小城探偵事務所   作:無月

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独自解釈、原作改変、盛沢山。

いろいろ詰め込んだら長くなって、めっちゃ話数あります。九話です。
なので、いつも通り予約投稿して連日投稿しますので。
キャラ説明は・・・ 各キャラが出てきてからにします。
ただこの事件はいろいろと初の試みなので、ちょっとこれまでの事件とは毛色が違うように感じるかも。
その辺りも含めて、楽しんでください。


蝋人形城殺人事件 ① (開始)

 黒沼夫妻との登山を終えて翌日の朝早くに事務所に出勤すれば、カフェには既に緑と共に準備をしている三姉妹の姿がある。

(徹は裏で力仕事かな・・・)

 そんなことを考えながら挨拶代わりに軽く頭を下げて通り過ぎようとすると、舘羽が揚羽を肘でつつき、るりも何やら揚羽に向かって伝え、揚羽が顔を赤く染める。そして、困った顔をして母に助け求めたが緑もまたにこやかに何かを伝えて、彼女のエプロンをほどいて背中を押した。赤くなった顔にさらに慌てる様子が加わり、小城は苦笑しながらも事務所への階段を昇っていく。

 郵便物や報告書の確認などを済ませていれば階段から聞こえてくる足音の後、控えめに響くノックの音に顔をあげる。

 

「どうぞ」

 

「おはようございます、小城さん」

 

「あぁ、おはよう。

 いいのかい? 緑さんの手伝いをしていたようなのに」

 

「いえ、その・・・ ここは手が足りているから小城さんの方を手伝うように言われまして。昨日の報告も口頭の方がわかることもありますし」

 

 さっきの様子を見かけてしまった小城からすると彼女の言葉が嘘ではないが全てではないと理解しているが、あえてその辺りには触れずに微笑んで頷いた。

 

「ありがとう。

 報告書の方には特に問題なさそうだけど、何かあったのかい?」

 

「いえ、私がしたくてしているので! 報告よりも先に紅茶を淹れましょうか?」

 

「あぁそうだね、貰おうかな。揚羽くんの分も淹れるようにね。

 まだ皆揃うには早いから、お茶を飲みながらのんびり聞かせてほしい」

 

「はい、わかりました」

 

 小城の言葉に嬉しそうに微笑んで、すぐに給湯室で準備を始める彼女を見送る。報告書の中に『明智警視より電話あり。翌日、同時刻に連絡するとのこと』という舘羽の文字を見て、若干の嫌な予感を感じて溜息が出てしまう。

(仕事柄仕方ないとはいえ、明智さんも剣持さんも事件を持ち込んでくるからなぁ・・・

 コンサートとかの誘いならいいけど、あの人そういうプライベートの誘いは絶対事務所には持ち込まないから事件か捜査だよな多分)

 

「小城さん、どうぞ」

 

 おぼんにティーポットとカップ、ミルクと角砂糖の入った容器の一揃えを持った揚羽が応接机に書類を持って座っている小城の前へと腰かけ、お互い紅茶を一口飲んだところで揚羽が切り出した。

 

「先日はこれと言って依頼もなく、予定通りの人員で事務所に待機していました。

 ですが、午前中に明智さんからお電話を受け、今日の同時刻にまた連絡するとのことです」

 

「あぁ、舘羽くんの報告書にあったね。

 他に何も書かれてない辺り、彼は他の話をしなかったみたいだし、何の話をされるのやら」

 

「真面目な方ですからおそらくは依頼、もしくはそれに類する何かだとは思います。

 ですが、これは事務所にいた者の予想でしかありませんし、所長である小城さんに宛てた個人的な依頼の可能性もあります」

 

「そうだね・・・

 もしくは剣持さんみたいに金田一くんの貸し出し要請かな? いや、でも明智さんだからその可能性は低いか・・・」

 

 顎に手をあてつつ考えを言うと揚羽は苦笑いし、他の話題へと切り替えていく。

 

「それから午後になってから金田一くんが事務所に来て、速水怜香さんが事務所の見学を希望していたそうです」

 

「―――っ!」

 

 報告書にはなく、小城にとって最も想定外の名が出てきたことにより、取り繕うことも忘れて驚いた表情を揚羽に向けてしまう。

 

「小城さん?」

 

「あ、あぁ、すまないね。

 いきなり有名なアイドルの名前が出てきたものだから驚いてしまって・・・ そうか、そうだったね。金田一くんは彼女と交流があるんだった」

 

 慌てて取り繕うように言葉を続けても、揚羽は小城の様子がおかしいことを心配するような視線を向けてくる。それでも深く聞いてこないのは、自分達家族を始めとして事務所にいる皆が複雑な事情を抱えていることを知っているからだろう。その気遣いが嬉しい筈なのに、申し訳なく思う。

(あぁ、気を遣わせてしまってる・・・ 僕は君達の優しさに甘えてる)

 

「まぁ年頃の女の子だし、探偵事務所の仕事を見たいというよりも金田一くんの仕事ぶりでも見たいのかな? それなら猫探しとか、物を探したりするような危険の少ない仕事を選びつつ、舘羽くんか揚羽くんが彼女についてもらう形で見学するようにしようか」

 

「そうですね。事務仕事等は守秘義務もありますし、他の仕事とあまり変わりもありません。見ていても面白くないでしょうから、それなら猫探しなどの探すものは見ても問題ない案件なら見学も問題ありません」

 

「その方向でいこうか。

 見学前には僕も、顔を合わせた方がいいだろうね」

 

 そうすることが自然だと頭はわかっているため、言葉は出る。出るのだが、口から出ていく時はどこかぎこちない。そのことに気づいている筈だというのに、揚羽は心配そうな視線を向けるのみで尋ねては来ない。それどころか彼女は小城のその様子を許すようにある提案をしてくる。

 

「小城さん、小学生の見学ではないんですから無理にそこまですることはありません。それに所長としてのお仕事もありますし、見学者の対応は私達で行えますからご心配なさらずに」

 

「・・・本当に仕事で忙しかったら、そうしてもらうこともあるかもしれないね」

 

 目を逸らしながらそう答えることが精一杯な自分の弱さに嫌気がさすが、今はそれ以上の言葉を口にすることが出来ない事実は変わらない。

 それならばと、今は他の話題へと切り替えることとした。

 

「明智さんから連絡があったようだけど、直接の面会じゃなくて電話なんだね」

 

「はい、なんでも明智さんもお忙しいとのことで今回は電話にて用件をお伝えしたいと」

 

(明智さん本人も忙しいのに連絡してくるってことは、忙しい中でも連絡しなきゃいけないってことだから絶対なんかあるやつじゃん・・・)

 話題を切り替えたにもかかわらず二つ連続で頭を抱えたくなるようなことになってしまい、額に手を当ててしまう。

 

「小城さんは黒沼さん夫妻との登山はいかがでしたか?」

 

「あぁ、楽しかったよ。

 お二人とも登山歴が長くて経験も豊富だから、僕みたいな思いつきで山に登った人間でも丁寧に教えてくれるからね」

 

「お二人は弁護士さんと山岳カメラマンでしたよね。奥様の写真集はカフェにも置かせていただいていますけど、とても素敵ですね」

 

 揚羽が話題を変えたことで会話は穏やかなものへと変わり、他のメンバーが来るまで事件や事故の話を避けるようにして他愛のない時間を過ごすのであった。

 

 

 

 

 報告書に書かれた時間通りに電話が鳴り、電話口からいつもの冷静な明智の声が聞こえてきた。定型の互いを確認するやりとりを終えたところで、彼は本題を切り出してくる。

 

『それで小城くん、察しの良い君ならわかっているかもしれませんが、今回電話したのはコンサートなどの楽しいものではありません』

 

「えぇ、明智さんが事務所に連絡するんですから理解していますよ」

 

『本当に君は理解が早くて助かります。

 日本アルプスにあるバルト城で行われる、ミステリーナイトという企画をご存知ですか?』

 

「ミステリーナイト? 日本アルプスにあるバルト城は何かの機会に聞いた覚えがありますが・・・ 確かドイツにある古城を移築したものでしたよね?」

 

 どこで聞いたかはイマイチ思い出せないが、首を傾げつつ情報を引っ張り出す。

 

『えぇ。今度、その城にて世界規模で参加者を募り、推理イベントが行われるんです。

 金田一くんを誘いたいので、保護者兼僕と彼の推理勝負を見届け人と審判を兼ねて君にも来てもらいたいんですよ』

 

「・・・明智さん、これが金田一くんや剣持さんなら言葉通りに受け止めて参加を表明するんでしょうが、僕がそんな建前だけで参加すると思いますか?」

 

 何かの事件である可能性が高いが、なんの事件かが明確に思い出せずおもわず眉間に皺が寄る。

 だが、そう(原作の事件)でなくともこんなお遊び同然の企画に警視である彼が参加を表明し、それに一般人を巻き込むのはおかしい。さらにわざわざプライベートではなく、事務所の空いてる時間に小城に連絡を取ってくるのも違和感がある。

 

『フッ、流石ですね。

 ですが、これは個人的な因縁のようなものです。もはや事件としては追えない、誰も罰することの出来ない・・・ 解決したところで、私の自己満足でしかない。そういう類いのものですよ』

 

「協力を仰ぐ僕に対しても話せないようなことですか?」

 

『隠すようなことではありませんが、現段階では何もかも不確定過ぎて話すことが出来ないんですよ。あの城に行って私が欲しい答えが出るとも限りませんし、仮に答えに行き着いたとしても自己満足以外のものは残らない。

 それに話してしまったら君は、私の力になろうとするでしょう?』

 

「内容次第ですよ、僕の利益になるのなら力をお貸ししますよ? 勿論、いつか返していただくものですが」

 

 明智の言葉にわざとらしく肩を竦めて、どこか冗談のように告げれば電話の向こうで彼が声を出さずに笑った気がした。

 

『それは「参加してくれる」ということでいいんですか?』

 

「えぇ。金田一くんと明智さんが一緒に行動したら何か起こりそうなので、僕もお供しますよ。どうせ美雪ちゃんも金田一くんとセットで連れていくつもりなんでしょう?」

 

『その通りですよ、彼女がいると彼の本気度が違いますから。

 彼女には佐木くんらと共にうまく金田一くんを挑発してもらって、私と共にミステリーナイトに参加するように誘導してもらっています』

 

(この人って基本的には常識あるし、まともな部類な人間なはずなのに、金田一に対しての挑発とか、高圧的な態度とか本当にどうにかならないかな?)

 勿論、そんなことは思っていても口に出すようなへまはせず、溜息だけを電話口からはずして吐き出す。

 

「わかりました・・・ いつ美雪ちゃん達にそんなことを頼んで、何を見返りにしたかは知りませんし、聞くつもりもありませんが・・・ 僕も参加しますよ。

 それで? 参加を表明した僕にあなたが隠してることのヒントぐらいは教えてくださるんですよね?」

 

『三億円事件』

 

 クイズ番組のように単語を一つだけ言ってきた明智に、おもわず頭に手を当ててしまう。

 

「まさかの事件名で答えるんですね?」

 

『えぇ、あなたにはこれだけで十分でしょう。

 君ならこのヒントだけで私が知っている全てを把握する可能性が高く、私が何を狙っているかもわかってしまう』

 

「買い被りすぎですよ、明智さん」

 

『知らなかったんですか? 私は君のことを誰よりも高く買っているんですよ。

 ただ君の過ぎた謙遜だけはいただけません。君は君自身の能力を誰よりも理解している筈だというのに、自己評価が低すぎる』

 

「僕はいつも必死なだけですよ」

 

『はぁ・・・ やめましょう。こればかりは私に限らず、他人がどれほど言っても改善してくれるものではありません』

 

 珍しく呆れたような明智の言葉を聞いても、小城は自分で直す気のない部分のために電話越しに肩を竦めてしまう。

 

『それでは君の分も応募しておきますので、確定したらまた連絡します。

 それでは失礼』

 

 小城が返事をする前に電話は切られてしまい、おもわず受話器を持ってしばしの間固まる。

 

「・・・皆、僕はどうやら明智さんと金田一くんの推理勝負の見届け人と審判に任命されてしまっているらしい」

 

「悲報過ぎて笑えて来ますね、所長」

 

「笑い事じゃないが?

 何故所長が、金田一くん限定で大人げがなくなる男のくだらん遊びに巻き込まれなければならない?」

 

 すぐさま笑いながら返事をした狩谷を徹が睨みつけ、憤怒の声をあげる。

 

「あの人も大概行動おかしいよな。所長に金田一の保護を任せたも同然の癖に、推理勝負を金田一に吹っ掛けて、変なところに連れていこうとしやがる。

 これじゃ金田一の野郎が事件を持ってきてんだか、警察連中が持ってきてんのかわかんねーぞ」

 

 檜山の言葉が尤も過ぎて小城は苦笑することしか出来ず、先ほど明智が言っていたヒントをメモした紙を見る。

 

「まぁ、実際に事件が起きるかどうかなんてわからないけどね。本当にただお遊びに付き合って終わりという可能性だってあるし、僕は呆れながらそれを見守ることが出来るかもしれないんだ。

 その時は大人気ない明智さんと彼の物言いに腹を立てる金田一くん、それを楽しそうに見守る美雪ちゃんのことを皆にお土産話として持って帰ってくるよ」

 

「所長、それなんて言うか知ってる? 伏線(フラグ)っていうのよ?」

 

「おやおや、舘羽くんは随分俗な言い方を覚えてしまったね」

 

 小城はおもわず揶揄えば、舘羽は恥じることもなく胸を張る。

 

「あら? あたしは前からこんなものよ、所長。

 あんな立場にいたからいろいろなところに連れ出されたり、派手な格好もしてたけど、あたしは好きな服を着て、好きなことを言ってた。丁寧な言葉も俗な言葉も、時と場合で使い分けられればなんだっていいのよ」

 

 あまりにも清々しく言い切られてしまったので、『あぁ、男らしいって女性のための言葉って本当なんだな』と実感してしまう。

 

「で? 所長が明智さんと金田一くんの推理勝負の見届け人だってことがわかったってことは、既に予定が決められちゃったの?」

 

「いや、それは確定してないそうだよ。

 なんでも抽選型の企画みたいでね、明智さんが僕と金田一くんの分も応募するんじゃないかな」

 

「それで三人全員が選ばれたら、誰かの作為を感じますけどね?」

 

 ニコニコしながら笑えないことをさらりと言う狩谷に所内全員の視線が刺さるが、次の瞬間、乱暴に事務所の扉が開かれた。

 

「聞いてくださいよ! 所長!!

 あの嫌味明智が美雪と佐木一号二号を使って遠隔で俺を煽った挙句、俺が負ける様を所長に見届けさせるって言うんですよ!?

 ふっざけんな、あの嫌味男! 今度こそ徹底的にけちょんけちょんにして、当分の間俺の前どころか所長の前にも恥ずかしくて出てこれねぇようにしてやる!」

 

 完全に明智の挑発に乗り、参加する意欲を見せている金田一に狩谷が爆笑し、檜山は『だよなぁ』とばかりに呆れた目をして、徹はいつも通りの冷めた目を向けた。

 

「揚羽くん・・・」

 

 そして小城は現実逃避をするように、お茶のおかわりを持ってきてくれた揚羽を見る。

 

「僕は彼に知識や体力をつけることは出来るけど、煽り耐性ばかりはつけることが出来ないんだ・・・ どうすればいいと思う?」

 

「えっと、そればかりは性格も関与してくるので難しいかと思われます。

 で、でも! 周りにいる私達が彼を冷静に出来るようにすればなんとか・・・」

 

 『無理』と口にすることは避け、他の手段でなんとかしようとするところに彼女の優しさを感じつつ、小城はとりあえず金田一をどうにかすることを諦めて明智から与えられたヒントについて調べることから始めることとした。

 

 





金田一と怜香ちゃんが一緒に行動するとかいう、事件しか起こらないフラグが立ったね!
ヤバい(;^ω^)
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