呆れるほど平和な国、星型の惑星ポップスターの中心部に存在するプププランド。
空は澄み、そよ風が肌をくすぐる。今日も、何一つ変わらぬ穏やかな一日が流れていた
その平和が、機械仕掛けの侵略者の到来を持ってまもなく終わる。
影が落ちる。
最初は、誰もそれを異変だと思わなかった。
雲が一つ増えただけ。太陽が一瞬、翳っただけ。
だが、その影は一向に動かない。
見上げた空に、巨大な球体が存在していた。
小さな惑星に匹敵する質量を持つ金属の球体。
金属の外殻に刻まれたHの紋章が空そのものを支配していた。
ハルトマンワークスカンパニー本拠地、
超巨大母艦《アクシスアーク》。
次の瞬間。
母艦の下面が開き、五本の脚がゆっくりと伸び始めた。
それは轟音と共に、脚が惑星へ突き立てられる。
大地が震え、草原が裂け、地鳴りが悲鳴に変わる。
脚の周囲から、侵食が始まった。
緑が鈍色へ。
土が装甲へ。
自然が、機械に書き換えられていく。
星が、資源として加工されていた。
その様子を見ていたプププランドの王、デデデ大王が
城の上で唸る。
アクシスアークから様々な兵器が投入されていく。それは星の資材を回収する機械。反乱分子となり得る現地民を排除するための侵略兵器。
その夥しい量の侵略兵器を目にしたデデデ大王は、この星の危機と理解するや否やすぐに部下のワドルディに対空砲を展開させる。
命令が飛ぶ。
兵士たちは慣れた手つきで砲を組み上げる。
砲撃。
火線が空を走る。
直撃…のはずだった。
しかし、アクシスアークは微動だにしない。
爆煙が散り、装甲が光を反射するだけ。
反撃は一瞬。
球体の一部が開き、眩い光が集束する。
次の瞬間、巨大な砲台からレーザービームが放たれた。
音が消える。城が光に飲み込まれる。
砲台は溶け、城壁は崩れ、王城は容易く形を失った。
その光の残滓を突き抜けて、何かが落ちてくる。
人型。金属の躯体。
背中にはジェットユニット。
着地すると同時に重い音。
全ての動きに無駄がない。
膝を使わず、体重を正確に地面へ逃がす着地。
一定の歩幅、一定の速度で歩き出す。
揺れのない機械的な歩行。
ゼインボーグ。
星の夢は判断を下していた。
デデデ大王は戦闘力、資源価値あり。
ゼインボーグと同様、サイボーグ化、利用価値ありと。
ゼインボーグに巨大な木槌が振り下ろされる。
怒号と共に全力の一撃。
だが。
ゼインボーグは一歩も退かない。
レーザービームが刃のように走る。
木槌は断面を灼かれ両断された。
続く蹴り。
衝撃が空気を歪ませる。
デデデ大王の巨体が宙を舞い、
地面へ叩きつけられる。
そこへ追撃としてミサイルが放たれる。
一発ではない。
雨の如く、爆炎が覆い尽くし、デデデ大王は動かなくなった。
小型運搬機が降下し、
倒れ伏したデデデ大王を貨物として回収する。
ゼインボーグはそのまま無機質な瞳を空へと向ける。
見上げたその先、空では別の抵抗が始まっていた。
戦艦ハルバード。
主砲が火を噴き、空を裂く一撃がアクシスアークへ向かう。
だが、先程と結果は同じ。
レーザーで一閃。
戦艦は爆散し無情にも墜落していく。
しかしその瓦礫の中から、黒い影が飛び出す。
仮面の騎士メタナイト。
翼を広げ、一直線に母艦を目指す。
ゼインボーグはそれを確認したと同時にジェットで急浮上、アクシスアークを目指すメタナイトへ不意の一撃。
そしてそこから剣戟が始まる。
ギャラクシアの刃が閃き、ビームソードがそれを迎え撃つ。
速い。
鋭い。
だが噛み合わない。
ゼインボーグは剣に執着しない。
距離が空けば撃つ。隙があれば叩き落とす
勝つための動作だけを選ぶ。メタナイトとは違い騎士道の欠片も持ち合わせていない。
さらには先程の不意打ちによりメタナイトは負傷、万全とは言えない状態での戦闘。
痛みに一瞬の隙。その微細な隙を、完璧にプログラムされたゼインボーグは見逃さない。
メタナイトを地面へ叩き落とし、
即座にミサイルを投下。
爆炎。
尚もメタナイトは立ち上がるも、アクシスアークからの援護射撃でメタナイトはさらに追撃を受ける。
そしてついにメタナイトすらも満身創痍となって倒れ伏してしまう。
二人目の資源が、回収された。
ゼインボーグは振り返らない。
任務はまだ終わっていない。
星の夢の命令は、この星に存在する反乱分子の排除。及び、この莫大な資源の眠る星に居着く邪魔な存在である原住民の駆除。
先行した侵略兵器がより破壊されている方向へ向けて、ジェットをふかせて飛び立って行った。
一方その頃。
草原の端、大きな木の下で丸い影がすやすやと眠っていた。
風が吹き、機械化の波が迫っても、未だに目を覚まさない。
やがて、目が開く。
「……?」
見渡すとそこは見覚えのあるようで、まるで違う景色だった。
金属の地面。
歯車の木。
変わり果てたプププランド。
カービィは首を傾げる。
きっと、デデデ大王のしわざに違いありません。
星の戦士は、走り出す。
この侵略が、自分を中心に回り始めていることも知らずに。