エーテル・スペアの処生術   作:くりぢゅん

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_○/|_ 土下座 「ユルシテクダサイ」

_( :⁍ 」 )_  「ァ,ダメ?」 

当たり前です(ノロдロ-)



流石に空けすぎでしたごめんなさい
週一ぐらいの頻度では投稿していきたい


『再会、あるいは一方通行の約束』

 

 

 

 

 「……雅。まだ悩んでいるの?」

 

 

 学園都市のハンバーガーショップ前。休日の学生が行き交う中で、制服を規律正しく着こなした朱鳶(しゅえん)が、呆れたように、しかし心配そうに声をかけた。彼女の視線の先には、刀袋を背負った友人――星見雅がいる。雅は、店先に貼られたポスターを、まるで不倶戴天の敵を見据えるかのような鋭い眼光で凝視したまま、微動だにしない。

 

  『期間限定! 爆裂メロン・スペアリブバーガー ~果汁と肉汁の狂宴~』

 

「……朱鳶」

雅が口を開く。その声は幼さを残しているが、語り口は老成した武人のように重々しい。

 

「メロンとスペアリブ……。本来、相容れぬはずの両雄が、バンズという戦場で相まみえるとは。……これは、まさに混沌。秩序への挑戦と言えよう」

「要するに、『食べたい』んでしょう?」

 

朱鳶はため息をついた。

 

「ダメよ。先週も隠れて限定バーガーを食べて、午後の演習のときにお腹を壊してたじゃない。教官からも厳しく言われているの。『当主たるもの、食を律せよ』って。……貴方の体を思ってのことよ、分かって」

「……無論だ」

 

雅は短く答え、己に言い聞かせるように目を閉じた。

 

「甘美な誘惑に打ち勝つことこそ、修行の一環。……行くぞ、朱鳶。ここには私の求める『正義』はない」

 

 雅が断腸の思いでポスターに背を向け、歩き出そうとした瞬間。

 

「……食わねえのか?」

 

 不意に、背後から無愛想な声がした。

 振り返ると、店のテラス席に、くたびれたジャケットを着た青年が一人、気だるげに座っていた。彼のテーブルには、今しがた(みやび)が渇望し、己の精神力で断ち切ったはずの限定バーガーが、あろうことか山のように積まれている。

 

 雅の足がピタリと止まった。振り返った青年の横顔に、記憶の底に焼き付いた『あの人』の面影を、一瞬だけ幻視して。

 まさか、と雅は息を呑む。黒髪、黒い瞳。どこにでもいる平凡な顔立ち。だが、彼女の知る『彼』は、絶望的な炎の中でも決して折れない、強烈な光を宿していた。けれど、目の前の男の瞳は、まるで中身をくり抜かれた人形のように暗く濁っている。

 

(いや、似ているだけだ。あんな虚ろな雰囲気ではない)

 

 雅が失望と安堵の混じったため息をつこうとした時、青年がこちらを見て手招きをした。

 

「おい、そこのチビ。あと連れの保護者。……ちょっと手伝え」

「は、はい!?」

 

 朱鳶が驚いて声を上げる。青年は悪びれもせず、山積みのバーガーを指差した。

 

「買いすぎた。捨てるのはもったいない。……奢ってやるから、お前らで処理してくれ」

「え、遠慮します! 知らない方から物は……」

 

 朱鳶が断ろうとして、雅の手を引く。だが青年は立ち上がると、歩み寄って強引に雅の手にバーガーを握らせた。

 

「……食いたい顔してたろ、お前」

「……!」

 

 至近距離で見る彼の瞳には、やはり生気がない。けれど、その乱暴な優しさだけは、痛いほどに覚えがあった。

 

「ガキが栄養だの体裁だの気にしてんじゃねえよ。……美味いもんは、死ぬ前に食っとけ。明日死んだら、その我慢はただの損失だぞ」

 

 明日、死んだら。

 その言葉が引き金だった。雅の思考が白く染まる。手に持った包み紙の温かさが、あの日の雨の冷たさを生々しく呼び起こした。

 動揺した雅の手から、異質なオーラを纏う刀袋――妖刀・無尾(ようとう・むび)が滑り落ちる。

 

「あっ……!」

「危ない!」

 

 朱鳶の悲鳴がスローモーションのように鼓膜を叩いた。星見の血を持たぬ者が触れれば、精神を焼かれる呪いの塊。

 だが、雅が手を伸ばすよりも早く、青年が動いた。彼は袋の口から滑り出そうになった柄を掴んだ。

 

「……おっと。危ねえな」

 

 空気が凍りつく。雅と朱鳶は、信じられないものを見る目で彼を凝視した。刀は沈黙している。殺気も、拒絶も、何一つ放つことなく、青年の手に大人しく収まっていた。まるで懐かしい持ち主に抱かれたかのように、刀身の震えすら止まっている。

 

 あり得ない。この刀を手懐けられる他人がいるはずがない。

 いや、たった一人だけ。私の呪いを、私以上に理解し、軽々と背負ってくれた人がいた。

 

 

 ――ザーザーと降りしきる、黒い雨。

 泥水の中に倒れ込んだ私の手から、呪いの塊を乱暴にひったくった少年。バチバチと腕が焼ける音を響かせながら、彼は一度だけ私を見て、ニカっと笑ったのだ。

『へー気だ。……俺は、壊れても替えが利くからな』

 

 

 脳裏に蘇る少年の背中と、目の前の青年の姿が、完全に重なり合う。

 

「重いな、これ」

 

 青年はそう呟きながら、刀を近くの椅子に立てかけた。「飯食う時くらい降ろせよ。消化に悪いぞ」

 その何気ない気遣い。痛みを知る者だけが持つ、独特の距離感。

 雅は震える手で、青年の袖を掴んだ。武人としての矜持も、当主のとしての仮面も、今はどうでもよかった。

 

「……お前、は」

 

 声が震える。

 

「……レン、か? 私との約束を守って、会いに来てくれたのか?」

 

 人生で初めて、すがるように他者を見上げた。過酷な修行も、孤独も、すべてはこの再会のためだった。彼なら覚えていてくれるはずだ。私たちが交わした、あの約束を。

 しかし。

 

「ん?」

 

 レンは、きょとんとした顔で首を傾げた。それは雅が求めていた再会の喜びではなく、純粋な疑問の表情だった。

 

「……なんで俺の名前を知ってんだ? どっかで名乗ったっけ?」

 

 ガタン、と。雅の中で、何かが崩れ落ちる音がした。

 レンの瞳には、確かに雅の姿が映っている。けれど、その奥には『星見 雅(ほしみ みやび)』という少女に関する記憶が、欠片ほども存在していなかった。

 

「……嘘、だろう?」

 

 すっかり血の気の引いた雅へ、レンは不思議そうにコーラを啜りながら、残酷な一言を告げる。

 

「悪いな、お嬢ちゃん。俺、昔の記憶がなくてさ。……もしかして、どっかで会ったことあるか? ま、俺みたいなのに絡まれてたなら、忘れた方が幸せだと思うけどな」

 

 『忘れた方が、幸せ』

 その言葉が、鋭利な刃物となって雅の胸を貫いた。私は、片時も忘れなかったのに。貴方に会うために、血反吐を吐くような修行に耐えてきたのに。

 

「嘘だ……。嘘だと言ってくれ、レン……ッ!」

 

 震える手で彼の袖を握りしめる雅の目から、ポロリと、当主としての仮面を剥がされた少女の涙がこぼれ落ちる。

 だが、その涙を見ても、レンの濁った瞳が揺らぐことはない。彼はただ「え、えぇ...?困ったな」とでも言いたげに、困惑した薄っぺらい苦笑いを浮かべているだけだった。

 

 あの日の強烈な光は、もうどこにもない。雅の心の中で、すがりついていたたった一つの希望が、音を立てて粉々に砕け散っていった。

 

 

 

 





今更になって気付いたのですがこれ主人公が「転生」ってなってますが「転移」ですね。転生モノと転移モノはまったく違うのに間違えてしまっていました。直しときます。
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