ゼンレスゾーンゼロ ~ホロウ彷徨うエージェント~ 作:アキ1113
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それでは、どうぞご覧ください。
「……」
ホロウから連れ出されたシリオンの少年は、事情が事情だったためプロキシ兄妹のところで保護することになった。幸いにもエーテル侵蝕の症状は見られず、怪我も軽いもので兄妹で手当て可能だったため、病院に連れていく必要はないと判断された………もちろん、悪化することがあればすぐにでも連れて行くつもりでいるが。
「起きないね……」
「あぁ……それに侵蝕症状はないし、沢山の傷………この子の身に何が……?」
「ンナンナ……(心配だね……)」
2人とイアスが心配そうに見ていると……
「ん……」
「ンナ!(起きた!)」
「え?―――あっ!お兄ちゃん起きたよ!」
「!大丈夫かい?怪我は手当てしておいたけど、まだ痛む場所とかは――――」
兄妹とイアスは目覚めたシリオンの少年に声を掛け、具合を確認しようとしたが……
「っ!?」
少年は飛び起きると、ベッドの上で後退りながら2人を警戒した様子で見ていた。
「ちょ、待って待って!私たちは敵じゃないよ!」
「そうだ、一旦落ち着いてくれ……それにまだ動かない方がいい」
「っ……」
2人が自身へ危害を加える可能性がないのを理解したのか、少年は一旦警戒を解いた。そして、少年がベッドに再び座った後……
「まずは自己紹介からだね………私はリン。後ろにいるのは、お兄ちゃんのアキラ。」
「えっと……君、名前は?」
リンが少年に名前を訊いたのだが……
「……ナンバー4」
「「えっ?」」
少年は何てことないようにそう口にした。
「えっと……僕たちが訊きたいのはその数字じゃなくて、君の名前なんだけど……」
アキラはいやな予感を覚えながらも、改めて少年の名前を訊いた。
「研究者たちからは、ナンバー4とか4番とかそう呼ばれていた………それに、研究所にいた時より前のことは覚えていない」
「「っ……」」
「ンナナ……(そんな……)」
少年の言葉に兄妹は絶句してしまっていた。自分たちよりも年下の少年が、詳細は分からないが話からして何かしらの人体実験の道具にされており、昔の記憶まで忘れてしまっているのだ………兄妹の反応は当然のものだろう。
「!いや待った、研究所というのは……?」
アキラがそう訊いたものの……
「……その情報は話せない。命令されているから」
「命令って……?」
「外に研究内容を漏らすな、研究者たちを守れ、そして……エーテリアスを殲滅せよ」
少年はそう言い、アキラの問いに答えるのを拒否した。すると……
「……その命令って、さっき言ってた研究者からのもの?」
「そう、だけど……」
「その研究者たちはどこにいるの?」
「……エーテリアスに殺害されて、もういない」
「……ならさ、もう君に命令できる人はいないってことじゃない?」
リンは少年にそう諭したのだ。
「もう、君を命令とかで縛る人はいない……自由ってことなんだよ!」
「じ、ゆう……?」
「そう!これからは君の思う通りに生きていいんだよ?」
リンは少年に笑みを浮かべながら、そう言ったのだが……
「……分からない」
「えっ?」
「自由って……何?何をどうすることが、自由……?」
少年は逆に、戸惑った表情をし始めた。少年にとって記憶上、今まで生きてきた中で研究所での日々が全てだった。研究者たちの命令に従っていればよかった………だが、急に命令もなくなり『君は自由になった』と言われても、何をどうすればいいのか右も左も分からない状況に陥っているのだ……。
「……お兄ちゃん」
「あぁ、僕も同じことを考えてたよ」
兄妹はそんな少年の様子を見て……
「これは提案なんだけどさ………行くところがないなら、ここに住まない?」
「……?」
そんな提案を持ち掛けたのだ。
「どういう、こと……?」
「そのままの意味だよ?私たちと一緒に住んで、君のやりたいことを見つけるの!その方がきっといいよ!」
「リンの言う通りだ。それだけじゃなくて、君は既にホロウレイダーとして治安局から追われている………といっても、今まで市民に害を加えることもなく、むしろ助けているから優先度は低いけどね」
「でも、君が何をされるか分からないし……いっそのこと私たちと一緒に住むのはどうかなって」
その提案を聞いた少年は……
「それは、迷惑というやつじゃ………ホロウレイダーは違法的にホロウに入る者たちを指す。そんなやつをここに置いたら―――」
「私たちのこと、心配してくれているの?」
「……」
2人のことを心配しているのか、図星を突かれたらしい少年は思わず黙り込んだ。
「……実は、私たちプロキシなんだ」
「!?」
「でもだからって、犯罪行為にあたる依頼は一度も受けたことはないし、受けるつもりもない。それに僕たちは、ある真実を明かすためにこうしてプロキシをやっているんだ」
「だから私たちは、似た者同士―――ダークヒーロー?的な存在なんだよ!」
「……」
それを聞いていた少年は、驚いたままだった表情をすぐに直し……
「なら対価として、依頼の時にエーテリアスと戦えばいいってこと?」
「「えっ?」」
「それなら、戦力としても役に立て―――」
「ちょ、ストップストップ!!」
「い、一旦落ち着こうか……」
「……?」
勝手に話を進めようとする少年をリンはすぐさま止める。兄妹としては、少年を無理に戦わせるつもりはなかった―――いや、戦力として心強いとは思っていたが………それでも、まさか本人の口から提案されるとは思わず、動揺してしまっていた。
「えっと……君は、本当にそれでいいの?」
「研究所ではシステムに1番適合してたのは僕だ。それに……ホロウを探せば、何か僕に関する手掛かりが見つかるかもしれない。そのついでに、『自由』というものを探せばいい」
少年は先ほどの表情から、少しばかり希望を見つけたような表情でそう言った。
「せ、戦闘云々はともかくとして……私たちと一緒に住むってことでいいんだよね?」
「その通り、だけど……?」
「良かった!じゃあ、これからよろしくね!」
「僕からもよろしく頼むよ。今日からここが君の家だ」
「えっと……よろしく」
こうして少年は、兄妹と共に暮らすことになった………のだが、
「あっ!?」
「リン、どうしたんだい?」
「……名前、どうしよっか?」
リンは思い出したようにそう言い、アキラの方に向いた。今のところ少年の名前に関する記憶はなく、呼び名に困っている状況なのだ……。
「困ったな……持ち物とかも周りになかったし―――」
「それならある」
「えっ!?あるの!?」
その言葉にリンが驚いていると、少年はどこからか黒色のカプセルを取り出した後、首元に付いていた小さなケースのようなものを外した。そして……
「ワンダー!」
「なっ!?」
「うそ!?」
かプセムの一部分を回転させると、そのケースはどんどん大きくなり、最後には大きめのトランクケースとなったのだ。
「ど、どうなってるんだ……?」
「それは長くなるから後で………荷物はこれで全部だよ」
「あ、うん……」
2人が突然のことに驚いていると……
「ねぇ………そのドックタグさ、ちょっと見せてくれない?あっ、別に嫌だったらいいんだけど―――」
リンは少年の首にかけられたドックタグについて訊いた………実は、リンが少年の怪我を見た時にも一瞬触ろうとしたが、それが大事なものだと思い、本人が起きたときに訊こうと考えていたのだ。
「……別にいいけど」
「ありがとう―――!これって……」
リンは少年からドッグタグを受け取り、金属板の部分を見た。するとリンは、何かに気付いたように声を上げる。少年が持っていたドッグタグには、上の部分に『No.004』と―――
「どれどれ………レイ、ヤ……?」
『Reiya』と誰かの名前らしきものが金属部分に彫られていたのだ。
「もしかして………これが君の名前なんじゃない?」
リンからドッグタグを返された少年は、金属板に掘られた文字を見たが……
「レイヤ………これが、僕の―――」
『レイヤ!早く行こっ!』
「っ……!?」
「!どうしたの!?大丈夫!?」
その瞬間、少年の頭の中に知るはずのない記憶が浮かび上がったのだ。それと同時に少年の頭には痛みが走り、思わず頭を抑えた……。
「今の声………誰……?」
「何か、思い出したの……?」
「いや………でも、これが僕の本当の名前……なのかも………」
「ホント?じゃあ、一歩前進だね!」
こうして白狐のシリオンの少年―――レイヤは、伝説のプロキシ『パエトーン』と行動を共にしながら、自由を探すための―――そして、自身の記憶を見つける戦いに身を投じるのだった。
読んで下さり、ありがとうございます。
次回もう1話挟んでから、いよいよ原作に入っていきます。
それでは、次回の話もどうぞよろしくお願いいたします。