小城探偵事務所   作:無月

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独自解釈、原作改変、盛沢山。

サブタイで事件名が描いてあるのに、導入部分だから事件どころか現地にすら辿り着かない罠。
この事件は書きたいことを詰め込みんだら四話構成になっちゃったんで、四日連続で投稿します。



雪影村殺人事件 ① (開始)

 皆で食事をしてから数日、所員全員が揃ったタイミングで気まぐれに行われる全体会議が始まっていた。

 

「何か報告か、提案がある者はいるかい?」

 

 小城の問いかけに徹が静かに挙手するので、視線で先を促せば徹は静かに告げる。

 

「所長の有給消化が義務である五日を満たしていません。

 よってこの際、所長にはしばらくの間、休暇に入っていただきたく思います」

 

 徹の言葉に同意するように舘羽と揚羽、檜山が深く頷き、狩谷は『あーぁ、ついに言っちゃったかー』とばかりに苦笑いしている。千家と金田一は知らなかったのか、その事実に耳を疑うように小城に視線を集めていた。

 が、小城はそんな視線を気にせずに手元の他の報告書に目を落とした。

 

「徹、その件は何度か話し合ってるだろう?

 この事務所は僕の道楽で、片手間でやってる。言うなれば毎日が日曜日みたいなもので、本来なら有給なんてものをつける必要はないんだよ」

 

「えぇ。毎回毎回そう言われてきましたが、今回こそ意見を曲げていただきます。

 そもそも怪我をした時も入院せずに済んだのを良いことに、一日たりとも休まずに出勤してるのが異常なんです。本来なら自宅で休んでいただきたいところを『家に居ても寝るだけだし、それ以外の部屋なんて存在しないから』とか」

 

 そこで徹が耐え切れないとばかりに机を叩く。

 

「なんで道楽で探偵事務所出来る人が、やっすいワンルームに住んでるんですか!」

 

「必要な物は事務所に置いてるし、必要最低限のものしか持ってないからだね。

 徹も覚えがあるだろう? 物欲や趣味のない男の生活なんてワンルームで十分なんだよ」

 

 苛立つ徹に対し、小城はあくまで冷静だった。

 

「わかりますけど!」

 

「兄さん、感情的になりすぎ。

 このままだと所長に話を逸らされるわよ」

 

 舘羽の冷静な一言に徹も我に返り、お茶を飲んでから溜息を零した。

 

「とにかく、所長に休みを取っていただきたい」

 

「いやだからね・・・ 役所の手続きやらも僕が好き放題してる事務所だから休みを取るほどじゃないし、トレジャーハンター業の時は休みを取っているだろう?」

 

「それも事務所の定休日にすることが大半で、五日を満たしていません」

 

 これまで何度か行われてきたやり取りに小城も溜息を零せば、徹に加勢するように檜山も手をあげた。

 

「でもよぉ、こういうのは所長がしっかり取らねーと俺らも取りづらくなるぜ?

 それは所長も望むところじゃねーだろ」

 

「それは・・・」

 

「そーそー! 所長もたまにはしっかり休んでくださいよ!

 たまには旅行とかどうっすか?」

 

 言い淀む小城にチャンスだとばかりに切り込む金田一に、千家が悩まし気に腕を組んだ。

 

「はじめが勧める旅行、かぁ・・・

 なんかちょっと心配になってきた」

 

「もっぺん言ってみろ! 千家!」

 

「はじめが勧める旅行って、かなり心配だなって」

 

「本当に言った上に、内容はさらにひどくなってね!?」

 

 二人のじゃれ合いを眺めつつも、小城は状況を変えるために再度問いかけた。

 

「で、徹以外に報告と提案があるものは?」

 

「所長、そんなに僕らに事務所を任せるのは不安ですか?」

 

 挙手してから小城に問う狩谷に小城は苦笑いしながら、首を振る。

 

「そうじゃないよ。

 旅行に行きたいとか、何かしたいことがあるわけでもないのだから、休みを取る意味がわからないだけさ」

 

 その言葉に『所長って本当にそういうところあるよなぁ』とばかりに金田一以外の全員が溜息をつけば、金田一だけが『何言ってんだ、こいつ?』とばかりに固まっていた。

 

「休みを取る意味が、わからない???」

 

「まぁ、君からしたらそうなるよね・・・」

 

「いや、これは金田一くんに限ったことじゃないから。

 あたし達兄妹も人のこと言えないけど、所長もいったいどんな子ども時代を過ごしたのよ・・・」

 

 知りたいようで知りたくないと顔に書いてある舘羽に苦笑をもって答えていると、金田一が休みの良さについて語りだす。

 

「別に何してたっていいじゃないっすか。

 友達誘って遊びに行ったっていいし、どっかブラブラしたって良いし、一日中寝てたって最高に気持ちいいっすよ!」

 

「君は自分基準だからそういうことを言うけど、世の中には友達がいないこともあれば、目的もないのにどこかにいることが落ち着かないし、何もしないで寝てるだけっていうのを苦痛に感じる人間もいるんだよ」

 

「え? それ、人類?」

 

「うん。それは聞き捨てならないから、この会議が終わったら久しぶりに僕と護身術の講習やろうか」

 

「え? マジ? 俺、そんなに所長怒らせること言っちゃった?」

 

 小城の宣告にみるみる血の気が引いていくが、隣の千家は『今のはお前が悪い』と優しく肩を叩くだけだった。

 

「・・・有給消化するけど、事務所に来るのは駄目かな?」

 

「それ系って犯罪じゃなかったっけ? 書類偽装とか?」

「法を犯すかどうかは覚えてないが、ブラック企業ではあるらしい」

 

 小城のとんでもない発言に狩谷と徹がヒソヒソし、怒りを通り越して静かにお説教を始めようとする舘羽を檜山が羽交い絞めにしている。

 取り付く島もない、つけ入る隙もない、まったく意見を変える気のない小城に再び動き出したのはまさかの揚羽だった。

 揚羽は静かに挙手し、小城が視線で促してきたのを確認してから静かに告げる。

 

「所長、先日最上さんから仕事の依頼が来ました」

 

「おや、それは初耳だね。考古学関係かい?」

 

「考古学というか、ある地域の行事について実地での調査をしてきてほしいとのことです。

 本来なら自分で足を運びたかったらしいのですが遺跡や遺構ではないからか直接考古学に関係ないことに加えて、どうしても祭りが行われる日に都合がつかないので私達に依頼したようです」

 

「詳細は?」

 

 小城の問いに何故か金田一が書類を差し出し、そこには東北のある祭りについての詳細がまとめられていた。

 三百年続く三つの神を讃える祭りと謎の天候と、おそらく最上からの情報提供であろう神々についての補足説明がされており、出来ることなら神主や巫女、地域住民から話を聞いてきてほしいとのことだった。

 

「依頼としては受けても全然問題ないのだけど・・・ これ、いつきさんにも出来るんじゃないかな?」

 

「いつきさんにも打診したそうですが、『寂れた片田舎の祭りなんて取材したってつまんねー』と言われ喧嘩になってしまったそうです」

 

「いつきさん・・・ そういうところですよ・・・」

 

 交友関係も広く、自分とはまた違った人脈を持っている頼れる兄のような存在だというのに、何故か近しい人間になればなるほど扱いが雑というか、照れ隠しの酷い彼を呆れてしまうが、あれもある意味不治の病に近いと思う。

 

「この調査はトレジャーハンターを兼業なさっている所長を指名での依頼です。また東北という遠方であること、祭りの前後での日程を含めて数日・・・ 一週間から二週間ほどの日程を考えています。

 そこで事務方として、所長は調査に加えて調査日以外に現地で有給消化をお願いします」

 

 『仕事とうまく合わせて有給消費を事務方として願い出る』というなかなかに断りづらいコンボを叩きこまれて、小城はようやく白旗をあげた。

 

「わかった、完全に僕の負けだ。

 休暇を過ごしつつ、祭りを楽しんでくるよ・・・」

 

 その敗北宣言に所員全員がそれぞれの表現で喜びを表現し、金田一が満面の笑みで話しかけてくる。

 

「そこの村、観光地じゃないもんだから旅館とか全然ないんで、俺の中学のダチに連絡取って部屋用意してもらいました!」

 

「・・・いろいろ言いたいことはあるけど、続けてくれ」

 

「はい! 俺のお袋の親友がその村に住んでて、アパート持ってるんすよ!

 で、俺が久々にダチと連絡取り合って頼んでみたら、あっさり宿代わりにしていいって許可貰えました!!」

 

 もうどこから、何を言えばいいかをわからなくなってきたが、絞り出すように告げる。

 

「徹、宿泊施設の料金の平均を算出しておいてくれ」

 

「お任せください」

 

「えっ!? お金とか別にいーっすよ! 俺の知り合いなんだから気にしないで!」

 

 手を振りながら笑ってそんなことを言う金田一に、小城はそれはもう深い溜息を零した。

 

「全ての人間が君みたいに人の好意を素直に受けられるわけでもなければ、『言葉が通じたら人類皆兄弟!』なんて思わないんだよ」

 

「俺でも流石にそこまで思ってないっすよ!? ねぇ!?」

 

 金田一が否定の言葉と共に他に同意を求めるが、徹は完全無視、狩谷は笑顔で答えないことを選び、檜山は耳をかきながらどうでもよさそうにしていて、千家は苦笑い。流石に誰も何も言わないのは可哀想に思ったのか、舘羽が何とも言えない顔でフッと笑う。

 

「金田一くんはそう思ってるって思われても仕方ないんじゃない?

 人見知りするるりを懐かせたり、こんなに気難しい兄さんや檜山ともなんだかんだでうまくやってるし。っていうか、ここの事務所の人間って皆一癖二癖あるから全員と仲良く出来てるのって結構変わってるってわかってる?」

 

「なんでっすか!? ここの皆、スッゲー良い人っすよ!

 所員の皆も、ここに来るお客も、下のカフェの常連になってる人達だってみーんな良い人で、優しくて、心強くて、んでもってえーっと、えーっと!」

 

 聞き捨てならないとばかりに金田一が叫び、その上で褒めようとしてくるので檜山がその口に手元にあった茶菓子を放り投げて阻止する。

 

「うぐっ!? ひゃひ(なに)するんすか! 檜山ひゃ()ん!」

 

 吐き出すことなく咀嚼しながら文句を言う金田一に、檜山は鼻を鳴らすだけでそっぽをむいた。

 

「まぁとにかく所長は仕事を兼ねた旅行に行ってもらうのは確定だとして・・・ でも、一人だけじゃちゃんと休んでくれるか不安だよね」

 

「狩谷、本人を目の前にしていうのはやめてくれないか?」

 

 否定しない辺り、本人も自覚あるらしく全員から顔を逸らすように俯いてしまう。

 

「いやぁこれは目の前で言わないと意味ないでしょう? だって所長、本当に休んでくれないじゃないですか。

 正直、一番休んでるのって仕事の依頼がない平日の事務所で、でしょう?」

 

「だから、僕に休みなんてそれぐらいでいいんだよ」

 

「それが駄目だって言ってんだよ、所長」

 

「うぅ・・・」

 

 常に苦笑いが多い男ではあるが、ここまで困った顔をする日はそうはないだろう。

 

「誰か見張りでも付けます? 一週間から二週間、所長の傍に居てもらえて、俺達と連絡が取りやすい人っていましたっけ?」

 

「所長の人脈使えば何人かいけるんじゃね?」

 

「これ以上他の人に迷惑かけるのは本当にやめてくれ・・・

 申し訳なさ過ぎて、どうすればいいかわからなくなる・・・」

 

 もはや懇願レベルになりつつある小城の言葉に、その場の全員が一斉に溜息を零した。

 

「え? マジでどうしたらこんなんになっちゃうんすか?

 ちょっと俺、所長の養父母?でしたっけ? 問い詰めてからどつきたくなってきたんすけど」

 

「おう、そん時は俺にも声かけろや」

 

「いつきさんとか、トレジャーハンター関連にも声をかけると結構な数になるんじゃない?」

 

「じゃぁ俺は、桜樹先輩達に声かけますね!」

 

 他四名が嬉々として小城の養父母襲撃の話をしている中で、唯一静かにニッコリと笑い続ける徹がおそらく一番危険性が高い。

 そんな男性所員の物騒な話を強制的に終わらせるように舘羽が大きくパンッパンッと手を叩き、腰に手を当てて仁王立ち。

 『こんなに仁王立ちが似合う女性が他にいるだろうか?』と何名かが考えてしまうがその思考を読まれていたかのように、雌獅子のような視線で睨まれる。

 

「ハイハイ、揃いも揃って物騒なこと言わない!

 心配しなくても所長の仕事には揚羽についていってもらうから、あんた達はあたしの指示に従ってればいいのよ!」

 

「え? 姉様、それは私も初み・・・「所長に次いで有給消化率が低いんだから、たまにはしっかり休みなさい。学校の方はどうとでもなるし、勉強の方は心配いらないでしょう?」

 

 そう言って妹にウィンクをすれば、揚羽は姉の意図を察して頬を赤らめる。

 

「はい、わかりました」

 

「いや舘羽、所長と揚羽を休ませることには賛成だけど、二人だけで行動するのは心配だから反対だ。

 僕達の大事な所長とか弱い揚羽だけの道中なんて、何かあったら・・・「ここ法治国家で、所長は護身術その他も修めてて、なんなら警視にも直通電話が繋がる人なんですけど? 心配するのはわかるけど、兄さんは所長を信頼してないっていうの?」 そんなことはない、が・・・」

 

 舘羽の攻勢に徹が怯み、何故か徹は小城と揚羽に深く頭を下げた。

 

「所長、揚羽、お互いの身をしっかり守って安全に戻ってきてください」

 

「いや早いからね? まだ出発もしてないからね?」

 

 話がトントン拍子で進んでいく恐怖と、須賀兄妹が本気で自分を囲い込もうとしている感覚に陥り、冷や汗が止まらない。

 

「はい! 今日の会議はこれで終わり!

 旅行の日取りは後で説明するから、全員散った散った!」

 

 収拾がつかなくなりそうな会議を舘羽がそのまま強制終了し、蜘蛛の子を散らすように散っていく。

 小城はもはや疲労困憊状態でしばらく動けずにいると、突然肩に重みを感じて右を見れば、そこにはマガドリ様がつぶらな瞳と共に(っ´∀`)っ『はい! これあげるね!』とばかりに烏の形をしたシルバーのブローチを渡された。

(え? マガドリ様の形じゃなくてなんで烏?)

 内心の疑問を声にはせずにマガドリ様へと視線を戻せば、何故か窓際に数羽烏が集まっており、彼らが一斉に敬礼をしてから飛び立っていく。

 意味がわからず一瞬の間呆然としていると、小城が使い方をわからないと思ったらしいマガドリ様がブローチを一撫ですると再度窓際に烏が集まってきた。( • ̀ω•́ )✧『これですぐにウチの子達(神使)が駆け付けるからね!』とばかりにドヤ顔をするマガドリ様に、小城は言葉を失うしかない。

(カラスネットワークに情報が晒された!?)

 普段の彼なら驚くべき点がそこではないとわかる筈だが、今回の彼は所員達にも丸め込まれ、依頼と休暇を兼ねた東北遠征が確定した身だ。彼の思考はもはや冷静とは程遠い。

 だからこそ、彼は思い出せなかった。

 東北の片田舎、三百年続く三つの神を讃える祭り、金田一の知り合いがいる村に該当する事件があることを。

 

 





この事件は死んでほしくなかった子と救いたい子が珍しく別々。
多分、②で死んでほしくなかった子はわかると思いますが、救いたい子はわかりづらいかも?
キャラが多いので②以降はキャラの説明を後書きに書きます(いくつか前の話でも書いた感じで)
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