さぁ、今回はこの事件。何気に金田一って雪関連の事件がチラホラある。
fileシリーズなら今回の事件と雪夜叉、タロット山荘・・・ 雪山の事件ではないけど、トリックなら雪影村もだし、過去的な意味では黒魔術殺人事件もかな。短編含めたらもう少しある気がするけど。
今回も前後編ではないのですが、もう一話書けているので明日の朝・六時に予約投稿しておきます。
楽しんでください。
「所長ー。今、ちょっといいっすかー?
って・・・ あれ? 今日は所長、お休みっすか?」
今日も元気よく入ってきた金田一に、全員がいつものことだと軽く挨拶で終えようとした。
が、全員が金田一が今日は休みであることに思い至ってそれぞれのタイミングで二度見し、檜山がやや座り気味の目で皆を代表して問う。
「金田一お前、今日休みだろ。またなんかホイホイして来たのか?
今度はなんだ? 事件か? 迷子か? それとも怪我人か?」
「皆して二度見してきた上に、その言葉は酷くないっすか!?てかそのラインナップなんすか! 事件と迷子はともかく、怪我人とか拾ってきたことないっすよ!
休みだから普通に友達と緑さんのカフェでご飯とおしゃべり楽しんで、その帰りに顔出そうと思っただけですって!!」
「お前の普段の行いを考えりゃ妥当だろ。つーか、俺らも休日に下のカフェに来ることあるが、わざわざ事務所に顔を出すことまではしねーよ。
ここの連中が非番に嫉妬するだとか、彼女連れで自慢~みたいなことにならないことはわかってるが、それでもなんか急用やら、同席してる奴が事務所の誰かに会いたがってるだとか、報告忘れでもない限りはな」
皆の反応に金田一から文句が出るが檜山はそれを一蹴し、溜息をつく。ちなみに本日は週末ということもあり、金田一同様に高校生である千家も非番で今頃は彼女である利緒と共に犬の世話か、楽しくお茶でも楽しんでいることだろう。
「つまり休みでも普通に下のカフェには来るし、なんかあったらすぐ事務所にも顔出してるってことでしょ? 結局、俺と変わんないってことじゃないっすか」
金田一が肩を竦めて笑いながら言うので檜山が苛立ち、彼の苛立ちを感じた揚羽がサッと二人の間に入り込む。
「それでどうしたんですか? 金田一くん。
何か忘れものでもしてしまいましたか?」
「あっと、そうだった。
今日はその、怜香ちゃんとのデートだったんすけど・・・ 「『俺、アイドルと顔見知りなんで週末にはデートとかたまに出来ちゃうんですぅ~』って、自慢しにきたのか?」 なんでそんなアホみたいな自慢を、彼女持ちか極度のマザコンシスコンか実は軽度のブラコンな舘羽さん達の居るとこでするんすか。そんなんしても意味ないっしょ! それだったら問答無用でフルボッコか、妄想扱い承知で学校で自慢しますよ!」
事実の中にサラッと舘羽の神経を逆撫でするようなことを言った金田一に小包装の饅頭が投げつけられ、もっと物騒なものが飛んでくることがある金田一は難なくキャッチする。
「で? そうじゃないなら何しに来たの? 金田一くん」
「そんなブラコンが事実だからって怒んなくたっていいじゃないですか、舘羽さん! 「次はもう少し固いものが飛ぶわよ? ティッシュケースとかどう?」 すんませんした!」
怒りが声色に現れてきた舘羽が事務所にいくつか用意されているプラスチック製のケースを持ったところで、金田一が頭をほぼ九十度まで下げる。
「まぁまぁ舘羽さん、君が実はブラコンなことは置いといて 「狩谷、それはあんたもなんか投げつけられたいってことでいい?」 アハハ、その反応も図星って認めてるようなものだから逆効果じゃないかな? 君達兄妹がとんでもなく仲良しで、お互い大好きなことは良いことなんだから気にしなくてもいいじゃないか」
「こっちはいろいろと複雑なのよ・・・!
金田一くんに限らず、ここにいる面々は訳ありなんだから察しなさい」
複雑な表情で腕を組む舘羽に揚羽が苦笑いし、徹も複雑でありつつも妹がブラコンであるという事実に嬉しくて静かに涙を零している。そんな徹を見て檜山が若干引いているのだが、徹は勿論他の面々も気づいていない。
「で、話は戻しますけど、所長います?
怜香ちゃんがどうせなら俺が働いてる探偵事務所を見てみたいって言うんで、許可貰えたら連れてこようと思ったんですけど・・・ 所長がいないなら、やめた方がいいすよね?」
金田一の言葉に徹が『むしろ、どうして連れてきていいと思った?』と冷めた目で見るが、彼がそれを口に出す前に揚羽がゆっくりと頷いた。
「そうですね・・・ 所長も不在ですし、有名なアイドルである速水さんが探偵事務所に足を運んでいるとなると、あらぬ誤解を生んでしまうのでやめておいた方がいいと思います。
それでももし事務所や金田一くんの働きぶりを見学を希望されるなら、事前にご連絡をいただいて所長の許可と速水さんのお仕事に支障をきたさない方法を事務所で検討してからにしましょう」
「流石揚羽さんだな、副所長からやべぇ発言が出る前にやんわりと完璧な対応策を出してくるとか」
「まったくだよね。
なんていうか所長ならするだろう穏便な対処法をしっかり理解してるというか、流石この事務所の良心」
考える素振りもなく、断りながらもスラスラと対応策を答える揚羽を事務所の狂犬二人組がコソコソと話すのを舘羽が厳しく睨めば、二人は『何も言ってません』とばかりに視線を逸らした。
「わかりました。怜香ちゃんにもそう伝えておきますね!」
揚羽の言葉に金田一は素直に頷くが、すぐに複雑そうな顔をして頭を掻き、言い訳のように理由を語りだした。
「ほら、ここのカフェならおっさんを始め、警察関係の常連が多いからいろいろと安心しておしゃべりとか出来るし、それに事務所に顔を出しておけばもしもの時とか俺以外にも頼る存在が出来るんじゃないかと思って・・・
なんか怜香ちゃんも俺に負けず劣らず危ないことにあうことが多いし、大人気アイドルともなるといろいろあるじゃないっすか。だからその・・・ 俺もなんか力になってあげたくて。いや! それで事務所の皆を巻き込むのはよくねーことだってわかってるんすけど! その・・・」
「いいんですよ、金田一くん。
いつも所長が言ってるように、ちゃんと大人に頼れるようになって偉いですね。良い子、良い子」
どんどん俯いていく金田一を揚羽は優しく微笑んで、下がった頭に手を乗せて撫でる。
ゆっくりと、髪の流れに沿って、彼の底抜けの明るさと優しさ、人のために行動できる勇気を讃えるように。
「揚羽さぁん!」
自分の一つ上だというのに揚羽から溢れる母性にあてられたように金田一は甘えるように抱き着こうとするが、それはいつの間にか揚羽の後ろに立っていた舘羽がやんわりと遠ざけて防ぐ。
「なんで揚羽さんを遠ざけんすか、舘羽姉ちゃーん!」
「だーめ。
他の女の子とデートしてるんでしょ? そう言う日は極力他の女の子に触れあうようなことはしちゃ駄目よ」
わざとらしく求めるように揚羽へと手を伸ばしてバタバタ動かす金田一に、舘羽は首を振って注意もする。
「はぁーい・・・」
素直に頷いて揚羽から数歩離れ、金田一は改めて室内をぐるりと見渡しても、やっぱり所長である小城の姿はない。
金田一が来る日のほとんどは事務所にいることが多い彼の姿がないことに、金田一はもはや違和感すら覚えていた。
「それはそうと、今日は所長どうしたんすか? 休みを取るなんて珍しいっすね。
トレジャーハンターの仕事っすか?」
「うーん・・・ 正直、私もよく知らないんだけど、なんかこの事務所の顧問弁護士さんに誘われて登山に行ったのよね」
「顧問弁護士と登山!? なんでっすか!?」
驚愕する金田一と至近距離で叫ばれた舘羽が肩を竦めてわからないこと態度で示し、金田一は他の面々に情報を求めるように見渡すが、狩谷と檜山もよく知らないとばかりに首を振った。
「え? なんか所員の皆が知らないとか珍しくないっすか?
副所長、何か知らないっすか?」
「・・・正直、ここの顧問弁護士である黒沼さんと所長の関係は僕もよく知らない。
けれど、所長の様子を見て登山に誘ってくるぐらいには親しく、所長も断らないぐらいの友人関係であるのは確かだ」
「へー? ホント、所長の交友関係広くてわけわかんないっすよねー。
・・・やべっ! 俺、カフェで怜香ちゃん待たせちゃってるんで、そろそろ行きますね! じゃぁ、また月曜に!」
「送り狼にならないで、最後まで紳士的にしてるのよー!」
腕時計を見て慌てて飛び出していく金田一を見送り、舘羽は改めて徹を見る。
「で、兄さん。
所長とあの弁護士さんの関係、本当に何も知らないの?」
「知らないよ。
なんでもこの事務所が本格稼働する前に知り合ったらしいけど、それ以外は全くわからない」
舘羽の疑うような視線を受けて、徹は深く頷きながら答えた。
「この事務所が始まる前かよ、それってかなり長い付き合いになってんじゃねーかよ」
「でも、この事務所の関係者ってことは、その弁護士さんも訳ありの可能性があるよね」
「狩谷、笑えないことを言うんじゃないわよ」
あくまで明るく言う狩谷に舘羽は笑えず、いつもなら不安になって震えだしてもおかしくない揚羽を見るが、彼女は震えることも不安を抱いてる様子もなかった。
「揚羽? もしかして、所長から何か聞いてるの?」
「少しだけですが、お話を聞くことが出来ました。
なんでも黒沼さんご夫婦とは山でお会いして、お互い助け助けられた関係なんだとか」
「またかよ! ったく、あの人らしいよな」
「お互い助け助けられた、ね? 弁護士さんの方がどう思ってるのやら?」
「流石、我らが所長。
これは明日、是非話をお聞きしないと」
揚羽の軽い説明に男性陣三名が口々に思ったことを口にし、舘羽は肩を竦める。
「はぁ~、まったく。
ウチの奴らは揃いも揃って、所長のこと好きすぎでしょ」
時を少し遡り、事務所に金田一がやってくる少し前、小城は黒沼夫妻と共に名前の姿とは程遠くまだまだ新緑に囲まれた氷壁岳を登っていた。
「それにしても、この三人で山を登るのは随分と久しぶりね!」
「そうだなぁ・・・
小城くんが探偵事務所を本格稼働してからは何かと忙しかったし、トレジャーハンターの仕事でも世界中を飛び回ってたから、山どころじゃなかったもんな」
妻である唯夏の言葉に頷きながら小城を振り返る繁樹に、小城も微笑んだ。
「それは僕だけじゃないでしょう?
人気の山岳カメラマンである唯夏さんと優秀な弁護士である繁樹さん。そんなお二人の結婚式もありましたから、ここ数年は公私ともに大忙しだったんじゃないですか?」
小城の指摘に二人は照れ、心底嬉しそうに笑った。
「私の写真集と個展は、お膳立てしてくれた氷垣さんのおかげだけどね」
「謙遜するなよ、唯夏。写真集が出せたのも、個展がやれたのだってお前の実力だって何度も言ってるじゃないか。
それに一回目は確かにそうだったかもしれないけど、未だって定期的に個展をしてるし、写真集だって出てるだろ」
「そ、それ言うなら繁樹だってそうじゃない!
氷垣さんの顧問弁護士やったり、他の事件とかだってガンガン仕事してる優秀な弁護士さんなのに、なんか時々すっごい弱気になって自信なくしてさ。こんなに凄い私の旦那さんなのに!」
「相変わらず、仲がよろしいようでなによりですよ」
夫婦の微笑ましいやりとりに小城が静かに笑っていれば、そのことに気づいた二人がまた顔を赤らめた。
「か、からかわないでよ、小城くん。
それにこうやって私が生きていられるのだって、あの日この山で小城くんが私を雪稜山荘まで運んでくれたからじゃない」
「あれは本当にたまたまですよ。それに安全を考えるなら、どこかでビバークするのが正解・・・」
「いや、あの四人に唯夏の装備が盗まれていたことを考えると、二人揃ってのビバークは厳しかったよ。それに唯夏が気絶していた以上、君が持ってたツェルトや防寒具を託してその場に待機させることだって出来なかった。
勿論、唯夏を背負って山荘まで向かったことだって危険だったことは間違いないけど・・・ あれ以外、君達二人が生き残る手段なんてなかった」
小城と出会った日の吹雪の氷壁岳と、自分の大切な・・・ 当時はまだ恋人だった唯夏が遭難し、その命が脅かされていると知った彼は山荘に来ていた救助隊と揉めながらも彼女を助けに行こうとしていた。
そして、彼と同様のあの日のことを思い出していた小城は遠い目をして、当時の吹雪を思い出す。
(あぁ、あの時は驚いたよなぁ・・・
何事も経験は積んでおいた方がいいと思って雪山登山をうっかり大学でもらしたら、教授達には雪山登山を就職に失敗したから自棄になって自殺しに行くんじゃないかとか言われたし)
黒死蝶の一件以降、大学には卒論と必要な情報を得るために利用する程度しか行かず、季節が冬に差し掛かり、ふと遠くに見えた山に雪がかかっているのを見て、『俺、吹雪の山で事件を起こす可能性もあるのか・・・ それなら一度は登山の経験を積んでおくか』というトチ狂ったとしか思えない思考に行き着いて決行。
(いや、今思えばあの時の俺、事務所の準備とか、トレジャーハンターであれこれ動き出したこともあって、頭おかしかったよな・・・)
二人にはばれないように自嘲気味に笑って、登山開始時には晴れていた山が一気に吹雪へと変わり、念入りに準備した道具を抱えて雪の中を歩いたことを思い出す。
(しかしその結果、まさか雪山で強盗されて亡くなった
吹雪の氷壁岳で個展のための写真撮影に訪れ、遅れて登山している可能性があった繁樹を心配して二人分の装備を担いだ唯夏と遭難しかけていた四人が遭遇。その揉み合いの末、唯夏が転落。気絶した彼女から装備を奪った四人はその場を離脱したタイミングで、小城が唯夏を発見したのだ。
「でも、冷静に考えると登山初心者の小城くんが雪山登山なんて無謀だし、よく私達助かったよね」
「明るく言うことじゃないだろ! 本当に、本当に心配したんだからな!」
「まぁまぁ繁樹さん、僕が無謀だったのはともかく唯夏さんを責めるのは違うでしょ。
あれは唯夏さんから装備を奪って、死ぬ可能性が高い状態に放置したあの四人が悪い。そして、それを立証できたのは唯夏さんの持っていた
原作において、
そして、多くの遭難者を出したあの吹雪の中で小城が彼女を担いで山荘に辿り着いたのは『東大エリートによる奇跡の救出』と語られ、小城の希望もあって名こそ伏せられたが新聞の一面を飾ったのだ。
(いやー・・・ 雪崩で死ぬ可能性が未だにあるの自分が雪山で誰かを救出するとか、文字通り奇跡だったとしか思えない)
大学時代から山岳部所属であり、ヒマラヤ登山も経験している繁樹。山岳カメラマンということもあって経験豊富な唯夏。この二人に比べると、何故か体力はあるが登山経験皆無だった小城が気絶した彼女を抱えて山荘まで辿り着けたのは奇跡以外の何物でもなかった。
それに加えて唯夏を助けた時、小城はこの事件の思い出していたわけではない。
だが、吹雪の中で倒れていた唯夏の姿に、小城は何故か妹に重なって見えていた。
(原作にだってそんな光景はないし、
恐ろしいほど白く世界を包む雪が、人も、音も、全て・・・ 夜の闇すらも覆いつくそうとしていた。
その姿が、状況が、考えるよりも先に体を動かし、『彼女を助けなければならない』とただ必死で、前へ前へと突き進む。
彼女が雪霊伝説殺人事件の関係者だとはっきり思い出したのは山荘到着後に倒れた小城とうっすらと意識を取り戻していた唯夏が病院に搬送され、様々な検査を終えた後にお見舞いに来た繁樹と彼女の両親を見てからのことだったのだ。
『凍てついた心を抱えて、憎悪のブリザードの中を彷徨う復讐の亡霊。
【雪霊】、そのものなんだ・・・!』
原作における
「小城くん、あまりぼんやりしてると危ないぞ」
「あ、あぁ・・・ すいません、繁樹さん」
「いや、いいけど。気分は晴れないかな?」
「なんか落ち込んでるみたいだったから繁樹が無理に連れだしちゃったけど、やっぱり私達みたいな山女と山男じゃないと登山で気分転換は厳しいかな?」
繁樹に注意され慌てて上を向けば、彼が困ったように笑い、それは唯夏も同様だった。
「いえ、綺麗な景色と山の空気は気持ちいいですし、気分転換にはなってますよ。
ただ僕が考え込む癖があるので、ついいろいろと余計なことを考えてしまって」
「小城くんは真面目だからなぁ。
まぁ顧問弁護士としてはその方が信頼出来るけど、友人としてはもっと気楽にしてほしいとは思うよ」
「繁樹、そういうことは言わないの。小城さんは小城さんなりに私達と友人でいてくれてるんだから。
それに探偵さんなんて大変なことをやってるんだし、いろいろ考えなきゃいけないことあるんだろうし」
「いえ、大丈夫ですよ。本当に良い気分転換になってるんです。
一人じゃ登山はちょっといろいろと準備も大変だし、調べたりもしなきゃいけないので事務所をやりだしてからは足が遠のいていたので」
「あー・・・ そうだよね。
私達は慣れてるし二人掛かりだから準備も楽だけど、一人登山はリスクもあるし、大変だよね。
じゃぁ、もしよければ所員の皆さんとか誘って、私と繁樹プロデュースする形で初心者向けの山を登ってみるとかどう?」
パッと明るく言う唯夏に小城は笑うと、繁樹が溜息をつく。
「こらこら、唯夏。
お前はすぐそうやって山好きを増やそうとするんだから、ほどほどにしろよ」
「いや、所員は事務方の女性以外は体力作りも行っているので、その一環として登山は良い案だと思いますよ。僕だけじゃどうしても知識が足りないので実施できていませんでしたが、お二人がご一緒してくれるのなら安心して行えます」
「女性も一緒なら尚更初心者向けの山がいいわね! しっかり予定を立てて、話し合いをしてから実施しましょうか」
「まったく仕方ないなぁ、唯夏は」
小城の肯定的な言葉にウキウキな妻に繁樹は困った顔をしつつも彼女が愛しくて仕方ないと語っており、小城は彼の横顔をどこか羨ましそうに眺める。
「生粋の山好きであるお二人プロデュースの初心者向け登山、楽しみにしてますよ」
そんな話をしていると見えてきた、三人の出会いの場も同然の雪稜山荘で休憩を取ることにしたのだった。
三人が山荘にて友好を深めている最中、小城についてきたマガドリ様は美しい氷壁岳を屋根の上で見下ろしており、何かを見つけて不意に氷壁岳の谷深くに降り立った。
そこには白骨化した遺体があり、マガドリ様がじっと見ていると死体が纏った衣服をそのまま半透明の何か ―― 『雪霊』 タカハシ ―― が姿を現した。
神と霊が対峙し、マガドリ様は彼を労わるように風で包み込み、空へと運ぼうとする。
だが、タカハシは首を振って、マガドリ様の行為を拒んだ。
『ありがたいが、俺はまだこの山でやらなきゃいけないことがあるんだ』
タカハシの言葉にマガドリ様は驚いたように目を丸くし、彼の発言に(⌒∇⌒)と微笑んだ。すると、彼を上へと運ぼうとした風からこの山と彼の魂を包み込むようなものに変わり、彼の半透明の体がより明確なものとなる。
『は? え? おい、あんた・・・ 俺をこの山の神にするって、そんなのありかよ!?』
(^▽^)/『そゆことで頑張れ』とばかりに腕をあげてから小城の元に戻っていくマガドリ様は、不思議と楽しそうであった。
犯人フィジカルの有効活用(笑) 遭難者を出してる吹雪の中で、人を担いで山荘まで辿り着くとか人間業じゃないね(⌒∇⌒)
最後、なんかマガドリ様がしれっとスゲェことしてて草。
雪霊伝説殺人事件におけるキャラ説明
黒沼 繁樹
→ 『雪霊伝説殺人事件』における犯人『雪霊』。学生時代から山岳部に所属するほどの登山趣味とする弁護士であり、後述の四名によって恋人であった神城唯夏を殺されたも同然であり、顧問先であり、登山仲間であった氷垣の協力を得て、復讐を決行する。
今作では恋人が小城によって助けられ、原作で復讐のきっかけとなった証拠によって公的に彼らを罰することに成功。彼女と結婚し、夫婦となっている。
神城 唯夏
→ 黒沼繁樹の恋人であり、山岳カメラマン。撮影に必要な道具を持ちつつ、専門的な登山の荷物を背負って登ることが出来る猛者でありながら、セーターを手編みできるほど手先の器用さを持つ女性。原作では後述四名と揉み合いとなり転落し気絶、防寒着などを奪われたことによって凍死する。
今作では無事生還を果たし、黒沼と夫婦となる。
瀬倉 未沙 鱒井 渉 堂崎 一志 堂崎 次生
→ 原作にて神城唯夏から防寒着や寝袋を奪おうとして争い、彼女を転落させ気絶。その後に好機とばかりに防寒着や寝袋などの荷物を奪い、結果として彼女の命を奪った。その際、『緊急避難』と自分達の行動を正当化しようとすらしたクズ共である。
今作では唯夏の証拠と証言などが決定的となり、法の下で正しく裁かれることとなった。
タカハシ
→ 氷壁岳にいる『雪霊』。十七年前、友人を助けようと山に入った結果、二度と戻ることのなかった男。死後も多くの遭難者を助け続けたが、噂が一人歩きした結果、彼を悪霊のように伝える逸話も出来てしまっていた。
今作ではマガドリ様の手によって、何故か山神に昇華されてしまった。マガドリ様、凄いや!