小城探偵事務所   作:無月

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独自解釈、原作改変、盛沢山。

本当はこの事件じゃなくて別の事件を予定してたんですが、せっかくこのメンバーで集まるのでこちらの事件を。
小城のトレジャーハンター側をどうぞ。

さぁー、順番変わったけど、次こそはあの事件だ。


秘宝島殺人事件

 その日の夜、事務所を閉めた後にいつきとえみりと共に個室のある居酒屋へと向かっていた。

 

「皆、金持ってっから最初はもっと良い店選ぼうとしたんだけどよぉ。

 たまには居酒屋の料理を食いてぇって意見でまとまって、個室付きの条件でここになったわ」

 

「なるほど・・・」

 

 小城から出てくる質問を先取りする形で説明を受けながら店に入り、事前に部屋の場所も聞いていたいつきが先頭を歩いて誘導していく。

 

「師匠はこういうお店は来ないんですか?」

 

「僕はそもそも外食にあまり行かないからなぁ。

 仕事も会食が必要というわけでもないし、警察関係者や有名な作家の方とも交友はあるけれど、そう言った方達とお金のかかるところに行くとかえって勘繰られてしまうしね」

 

「あー、なるほどぉ」

 

「まぁ例外的にもともとそういった趣味があることを周知されてる人だと、一緒に行ったりもするね」

 

 どんな店かも、誰かも明言は避け、未だあちこちのメディア等に引っ張りだこなとあるノンフィクション作家を思い浮かべてしまう。

(はぁ・・・ あまり頼りたくないけれど、場合によっては橘先生の情報網を頼ることも検討しなくちゃいけないかもしれないことが恐ろしい・・・)

 もっともそれも橘の身に危険が及ばない範囲という、なんとも難しい見極めが必要となる。

 

「お酒は飲めるけど傍から見てわかりやすく酔ったりすることもないし、煙草はもうやめてしまったから煙草で繋がる付き合いは出来ない上に、食は細いからあまり食べられない。

 総じて、一緒にお酒を飲んだりすることには向いてない人間だと思うよ」

 

「え? 師匠って煙草吸ってたんですか?」

 

「吸ってたよ、二十歳になってから事務所立ち上げまでの少しの間だけね」

 

「まー、トレジャーハンターの仲間内じゃ吸ってない奴のが稀だし、俺もそうだがどうにも世間様が言うところのまともじゃない職の奴らは吸ってることが多いよなぁ」

 

 クックックと喉を鳴らしながら笑ういつきが個室に入っていけば、そこには以前天草財宝に関与した中田、赤峰、赤門、最上、矢木沢が揃っていた。

 

「よっ、皆さんお揃いで」

 

「待たせすぎよ、いつきさん。

 あなたが本当に小城さんを連れてこれるか、皆心配してたんだから」

 

「というわけで、この賭けは僕と葉月くんの勝ちということで。

 今度の宝探しでの報酬割合、先ほど話した通りでお願いしますよ」

 

「チッ!」

 

「はいはいっと。

 まっ、私も矢木沢さんも赤門くんや中田さんと違ってそれだけで食べてるわけじゃないから直接的な報酬ってそんなにあてにしてないけどね~」

 

 苦々しげに舌打ちする赤門と、賭けに負けた割には全然痛くもかゆくもないと笑う赤峰。そして、それを見てわずかに笑う最上に小城は目を細めてしまう。

(行動的な中田さん(長女)に静かに見守る最上さん(次女)、要領がよくてマイペースな赤峰さん(三女)にどこか捻くれてる赤門くん(末っ子長男)か)

 原作も今も当人達が知ることのないままであることは変わらないが、小城は四人のこの関係性をとても好ましく思う。

 

「あら、えみりちゃん! 久し振りね!」

 

「藤子さん、お久し振りですぅ。

 他の皆さんも。また会えて嬉しいです」

 

 ニコニコと愛想を振りまき、自分の隣の席をポンポンと叩いてくるように促されたのに従う形で彼女の隣へと座った。いつきは当然とばかりに最上の隣へ座り、小城は矢木沢の隣に失礼する。

 

「小城くん、最初はビールでいいかい?」

 

「えぇ、ありがとうございます。矢木沢さん」

 

「あ、俺もビールで!」

 

「えみりちゃんはジンジャエールで大丈夫かい?」

 

 どうやらドリンクの注文も料理の注文も待っていてくれたようで、それぞれの意見を取り入れつつ、いくつかの料理を注文したところで小城が挨拶をする。

 

「お久し振りです、皆さん。

 和田さんからこのチームでの活動については聞き及んでいますよ」

 

「何言ってるのよ、小城さん。探偵業であちらこちらにお呼ばれしたり、しかもあの有名な磨陣村のお宝も見つけたって話じゃない」

 

「一族で頑なに守ってきた秘宝、結婚で一族に入ることでしかお目にかかれないというのに、あの遺跡の研究の第一人者である入り婿ですらその宝を見たことがない・・・ ならば血縁のみが見つかるような何かがあるのか、はたまた見つかっていることを明かしていないのか。明かされていない以上推測しか立てられなかった宝を、あなたは到着後にすぐ見つけてしまったとか。

 トレジャーハンターの多くが知っているというのに、その縛りからほとんどの者が手を出せずにいた宝を副業で関わり、見つけてしまうとは・・・ 本当にあなたの運と洞察力には脱帽しますよ」

 

 赤門の長ったらしい語りにどこか皆うんざりしつつも、宝関連なこともあって全員が耳を傾ける。

 

「僕というよりも研究の第一人者である士郎氏の娘さんが、事務所で雇っている学生の先輩にあたる子でしてね。その子が遺跡発掘の人手として彼を雇いたい旨をこちらに伝えてくれたんですよ。

 なので、遺跡発掘の人手を事務所で手助けをした関係で、僕がトレジャーハンターであったことを話したら、あとはもうトントン拍子でしたよ」

 

 サラッと説明すれば、いつきの隣で静かにウーロンハイを飲んでいた最上も頷いた。

 

「あそこの土地は宗像氏や協力者である東城大の国守氏のおかげで多くのことが明らかになっていますし、明らかになった情報からいくつもの仮説や推測が立てられていた。情報通で、あの土地の最大の難関である『無関係な人間が発掘に参加する』をクリアできたなら小城さんなら難しいことじゃありません」

 

「おいおい、葉月。その言い方じゃ『研究に関わりたかったのに断られた』みたいな言い方じゃねぇかよ」

 

「そうですけど何か?」

 

 いつきの言葉が大正解だったらしく、空になったグラスをやや乱暴にテーブルに叩きつけた。そんな最上を宥めつつ、同じく断られた経験があるらしい赤峰が溜息をつく。

 

「私も断られたわぁ。入り婿さんの古くからの知り合いとか、彼の直属の部下しか発掘に携わってないからカメラマンの手が入る余地もあったかと思ったのに、まーったく駄目。

 自分達が見つけたっていう実績が欲しいのはわかるけど、写真が残ってない発掘なんて偽造し放題なのにさぁ」

 

 彼女らの意見から如何に一族が抱えている財宝に関わることが難しいかがわかるが、トレジャーハンター界隈からすれば運良く関われたと思われていても、小城からすれば関わりたくなかったことが本音である。

 

「そういえば小城さん、収集家との交流のためにアメリカに渡ったらあの子達に会ったわよ」

 

「それはそれは・・・ 元気にしていましたか?」

 

「聞かなくても知ってるんでしょ?

 あの子達も言ってたわよ、あなたとは文通をしてることと、いずれは日本に来るつもりだって」

 

 中田から突然振られた話題に小城は戸惑うこともなく、そしてそれは小城のみならずその場にいる全員が誰の話であるかを理解した。

 

「日本に戻ってくる、ねぇ?

 航一郎くん、今やあっちで将来有望の若手俳優でしょ。日本に戻れるタイミングなんて、それこそ何かの映画か舞台での来日ぐらいしかないんじゃない?」

 

「あら、詳しいじゃない。赤峰さん」

 

「私は冒険カメラマンがメインなだけで、他のカメラマンとの交流もあるからねー。ましてや、ここにいる皆と行動していると日本だけの行動に留まらないし、おかげで国籍問わずカメラマンの知り合いが増えたから冒険カメラマン以外の仕事増えちゃった」

 

 下手をすれば直接会った自分よりも詳しいかもしれない事実に中田が驚けば、赤峰は通常であれば嬉しい筈の事実に対して複雑そうに顔を歪めている。

 

「仕事が増えて、何か問題でも?」

 

「大有りよ! あたしは冒険を撮りたいからカメラマンになったのよ!?

 他の写真撮影でスケジュール埋めたら、いつそのタイミングが来るかもわからない冒険の写真が撮れないじゃない!」

 

「あははは、藤子さんって基本お宝がメインじゃなくてそれと一緒についてくるロマンが好きですよね」

 

 大変不満だとばかりに口にする赤峰を見てえみりが笑えば、彼女は力強く頷いた。

 

「当ったり前じゃない! 子どもの頃からの二つの宝を発見して最初の夢はかなったけど、あたしは宝を見つけて、そしてその現場で起こった全てをこのカメラに残したいのよ!

 ここにいるチームなら成功率はあがるし、あたしには持ってない技術や知識、交流関係に資金を持ってる。探して、見つけて、その後も冒険もロマンも続くのよ? そんなのワクワクしてこない?」

 

 いい歳をした大人の女性がそんな言葉を力強く言ったにもかかわらず、その場にいる誰もそれを嗤うことはなかった。

 金が欲しい。名誉が欲しい。世界をひっくり返すような事実を求めてる。

 多くのトレジャーハンターの目的がそうだとしても、少なくともこの場にいる中田、赤門、最上、赤峰は違う。幼い頃から夢に見て、その夢を愚直に追いかけ、実現するだけの技術や知識、そして行動を以て辿り着いた夢追い人なのだ。

 例えその生まれから義理の両親から仕組まれていたものだったとしても、彼女達は夢を実現するための妥協などしなかった。そのためなら楽に生きられるような道筋すらも捨てて、飛び込んでいってしまえた。

(なんていうかこの姉弟は、芯の部分が他のトレジャーハンターと違って純粋なんだよな。眩しいなぁ・・・)

 成長するにつれて金や名誉が欲しくなったのは否定出来ないし、しないだろうが、幼い日の夢を追いかけ、今も走り続けている四人は小城からすればとても眩しくて、どこかで羨ましくすらある。

 

「まぁわかるわよ、あたしもそうだし。

 それでもお金は欲しいけどね」

 

「フンッ、青臭い言葉ではありますが否定はしませんよ」

 

 素直に認めたり、褒めたりすることの出来そうにない彼らなりの最大の誉め言葉に赤峰は笑い、最上も微笑ましそうに見つめている。

 

「それにしても航一郎くんか・・・ 懐かしいね。

 天草財宝以降こうしてたびたびチームを組むようになった僕らに、珍しく小城くんから声をかけてくれた一件だからよく覚えてるよ」

 

「あぁ、あれは楽しかったですね。

 小城さんに天草財宝での借りを返せましたし、それどころか貸しを作ることまで出来たんですから」

 

「おいおい赤門、お前はもっと言葉を選べよ」

 

 矢木沢が懐かしそうに目を細めれば、赤門がニヤリと笑いながら嫌な言い方をしたのでいつきからの注意が飛ぶ。

 

「ハッ! 本来の雇い主に嘘偽りを報告して、正しい持ち主に宝を渡すなんて慈善事業に付き合わされたんですから、これぐらい言ってもいいでしょう?」

 

「なら、無理に付き合うことはなかったんですけどー?

 師匠は確かに皆さんに『お願い』はしましたけど『強制』も『脅し』も一切してませんし、金銭も相応の報酬も貰っておいてグダグダ文句言うとかだっさーい」

 

「なっ!」

 

 えみりの歯に衣着せぬ言葉によって赤門の顔が歪み、言い返そうと口を開くが、何も思いつかずに口を閉じてしまう。

 

「まぁまぁえみりちゃん」

 

「だって師匠~。赤門さんって夢追いかけて考えなしに東大中退とか、馬鹿以外の何物でもないじゃないですかぁ」

 

(この子、本当に容赦ないな!?)

 『人を言葉だけで殺せるんじゃないか?』と思うような切れ味の激しい彼女の言動に冷や汗が流れるが、見渡しても同じように気まずそうな顔をしている者はおらず、えみりの言葉に賛同しているような表情の者が多くかろうじて苦笑いしているのは矢木沢さんだけだった。

 

「い、今は小城さんの言葉もあって、大学には通い直してる!」

 

「へぇー?」

 

 追い打ちをかけようと思えばかけられるとばかりのえみりの態度に赤門が目を逸らし、話題を逸らそうと中田の話を掘り返した。

 

「そ、そういえば佐伯くんは他に何か言ってましたか?」

 

「うーん? 特に何も。

 でも随分と明るい表情をして、まともな格好をして、堂々と歩くようになってたわね。ガールフレンドの美作さんもその隣で幸せそうに笑ってたし、順風満帆って感じだったわ」

 

「それはよかった・・・ 今は亡き佐伯教授もこれで安心出来るでしょうね」

 

「そっちは殺人には問えなかったところが悔しいがな! せっかく茅さんも連れてったってのに、結局無駄足になっちまった!!」

 

 いつきが『思い出しても腹が立つ!』とばかりに頭を掻くが、小城は首を振った。

 

「あんな孤島で起こってしまって、一度は事故死として片づけられたこと。その上、証拠は彼の証言一つじゃ、殺人は立件できないんですからしょうがないですよ」

 

「だけどよ!」

 

「ちょっとやめなさいよ、いつきさん。

 それは小城さんを責めてもどーしようもないって、あの時も何度も話し合ったじゃない」

 

 中田による制止が入り、小城は気にしてないとばかりに酒を呷った。

(そう、そうだ・・・

 そんなこと(殺人で立件)出来ないことだって、わかっていたことじゃないか)

 内心を誤魔化すように注文された料理を食べていれば、今度は静かに聞いていた赤峰が話を振ってきた。

 

「そういえばさ、同業の柿本さんと矢荻さんと八十島さんって知ってる?」

 

「あぁ、彼らか。どうかしたのかい?

 藤子くんとはずいぶんと年代が離れてるし、関わるきっかけなんてほとんどないんじゃないか?」

 

「そりゃ悲報島の元関係者なら、アンテナ立てておくわよ。まっ、元々評判良くない人達だったからロクな情報流れてこなかったけど、なんでも突然病気になっちゃったんだって。

 あの島のオーナーをしてた美作さんも随分と落ちぶれちゃったみたいだし、不動産業界にいる以上は馬鹿な経営しない限りはあの人は生活には困らなそうよねー」

 

 そう言いながらも意味深に小城に視線を向ける赤峰に皆気づいており、小城は一つ溜息をつく。

 

「何を期待しているかわかりませんが、僕はもう彼らに関与するつもりはありませんよ」

 

「それじゃあ、なんであんな慈善事業をしたの? ずっと気になってたのよねー、小城さんがあんならしくないことをした理由」

 

「皆さんはやたらと『慈善事業』なんて連呼してますけど、僕が彼に全ての宝を渡しておらず、国にも寄付しなかったことを都合よく忘れてませんか?

 大体、天草の時だって僕は利益を得てたじゃないですか。優しいばかりの人間が、探偵もトレジャーハンターもやってられませんよ」

 

 肩を竦めてみせれば全員は納得してないと無言で語っており、小城はまた溜息を零す。

 

「皆さん、善人の判断基準が狂ってきてません?

 僕はあの日あなた達に協力を仰いで、依頼人である美作オーナーを騙して悲報島の宝を奪った。その上、知り合いの警察まで使って過去の事件まで調査させ・・・ もっともこちらは無駄足でしたが。彼の腹心の部下である執事を逮捕までした。

 ただの泥棒で、詐欺師ですよ」

 

 小城が悲報島でやったことは非常にシンプルだ。

 優秀なトレジャーハンターとして美作オーナーに直接声をかけ、純粋な宝探しを求める者として報酬を求めないという契約の元で悲報島における調査許可を得る。そして、今回のメンバーに加えて既に美作の元で執事として働いていた岩田英作を見て、急遽茅にも連絡を取り、参加を表明された。

 

「泥棒で詐欺師、ね。

 本当に金だけが目当ての泥棒で詐欺師なら、わざわざ亡くなった佐伯教授の息子や美作がまーったく面倒見てねぇ娘さんに金を渡したりなんかしねーだろ」

 

「そこはほら、佐伯教授に化けて出られたくないので。

 それに本当に彼の遺志を継ぐのならあの宝は僕らの懐に入れることなく、国に寄付すべきだった。論文を見ている限り、佐伯教授は本当に真っ当な人のようでしたからね」

 

「それはそうだろうけど、君は君自身が普段から口にするほど悪人ではないよ。小城くん」

 

 矢木沢の言葉にも小城は肩を竦めれば、赤峰の隣にいたえみりは力強く頷いていた。 

 

「でも、あの洞窟のこわーい仕掛けを利用して『宝なんて存在しておらず、欲望に塗れた人間を殺すための崩落の仕掛けだけがあった』ってことにするのはいいとして・・・ 美作オーナーを同伴させた上に入り口で待機させて、自分一人で安全のために先行して命辛々逃げ出してくる演出は必要だったかは今でも疑問ですけど」

 

「本当ですよ、小城さん。

 いくらあの入り口がダミーで、本来の入り口からじゃなければ崩壊するように仕組まれていたとはいえ、一歩間違えば崩落に巻き込まれて死んでたんですよ?」

 

 若い二人のこちらを心配し、責めるような言葉に小城は目を閉じ、首を振った。

 

「死ぬ気はなかったよ。

 それに皆にも調べてもらった通り、山童に触れたら壊れることがわかっていたから入り口付近から石を放り投げてすぐに逃げたよ。だから怪我一つなかったじゃないか」

 

「それはそうですけど・・・」

 

「いつきさんもだけど美浦さんも、あの時に話し合った末に結論出して行動したことにあれこれ言いすぎでしょ。

 別にいいじゃない、あの一件は私達は『小城さんに雇われて、報酬を貰った』ってだけで」

 

「中田さんの認識が、僕としては一番助かります」

 

 例え『悲報島の宝などなく、勘違いで教授を殺した』と思った彼らが心を病み仕事すら手につかなくなることも、佐伯教授の死に捕らわれて本当に病気になってしまっても無関係。

 なくなってしまった宝の一部で異国にて貧乏で苦しむ教授の息子が救われていたり、ツアーの手伝いを頼まれたことによって父親へのささやかな復讐として死を選ぶ不幸な少女はいなくなるなんてことも、全てたまたまでしかないのだ。

 

「泥棒でも詐欺師でもないのなら、そうですね・・・

 僕は美作オーナーに悲しい(宝などない)現実(という嘘)突きつけた(ついた)、ただの暇を持て余したトレジャーハンター(黒幕)、ですかね?」

 

 俯きながらそんなことを言った小城の背中を、誰かに後ろから強く叩かれた。

 

「拓也! しけた面してねぇで飲め飲め!」

 

「いつきさん、痛いんですけど・・・」

 

「ったくよぉ、お前って奴は人のことばっかり考えやがんだから。

 つーか、お前を元気づけるために連れてきたっていうのにそんな顔しやがって。酒の席をなんだと思ってやがんだ」

 

 煙草をくわえながら明るく、小城を無理に笑わせるように頬に手を伸ばす。

 

「お前は表情筋が死にすぎなんだよ! もっと顔を動かせ、芸能人を見習え! 週に一日ぐらいは深刻なことを考えねぇ日を作れ!」

 

いひゃいんでふけど(痛いんですけど)はなひてくだひゃい(離してください)

 

「ハッハッハ。まぁこうして皆で会ったんだ、改めて乾杯しようじゃないか」

 

 そう言ってグラスを掲げた矢木沢に倣うように、それぞれグラスをあげるが中田がふと聞いてくる。

 

「それで何に乾杯するの?」

 

「『このチームでの再会に』でいいんじゃない?」

 

「いや、僕らこの界隈にしてはしょっちゅう会ってるでしょ」

 

「それならの『皆さんの今後の活躍に』でいいんじゃないですか?」

 

 四人があーだこーだ言ってまとまらないでいると、その様子に呆れたえみりが言ってグラスをひときわ高く上げる。

 

「楽しい宝探し人生(トレジャーハント)に!」

 

『乾杯』

 

 グラスをぶつけ合うことはなく、大声を出すのはいつきぐらいなものであったが、改めて楽しい飲み会が始まるのであった。

 




ほぼ二つの事件のキャラの説明なので長いですが、興味ある方はどうぞ!


中田 絹代
→ 原作では『天草財宝伝説殺人事件』にて登場。世界を股にかけるトレジャーハンターであり、本来ならば大財閥 蔵元家の長女だったが一族での争いを避けるため姉弟全員が養子に出されている。が、この二次において彼女らがそれを知る機会はない。
 立山財宝、天草財宝を姉弟で見つけることとなり、小城とえみり、いつきと矢木沢らとチームを組むほど良好な関係を築いている。

赤峰 藤子
→ 冒険カメラマン、蔵元家のおそらく四女であろう人物。編集者などと交流関係があることが窺え、小城と知り合ったことで交友関係の幅が広がり、引く手あまたとなっているらしい。

赤門 秀明
→ 東大を中退したトレジャーハンター、蔵元家の末っ子。神経質な一面が見られ、気難しい性格ではあるが、東大卒の小城とのかかわりで何かを思い直したらしく別の大学へと入りなおし、勉学にも励んでいるらしい。

矢木沢 亮
→ 古美術商であり、原作からもトレジャーハンターとの交流が広い様子がうかがえる。歴史や物品の審美眼に優れている。

《他》
→ この二次にでは出なかったが既出の和田守男の亡き妻はおそらく蔵元家の次女(原作で明言はないが、和田と同い年の可能性があること・三女であろう最上と中田との歳の差からの予想) 既に何度か登場した最上葉月は、蔵元家の三女であることが予想される。

美作 大介
→ 『秘宝島殺人事件』における最初の被害者。美作碧の実父であり、悲報島のオーナーである。が、娘を捨てるように海外留学をさせ、ツアーを行う際に呼び寄せるなどが見られ基本クズである。今作では小城を雇ったことで、『自分がこれまで行ってきたことは全て無駄である』という絶望に突き落とされ廃人同然だとか。

柿本 麻人
→ 美作同様に原作での被害者の一人。トレジャーハンターであり、典型的な金や宝を目的としている男。美作・八十島・矢荻らと共に佐伯教授を詰め寄った末に殺してしまった人物の一人であり、噂で秘宝島の宝など存在しなかったことを聞いて絶望。死者の影に怯える結果となった。

八十島 隆造
→ 原作での被害者の一人。原作では明言されておらず職業は不明だが、言動から何らかの形で宝探しに関与しているとは思われる。柿本同様、死者の影におびえている。

矢荻 久義
→ 原作での被害者の一人。こちらも職業は明言されていないが、カメラを持っていることを考えると赤峰同様に冒険カメラマンの可能性が高いと思われる。上記二名同様、死者の影におびえている。

岩田 英作
→ 美作オーナーに雇われている執事であり、別件の世田谷での保険金殺人の容疑者である。原作では犯人判明後に本性を現し、犯人を発砲。その上にその場にいる全員を殺して宝を得ようとする素晴らしいクズっぷりを発揮している。今作では小城と共に島を訪れた茅警部によって逮捕される。

火村 康平
→ 原作での被害者の一人。過去など一切関係なく、犯人に気づいてしまったがゆえに殺された人物。今作では死なずに済んだ。

クリス・アインシュタイン
→ 原作にて登場したIQ180の天才児であり、十三歳にして博士号を取得しており、何故か突然日本留学をしている謎の人物。彼の目的等は結局わからずじまいだった。今作では登場していない。

佐伯 京助
→ 大学教授であり、佐伯古学会を結成し日本各地の財宝の調査を行っていた。が、十年前に悲報島の宝を見つけた直後、美作らに詰め寄られた末に崖から落とされ死亡した。

佐伯 航一郎
→ 佐伯教授の一人息子であり、殺害現場にいたが三歳の彼の証言は意味をなさなかった。母方の叔父に引き取られ、養護施設に入り、散々な生活を送っていたが碧に出会い、彼は変わった。
 今作では小城らによって秘宝島の宝が『存在しなかった』ことにされたことに笑い、彼へと宝の一部が渡された。今は母から受け継いだ才能を活かして俳優の道を歩みだし、生まれ変わるように前を向いて歩いている。

美作 碧
→ 美作オーナーの一人娘であり、生活に困らない金だけを与えれて遠ざけられていた。生活が満たされていても孤独な日々を送っていた彼女は、航一郎に出会ったことでその孤独を癒していた。
 今作では『宝が存在しなくなった』ことにより、悲報島と父の呪縛から解放され、大切な彼との日々を歩んでいるようだ。


書き洩らしてない、筈。
茅警部は『金田一の殺人』で書いたし、最上さんも『天草財宝』の時に書いた・・・ よね?
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