事件ではない息抜き回。
なのに、書いてたら長くなってしまったので前編・後編構成。
後編は明日の朝六時に予約投稿しておきます。
サブタイでわかる方はわかると思いますが、登場させられてなかった彼女が登場しますよー。
左近寺が死亡したマジックショーから一週間弱が経過し、金田一の日常はいつもの平凡な・・・ いや、少しばかり退屈な学校生活へと戻っていた。
授業の大半を居眠りし、午後の授業はなんだか気分にならなくて昼休みからずっと屋上で寝そべって目を閉じていると、日が当たっていた顔が突然陰る。
「ん?」
「あ、起きた。
こんにちは、せーんぱい」
上を見上げるとそこにはたなびくスカート・・・ は存在せず、こっちの顔を右側からしゃがんで覗き込んでくる可愛い女の子の顔だった。これが知り合いなら『なーんだ、〇〇かぁ』で済むのだが、生憎明るい髪色をしたセミロングの美少女系の後輩は金田一の知り合いにはいなかった。
「だ、誰だぁ!?」
慌てて左側へ転がるようにして距離を取って体を起こせば、距離を取られた彼女はクスクスと笑いながらこちらを見ていた。
「もう、どうしてそんなに慌てて距離を取るんですか? 金田一先輩」
「えっと・・・? 忘れてたらごめんなんだけど、俺達どっかで会ったことあるっけ?」
「いいえ、今日が正真正銘の初対面です。でも、この学校で金田一先輩のことを知らない生徒なんてほとんどいないと思いますよ?
あの金田一耕助の孫ってだけでも有名人になるのに、校内で有名な美女たちやアイドルの怜香ちゃんともよく一緒に行動してて、学校で話題にあがるようなことには大抵関わってるんですもん」
ニコニコとしながら少しずつ金田一へと歩み寄っていく彼女は何かを思い出してふと立ち止まり、物語のお姫様のようにスカートの端をつまんでカーテシーをする。
「初めまして。私、不動高校一年の美浦えみりです」
そこからさらに距離を詰めようとしたえみりを阻むように屋上の扉が壊さんばかりに乱暴に開かれ、金田一は恐る恐る、えみりは一瞬だけ舌打ちをしそうな不機嫌な顔をするがすぐさま表情を張り付かせながらそちらを見ると、そこには不機嫌そうな美雪と涼しいを通り越して冷たい表情をしたるい子が立っていた。
「はじめちゃん! ここにいたのね!」
「あら、美浦さん。つい先日入ったばかりのミス研に顔を出さないかと思ったら、ここにいたのね」
「おばさん達が揃いも揃ってお出ましですね~」
「おばっ!?」
「じゃぁ美浦さんも二年後にはおばさんね。
楽しみだわ、進級したらミス研のOGとして顔を出して呼んであげるわね」
怒りで固まる美雪と違い、さらっと言い返するい子とえみりの間で静かに睨み合いと火花が散る。
「じゃぁ、その時の桜樹先輩はおばあちゃんですね。私も桜樹先輩をそう呼ぶの、とっても楽しみです」
「フフフ、そうね。そうなればミス研で定期的に同窓会を行えるような状況を作らないとね。
美雪さん、新部長としての初仕事が出来たわよ」
「新部長としての初仕事はこの間、えみりちゃんの紹介したじゃないですか・・・ はじめちゃんはサボってましたけど」
るい子の発言に美雪がため息を零していれば、金田一も慌てて立ち上がる。
「なんだよ、美雪。こんな美少女が入部してくるってんならサボらずに行ったのに、なんで教えてくんなかったんだよ!」
「もう! 大事な決め事があるって言ったのに、さっさとバイトに行っちゃったのははじめちゃんでしょ!」
「ていうか美雪、いつの間にるい子先輩に下の名前呼ばれるようになってんだよ!?
俺、初めて聞いたんだけど!」
「それは今、気にすることじゃないでしょ!」
金田一と美雪のやり取りにえみりが呆気に取られているが、るい子にとってはもはや日常の一部であり、タダで見られる夫婦漫才同然である。
「桜樹先輩、あれ、なんですか?」
「あら? 金田一くんの評判を知っているなら聞いているんじゃない?
美雪さんも彼に負けず劣らずの有名人だもの」
「それはそうですけど・・・ 問題児なのに不思議と嫌われてない金田一先輩へのやっかみだって思うじゃないですか」
「噂で判断する人って、皆同じこと言うのよね」
涼しい顔で笑うるい子にえみりがまたカチンッときたらしく、不満そうな顔で絶賛夫婦漫才中の金田一と美雪の元へつかつかと近づいていった。そして、金田一の腕に絡みつくように抱き着いて甘えた声を出す。
「金田一先輩! 私、先輩がミス研に入ってるって聞いて興味を持ったんです!
そしたら先輩ってば、なかなかミス研の方に顔出してくれないんですもん。私、いろんな人に聞いて、屋上に来たんですぅ」
「そ、そうなの?」
可愛い女の子に密着されてる上に自分に興味を持っているなんて言ってくる後輩が可愛くない筈がなく、金田一の鼻の下はだらしなく伸び、顔は紅くなる。だが、そんな紅くなる顔に美雪の手が伸び、金田一の頬を引っ張った。
「はじめちゃん? とーってもだらしない顔になってるわよ」
「イタタ、ひ、ひっぱんなよ。美雪」
「えぇ~? 七瀬先輩、心せまぁい!
こんなことで彼氏でもない幼馴染がだらしない顔したぐらいで嫉妬ですかぁ?」
えみりの逆なでするような言葉に目を据わらせながら、ここに来た理由を思い出して彼女へと視線を向け直す。
「美浦さん、ここには元々あなたを呼びに来たの。
そうですよね、るい子先輩」
「あら残念、面白い展開だったのに・・・ 切り上げられてしまったわ」
「る・い・子・せ・ん・ぱ・い?」
少し離れたところで楽しく見物していたるい子を呼べば、わざとらしく肩を落とすので美雪がさらに強く呼ぶ。
「あら、新部長に怒られてしまいそうだわ。
美浦さん、あなたが得意だと言っていたダウジングの実力を見せてほしいのよ。なんでも真壁くんが大切な物をなくしてしまったみたいなの」
「えぇ~。別にいいですけど、真壁先輩ですかぁ~?」
真壁の名を聞いてあからさまに嫌そうな顔をするえみりに、るい子は溜息をつく。
「そんな嫌そうな顔をしないであげて頂戴。
それにあなたは知らないでしょうけど、彼は七不思議の騒動前に比べれば随分穏やかになったわよ」
「前はどうだか知りませんけど鷹島先輩と密着してたり、ずっとぴったりくっついてることが多すぎて、気持ち悪いです。
鷹島先輩が潔癖症なのはわかりますけど、真壁先輩が触るのは大丈夫っていうのもちょっと意味がわからないっていうか」
「あー、それわかる!
全員にあぁしてんだったらしかたねーやって思うけど、あんなびっちりくっついてる真壁先輩は平気っておっかしいよなー」
「金田一くんには全く同じ言葉を贈りたいけど、二人が言いたいこともわからなくはないわ。けど、恋人ってそういうものでしょう?
友人とも、クラスメイトとも、先輩後輩とも違う特別な存在。ともすれば、まったく予想もつかない将来すらも一緒に居たいと思って、不確定な未来すらも夢見てしまう・・・ 真壁くんと鷹島さんはそういう関係であり、私もあなた達もまだ見つけられていないか、近すぎてよくわかってないというだけのことだわ」
恋愛を知った顔をする恋愛経験ゼロの女、桜樹るい子。
彼女のミステリアスなところは魅力的だが、同時にそれらの雰囲気は性別問わずに彼女に人を近づきづらくさせる。何よりも彼女の異性を見る目は厳しく、それなりの能力がない異性でなければ一笑されて終わってしまうだろう。
「さぁ、ミス研の部室に行きましょう。
金田一くんも暇ならたまには顔を出して頂戴。一応あなたの所属はミス研が所有しているのだから、たまには顔を出してもらわないとね」
「えっ、俺ってミス研の所有物だったんすか?」
「安心して頂戴、小城さんに許可は貰ってるわ」
「絶対それを言われた時の所長、困った顔してましたよね!?」
金田一のツッコミもどこ吹く風とばかりに気にもせず、屋上から階段へ向かっていくるい子に後輩である三人もついていくしか出来ない。
「それで七瀬先輩、真壁先輩がなくしたのって何かわかってるんですか?」
「それがどうしてか、具体的に何をなくしたのかは隠したがってるみたいで言ってくれないの・・・」
「それ、ダウジングだと結構困るんですけど・・・ 具体的に何を探すかがわからないと探しにくいです」
「フーン? でもダウジングってあれだろ? 漫画とかにある宝石みたいなやつをぶら下げて探したりするやつ」
「はい、詳しく言うとそれは振り子のペンデュラムっていう奴で、私は基本L字のダウジングロッドを使ってます。
でも、弟子入りした時にお師匠様が送ってくれたのと持ち運びが楽なので、いつもはペンデュラムですね」
説明しながら彼女は制服のポケットから柔らかな布で作られた巾着袋を取り出し、大切そうに手に持った。
「でも、これって占いでは聞いたことあるけど、本当になくしものや・・・ それこそ漫画に出てくるみたいな財宝を見つけることなんて出来るの?」
半信半疑とばかりに美雪が聞けばえみりは少々むっとし、彼女の苛立ちを察知したるい子が少し前から説明する。
「確かに美雪さんの言う通り、フィクションで題材にされて見た目だけのものと思われてる人もいるかもしれないわね。
でも事実として、ダウジングは探し物や占い、水脈や金鉱などを探すのに古くから用いられているものよ。確か、中世のドイツでは相応の資格を得るために国家試験も行われたんじゃなかったかしら?」
「桜樹先輩の説明だけじゃ古めかしいものに聞こえますけど、ベトナム戦争では地雷を探すことにも使われたり、水道局員が水道管を探すのにだって使われてるんですよ。
けして眉唾でもなければ、古いだけのものでもありませんから」
えみりがきっぱりと言い切ったところでミス研の部室に到着し、そこにはいつもより人の集まりがいいミス研の皆さん。
(ミス研も随分人が増えたよなぁ~、前は一人いなくなったら同好会に落ちるような少なさだったのに)
「金田一くん、失礼なことを考えてるのが丸わかりよ」
「なんでわかるんすか!?」
「あなたの場合は根っこから素直なんでしょうね、全部顔に書いてあるのよ。
それに女性は良くも悪くも隠し事ばかりだから、男性の表情はわかりやすくて助かるわ」
人が集まってる部室はもう探すことを諦めたのか、はたまたダウジングで探すところを見たいがための野次馬なのか、いずれにせよ新部長の美雪と旧部長のるい子の二人がえみりを連れてくるのを待っていたらしい。
が、興味津々の生徒が大半の中、なくしものをしたはずの真壁も何故か余裕綽々でこちらを見てきた。
「あぁ、待ってたよ。七瀬くん、桜樹くん、美浦くん。
おや金田一くんも来たのか、珍しい。最近はとんと部室に足を運んでなかったから、てっきり退部したのかと思ったよ。バイトも忙しいようだしね」
「そのとーりで、バイトでクッソ忙しくて楽しいんですよ。
俺、そもそもミステリーとかあんま読まねーし、ここにいると変にいちゃついてるねっとりとした先輩もいますし」
「充実しているようでなによりだね。でも、あまり小城探偵に迷惑をかけないように。
噂じゃ僕達の一件以降も宗像くんのご実家のことや、メディアにも取り上げられた長野の事件にも立ち会っていたとか聞いてるよ。まったく、揃いも揃って小城探偵に迷惑をかけるなんて嘆かわしいばかりだね」
頭痛をこらえるように指先を額に当てて、わざとらしく首を振ってみせる真壁に金田一はそっぽを向いて舌を出す。
「へーへー、七不思議事件の時はとっとと避難して鷹島先輩と恋人になっちゃってた真壁先輩は素晴らしい人ですね~」
「なっ! あれは彼が僕らに避難を促していたからであって!」
「そりゃぁねぇ? 真壁先輩みたいな厭味ったらしい人があんな現場にいたら、不用意なことを言って『放課後の魔術師』に後ろからザクーとかされてたかもしれませんから? 帰ってもらって大正解でしたー。
残った俺達は旧校舎の資料を一緒に目を通すことしたり、所長のクッソカッコいいところとか、犯人が捕まるところもバッチリ見ることになったんですけどねー」
言い返そうとして来た真壁に対して舌が別の生き物かとばかりにベロベロ出して小馬鹿にし、こめかみの近くで両手をパタパタと動かして煽る。
「フンッ! こんな知性の欠片もない男を小城探偵はどうして雇っているのか、理解に苦しむよ」
喧嘩を売った真壁が話題を変えた辺り、勝者はどちらかは明らかである。
「真壁くん、久しぶりに来た後輩にかける言葉がそれなの?」
「ぐっ! だが、彼が僕に失礼なことを「真壁先輩、頭がいいって噂なのに自分から喧嘩を売ったのも理解できないほど残念な人なんですかぁ?」
るい子の呆れ切った言葉を反論しようとした真壁に割り込んできたのは、金田一の腕に絡みついていたえみりだった。金田一の腕から離れ、両手を肩の高さにして大袈裟に呆れていることを示す。
「というか私、真壁先輩の探し物で呼び出されたって聞いたんですけど。金田一先輩と口喧嘩してるなら、もう帰ってもいいですか?
ミス研に来ないってだけで暇を持て余してるとか思われるのって、すっごい心外なんで~」
えみりの言う通り、部活動に強制力はなく、ましてや運動部のように決まった大会やわかりやすい目標があるわけでもなければ、相応の練習が必要というわけじゃない文化部などの所属も参加も本人の意思と気分次第でいい筈だ。
多くの部活動でそうさせないのは集団心理や、真面目さと自分の押し付けを履き違えている馬鹿者達が多くいるからだろう。
「部活なんて自分が参加したいときに参加して、行く気のない時なんて来なくていい。
そういう都合のいい場所でいいじゃないですか~」
入ったばかりの新人がしれっと言ってのけたことに、その場にいた多くの生徒は不愉快そうな顔をする。
だが、周りの雰囲気やら他人の顔色を窺う人間が全員の前でそんなことを言うわけがない。
「そ、それは困る! 君の実力を、僕はこの目で見たいと思ってるから呼んだんだ!」
「えぇ~・・・ 七瀬先輩と桜樹先輩、新旧の部長が揃ってこんな人の使いっぱしりにならないでくださいよぉ~」
『不満です』とばかりにわざとらしく頬を膨らませてるい子と美雪に文句を言えば、るい子は悪びれることなく、美雪ですらも真壁の態度に困った顔をする。
「美浦さんの言いたいこともわかるけど、困ってるのは本当みたいだから助けてあげて」
「・・・まぁいいですけど。
どうせこの場に残ってる皆さんはダウジングのことを疑ってるか、もしくは私にそんなことは出来ないと思って失敗するところを見たい野次馬の人でしょ」
その場にいる全員を目を細めて見つめる姿は、ある意味で睨みつけてるようにも見える。
多くの者は彼女が言ってることが図星だとばかりに視線を逸らし、それ以外の者は見定めるように、心配するように、興味もないとばかりに本に目を落としている。
「さっさと終わらせて帰りまーす」
彼女は鞄から取り出した方位磁針で方角を確認してからある方向を向いてから、さっきの巾着袋の中から鎖の先にオレンジ色の三角錐の宝石がついたペンデュラムを人差し指と親指で持って垂らす。
ただそれだけの動作で纏う空気が変わり、彼女が集中していくのがわかる。
「ペンデュラムさん、質問してもいいですか?」
その問いの意味がわからずその場にいる多くの者が首を傾げるが、えみりの問いに応えるようにペンデュラムが動く。彼女は揺れたペンデュラムを左手で止め、そこからいくつかの質問をしていく。ペンデュラムの動きを見守るえみりの集中は続いて(orえみりは集中し続けて)おり、奇異の目を向ける者が多い一方で、真剣な様子の彼女に茶々を入れる者は誰もいなかった。
えみりの質問で徐々に範囲は限られていくが、何を思ったか険しい顔をした彼女は次に変わった質問をした。
「この部屋で彼は今日、なくしものをしましたか?」
「え?」
誰も予想していなかった問いかけにえみりはダウジングの動きを見て、そっと目を閉じ、ペンデュラムを片付けてしまう。
「はぁ~・・・ 誰が言いだしたんだか知りませんけど、本当にダウジングをさせたいだけの茶番ですか」
呆れ切った声とは裏腹に、彼女の目にあるのはその場にいる者達への軽蔑。
「どういうこと? 美浦さん」
「さぁ? それはむしろ私が聞きたいんですけど。
とにかくこの部屋にはなくしものなんてありませんし、真壁先輩はなくしものなんてしてませんよ。多分、自分で持ってるんじゃないですか?」
『どうでもいい』とばかりに吐き捨てるように言うえみりに、室内の視線は真壁に突き刺さる。
が、視線が集まった真壁は悪びれることもなく、大袈裟に手ぶりをつけて笑う。
「フッ流石だね、美浦くん。どうやら君の能力は本物のようだ。
そう、僕は物をなくしておらず、こうしてここに持っているんだよ」
言いながら懐からしっかり包装された何かを取り出して、得意げな顔をする。
だが、周りの人間の反応は彼の予想外だったらしく、戸惑うような、呆れるようなものだった。そして、その場を代表するように、るい子は冷めた視線と声で問いかける。
「真壁くん、どういうことかしら?」
「御覧の通りだよ、桜樹くん。僕は彼女を試させてもら「その『試す』という行動から、『どういうことか』と質問しているのがわからないのかしら?」
冷めた視線がさらに温度を下げ、声も温度と比例するように冷たく突き刺さるようなものに聞こえる。
「さ、桜樹くん・・・ ダウジングの実力が本当かどうかは僕に限らずこの場の全員が知りたいところだろう? 僕は皆に代わってその機会をだね「そんなことを頼むような者がいるなら名乗り出なさい。そして、その者は自分の得意とすることの実力を誰にでもわかる形でこの場で証明しなさい。真壁くん、あなたがしたことはそんな失礼なことよ」
そ、それは・・・」
「いいですよ、桜樹先輩。
こういうことってよくあって、慣れてますから」
「あなたの慣れの問題じゃないのよ。
たかだか先輩でしかない存在が上から目線で『実力を試す』っていう行動がおかしくて、私個人としても非常に不愉快だわ」
「あ、個人的な怒りなんですね・・・ まぁ、同意しますけど」
三人のやり取りに置いてきぼりにされてる周囲に対して、金田一は興味深そうにえみりを見ていた。
「ほーん、ダウジングによる探し物かぁ。トレジャーハンターの関係にもなりそうだし、所長も出来んのかな?」
「小城さんだと出来ちゃいそうよね。さつき先輩の時はとにかく資料とかから情報を集めてやってるみたいな言い方をしてたけど、どうなのかしら?」
るい子がねちねちと真壁と真壁の暴露によって賛成した数名をまとめて説教しているのを見ていたえみりが、二人の会話に気づいて振り向く。
「さっきから話題に出てるコジョーさんって、もしかしてフルネームだと小城拓也さん?」
「え!?」
「え? なになに? えみりちゃんって所長と知り合いなの?」
「あぁ・・・ そういえば師匠って、トレジャーハンターだけじゃなくて探偵も副業でしてるんだったっけ?
てことはまさか、金田一先輩って師匠の事務所で働いてるんですか?」
「え、トレジャーハンター界隈だと探偵が副業扱いなの!? てか、師匠ってどういうこと!?」
「ここで二人で話が進まないなら、一度事務所に行けばいいんじゃない?」
お互いに
「そうすっかぁ。どうせ今日も俺はバイトだし、所長も最近元気ないからなぁ~。
えみりちゃんもそれでいい? なんか今日、用事とかあるなら別の日に事務所に案内すっけど。てか、知らないっぽいから案内って言ったけど事務所の場所知らねーの?」
「大丈夫でーす。
あっ、私っていつきさ・・・ ある人を通じてトレジャーハンターの仕事であって以降も現場で会うことが多かったんで、師匠の副業についてほとんど知らないんですよぉ。いろいろと教えてもらいたいから連絡先としては事務所の番号とかは知ってますけど、探偵関係の仕事はお互い何も話さなくって」
「いつきさんまで知ってんの!?」
「あ、金田一先輩もいつきさんのこと知ってるんですね。
フフッ、私達って知り合いとか共通点が結構多くて、なんだか運命的ですね」
想像外のところで出てきたいつきの名に金田一が驚けば、えみりは嬉しそうに笑って金田一に接近し、再びえみりが金田一の腕に絡みつこうとしたところで美雪が割って入ってやんわりと阻止する。
「はいはい、それじゃぁ私達が案内してあげるわね」
「え~、七瀬先輩は腐ってもミス研の新部長さんでしょう? この場の後始末をしなくていいんですかぁ~?」
「今日はもうるい子先輩がなんとかしてくれてるから、大丈夫よ。
るい子先輩、お願いしてもいいですか?」
「えぇ任せて頂戴、私もこれが終わってから合流するわ」
美雪らの方を振り向くことなく返されたるい子の言葉を聞いてから、部室を出てもなお彼女の説教は続いていた。
「それで真壁くん、あなたの本当の目的はなんだったのかしら?」
「それはその・・・ 正面から彼女に贈り物を渡すのが恥ずかしくて、美浦さんの能力を試すようなことを絡めてからなら問題ないかと・・・」
「どう問題がないのかしら?
あなたの羞恥のせいで彼女は非常に不愉快な目にあったのだけど? 恋人を喜ばせるために他人を不快にさせるなんてあなた何様? 王様にでもなったつもりかしら?」
背後から聞こえたるい子の言葉に金田一は冷や汗をかいた。
「るい子先輩、きれっきれぇ・・・」
怒りと言動、どちらを意味するかといえば当然両方である。
だが、そのきれっぷりが自分に向けられることを恐れた金田一は彼女から聞こえないところでつぶやくのであった。
何気に結構久し振りの登場なミス研。
気がついたら四十話になってて、書いてる自分が一番驚いてます。
ペンデュラムの手順については、一応調べてから描写しました。
うーん、しかし実際に見てみたいなぁ。