小城探偵事務所   作:無月

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独自解釈、原作改変、盛沢山。

魔術列車殺人事件の地獄の傀儡師視点、はっじまっるよー!
前編、後編構成なので、後編は明日の六時に予約投稿しておきます。
ただこちらは高遠さん視点なのでシンプルに!
しかし、犯人の事件簿のようなギャグではないのでその辺りはご注意を。

さぁ皆さん、楽しんでください。


地獄の傀儡師より (前編)

 警視庁に『脅迫状在中』と刻まれた意味深な小包が送られる数日前、『地獄の傀儡師』こと高遠遙一は死骨ヶ原ステーションホテルに都津根毬夫という架空の存在を用意し、姿を変えて東京へ戻るために電車を待つ。

(あぁ、楽しみですね)

 彼は幻想魔術団のマネージャーを行う傍らで様々な準備をし、その中である人物を見つけ、興味を抱いていた。

(警察と繋がっている君なら、きっとこの招待を受けてくれる。

 そうでしょう? 小城拓也くん)

 自分同様に復讐者となりえる人々はこの世界に溢れ、これから行われる死のマジックショーのような素晴らしい舞台になる可能性を秘めている。

 彼は自分の復讐劇を準備する傍らで復讐者(演者)達を探し求め、多くの事件や事故を把握し、それらの証拠や舞台の準備を整えていた。

 だが、そうした演者となりえる人物や関連の事件を調べていく中で復讐者となることを阻止するように動く『小城拓也』という人物に辿り着き、彼の経歴を調べた結果、不快感よりも興味が勝ったのだ。

(君も僕と同じ『復讐者』だというのに、何故こんなことをしているのか。

 僕はとても興味があるんですよ)

 小城のことを考えているだけで高遠の口元は自然と弧を描き、普段はマジシャンらしく誰にも感情を気取らせないように振る舞っている彼らしくもなく、滲み出る楽しさを隠すことが出来ていなかった。

(あぁ、早く君に会いたい。

 君にこの『死のマジックショー』を、特等席で見てほしい)

 

 

 

 

 函館・旭川経由死骨ヶ原行き寝台特急 『銀流星』1号で迎える最初の晩、高遠は最初のマジックの下準備を終えたところで乗客であり、今回のマジックショーの観客達の確認と歓迎を込めて、簡単なトランプマジックを披露しながら個室を巡っていく。

(さてさて、彼は僕の招待を受けてくれたでしょうか?)

 調べる中で彼の探偵事務所が警察と繋がりがあることはわかっており、何か困ったことがあったら彼を頼る可能性は非常に高い。

(本来なら彼に直接招待状を送って差し上げたかったのですが、彼の警戒心を考えると直接的な形では受けてくれないことはわかりきっていますからね)

 目に見えて危険なことに近づかず、事態が大きくなる前に物事を解決するように動いている彼。

 そんな彼の事務所に『脅迫状在中』などと書かれた小箱を送りつけたら、それこそ舞台の(電車を)使用を禁止(計画運休に)されかねない。それは高遠としても避けねばならなかった。

 全ての個室を巡って一通り乗客と顔を合わせた後、彼の姿が見当たらなかったことに高遠はわずかに肩を落としたが、すぐに切り替えるように笑う。

(彼が足を運んでくれなかったのは残念ではありますが・・・ まぁいいでしょう。

 耳がいい彼のことだ、すぐに気づいてくれる)

 出会ったこともない小城へとまるで恋する乙女のように空想を膨らませ、彼が自分を意識することに胸を高鳴らせる。それはまるで初めてマジックを成功させた時によく似ていた。

 翌朝、最初から狙いを定めていた警察関係者へと特別なサラダをプレゼントしてから、乗客が朝食を楽しむ中で始まるマジックショー。

 開演の挨拶をした山神を早々に処理して、駄々をこねる由良間をおだててやる気にさせつつ、マジックショーとそのやり取りに多くの人間が気を取られている間に、何故か数人の高校生と訪れて警察だと悟らせないようにカムフラージュしている刑事のポケットへと携帯を滑り込ませた。

(しかし、刑事さんのテーブルにいるあの鳥はなんでしょうね?

 連れ込みの動物なら専用ケースに入っている筈ですがその様子もなく、それでいて誰も指摘することもない・・・ それにあのサラダも、まさか口にされるとは思ってませんでした)

 静かに食堂車を出てから少し考えてしまうが、予定通り彼らへと爆破予告をしていると何故かサラダに仕込んだ爆弾が爆発(不発)しなかった(に終わる)

(おや? おやおやおや、これは・・・)

 想定外のことが起こってしまい、彼はつい目を丸くしてしまうが、今後の予定もある。ショーとしては少々物足りないが、次の演目を変えるほどのことではない。

 次の大きな爆弾を電話を取っている少年へと予告し、列車は彼の予定通り五分後に貨物駅へと停車した。

 

 

 

 

 爆弾騒ぎに人々が騒ぎ、賑わう中で重たい荷物を抱えながら、団員達と当たり障りのない話をして過ごしてから『不在の団長を探す』ふりをして辺りをうろついて、貨物列車で荷物を入れ替える。そうしてやることをやって他の避難客と共に待っていれば、列車の屋根から白い煙に包まれた何かが打ちあがり爆発。空には真っ赤な薔薇が舞い、避難していた乗客へと薔薇の花や花びらが降り注ぐ。

 爆弾騒ぎがおふざけ同然のこととわかると乗組員達は安全を確認しながら乗客を再び列車に乗せ、改めて目的地へと出発していく。

(さぁ、次のマジックのタネをしこまないと、ね)

 マネージャーという仕事も席を外すには十分な理由を作ることを手伝い、個室の床全てをバラで覆い隠し、トッピングとばかりに風船を浮かべ、団長の体に見えるように作り上げた風船と頭をバラの花畑へと眠らせる。こだわりは凄惨な死体であることを一目でわかるように団長のこめかみへと突き刺したナイフがはっきりと見えるように寝かせることであり、殴打の際だか、バラバラにした際に口の端から流れた血はとても良い演出になってくれている。

 

「素晴らしい表情ですよ、山神さん。

 それでこそ舞台に立つにふさわしい、一流のエンターテイナーだ」

 

 彼のマジックに対しては一度として褒めることはなかったが、自身のマジックショーに立ち、その役目を果たそうとする彼を高遠は称賛する。そして、仕上げとして煙がわざとらしく出るように仕組んだ爆弾をセットし、観客が死体と爆弾にあっと驚いて目を逸らした間に死体が消えるような仕組みも完璧だ。

 全ての準備を終えたところで本来の業務であるマネージャー業へと戻り、彼らに『死のマジックショー』の始まりを告げる予定時間・・・ 旭川駅を通過するまでの時間をゆったりと楽しむのであった。

 旭川駅で多くの乗客が降りていき、列車の中にいる残りの乗客は死骨ヶ原で行われるマジックショーの観客であり、同時にこれから行われる死のマジックショーの観客でもある。

(さぁ皆様お待ちかね、これより幻想魔術団による素晴らしいマジックショーが始まります。

 これから行われる全てのマジックから目を逸らすことなく、どうか心ゆくまでお楽しみください)

 始まりの挨拶を内心に留めながらも、さながら舞台に立っているかのように彼は目の前にいなくても、確かにそこにいる観客達に向かって恭しく頭を下げる。そうした後に、最初のマジックの始まりを特等席で楽しむ資格を得た電話相手へと再び連絡を入れるのだった。

 電話向こうの問いかけも、驚きも、慌てる様も、何もかも答えることのない一方的な言葉を言ってから、タイミング完璧な第一発見者である彼女の悲鳴。そして、その悲鳴を聞きつけて他の者達と一緒に駆けつける。

 恐怖と驚き、それでもなお警察である彼は一歩前へと進もうとする。だが、それは想定内。だからこそ、棘付きの薔薇が個室に準備されており、タイミング完璧な煙と不穏な音が聞こえれば、次は演者としての役目を果たせばいい。

 

「ま、まさか! 爆弾!?」

 

 その一言と共に混乱したようにいち早く現場から駆け出しながら隣のトイレへと入り、爆弾騒ぎに他の者も続いて死体があった個室から離れた遠くへと逃げていく。隣室の外にいる残った警察や電話相手の彼は冷静に対処していくのが聞こえ、彼らが見事に死体が消えた姿を最前列で楽しむ観客となってくれたことに内心ほくそ笑む。

 遅れて現場に駆けつけてきた足音を聞いて、怯えながらも死体があったことを告げれば、何もないことに鼻で嗤い由良間と山神の新しいマジックだと左近寺が適当なことを言ってなかったことにしようとする状況は警察によって否定される。そして、その場で彼らが警察であることを明かされ、警察の一言にどこか表情を硬くする三人を内心で嗤う。

(おやおや皆さん、一流のマジシャンが観客にそんな表情を見せてはいけませんよ。それでは『疑ってくれ』と言ってるようなもの。

 我々マジシャンはどんな感情や思惑を抱いていたとしても、観客の前ではポーカーフェイスでなければなりません)

 口では何故警察がいるかを問いながら、終点に到着後に列車内のチェックと荷物検査が行われること、手荷物だけを持って外で待つように告げられる。そうして高遠は予定通り、山神の頭をホテルに持ち込むことに成功したのだ。

 

 

 

 

 ホテルに入って都津根毬夫(架空の存在)に届けられた荷物(山神の体)を確認し、最初の死のマジックである『天外消失』の仕上げにかかる。警視庁へと送ったねじれたマリオネットのように、あたかも全ての事柄はマリオネット(それ)を意識し、一つの物語だと観客が感じるように全てを繋げていく。

 山神の死体を部屋に飾ったところで早々に荷物を持ってチェックアウトし、不要になった都津根毬夫の衣装とダミーとして持ち込んだ鞄を沼へと放り投げて沈める。死骨ヶ原に広がる沼地、しかも何が入っているかもわからない鞄一つのために探すこともなければ、仮に見つけられたとしてもどちらもほとんど意味のないもの。

(証拠隠滅が楽で、とても良い場所ですよ。本当に)

 行き来も不便で、駅とホテル以外はほとんど何もないこの辺境の地は、現地住民か目的がある者しか訪れることはない。だからこそ、メディアを避けた母には都合がいい場所であっただろうし、このホテルの佇まいや雰囲気を愛していたが故に年に一度はこの地を訪れていたのだろう。

 ある意味で、この地で亡くなったのは、母にとっては本望ですらあったのかもしれない。

(なんて・・・ あなたがこの地をどう思っていたかなんて、本当はどうでもいいんですよ。母さん)

 今ここに自分はマジシャンとしてではなく、復讐者として立っていることは間違いない。

 だが、この復讐は母のためなどではない。

 自分自身の怒りのためであり、恥もなく今なおマジシャンとして舞台に立つ者達を罰するため。

連中の死を魔術のように美しい芸術犯罪(マジックショー)として彩り、並み居る全ての観客に驚きと畏怖を与えさせたいのだ。

(あぁ本当に、マジックは素晴らしい)

 人を欺き、信じられないような出来事を見せ驚かせ、魅せていく。それがマジック。

 そして、それは完璧な犯罪も変わらない。

 偉大なマジシャンである近宮玲子()が終わりを迎えたこの地こそ、地獄の傀儡師(自分)が始まるにふさわしい。

(さぁ、幕はもうあがっている。

 この舞台の上で楽しく踊ってくださいね、幻想魔術団の皆さん)

 そうした後、山神の死体をお披露目するために電話をすれば警察も、幻想魔術団のメンバーも恐怖で震え上がり、言葉を失っていく。

 実に素晴らしい観客の反応、最初のマジックの成功を感じて高遠はマネージャー業へと戻る。そうして予想通り、団長が死んだにもかかわらず今夜のマジックショーを中止することなくそのまま行うことを由良間が独断で決定し、高遠と残間を使って客に周知させていく。案の定、由良間の身勝手な行動と自分こそ次期団長であると確信している姿に、夕海は苛立ちを隠さない。一触即発という言葉がふさわしい状況だが、客に周知されている以上はショーを行わないわけにはいかない。

 

「覚えときな! 由良間! このままじゃ絶対済まさないからね!」

 

 そう吐き捨てて部屋を出ていく夕海の顔は誰にも見せられないほど憎しみに歪み、それを見て飄々としている左近寺はなかなかに興味深い。

(ポーカーフェイスという意味では、道化(ピエロ)である彼が一番うまく出来ているのかもしれませんね)

 団長である山神でも、その妻でありほとんど副団長同然の夕海でも、人気だけは高い由良間でもなく、掴みどころがなく誰に対してもどこか挑発的な左近寺こそがマジシャンには向いているのかもしれない。

 だが、向いていても上にいけない、親しみやすさから人を楽しませるカードマジックをしていながらも人気がないのには理由があるのだ。

(さぁさぁ、幻想魔術団の忘れられないマジックショーが始まりますよ)

 

 





高遠さんが恋する乙女でちょっと笑うし、そこはかとなく思考がヒソカ過ぎて怖っ。
なんか執着の仕方が似てて、高遠さんとヒソカが一緒に出るようなクロスオーバー二次を書きたいようで書きたくない複雑な気持ち。
しかもヒソカの念能力も、高遠さんと親和性高そうだし(;^ω^)
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