三本セットの一本目。
三本あるので連日投稿、明日は(中)を投稿します。
さーて、次は何を書こうかなぁ
不動高校、授業も担任による連絡事項も終わって生徒の多くが帰り支度や部活へ向かう準備を始めている教室の中、金田一の幼馴染である七瀬美雪の姿があった。
「美雪!」
「あっ、麗美ちゃん」
後ろからかけられた声に振り返れば、そこには檜山の彼女である麗美がいて、後ろには何人かの友人達を連れている。
「あれこれ所属してる美雪が帰り支度なんて珍しいじゃん。
予定が空いてるなら、あたし達と遊びに行かない? ゲーセン行ったり、お茶したりしよーよ。金田一くんとずっと一緒だとそういうとこあんま行かないでしょ?」
後ろにいる友人達も同意するように美雪の周りへ向かうが、そこに廊下から声がかかった。
「美雪ちゃーん、いる?」
そこには校内で有名な美女の一人 宗像さつきが立っており、美雪に向かって大きく手を振っていた。
「さつき、声が大きいわよ。
それに人気者のあなたが突然教室に顔を出したら、邪魔な人混みが出来るでしょう?」
その後ろに続くのはミステリアス美人と名高い桜樹るい子が続き、さつきに群がろうとしていた男子生徒達がさっと距離を置く。
「うわっ・・・ 先約あったんだね、美雪」
「うん、ごめんね。
今日は先輩たちと『Butterfly effect』でお茶する約束をしてるから、また誘って」
女子生徒たちは同じ部や同好会で交友がある生徒以外は二人の美人の登場を遠巻きに眺め、美人の登場に浮つく男子生徒に冷めた視線を向けている。
が、麗美もあまり気にせずに笑って美雪と会話を続けた。
「そうだね、今度は前もって約束しとこっ!
美雪ってばあれこれ所属しまくりで暇なしなんだもん、たまの暇も金田一くんとどっか行くしさ」
「なんかごめんね、付き合い悪くて」
「うーうん、いいよ。
でも、校内で有名な先輩方とお茶出来ちゃうって、美雪っておしとやかな見た目から想像できないぐらい強いよね~」
「そんなことないってば。
それに宗像先輩も桜樹先輩もちょっと癖があるけど、良い人達よ」
「アハハ、そう言えちゃうのが強くて凄いんだってば。
まっ、次のお茶会はあたしも混ぜてよ。先輩方ともお話ししてみたいからさ」
そう言ってウィンクをしながら友人達と去っていく麗美に、美雪も鞄を持ってさつき達の元へ行けば、男子生徒たちは校内で人気の美女の揃い踏みに歓喜する。だが、るい子が恐ろしくてあくまで静かにだ。
「さっ、行きましょ。美雪ちゃん」
「は、はいっ!」
「緑さんが新メニューを出すと言っていたものね、楽しみだわ」
先輩二人に囲まれる形で一緒に歩き出せば、まるでモーゼの十戒のように道が開けていく。その真ん中を二人は疑問を抱いた様子もなく堂々と歩くが、美雪は恐る恐るついていく。
「七瀬さん、そんな歩き方をしているとかえって目立つわ。
向こうが勝手に道を開けているのだから堂々と、見せつけるように歩けばいいのよ」
「そ、そんなこと言われても、なかなか出来ませんよ!」
「美雪ちゃんの気持ちわかるわ、こういうのって慣れないわよね。
私もいまだに慣れないから、二人が一緒にいてくれて心強いわ」
「あらあら、人前に立つことに一番慣れてるチアリーダーが何を言っているんだか」
歩き方だけでなく、話す声も堂々としている二人に美雪の表情は学校を出るまで硬いままで、ほんの少しだけ速足で行きつけとなっているカフェへと向かうのであった。
校内のみならず街を歩いていても目立つ二人の先輩に囲まれながら、どうにか目的の建物に辿り着いて美雪は前を向く。
見上げた先にあるのは三階建ての建物には遠目からでも見えるように大きく『小城探偵事務所』と書かれており、三階は仮眠室や資料室、二階はこの建物のメインである探偵事務所、一階はカフェ『Butterfly effect』である。
三人がカフェに入ろうとしたところで、今まさに二階にあがろうとしていた女性と目が合った。
「あれ? 利緒さん?」
「あ、美雪ちゃん。久しぶりだね」
その女性はバーベキューの時に仲良くなった千家の恋人、水沢利緒だった。
「美雪ちゃん、知り合いなの?」
「えぇ」
そこで一度確認するように利緒に視線を向ければ、彼女が笑顔で快く頷いてくれたので二人に紹介する。
「小城さんや事務所の皆さんとバーベキューをした時に知り合った千家くん・・・ はじめちゃんの友達の彼女さんなんです」
「初めまして、水沢利緒です。
本当なら美雪ちゃんと同じ学年なんですけど、学校に通わずドッグトレーナーの見習いをしてて、千家くんの彼女やってます」
少しだけ恥ずかしそうに、でも嬉しそうに笑って自己紹介する利緒に二人も笑顔を返す。
「不動高校 三年 宗像さつきです」
「同じく不動高校 三年 桜樹るい子よ。
ところで事務所にあがろうとしていたようだけど、小城さんに何か御用でもあるのかしら?」
自己紹介をしながらもサラッと問うるい子に利緒は気を悪くする様子もなく、頷いた。
「えぇ、小城さんにずっと預かっていてもらった物があって。
伝えたいこともあるから、今日受け取りに来たの」
「差し障りがないならお話を聞いても?」
「るい子ちゃん、初対面の人にあまり込み入った話を聞こうとするのは失礼だわ」
「あら、ごめんなさい。
探偵事務所にあがろうとする私達と年の近そうな女の子なんて、ミステリーの香りがするからついね」
失言だと理解しながらも気になって仕方ないと利緒を見つめ、少し戸惑うように知り合いである美雪に視線を向けると美雪は利緒とるい子の間に彼女を守るように立った。
「宗像先輩の言う通りですよ、桜樹先輩。
利緒さん、気を悪くしたらごめんなさい。桜樹先輩ってこう・・・ 少し好奇心が強すぎる人で」
「ううん、いいの。
桜樹さんの言う通り、こんな平日に探偵事務所に入ってく高校生くらいの子なんて気になっちゃうのは仕方ないわ。私だって『どうしたのかな?』って思っちゃうもの」
そこで利緒は少し考える仕草をしながら腕時計を確認して、何かを決めたように大きく『うん!』と頷いた。
「ねぇ、小城さんとの約束までまだ時間があるの」
利緒のその言葉にるい子の目が獲物を捕らえた獣のように怪しく光り、目敏く気づいたさつきが彼女に飛び掛からないように手で制しておく。
「お茶をしながら、少しおしゃべりしない?」
「いいんですか? 利緒さん。
その・・・ 桜樹先輩もですけど、宗像先輩も結構変わった方ですよ?」
「七瀬さん、聞こえてるわよ。
というか、この距離でいくら小さな声で耳打ちしても聞こえるに決まってるでしょう?」
「あーぁ、るい子ちゃんのせいで私まで美雪ちゃんに変な先輩扱いされちゃった。
ショックだなぁ」
「さつきが変わってるのは事実で、私は関係ないわね」
提案してくれる彼女に美雪が小さな声で耳打ちすれば耳聡い先輩方に聞かれてしまい、二人が軽快なやりとりを始めていた。そんな二人のやり取りを美雪すらも驚いていれば、利緒はクスクスと笑いだす。
「楽しくて、素敵な先輩さん達なのね。
さっ入りましょ、緑さんの作るのはケーキもサンドイッチもとっても美味しいから」
そう言ってカフェの扉を開ければ、カフェの女主人である緑と手伝いをしている須賀兄妹の末っ子 るりの『いらっしゃいませ』の声が出迎えてくれる。
「四名様ですね、お好きなお席にどうぞ」
「流石るりちゃん、お仕事中だもんね。えらいえらい」
「ありがとう、ございます。
ご注文が決まりましたら、お気軽にお声がけください」
利緒に褒められて頬を赤らめながらもしっかり仕事をこなし、店内をぐるりと見渡してから緑の居る厨房へと入っていった。
「舘羽さんに目元が似てるけど、もしかして末の妹さん?」
「あっ、宗像先輩はるりちゃんと初対面でしたね。
徹さん達の末の妹さんのるりちゃんです。可愛くて素直で、すっごく良い子なんですよ」
「そうみたいね。
さっ、飲み物とか決めちゃいましょ」
それぞれが飲み物と軽食を決めてから注文すれば、先輩二人と利緒、どちらとも知り合いである美雪が何から話そうかと頭を回していた。
が、真面目に考える者の想定をぶっ壊すのが得意な人間は、一定数いる者である。
「単刀直入に言うわ、水沢さん。
私とさつきはそれぞれトラブルを抱えて、金田一くん経由で小城さんに助けられたことがあるの。だからここのカフェを知ったし、今もこうして通わせてもらっていて、事務所の方とも顔見知りになっているわ。
あなたは、どうやってこの事務所の関係者になったのかしら?」
「るい子ちゃん・・・」
親友の口から飛び出す発言にさつきが頭痛を覚えたように額に手を当て、美雪も口をパクパクしてしまう中、利緒の笑い声が響いた。
「本当に好奇心が強くて、単刀直入ですね。桜樹さん。
あー・・・ 笑いすぎてお腹痛い」
「り、利緒さん?」
「美雪ちゃんも宗像さんも、そんな顔しなくていいってば。
それに今日は私にとって区切りの日だから、誰かに聞いてほしくもあったの」
涙まで浮かべて笑う彼女に、さつきと美雪どころか失礼な質問をしたるい子すら目を丸くする。
「聞いてくれる?
私と千家くんが小城さんに助けられた話、千家くんがここでアルバイトすることにしたきっかけを」
活発系美少女、ミステリアス美少女、正統派美少女。
不動高校、美女三人が揃い踏み(尚一人は自覚がない模様)
目の保養でありながら、ここまで揃うと却って近寄れない!
ていうか、金田一ワールドは美少女しかいねぇ!