君がいた歯車の中で   作:ユフたんマン

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にわかなのに擬人化スージーが可愛すぎて書いてしまった。(擬人化はしません)
にわかなので矛盾があるかもですが生暖かく見守っていただきたいです。



拾われた星

金属と蒸気の匂いが、少年の世界の全てだった。

ここは工業惑星の裏側、資源採掘と兵器製造で栄えた星の、管理から外れた区域。

地図には載っているが、誰も気にも留めない場所。

故障した施設、廃棄された機械、そして行き場のない少年、ゼインのようなもの達が集う。

 

無数のパイプが空を走り、排気音が絶え間なく鳴り続けるその場所で、ゼインは生きていた。

いや、「生き延びていた」と言う方が正しい。

親の顔は覚えていない。

ゼインという名前だけはあったが、それも誰が付けたのか分からない。

拾った廃部品を売り、時には食料を盗み、眠る時は建物の影。

そんな日々が当たり前だった。

 

「……今日も、ダメか」

 

薄汚れた手のひらには、売り物にならない歪んだ金属片が一つだけ。

捨てようとして、やめる。

ここでは捨てるという行為そのものが贅沢だった。

生まれた時から、この星だった。

正確にはこの区域から出たことがない。

だから生きる術を覚えるしかなかった。

手の中にある歪んだ金属片。工場から流れ着いた廃材だが、運が良ければ食事一回分になる。

 

 

ため息を吐いたその瞬間だった。

 

「それ、もう少し磨いたら使えると思うけど?」

 

不意に、澄んだ声が聞こえた。

ゼインは湧き上がる焦燥を隠し、金属片を握りしめ振り返る。

そこにいたのは自分と同じくらいの年頃の少女だった。

淡い桃色の髪。場違いなほど整った服装。溢れ出る気品。

そして何より、この場所には似つかわしくない、好奇心に満ちた瞳。

 

「……何だよ」

 

警戒するように身構えるゼインに、少女は気にした様子もなく屈み込む。

 

「アタシ、スザンナ。お父様の仕事で来てるの」

 

そう言って、金属片を手に取った。

 

「この歪み、多分熱で曲がってるね。素材は悪くないよ。まぁこのままじゃ買い叩かれるでしょうけど…」

「……分かるのか?」

「うん。こういうの、好きだから」

 

スザンナは笑った。

それは、ゼインがこの星で初めて見た、純粋な好意からくる笑顔だった。

 

 

 

それから、二人はよく話すようになった。

スザンナは父親手伝いの合間に抜け出してはゼインの前に顔を出した。

ゼインは拾った部品を見せ、スザンナはそれを評価し、時には簡単な修理方法を教えた。

 

「アナタ、なかなかスジがいいわね。ちゃんと学べば、すごい技術者になれるわよ」

「……俺には、そんな場所ない」

 

ゼインがそう言うと、スザンナは一瞬だけ言葉に詰まった。

 

「……じゃあ」

 

彼女は、決意したように立ち上がる。

 

「お父様に、会わせてあげる」

「は?」

「大丈夫。アタシと同じで話の分かるお父様だから」

 

スザンナの父親の話は既に聞いている。ゼインのような日陰者ですら知る、突如頭角を現した新興企業、ハルトマンワークスカンパニーの社長。スザンナはそのお令嬢様だったわけだ。

 

そんな気まぐれからか、スザンナの放った言葉を、ゼインは半信半疑で聞いていたのだった。

 

 

 

 

▽▽▽

 

まさか本当にこうなるとはゼインも想定していなかった。

広い部屋、整然と並ぶ最新鋭の機械群。

中央には玉座のような椅子。

そこに座る男は恰幅のいい丸っこい身体で、背筋は異様なほど真っ直ぐと伸びていた。整えられた口髭と、冷たい光を宿した青眼。視線だけで、場を支配する種類の存在。

 

こうして目の前に立つだけで自分が場違いの存在だと嫌という程理解させられてしまう。

 

その男はハルトマンワークスカンパニーの社長にして最高責任者、プレジデント•ハルトマン。

 

「ほう……君が」

 

どうやらスザンナから話は聞いていたらしく、ハルトマンはゼインを見下ろししばらく黙っていた。

冷たい視線。品定めと言ったところか。

だが、そこには計算だけではない何かがあった。

 

少しばかりの質問の応酬。使い慣れない、ぎこちない敬語を用いながらも応酬を続ける。

 

そしてハルトマンの顔に映ったのは驚嘆。

 

「この環境で、独学でここまでの知識を?」

「……生きるのに、必要だっただけだ…です」

 

ゼインはそう答えた。

 

一瞬の沈黙。

そしてハルトマンは低く笑った。

 

「素晴らしいのであーる!才能は、埋もれさせるものではない!」

 

立ち上がり、ゼインの前に立つ。

 

「名は?」

「……ゼイン」

「そうか。ではゼイン、私と共に来なさい」

「……は?」

 

その言葉を理解出来ず、思わず聞き返してしまう。

ハルトマンは、再度、はっきりと告げた。

 

「あー… つぅ、まぁ、りぃ、だ。君を私が引き取る。スカウトというやつであーる!」

 

息を呑む音がした。

横を見るとスザンナが安心したかのように胸に手を当てている。

 

ゼインは理解が追い付かず、すぐに返事ができなかった。

 

この男は信用できるのか。

それとも利用されるだけか。

分からなかった。

それでも、ゼインにはそれしか選ぶ道は無かった。

 

「……お願いします」

 

声は少し震えていた。

 

 

 

 

 

 

▽▽▽

 

その日から世界が変わった。

柔らかい寝床に温かい食事。

知らなかった言葉に知らなかった静けさ。

落ち着かなかった…

いつ奪われてもおかしくない気がして。

それでも、スザンナは隣にいた。ハルトマンは与えてくれた。

ここには自分の居場所があった。

 

 

だからゼインは誓った。

この場所を、この人たちを、何があっても守ると。

その誓いがやがて彼を最も過酷な運命へ導くことを、この時のゼインにはまだ知る由もなかった。

 

 




ゼイン
本作主人公。スージーやハルトマンと同じ種族。少し前まではボサボサの黒髪にボロボロの布を身体に巻いただけの状態だった。孤児で親の事は一切覚えていない。


スザンナ
後のスージー。まだ幼いが類い稀なる才覚を有し会社へ貢献している。ロリ。
ゼインを見つけたのは偶然で何となく興味本位で近づいた。しかし顔を合わせるうちに、彼との関係を通して「友情」というものを初めて理解し、父であるハルトマンにゼインを推薦する。ゼインとはフレンズ。


ハルトマン
本名はゲインズ・インカム・ハルトマンだが、本作では便宜上ハルトマン表記。
愛娘から「才能の原石がいる」と聞かされ強い関心を抱く。実際にゼインと対面し、その才能が本物であると判断したためスカウトした。
成り上がるためなら使えるものは何でも使う。
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