君がいた歯車の中で   作:ユフたんマン

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銀河の果ての大彗星

遂に、一行はハルカンドラへと辿り着いた。

眼前には荒廃した大地が静かに広がっている。

文明の痕跡は確かに存在するのに、そこに息づいていたはずの生活だけが、根こそぎ削り取られたような星だった。

 

宇宙戦艦が火山帯の上空へ差し掛かったその時。

艦内に、甲高い警報音が走った。

反射的に、ゼインは操縦席の背に体を押し付ける。

 

「接近物体、急速浮上!」

 

火山の噴煙を突き破り、巨大な影が姿を現す。

四枚の翼。四つの頭を持つ巨体。

そして頭部には、不気味に脈動する冠のような構造物。

正体は分からない。

だが、理屈を挟む余地もなく、唐突にそれは襲いかかってきた。

 

灼熱の吐息が戦艦を掠め、装甲が赤熱する。

衝撃で艦が大きく傾き、怒号と悲鳴が交錯した。

 

「回避運動! このままじゃ保たない!」

 

理由は不明。

だが、まるでこの空域そのものを侵す存在を、無条件で排除するかのようだった。

 

時間を稼ぐため、社員と機械兵が次々と発進する。

 

だが映像越しに映るのは、一方的な蹂躙。

機体が叩き潰され、引き裂かれ、火だるまとなって消えていく。

通信に混じる断末魔が次々と途切れていった。

 

ゼインは歯を噛み締め、操縦席へ滑り込む。

 

「インベードアーマー、出る」

 

重厚な機体が射出され、巨影へと向かう。

右手にビームソード。左腕にはランチャーが展開され、ロックオンの音が響いた。

 

「……撃て!」

 

ミサイルが一斉に発射され、空を埋め尽くす。

直撃し爆炎が吹き出し噴煙が舞い上がる。

 

 

だが、煙が晴れた先に見えたのは、ほとんど揺らぎすらしない巨体だった。

 

「そんな……グゥ、オオオオッ!!!」

 

過ぎる絶望。それを拭い消すように雄叫びを上げながら距離を詰め、ビームソードで斬りかかる。

装甲に火花は散る。確かに当たってはいる。

だが、斬った感触は硬い岩盤を削っているようなものだった。

 

反撃。

 

爪の一振りで、インベードアーマーは弾き飛ばされる。

 

警告音が鳴り響く。装甲損傷。姿勢制御不能。

甲高い音が耳を打ち、ゼインの肩が一瞬強張った。

 

「……くそっ!」

 

残ったミサイルを叩き込み、至近距離から砲撃を浴びせるが、それでも止まらない。

 

力の差は、どうしようもなく圧倒的だった。

なんてことの無いただの突進。それだけで強烈な衝撃が走り、視界が白く弾ける。

 

機体は回転しながら高度を失い、火山帯へ落ちていく。

 

 

このままでは終わる。

脳裏に浮かぶのは戦艦。まだ中に残っている仲間たち。

恐怖はあった。死にたくないという、当たり前の感情も。

それでも、選択肢は一つしかない。

 

「……俺が止めるしかないだろ」

 

戦艦が沈めば、スザンナを助けられる可能性が零になる。それは何としてでも防ぎたかった。

 

震える手で操縦を切り替える。

自動操縦起動。残存エネルギー、爆発機構へ集中。

 

ゼインは離脱しながら、最後に一度だけ振り返った。

無人となったインベードアーマーが、最後の推進力で突っ込んでいく。

 

爆光。

 

空と火山が震え、凄まじい衝撃波が走る。

 

 

 

 

爆発の煙が少しづつ晴れていく。

 

その先、煙の向こうに立っていた巨影は…

 

 

 

倒れていない。

ほぼ無傷。

喉の奥が凍りついた。終わりだ。

誰もがそう思ったその瞬間、巨体が突然苦しむように身を捩った。

頭部の冠が激しく脈打ち、光が乱れる。

咆哮は怒りではなく、何かに抗う叫びに変わっていた。

暴れる。

止まる。

また、暴れる。繰り返し。

 

まるで、自分の意思と、別の何かが衝突しているかのように。

 

 

 

 

長い沈黙の末、巨影は一度だけこちらを見た。

その眼差しに先ほどまでの敵意はなかった。

やがて翼を畳み、火山の奥へと姿を消していく。

逃げるように…あるいは何かを封じ込めるために。

 

沈黙が戻った。

 

ゼインは瓦礫の散らばる地表に降り立ち、荒い息を吐く。無意識のうちに、背後の岩肌に体を預けていた。

 

荒い息、震える身体を落ち着かせ、インベードアーマーの残骸を確認しよう爆心地付近へ向かう、その時だった。

 

爆風で崩れた岩肌の奥に、人工的な構造物が露出しているのに気付く。

 

 

遺跡だ。

内部は半壊していたが、奥へ進むと資料室と思しき空間が残っていた。

散乱した設計図、壊れた記録媒体。

そこにあったのはこの星の住人たちが生み出した機械や兵器の設計図であった。

 

だが、ほとんどは劣化し触れただけで崩れ落ちる。

解読も再現も不可能な代物ばかり。

その中でただ一つ。

異様なほどに綺麗な設計図があった。

描かれていたのは、巨大な彗星型の機械。構造は複雑で、理論は荒唐無稽。

だが、注釈に記された一文がゼインの視線を釘付けにする。

 

『あらゆる願望を具現化する装置』

 

胸の奥がざわついた。

あり得ない。

そう断じるべきなのに、目が離せない。

それが禁忌であることを直感が告げている。

触れてはいけないもの。

 

だが同時に、抗いがたい誘惑。

ゼインは設計図を静かに握りしめた。

もし、本当に願いが叶うのなら…

もし、取り戻せるものがあるのなら…

 

設計図の片隅に刻まれていた識別番号のような文字列に、ふと目が留まる。

意味は分からない。だが、不思議と胸の奥に引っかかった。

 

ギャラクティック・ノヴァ。

 

そしてこの選択が、やがて取り返しのつかない未来へと繋がることを彼はまだ、知らない。

 

 

 

 




ランディア
マスタークラウンの暴走により自我を失ってしまい、上空を飛ぶ戦艦へと襲い掛かる。
しかしインベードアーマーの自爆の衝撃により何とか自我を取り戻した。
これからマスタークラウンの力を抑制するために深い眠りに入る。しかしそう遠くないうちにドノツラフレンズであるマホロアに叩き起される事になるのはまだ知らない。

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