ゼンレスゾーンゼロ ~ホロウ彷徨うエージェント~ 作:アキ1113
それでは、どうぞご覧ください。
「ほれ、アンビーちゃんや、これで委任状は全部だよ」
「ありがとう」
ノクスと猫又がデッドエンドホロウに向かっている頃、カンバス通りでは住民たちの委任状集めが進んでいた。
「いやいや、お礼を言うのはこっちの方だよ。あなたたちがいなかったら、あたしら全員どうなってたことやら……それにしても、助けを呼びに行ったお嬢ちゃんだけど、中々戻って来ないねぇ」
「確かに妙だわ……まさか、また想定外のことに巻き込まれたんじゃないでしょうね?」
すると……
「想定外のことはあったけど、ちゃんと策は思いついたよ!」
「この声は……プロキシ!」
「みんなお待たせ!」
「待たせたね」
「猫又!それにノクスも!」
無事にニコたちと合流したノクスは変身を解除し、リンや猫又と共にこれまでの経緯を説明した。
「なるほど……列車を止めて爆破自体を止めようとしたけど、中にはヴィジョンの武装した増援で一杯だった……ふん、どうやらヴィジョンは、住民たちの決死の抵抗を恐れているみたいね―――――でも、プロキシとノクスの言ってた案はいいと思うわ!さっすが、知恵と勇気の『パエトーン』に、『銀騎士ノクス』ね!」
ニコはパエトーンとノクスのことを称賛すると……
「おばあさん、さっきの救助プランは聞いててくれたわよね。住民のみんなを、1番近い地下鉄駅に集めてくれる?」
委任状を持ってきてくれたおばあさんに、そう頼んだのだ。
「安心しなさい、足手まといにはならないよ。すぐみんなに知らせてこよう」
「えぇ、お願い――――あ、そうそう……この近くのホロウに赤牙組の古い拠点があるって聞いたんだけど、何か知らない?」
ニコはおばあさんを呼び止め、猫又の形見があるかもしれないとされる赤牙組の拠点の場所について訊いた。
「ニコ、まだ猫又の依頼料を諦めてないんだ……」
「人聞きが悪いわよレイヤ!猫又にとっては大事な家族の形見なのよ。ここの住民なら何か手がかりを知ってるはず」
「あぁ、そういう……」
それからおばあさんは、この場所で生まれたという赤牙組の話をし始めた。昔の赤牙組は今とは随分と違い、孤児たちを引き取り戦い方の他に読み書きも教えており、弱きを助けるために立ち上がったのも一度や二度ではないのだそうだ……が、シルバーヘッドという若者は数年経って人が変わってしまい、貧民街を見下すようになってからは、組員を率いて、人には言えないようなこともし始めたのだ。それを見て、組みを抜けてこの街を出ていった人たちも少なくなく、しばらくして赤牙組そのものもここから離れていったという。
「あたしらは今の赤牙組と関わりはないし、関わりたくもない……シルバーヘッドが治安局に追われてホロウに落ちたのだって、ただの自業自得としか思えないね……」
「えっ、今、なんて……?」
「どうしたんだい、お嬢ちゃん?確かに赤牙組とは関わりたくないと言ったけど、気に障ってしまったかい?」
「そ、そこじゃなくて……シルバーヘッドは、治安局に追われてホロウに落ちたの?邪兎屋に……やられたんじゃなくて?」
「ぎくっ!……そ、それは……」
猫又はどこかの情報から、邪兎屋がシルバーヘッドをホ倒したということを知った……実際は、治安局の砲撃によってホロウに落ち、エーテリアスになってしまったのだが。
「コホン!子猫ちゃん……いや依頼人さん、分かってくれ!誤解を解こうとしたんだが、そのキラキラした目で見つめられると、何も言えなくなっちまって……悪い!確かに、俺たちはたまたま現場に居合わせた……けど、あいつをやったのは……治安局なんだ……」
ビリーは慌てた様子で、猫又に真実を告げた。
「そんな……あんたたちじゃ……なかったの……?」
「猫又、気を落とさないで。たとえ治安局の介入が無かったとしても、邪兎屋ならシルバーヘッドに手こずることはなかったわ」
「コホン……今回の件は、確かに猫又が勝手に誤解しただけとはいえ、あたしたちにもほんの少し責任があるわ……形見探しの依頼料は、ちょっぴりオマケしてあげる!」
「……」
「っ……と、とにかくこの話は終わりよ!今は一刻も早く列車を奪って、住民たちをここから連れ出さなきゃ!さぁ、出発するわよ!」
ニコはそう言うと、猫又から離れて準備を進めるのだった。
◇
「さぁ、もうすぐ列車に着くわよ!作戦目標は至ってシンプル――――守衛を倒して列車を奪う、そしてそのままずらかる。以上!」
「了解!」
準備を終えたノクスたちは、監視拠点にある列車のところへと向かっていた。そんな中で、ビリーがニコの作戦目標と呼べるか怪しい言葉に返事をしていると……
「トントントントン、トトトントトトン――――」
「お?アンビー、緊張で壊れちゃった?」
アンビーが急に何かのリズムを口ずさみ始めた。それを猫又は、アンビーが緊張していると思ったのかそう言ったが……
「あぁ、これはBGMで盛り上げようとしてるだけ……だと思う。多分、映画の影響だろうけど、いつも通りだから心配する必要はないよ」
「そ、そう……」
レイヤが冷静にそういうため、猫又もあまり気にしないことにした。
「大丈夫よアンビー。そんなの無くたって、この作戦の重大さはみんな分かってるはずだわ。プロキシ、列車の運転は任せたからね!そっちの準備はどう?」
『ふっふっふ〜、腕が鳴るね〜!』
『相変わらずやる気は充分だね。作戦の成功が最優先なんだ、あまり興奮しすぎないように』
『はーい!』
リンがそう返事をするのを聞き、レイヤはインヴォーカーを胸に巻いた。
「イレイス!」
「オ・オ・オンユアマーク!オンユアマーク!」
「……擬装」
「インヴォークナイトシステム!」
「イレイス!」
それから、レイヤがノクスナイトへと擬装を果たしたのを見たニコは……
「それじゃ行きましょ!あっと言わせてやるんだから!」
◇
「し、襲撃だ!!」
「一体誰が――――ぐあっ!?」
「ど、どうし――――ぐはっ!?」
襲撃を仕掛けたノクスたちは、次々と兵士たちを倒していき列車のある奥へと進んでいっていた……が、奥に進むにつれて兵士の数も多くなり、進むスピードも落ちていった。そんな戦況を見て……
「パニック!」
「オ・オ・オンユアマーク!オンユアマーク!」
「インヴォークナイトシステム!」
「パニック!」
ノクスはノクスナイト・パニックへと姿を変えると、キャノンモードのバスターにプロジェクションカプセムをセットした。さらにノクスは、インヴォーカーのレバーを3回押してから装填しているパニックカプセムを回した。すると、ノクスの背後には無数のバスターが現れ、その全てに紫色のエネルギーが充填されていき……
「ブレイカムキャノン!」
「パニック――――フェイタル!」
『ぐわぁあああああああああああああ!!?』
それを一斉に放つことで、立ちはだかる兵士たちを一気に戦闘不能にしたのだ。
「け、結構派手にやるわね……」
「どうしたの?早く行くよ」
少し引き気味になっているニコたちを余所に、ノクスはどんどん先に進んでいく。
「わ、分かってるわよ!」
それに続き、ニコたちも先へと進んでいく。そうして武装したヴィジョンの兵士たちを倒したノクスたちは、ヴィジョンの爆破エリア監視拠点にある列車の前へと辿り着いた。そこには……
「グハァ!?」
「だるまのオッサン!命を何とも思わない大悪党め、大人しく降参しろ!」
この爆破計画を企てたパールマンがおり、今は丁度猫又が拘束しているところだった。
「猫又、こいつも連れてって!アンビーとビリーが運転室に向かってる。プロキシ、ホームで乗車を待つよう住民たちに知らせて!」
『分かった!』
すると、それを聞いていたパールマンは……
「お、お前たち……あのスラムの連中を列車で連れ出すつもりか?」
「そうだけど……それが?」
「させん!させんぞ!連中が外に出て何か言おうものなら、私とヴィジョンは終わ――――」
「黙って」
「ひぃ!?」
ノクスはバスターの銃口を向けることで、パールマンのことを黙らせた……その時、
『警告!予定ルート上路線の予期せぬ破断。小規模な爆発による線路の損壊を検出。計画は失敗です』
『そ、そんな……!?』
「っ……」
Fairyから、列車のルート上にある線路が爆破で壊れたとう報告がされたのだ。
『ニコ、まずいよ!線路が壊れちゃった!』
「なんですって!?」
その線路を壊したのは……
「ぱ、パールマン長官、ご安心を!新エリー都へ続く唯一の線路を爆発しました。これでやつらはもう出られません……」
近くで倒れているヴィジョンの兵士の1人で、まるでやりきったかのような感じでパールマンにそう言っていたのだが……
「お、おおお前、このバカタレが!線路を爆破するのは、我々が撤退した後だ!!スラムの連中だけでなく、我々まで閉じ込められてしまったではないか!?」
自分たちも出られなくなってしまったことに、パールマンは激怒していた。さらに……
「ニコ、四方から敵の増援が来てる……どうする?」
ノクスたちの周りには、ヴィジョンの兵士の増援が迫ってきていた。
「あぁもう……だるまのオッサンを連れて、列車の中に隠れるわよ!」
ニコはそう言うと、パールマンを連れて全員で列車の中へと入っていった。そして、列車の外では……
「パールマン長官。列車付近で身元不明の侵入による襲撃を受けました。負傷者も多数出ておりますが、人数や物資の面では我々が優勢と思われます。侵入者は今、列車の運転室に立てこもっています。火力を頼んで突入しますか?ご指示願います!」
『……』
「パールマン長官、ご指示を!」
兵士のうちの1人が外から指示を仰いだ……丁度その時、列車の運転室の中では……
「ほら、さっさと言いなさいってば」
「こ、これ以上お前らの好きにされてたまるか!」
ニコがパールマンに、兵士たちが列車に近づかないようなことを言わせようとしていたが、パールマンはそれを拒否したのだ。すると……
「それ、貸して」
ノクスがパールマンの傍に落ちていた通信機を拾い上げたのだ。
「何するつもり?」
「あーあーあー――――』
それからマイクテストのような声を出しながら、ノクスは同時に首元を触って何かを調整し……
『突入はするな!私は今その運転室だ!邪兎屋の侵――――』
「紳士淑女」
『……紳士淑女に捕まっている!!よく聞け、絶対に動くんじゃないぞ!この私が少しでも怪我を負ったら、会社はお前たちの責任を問う!』
何とパールマンの声色で兵士たちにそう告げたのだ。ノクスナイトには音声を調整して声を変える機能もついており、今回はパールマンの声で兵士たちを騙して見せたというわけだ。
「……こんな感じかな」
「ノクス、そんなこともできたのか……」
「これでしばらくは攻撃してこないはずよ。でも、私たちの計画も失敗に終わった」
「そうだよな――――線路が無くなっちまったんだ。列車があったところで、住民たちを運び出すことはできねぇ!」
そんなやり取りをしていると……
「……へへっ……」
「猫又……?」
猫又が突然、笑い声を上げ始めたのだ。
「おいおい、こんな時によく笑ってられるな?」
「ううん、あんたの事笑ったワケじゃなくて……これ、さっきの戦闘でたまたま見つけたんだ――――あたしの家族の形見」
「これって、写真?写ってるのはあんたと――――赤牙組のシルバーヘッド?」
その形見というのは写真の入ったペンダントであり、そこには猫又と赤牙組のシルバーヘッドが写っていたのだ。
「実は、あんたたちを騙してたんだ。赤牙組に形見を奪われたってのも、嘘。あたしは昔、カンバス通りの近くに住んでて、組に引き取られた孤児の一人なの」
昔の赤牙組には『皆で故郷を守る』という理想があり、組員は皆そう誓い合っていた。しかし、おばあさんの話の通り、赤牙組は日に日に堕落していき、猫又自身も組を抜けていった。
「でも、どんなに組に失望しても……それでもシルバーヘッドが引き取ってくれた事は事実だし、あそこはあたしにとって、一番『家』に近い場所だったんだ」
『……』
「シルバーヘッドがホロウにおびき寄せられて死んだと聞いて、あたしは復讐のために、あんたたちを同じようにデッドエンドホロウに連れてった。だけどあんたたちは、あたしが想像してたのと随分違って……子供を助けるためにホロウを駆け回ってくれたり、ヴィジョンの陰謀を知った後も、躊躇わず残ることを選んでくれた。結局、シルバーヘッドが死んだのもあんたたちのせいじゃなかったし……あたしにはもう、あんたたちに復讐する理由がない……赤牙組は誓いを破って、守るべき人たちを見捨てちゃった。かつて一員だった者として、組が同じ過ちを繰り返す事を、黙って見てる訳にはいかないんだ」
猫又はそう言ってパールマンの襟首を掴むと、列車のドアを開ける。
「……猫又、何をする気?」
「あたしがヴィジョンと交渉してくる」
『!?』
「安心して。パールマンって切り札もあるし、あたしの出身が赤牙組だって知ったら、きっと交渉に応じてくれる」
「!依頼人さん!猫又!戻ってこい!!」
ビリーの静止も聞かず、猫又はパールマンを連れてドアを閉めてしまった……。
読んでくださり、ありがとうございます!
あともう少しで第2章は完結させる予定なので、気長にお待ちいただければと思います。
それでは、次回の話もどうぞよろしくお願いします。
今後投稿するストーリーは、原作の順番通りに全部を書いた方が良いか、レイヤに関係する話を中心に書いて行くほうがいいか、どちらがいいでしょうか?
-
全部書く!
-
レイヤの話を中心に!
-
作者に任せる!