小城探偵事務所   作:無月

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独自解釈、原作改変、盛沢山。

その事件、本当はダイジェストで短く書く案もあったんですが・・・ すいません、自分自身がそれを許せなかった結果、七話というアホみたいな話数になりました!
でも、一つの事件としては書き終わったので、いつも通り一日一話投稿で連日あげます。
どうぞ、お楽しみください。



魔術列車殺人事件 ① (開始)

「はじめちゃん、早く! 早く!!」

 

 美雪の急かす声と共に、金田一は仲間と共にホームを走っていた。

 

『函館・旭川経由死骨ヶ原行き寝台特急 「銀流星」1号はまもなく発車いたします―――・・』

 

 さらに急かすようにアナウンスが流れたところで金田一と美雪、佐木兄弟、剣持警部、そしてマガドリ様が息を切らしてホームに到着した。

 

「間に合ったぁ~!」

 

「やれやれ! ったく」

 

 安心しながら電車内に入っていけば、金田一の頭に乗ったマガドリ様がキョロキョロと物珍しそうに周囲を見渡していた。が、それはマガドリ様だけでなく、佐木兄弟と美雪も同様だった。

 

「ねぇはじめちゃん、朝から聞きたかったんだけど頭の上にいるその子って事務所の神棚にいる子よね? 連れてきてよかったの?」

 

「あぁ、僕も気になってました。

 さつき先輩のご実家で祀られてたマガドリ様に似ているようですけど、この子はなんだかぬいぐるみみたいで可愛らしいですね」

 

「え? 別に何もないですよ? 七瀬先輩と兄さんには何か見えてるんですか?」

 

『え?』

 

 見えるのが当たり前だと思っていた三人が二号のおもわぬ発言に驚き、視線は自然と金田一の頭の上にいるマガドリ様へと集中する。

 が、視線が集まっても当の本人は気にする様子はなく、今朝揚羽から渡されたおかきをどこからか取り出して金田一の頭の上でポリポリ食べ始める。

 

「ちょっ!? 頭の上でおやつ食べるのは勘弁してくれよ! 歩きながら食べるの行儀悪いっすよ、マガドリ様!」

 

「ミコトちゃん、こっちおいで」

 

 喚く金田一から美雪が手を広げると、マガドリ様がその呼び方にも慣れているらしくすぐに美雪の方へと飛んでいく。

 

「ミコトちゃん??? なんだよ、その呼び方」

 

「るりちゃんが教えてくれたの。るりちゃんと二人で遊ぶ時はこう呼んでるみたい」

 

「まぁ神様みたいな名前で呼ぶより、他の人がいるところではそう呼んだ方がいいかもしれませんね。さつき先輩のお父さんみたいに研究している方もいるかもしれませんし」

 

 美雪の腕の中でご満悦なマガドリ様を連れ、切符を頼りに部屋を探して開けばそこには所狭しと段ボールが置かれ、中の段ボールを覗けばそこにはバラがぎっしりと詰められていた。

 が、そこで部屋が違うことを乗務員に指摘され、しっかりと個室があるA寝台から一つの部屋にいくつかのベッドがズラリと並ぶだけのB寝台へと文句を言いながら寝そべった。

 

「さっきのA寝台とはえれぇ違いじゃん」

 

「我慢しろ、金田一! これしか取れんかったんだから!!」

 

「そーよ、はじめちゃん。こういうのも情緒があっていいじゃない? ねぇ、ミコトちゃん」

 

 薄い壁の向こう、美雪の方にマガドリ様もいるらしく、マガドリ様に同意を求めている。

 

「つーか、マガドリ様がそっちに居て狭くねーの? 大丈夫か? 美雪」

 

「大丈夫よ、枕の横で小さくなって凄く良い子だから。あと、『ミコトちゃん』ね」

 

「金田一先輩と神様と一緒の地獄の傀儡師からの招待状ツアー、良い思い出が出来そうですね」

 

「ですね! 兄さん! きっと良い映像が撮れます!」

 

 心底楽しそうに話す佐木一号と、敬愛する兄と共に金田一(被写体)の最高のシーンを撮れることへの期待と興奮を隠せない佐木二号。

 

「なんでこいつらも連れてきちまったんだろ・・・」

 

「むしろ俺が聞きてぇよ・・・ こっちが経費負担だからってこんなに人数集めやがって」

 

「だって、所長が『君だけじゃ心配だから美雪ちゃんや佐木くん達も連れていくといい』とか言うから!」

 

「こいつの経歴考えると、『過保護だ!』とも笑えねぇんだよな・・・」

 

 剣持が溜息ばかりついていると、突然金田一の寝台のところに不気味な声と共に白手袋をした手が入ってきた。

 

「血ノヨウニ紅イ薔薇ヲドウゾ」

 

「え!? な、なにこれ!? 薔薇なんてどこに・・・?」

 

 手にはトランプが一枚、こちらに絵柄を見せるようにされており、その手がトランプを握り締めてから一回転するとトランプは消え失せて、一輪の薔薇へと変わった。

 

「へ~! マジックか!! おもしれ~。

 誰、誰? こんな洒落たことすんの―――」

 

 素直に感心して、誰がこんなことをしてくれたんだろうと仕切りのカーテンをめくれば、目の前には表情が見えない仮面と大きな帽子、頭も首元も、いいやそれどころか体の全てを隠すようなローブを纏った存在が感情のわからない声で薔薇を差し出していた。正直、ちょっとしたホラーである。

 

「!?」

 

「薔薇ヲドウゾ」

 

「ど、ども・・・」

 

 驚きのあまり血の気の引いた金田一の反応は正しく、その存在はその部屋にいる全員へと同様に薔薇を配りながら静かに入口へと歩いていく。

 

「素敵! きっとあの人『幻想魔術団』の人ね」

 

「ゲンソー? 何、それ?」

 

 驚く様子のない美雪の凄さを感じつつも、金田一は聞いたことのない名前をオウム返しに聞き返す。

 

「この列車はプロのマジシャンが車内でマジックを見せてくれるんですって!」

 

「客寄せのための鉄道会社の企画ですよ! どこも不景気ですからね!」

 

「さっき先輩が見た薔薇はこのためだったんですね」

 

 四人が仲良くしゃべっていれば、マガドリ様が薔薇の香りを楽しむように鼻を寄せていた。

(それにしてもあの妙な声・・・)

 

「ボイスチェンジャーでも使ってんのかな?」

 

 金田一がそう呟いた時、その存在は室内の全員に薔薇を配り終わったらしく、くるりと身を翻して指を鳴らす。それと同時に、薔薇の花が咢ごと茎から離れて落ちていった。当然、その光景に室内の多くが拍手し、感心する中で金田一は血のように赤い薔薇が床一面に落ちている状況にどこか気味悪さを感じていた。

 

「魔術列車、か・・・」

 

「あっ! 駄目よ、ミコトちゃん。床に落ちた薔薇を食べようとしちゃ!」

 

 (。・н・。)パクッと落ちた花びらをつい口に含んでしまった様子のマガドリ様を美雪が止めるのを見て、金田一の力が抜けた。

 

「あんま食うと太るぞ~? ミコトちゃん」

 

 からかいつつ笑って抱き上げると、失礼なことを言われたマガドリ様が『不敬』とばかりに容赦なく金田一の額へと嘴を突き刺した。

 

「いってー! ちょっ、ごめん! ごめんなさい! 調子こきました!!」

 

 『不敬、無礼、失礼』のテンポで三連続を一撃として繰り出し続けるマガドリ様を遠ざけるが、マガドリ様も嘴をいっぱい伸ばして突き続けるのでその様子を見えている面々は微笑ましく見守り、見えない側には『あの子、何やってるのかしら?』という不審者を見る目を金田一へとおくるのであった。

 

 

 

 

 翌朝、既に北海道に到着しており、寝起きから北海道の雄大な自然に感動してから朝食のために食堂車へと向かった。

 

「いや~、昨夜は寝心地悪くて散々だったけど、こんなゴージャスな食堂車なら期待できそ」

 

「ホント、『北斗星』のグランシャリオ並ですね~」

 

 ぐっすり寝てたにもかかわらずそんなことを言う金田一にマガドリ様が呆れつつ、何も注文してないのに給仕が薔薇のサラダを持ってきた。

 

「はぁ?」

 

「薔薇のサラダ? これ、どうやって食べるのかしら?」

 

「おっさん、こんな顔に似合わないもん・・・」

 

「ば、バカ言え。俺はこんなもん頼んだ覚えはないぞ」

 

 葉物野菜に周りを包まれ、薔薇が大量に入ったサラダの上にはさらに一輪の薔薇が添えられており、その場にいる全員が自然とサラダを見つめてしまう。が、マガドリ様が早速σ(´~`*)ムシャムシャと食べていると、そこに目深に帽子をかぶった制服のような服を着た人物が近づいてきた。

 

「え~、お食事中失礼します。

 お客様方に朝の挨拶をしたいとロバートが申しております」

 

「ロバート?」

 

 顔の見えない相手と言葉に金田一が戸惑っていると、相手のポケットがもぞもぞと動き出し、そこから木で作られた人形が飛び出してきた。

 

「オハヨウ! ヨクネムレタ!?」

 

 突然現れ、操り糸もなく動き出した人形にマガドリ様がΣ(゚ω゚ノ)ノと驚き、人形をまじまじと見つめだす。勿論、それはその場にいる者も同様でロバートへと視線が集まっていく。

 

「きゃーっ、可愛い」

 

「これ、どーやって操ってるんですか?」

 

「フフフ、先輩の映像だけじゃなくマジックまで撮る機会が得られるなんて・・・ やっぱり先輩についていくといろいろと経験出来て飽きないですね」

 

 おそらく薔薇のサラダは最初に訪ねるお客をランダムに決め、目印にしたのだろうと理解して、剣持を含め全員の表情が柔らかいものとなった。

 

「どうもお騒がせしてすいません。これから私達『幻想魔術団』のメンバーによる、マジックショーが始まります。

 最後までゆっくりご覧になってくださいね」

 

 帽子を取りながら丁寧なあいさつをする女性 ―― マジシャン見習いの残間 さとみ ―― に金田一がだらしなく顔を緩ませ、歳の近い彼女がマジシャンとして働いていることに美雪が驚く。

 

「あの若さでこんな一流魔術団に入れるなんて、よほど才能があるんですね!」

 

「おい、佐木二号。そんなにスゲーのか? そのナントカマジュツダンって・・・」

 

「先輩って頭がいいのに本当に一般常識に疎いですよね、小城さんに報告してもいいですか?」

 

「うっせーよ! 佐木一号!

 てかやめろ! 俺の座学に一般教養が追加されんだろーが!?」

 

「はじめちゃんだけじゃなく千家くんの学力が上がってることを考えると、やってもらった方がいいと思うけど。

 私も小城さん達に頼んで、勉強見てもらおうかしら?」

 

「いいですね、僕もぜひお願いしたいです。

 今後の進学を考えると、小城さんからいろいろお話を伺うのはためになるでしょうし」

 

 話が脱線しかけたところで、佐木二号が説明を始めた。

 

「えぇ、五年前に結成した海外でも高い評価を受けている魔術団ですよ。先輩。

 特に『生きたマリオネット』っていうオリジナルのマジックが凄いらしいですよ!」

 

「『生きたマリオネット』・・・!?」

 

 脅迫状と共に届けられた不気味にねじれたマリオネットを思い出し、何かの引っ掛かりを感じていれば、食堂車にシルクハットとマントを身に着けた胡散臭い髭の男が入ってきた。

 

「皆様ようこそ、『魔術列車』へ! 私はこの『幻想魔術団』の団長、『ジェントル山神』こと山神文雄でございます!!

 では、我が『幻想魔術団』のマジックショーを、心ゆくまでお楽しみください」

 

 『火炎マジックの紳士』こと団長の『ジェントル山神』の挨拶から始まり、次々とマジックが披露されていく。

 『ウォーターマジックの人魚姫』こと『マーメイド夕海』、『カードマジックの道化師』こと『ピエロ左近寺』、『サイコマジックの霊媒師』こと『チャネラー桜庭』。

 多くのマジックで驚きを感じたところで、マジシャン見習いの残間とロバートによる楽し気な漫才のようなやりとりに心を和ませていたところで、車両の隅で怒鳴る男の声が聞こえてきた。

 

「しつこいぞ!! 高遠!」

 

「ん?」

 

「こんなタダ見同然の客相手に、この俺がマジックなんざ出来るか!」

 

「そこをなんとかお願いしますよ、由良間さん」

 

 『スタンダップ・マジックの貴公子』こと『ノーブル由良間』が『魔術団マネージャー』の高遠遙一相手に怒鳴り散らしていた。

 

「だいたい団長はどうしたんだ!

 最初にちょこっと挨拶しただけで、もう一時間も出てこないじゃないか!」

 

「そ・・・ それが、さっきから列車中探しているんですけど見つからなくて・・・!

 ですからここは、№2の由良間さんに締めていただかないと・・・」

 

「・・・ちっ! ったく!! わかったよ」

 

(なんだぁ!? あの態度のでけー大槻ケンヂみてーな奴!)

 高遠がなんとか頭を下げ続けた結果、由良間が腰を上げさせる。

 が、聞いていた客からすればそんなマジシャンの印象は最悪である。

 

「それでは最後は、我らが幻想魔術団のトップスター! ノーブル由良間です! どうか盛大なる拍手を!」

 

 高遠による場を取りなすような紹介にも不機嫌丸出しの仏頂面で現れ、場を軽く見渡してから美雪に目をつけた。

 

「それではそちらのお嬢さんにご協力いただきましょうか」

 

「え!? あたしが?」

 

 そう言って美雪を自分の隣に立たせ、肩を突いたかと思ったら次の瞬間には彼女の髪留めが由良間の手元に収まっていた。

 

「これしきの事で驚いてもらっては困ります。

 本番はこれからですよ」

 

 すました顔でそんなことを言ったかと思えば、由良間はさらに続けた。

 

「ところでお嬢さん、何かさっきよりすっきりしていませんか?」

 

「すっきり? そういえば胸元が妙に・・・」

 

「そうでしょう?」

 

「えっ・・・!」

 

 その途端、美雪の背後で彼女のブラがひらひらと由良間の手に収まっており、その場の空気は激しく乱れる。

 必死に取り返そうとする美雪から逃げつつ、まだマジックの途中だとさらに続けようと美雪のブラを掌に納めていく男に苛立った金田一が、目の前でわざとらしくグラスを割ってマジックを中断させた。

 

「この下着を入れた手にぎゅっと力を入れると・・・ いっ、で~~~~!」

 

 さらに続けたマジックを次へと展開させようとした瞬間、男の顔は苦痛に歪み、痛みから激しく手を振りだした。振った手から振り落とされたのは先程まで確かにサラダの上にあった薔薇であり、周囲のお客はそれすらもマジックの一部だと思って笑いに包まれる。

 

「く、くそ! どーなってんだ!?」

 

「いや~凄いなぁ、流石は№2の男」

 

 心底楽しそうに笑いだす金田一が、由良間を指さす。

 

「ブラをバラに変えちまうなんて、なかなかお茶目じゃん?」

 

「ま、まさか!? 貴様がこれを・・・!」

 

 そのしてやったりの顔に由良間が全てを理解したようで、金田一へと怒りを露にしようとしたが高遠に止められて、逃げるように引っ込んでいった。

 金田一の横でマガドリ様が(#^ω^)『処す?処す?』とばかりの表情をしていたが、それは笑顔の美雪が手を置くことで鎮静化される。

 そうして食堂車でのひと騒動を終えたところで携帯の鳴る音が響き、その発信源は剣持なのだが当の剣持はこんな着信音じゃないと思いながらもポケットを探った。

 

「な、なんだこりゃ!? 俺のポケットにもう一つ、別の携帯が入っとる!」

 

 剣持が出る前に金田一がその携帯を受け取り、通話を開始すればそこからは知らない声が聞こえてきた。

 

『ようこそ、魔術列車へ! 旅は楽しんでいただけていますかな?』

 

「誰だ! あんたは!」

 

『「地獄の傀儡師」、といえばわかっていただけますか?』

 

「地獄の傀儡師!?」

 

 警視庁に脅迫状を送った本人からの電話に驚き、おもわず金田一が大きな声を出すが電話の向こう側の『地獄の傀儡師』は気にする様子も、焦る様子もなかった。

 

『実はそろそろ、私がその列車にしかけた「爆弾」が爆発する時刻だってことをお知らせしたくてね!』

 

「爆弾だとぉ~~~!?」

 

「お、おい、金田一!

 ひょっとしてそれもアトラクションの何かじゃ・・・?」

 

 そうであってほしいという願いを込められた剣持の言葉は、電話口の『地獄の傀儡師』によってすぐさま否定される。

 

『そう言われると思いましてね、ちょっとした仕掛けをしておいたんですよ』

 

 その言葉と同時に間違って注文された薔薇のサラダが爆発・・・ しなかった。

 

『おや? おやおやこれは・・・ 本来ならサラダが爆発するはずだったのですが、不発に終わってしまったようですね』

 

「サラダが爆発って・・・! お前! どういうつもりだ!?」

 

『まずは小さな花火でもあげて、皆様に私が本気であることをわかっていただきたかったのですが・・・ 失敗に終わってしまって残念です。

 ですが、次の「花火」はもっと大きいですよ?』

 

 電話を受けている金田一も、それを周囲で聞いていた他のお客も騒ぎはじめ、電話の言葉はさらに続いていく。

 

『次の「爆発」まであと二十分。

 さぁ皆さん! 早く何か手を打たないとこの列車ごと吹き飛んでしまいますよ?』

 

「あんた一体何者なんだ!? なんのつもりでこんなことを・・・!!」

 

 楽しそうに笑いながら続く言葉に苛立ちを感じながら、金田一は叫ぶがそれすらも嘲笑うように電話は切られる。

 

「くそっ!」

 

 

 

 

 その頃、爆弾の話を聞いた乗務員によって食堂車以外にいた乗客へと伝達が始まっており、A寝台の部屋でのんびり過ごしていた男にもその話が伝わっていた。

 

「・・・爆弾? それはまた随分と物騒な話ですね」

 

 そんなことを言いながら、先ほどまで読んでいた『ピノキオ』の文庫本をパタリと閉じた。

 

 

 

 

 乗務員たちによる迅速な対応により『地獄の傀儡師』の電話から五分も経たないうちに近くの貨物駅に緊急停車し、お客が順に降ろされていく。慌てるあまり残間がロバートを落としてしまい、それをヒステリックに容赦なく怒鳴りつけるマーメイド夕海の姿とそれをすぐさまからかうピエロ左近寺。そして、そんな二人を見て両手に荷物を抱えて降りるように促す高遠。

 爆弾騒ぎに未だ騒がしいお客の中に金田一達の姿もあり、美雪が電車から離れるように促す中で、金田一は何かを考えるように電車を見ていた。そして、彼の頭の上にいるマガドリ様もまた電車から降りてきた高遠の荷物を見つめており、その目はいつもの穏やかさや純粋そうな目ではなく、何か獲物を見るような視線であることを誰も気づくことはなかった。

 それと同じ頃、少し離れた場所で幻想魔術師団の間では団長が見つからないことが話題にあがっており、由良間が『ビビって逃げたんだろう』と小馬鹿にしていた。

 

 

 剣持が全員が無事退避したことを確認したところで、地獄の傀儡師から予告された時刻の五分前に地元警察へと電話しようとしたがそれを金田一がストップをかけた。

 

「この騒ぎはおそらく・・・「ただのから騒ぎになりそうですよ」

 

 金田一の言葉に割り込んできた声に嫌な予感をして振り返れば、そこにはいると思っていなかった人物が立っていた。

 

「あ、明智警視!?」

 

「話は車掌から聞きましたよ、剣持くん」

 

「どーして警視がここに!?」

 

 剣持の質問には答えず、呆れた様子を隠しもしないで明智は溜息を零す。

 

「困った人ですね、ありもしない爆弾騒ぎに踊らされて」

 

「な、なんですと~!」

 

「おっさん、俺もそう思うぜ。

 おそらくこの列車には爆弾なんてしかけられてないよ」

 

「き、金田一、お前まで・・・」

 

 味方になってくれると思っていた金田一からのおもわぬ発言に剣持が驚きつつも、美雪が聞く。

 

「で、でもはじめちゃん、あの電話だとあたし達の目の前でサラダを爆発させようとしてたんでしょ?」

 

「そこだよ」

 

「え?」

 

 美雪の発言が金田一の考えていたことをズバリといったので、金田一は言葉を続ける。

 

「どうして犯人は俺達の前にサラダがあること知ってたんだ?」

 

「あっ、なるほど。

 食堂車で作られてる筈の料理を犯人が外に居るなら、わかる筈がない」

 

 察した佐木一号に金田一が頷く。

 

「そう、それどころか犯人は『サラダが爆発していないこと』も知っていた。

 そんなの俺達の行動や反応を間近で見ながら操作していないと説明がつかないんだ」

 

「そ、それじゃぁ・・・」

 

 佐木二号が驚きと少しの恐怖を交えて金田一に先を促すと、金田一はしっかりと頷いた。

 

「あぁ、『地獄の傀儡師』を名乗る人物は、この列車に乗り込んでた可能性が高いってことさ」

 

「ということですよ、剣持くん。

 まさか自分が乗ってる列車に爆弾を仕掛ける人はいないでしょう?」

 

 金田一の説明に乗っかる形で剣持に説明すると剣持はショックを受け、明智はここまでの騒ぎになった以上は仕方ないとし、犯人の思惑に乗っかることにして乗客全員を列車から遠ざけて静かに何かが起こることを待つこととなった。

 そうして待つことしばし。

 

「そろそろ時間だ」

 

 皆姿勢を低くして列車を見守っていると、大きな爆発音とともに列車の屋根で煙と共に何かが打ちあがり、花火のように上空で何かが弾け飛ぶ。

 その場の全員が呆然として上を見上げていると、金田一が降ってきたそれを手に取った。

 

「花びらだ・・・ また薔薇の花かよ!?」

 

「薔薇の花吹雪とは、なかなか気の利いたことをしてくれるじゃありませんか。

 『地獄の傀儡師』という人は」

 

 金田一同様に降ってきた薔薇を一輪拾い上げて見つめる姿は様になり、顔面偏差値による理不尽な差を見せつけてくる。

(どういうことだよ!? 奴はただ俺達が慌てふためくさまを見て、楽しんでやがるのか? それとも・・・)

 爆発予定だったらしい薔薇のサラダはこれよりも小型の爆発であっただろうことに加え、今回の爆弾もわざわざ上に打ち上げられていることを考えると乗客への殺傷の意図は見られない。

 それらを踏まえ列車の内部に犯人がいた可能性がある以上、この状況を作るただの愉快犯の行動ともあり得る。

(でもそうだとしたら、わざわざ警視庁にまで脅迫状を送った意図はなんだ?)

 だが、ただの愉快犯だとしたら警視庁にまでそれを宣言する意味がわからない。

 

「先輩、難しい顔してますね。何か引っ掛かりますか?」

 

「いや、引っ掛かることばっかじゃん。

 つーか人が真面目に考え事してんの見てわかるだろ。カメラ回すなよ、佐木一号」

 

「金田一先輩の観察は僕のライフワークなので。

 僕に目をつけられた時点で、僕から監視されることは諦めてください」

 

 真剣に考え事をしてる金田一の顔に張り付くような距離感でカメラを押し付けて撮影してくる一号から半ば押しのけるように遠ざけながら、結構恐ろしいことを言われて金田一は顔を青ざめる。

 

「え、怖っ・・・ ストーカーかよ」

 

「僕はひそかに追跡したり、忍び寄ったりはしませんよ。

 目の前から堂々と、先輩の人生をとらせてもらいますから」

 

 カメラを手にしながらも堂々と宣言する姿に青ざめていた顔はすぐに消え、金田一は『プッ』と噴き出した。

 

「じゃぁ俺、佐木一号・・・ 竜太と一生一緒ってことかよ。

 スゲー人生になりそうだなぁ」

 

 うんざりした口調とは裏腹にその顔はとても嬉しそうで、それは佐木一号も同様だった。

 

「僕と一生一緒に居なくても、先輩の人生はいろいろ凄そうですけどね。

 まぁそのつもりなので、これからもどうぞよろしく」

 

「うへぇ~、俺と一緒に居たら凄そうなのわかってついてくんだから変わりもんだなぁ。

 ・・・でも、サンキュな」

 

「お礼を言われる意味がわかりませんけど、どういたしまして」

 

 冗談のようにウィンクをする佐木一号を金田一が軽く小突いていると、少し離れたところから美雪が手をあげて二人を呼ぶ。

 

「はじめちゃーん、竜太くーん、列車が動き出しちゃうわよー」

 

「おー、今行く! 行くぞ、佐木一号」

 

「えぇ、どこまでもお供しますよ。先輩」

 

 慌てて走り出す金田一の背を、佐木一号は慣れた足どりで彼を追いかけ走り出すのであった。

 




七話とか書いちゃうと、最初の一話がもう自分でも一週間経過してるっていう恐ろしい事実・・・
というか個人的に目安にしてる一話の文字数もオーバー気味な話が続きます。

あと、幻想魔術団のメンバーは話の中で結構説明するのでいつもみたいに後書きでのキャラ説明は考えてないです。
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