れる。

「……ククッ。冗談ですよ、先生……」

 老人は黒服に目配せをする。黒服は何も言わずFの拘束を解く。

 部屋を出ようとするFに、老人は言った。

 

 

 

「先生。『賭博堕天録カイジ 24億脱出編』早く続きを描いて下さいよ……でないと続きを描かないことに激怒したファンが……という可能性がありますから……」

 

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