転生してイージーモード!   作:ハニラビ

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楽しい楽しい修学旅行

 

 中学生における一大イベントと言われて思い至るのは、そう修学旅行だ。中学生なら期待に胸を膨らませることだろう。

 ぼっちには辛いイベントじゃないかって?あれれ〜おっかしいぞ〜と、某名探偵の少年ボイスが聞こえてきそうだが、空耳だ。琴音だって前世の学生時代ならちゃんと友達がいたんだ。だから、修学旅行に期待を寄せていても何も間違いではないのだ。

 

 ぼっちどうこうは脇に置いておくとして、重要なのは修学旅行の中身だ。

 教科書だけでは得られない体験的な学び?集団生活を通して協調性を身につける?それとも班別行動で自主性を向上させる?

 

 

 どれも違うだろう。では何かと問われたら、

 

 

 男女の仲の進展、そして告白だ。

 

 

 普段とは異なる環境、告白しやすい自由行動の時間、班員が友達であれば応援してくれる。現在は2012年とまだまだ中学生へのスマホの普及率は高くはなくメールで伝えるという手段も一般的では無いからこそ、こうしたイベントで思いを伝えようとする。

 

 

 

「修学旅行で、彼女を作る!」

 

 

 

 琴音には自信があった。なんとバレンタインの日にチョコを貰っていたのだ。ちゃんと女子から。

 

 

(たぶん詫びチョコだろうけど、女子からのチョコレートなんて前世も合わせたら何十年ぶりになるんだろう。)

 

 

 チョコをくれた相手は西園寺玲奈である。小学生の時に琴音をハブっていたリーダー的な存在、クラスは違っていたが当然同じ中学校に進学していた。

 その相手からチョコを貰っていたのだ。チョコは一目で高級そうだと分かるデザインの箱と包装で包まれており、手渡された時は一瞬なんだか分からなかったくらいだ。

 

 

 

 どんな理由であれ家族以外の女性からチョコを貰えたという事実な琴音にとって謎の自身をつけるには十分なものだった。

 

 

 

 とはいえ、未だに琴音は告白される事が前提の考え方であり、女性側からのアクションを求めているのだが琴音は根本から間違えている。

 彼氏、彼女という関係に発展するのには段階というものが当然あるのだ。多分、琴音はぼっちでいすぎてその辺りの事が頭からすっぽ抜けているのだろう。

 

 それに女性に好かれるにはまず会話する所からスタートしなければ話にならない。

 そうでないなら容姿という一点のみでの評価にしかならず、琴音の今世は女性であるのでキープすらされないだろう。琴音はいい加減、戦いの土俵にすら立てていないことに気づくところから始めなければならない。もっともこの事を話せる友達がいないので改善することはない。なんだこの可哀想な生き物は。

 

 モテる男はガンガンいくまでもなく、女性と普通に会話出来る。女性との会話に気負うことがないのだ。琴音はまず誰かと会話するところから始めないといけないだろう。

 

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 そして迎えた修学旅行。行き先は定番の京都、奈良。清水寺だの金閣寺だ。

 自由行動、班行動、旅先マジック。告白イベントのフラグはこれでもかと立っている。だから、この状況は何も不自然なことではなかった。

 

 

 

 琴音は手紙で呼び出された場所へとやって来ていた。相手は琴音の姿を目にして、本当に来てくれたことに安堵した様子を見せた。

 

 甘酸っぱい青春のワンシーン。琴音が望んでいた展開だろう。

 

 

 

 一つだけ間違いがあるとするなら、琴音は女で告白をされるとしたら男からのものであるということだ。

 

 

 

「前から……琴音さんのこと、好きで……。俺と、付き合ってください!」

 

 

 

 視線は泳ぎ、手はぎこちなく握られ、勇気を振り絞って琴音へと告白した。どう見ても男だ。

 

 

 

(どーしてえええええぇぇぇええええ!!!)

 

 

 

 琴音は心の中で絶叫した。クラスメイトの女子から手紙を渡されて告白されるのかと思っていた。これで彼女持ちになれるのかと小躍りしそうだった。

 手紙に書かれていた文字はやたらと角ばっていて筆圧が強く、線が太く、可愛さや丸みとは無縁の字。なんか変だなと思うものの字なんて関係ないと頭を振って打ち消したが、嫌な予感はしていたのだ。

 

 

 琴音の表情は、みるみるうちに死んでいった。相手からは前髪で隠れているので見えていないのが不幸中の幸いだった。

 

 

 

 琴音はただ一言掠れる声でこう答えた。「……ごめんなひゃい。」と。

 

 

 

 相手の男子からしたら勇気を振り絞っているというのに、そんな重大な場面で噛むなよ琴音、可哀想だろ。

 

 

 

 

 

 




時系列的には中学二年生の時に西園寺玲奈からチョコを貰っており、修学旅行は中学三年生です。舞台は現代日本ですが、リアルとリンクしている部分としていない部分があります。例として災害の発生時期が違っていたりしています。別の世界線くらいに思ってください。
西園寺玲奈が一年生の時にチョコを渡せなかったのは、チョコを渡すための踏ん切りがつかなかったから。この辺りの話は次ぐらいにします。
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