君がいた歯車の中で   作:ユフたんマン

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曇らせは晴らしてなんぼですからね(自論)


■■■

倒れ伏したスザンナの視界に、焦げた空と砕けた装甲が映っていた。

 

星の夢によって改造されたメタナイトボーグ改ですら、歯が立たなかった。

 

リレインバーに搭乗した自分自身も、あまりに呆気なく地に伏した。

 

 

それでもスザンナは笑っていた。

胸の奥が、震えるほど熱い。

 

「……やっと……」

 

掠れた声が漏れる。

 

「やっと、終わるのね……」

 

星の戦士。

星の夢ですら制御できないイレギュラー。

カービィがすべてを終わらせてくれる。

その確信だけが彼女を立たせていた。

 

 

だが、轟音。

空気を引き裂くような衝撃と共に、アクシスアークの外壁が破壊された。

 

装甲が捲れ、火花と破片が飛び散る。

あり得ない侵入経路。

 

合理性の欠片もない。

その瓦礫の中から、金属の躯体が現れたのはゼインボーグ。

 

母艦であるはずのアクシスアークを破壊しながら、最短距離でここへ来た。

守るべき拠点を犠牲にしてまで。

スザンナは息を呑む。

 

「……ゼイン……?」

 

理由は分からない。

星の夢の命令にも、効率にも、合致しない行動。

ただ一つ確かなのは、彼はここに来た、という事実だけだった。

 

ゼインボーグとカービィ。

二つの存在が静かに向かい合う。

次の瞬間、戦闘が始まった。

 

カービィはコピー能力ソード。

軽やかな動きで距離を詰め、剣を振るう。

ゼインボーグはビームソードとミサイル。

閃光と爆炎が交錯する。

 

カービィは的確にビームソードを捌き、飛来するミサイルを叩き落とす。

軽い。速い。無駄がない。

 

埒が明かないと判断したゼインボーグは、ビームソードを前面に突き出し、高速回転を開始した。

金属を削る甲高い音。

 

ドリルのような破壊力を伴い、一直線に突進する。

カービィは跳躍して回避する。

 

だが、ゼインボーグは止まらない。

床に激突したまま回転を維持し、装甲を溶かしながらまるで地中を泳ぐモグラのように掘り進む。

 

そして床下からの奇襲。

 

直撃。

 

衝撃により、カービィのコピー能力が解除される。

剣が弾け、星が散る。

だが、間髪入れず。

飛び散った火花を吸い込み、ファイアへとコピー能力が変化する。

 

回転し迫るゼインボーグへ、灼熱の炎を吐き出す。

 

それを確認したゼインボーグは即座に回転を停止。

ビームソードで炎を弾き、ジェット噴射で一気に距離を詰める。

 

カービィも身体に炎を纏い、バーニングアタックで応戦。

 

両者が正面から激突する。

衝撃が走り、空気が歪み、互いに大きく後退する。

 

その光景を、スザンナは見つめていた。

違和感。

ゼインボーグの戦い方が、明らかに違う。

 

その戦いを見ていたスザンナは違和感を抱く。

そのゼインボーグの戦い方に。

普段は冷酷に、相手の動きを分析し、それに適応して最小コストで制圧していく受けの戦い方だった。

 

しかし今のゼインボーグは何処か荒々しく、合理性等かなぐり捨てたかのような攻めの戦い方。

 

必死に何かを守ろうとする戦い方。

 

カービィはファイアのコピー能力を捨て、次は近くの電子機器を吸い込みコピー能力をサンダーへと変化。

 

 

そこから始まる弾幕戦。

 

雨のように降り注ぐミサイルと雷。

スザンナの視界を埋め尽くすほどの閃光と爆発が連鎖するように立て続けに起こる。

 

 

 

 

拮抗しているように見えた戦いは、徐々に傾き始める。

 

優勢なのはゼインボーグ。

 

星の夢が介入したのだ。

背後からコードや管を伸ばしカービィの動きを妨害。機械兵を送り込みカービィの近くで自爆させる。

 

カービィも吸い込みやコピー能力を駆使して立ち回るも、その物量の前に体力が削られていく。

 

 

その時。

ジジッと星の夢にノイズが走る。想定外の事象。

カービィの近くに転送されたのは自爆用の機械兵では無く、音波を発する探索機。

 

転移システムのハッキング。

 

スザンナの指示の元、ここで古参の社員達がカンパニーに牙を剥く。全てを掛けた、一瞬の隙間。

直ぐ様星の夢に転移システムを奪還される事など想定済み。

 

それで十分だった。

カービィが探索機を吸い込む。

 

コピー能力マイク。

 

次の瞬間、世界が揺れる。

 

轟音。

 

天地を裏返すような音の暴力。

予測していたスザンナは耳栓で辛うじて耐えられたが、機械兵達はその爆音に耐えられず機器が故障し爆散。

 

 

そしてゼインボーグ。

他の追随を許さぬ集音機能を持つ彼にとって、それは致命傷だった。

 

センサーが悲鳴を上げ、オーバーヒート。

装甲の隙間から煙が立ち上る。

集音センサーは完全に破壊される。

 

度重なる激闘に装甲はひしゃげ、剥がれ落ち、集音センサーはマイクにより破壊。

 

さらにそこに、故障した機械兵を吸い込み、星型弾としてゼインボーグに射出。

ゼインボーグはビームソードで防御するも、根元から折れる。

 

さらに連続で第2射。為す術もなく直撃し、その場に倒れた。

 

スザンナは息を止める。

 

「もう…やめて…」

 

願いは届かない。

まだ終わらない。

 

ゼインボーグは、ゆっくりと立ち上がった。

 

ここからだ。

合理性も、命令も、武装も失ったその先。

 

残っているのは、ただの身体だけ。

無茶苦茶に、無様に。

 

それでもゼインボーグは、素手で構えた。

 

カービィはその姿を見て悟る。

戦いはまだ終わっていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

ERROR。聞こえない。

ERROR。知らない。

ERROR。守らねば。

ERROR。黙れ。

ERROR。うるさい。

 

脳内コンピューターが喚く。

星の夢を守れ。

その原住民を駆除せよ。

 

命令。

命令。

命令。

 

それに…

 

「……邪魔を、するな……!」

 

ゼインボーグは頭部に接続された機器へ手を伸ばす。

外付けの補助コンピューター。

力任せに引き剥がし、地面へ叩きつける。

そして踏み潰した。

 

使命を思い出せ。

かつての覚悟を思い出せ。

 

守る。

守る。

守る。

 

その言葉だけが、頭を支配していた。

 

ゼインボーグは駆ける。

背中のジェットユニットは破損し、飛ぶことはできない。それでも走る。

 

かつてハルカンドラへ向かう際に叩き込まれた格闘術。

サイボーグになってから、ほとんど使うことのなかった武術。

 

カービィは何かを察したのか、コピー能力をファイターへと切り替える。

 

拳と拳がぶつかる。

 

カービィの拳が、ゼインボーグの身体にめり込む。

 

知ったことか。ゼインボーグはそのまま掴み、反対の拳で小さな身体を殴りつける。

 

殴られるたび、装甲がひしゃげ、火花が散る。

殴るたび、その衝撃で装甲が砕けていく。

 

あまりにも、痛々しい戦い。

 

スザンナは思わず目を覆った。

 

「……やめてよ……」

 

カービィのアッパーカットが顎を打つ。

身体が宙に浮く。

だが空中で回転して衝撃を逃がし、着地と同時に再び

距離を詰める。

 

機械的ではない。

荒々しく、生物的な動き。

 

痛みすら無視し、ただ飛び掛かる。

 

 

 

 

何のために、戦っているのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗い、闇のような空間。

そこに、■■■は立っていた。

思考に靄がかかり、何も思い出せない。

名前も、過去も、自分自身さえ分からない。

 

ただ歩く。

闇の中を当てもなく。

 

足元には何かが落ちている。

淡く光るそれらは、雑多だった。

 

金属片。

アイス。

歯車。

ビームソード。

 

規則性のない、千差万別なもの。

 

思い出せ。

 

頭の中に響く声。

 

誰だ。

 

思い出せ。

 

これは……

 

思い出せ。

 

俺の声だ。

 

■■■自身の声。

 

闇の中に、一筋の光が生まれる。

闇を裂く極光。

 

『それ、もう少し磨いたら使えると思うけど?』

『アナタ、なかなかスジがいいわね。ちゃんと学べば、すごい技術者になれるわよ』

『お父様に会わせてあげる』

 

光へ向かって進む。

歩くたび、声が増えていく。

 

『ゼイン』

『ゼイン』

『ゼイン』

 

いつの間にか、走っていた。

 

光へ向かって…

 

 

 

 

 

「もうやめてぇ!!!」

 

悲鳴。

スザンナが、泣きながらまたしても立ち上がろうとするゼインボーグに縋り付く。

 

「あなたが傷付くところを、もう見たくない!

目を覚ましてよぉ!!」

 

それは、幼い少女の声。

集音センサーは故障しているはずなのに確かに、届いた。

 

それは、光だった。

涙に濡れたその姿が、脳内を駆け巡る。

 

俺は……

 

「ゼイン!」

 

その呼び声と同時に。

身体を覆っていた装甲が、空気に溶けるように消えていく。

無機質な外殻が剥がれ落ち、残ったのは、一人の青年。

 

ゼインボーグ…ではなくゼインは、縋り付く少女をそっと抱きしめた。繊細なものを壊してしまわないように優しく。

 

「……スザンナ……」

 

戦いはここで終わった。

星の夢の支配も、合理性も、命令も。

 

ただ失われたはずの者だけが、そこに残っていた。

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