賭博堕天録カイジ 24億日常編   作:筆先文十郎

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村岡編を書いてみたら思いついたので。


三好と前田

 某ファミレス。

「「はぁ~……」」

 上司である村岡の愚痴から解放され、最寄(もより)のファミレスに入った三好と前田は大きくため息をついた。

「……」

「……」

 適当に注文を決めた二人は何も話すことなくただ黙る。

「……なぁ」

 前田が口を開く。

「なんで俺達……社長、いや。村岡の言葉に納得されたんだろう?」

「いや、それはあのカイジが俺達への分け前を着服したからだろう?」

「……いや、俺さぁ……今頃になって思ったんだよ……」

 言うべきか言わないべきか数秒考えた後、前田は喉まできていた推測を口にする。

「カイジが言っていたこと……実は本当だったんじゃないか……って」

「……はぁ!?何言ってんだ!?」

 三好は身を乗り出し、声を荒げた。

「ふざけんなよ前田……! 今さらそんなこと言うなよ……! あいつの言葉なんて……信じられるかよ……信じたくねぇよ……!」

 そんな三好を見ながら、前田は静かに続けた。

「だって……最初から着服するつもりだったら……俺らの釈放のために使うか?」

「……!?」

 その言葉に三好は固まる。

 そうかもしれない……。そう思う三好に前田は続ける。

「カイジが全部着服しても……俺達はあいつを追えない。仮に地下を自力で脱出したとしても……その間にカイジは雲隠れできる」

 前田の言葉に三好は息を呑んだ。

 握っていた拳がゆっくりほどけ、視線がテーブルへ落ちる。

 反論したいのに、言葉が喉でつかえて出てこない。

「……」

「……」

 二人は同時に黙り込み、テーブルをただ見つめた。

 胸の奥にあの時の判断がどれほど自分たちの人生を狂わせたのかという後悔が、じわりと広がっていく。

 三好は拳を握りしめた。村岡の言葉に乗らなければ……すべては違っていたかもしれない。

 

「あの17歩がなければ……」

 

 うつむきながら涙をこぼす三好は愚痴をこぼす。

「俺達が嫌われてるのは“誤解”だ……俺はもっと評価されるべきだった……村岡のせいでイメージが悪くなった……あのクソ社長がいなければ、今頃カイジさんの付き人として読者の好感度が爆上がり……」

「……いや、三好……」

 前田はストローを噛みながら、ぽつりと呟いた。

「俺ら……あの時、完全に小物だったよな……読者から嫌われても……仕方ない気がするんだよ……」

 噛みすぎたストローがぐにゃりと折れた。

 前田はそれを力なくテーブルに置き、かすかに笑った。

「……言ったところで、もう評価が戻るわけでもないけどな……」

「やめろよ前田……! そういう“正論”が一番刺さるんだよ……!」

 三好は顔を(おお)った。

「だってよ……俺ら、カイジさんを裏切って……そのくせ“自分たちは被害者です”みたいな顔して……そりゃ嫌われるよな……」

 二人はしばらく黙り込み、ただテーブルの水滴を指でなぞった。

 今さら何を言ったところで、あの時の自分たちが変わるわけでもない。

 三好は顔をゆがめ、何か言い返そうとして口を開いたが……結局、声にならなかった。

「……なぁ三好……俺たち……スピンオフどころか……“再登場”すら怪しいよな……」

(いや……俺は上京生活録イチジョウに出ているけど……)

 そう言いかけた三好だが言えば空しくなると思い、言葉を引っ込めた。

 二人は同時に深いため息をついた。

 

 

 

「「……あの17歩さえなければ……」」

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