小城探偵事務所   作:無月

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独自解釈、原作改変、盛沢山。

第二話ー。


蝋人形城殺人事件 ②

 後日、無事に三人全員が抽選に当たったことが告げられ、ベンツで迎えに来ようとする明智の申し出を断って小城が事務所で使用している六人乗りの大きめの車で目的地であるバルト城へと向かっていた。

 

「悪いですね、小城くん。

 私から誘ったというのに運転まで君に任せてしまって」

 

「いいえ、気にしないでください。

 車で移動する時は基本運転手なので、他の席に座ってるのが落ち着かないだけですから」

 

「で、なんで明智さんは当たり前のように助手席に座ってんですかねぇ?」

 

「おや? 君に道案内なんてことが出来るんですか?

 それに万が一を考えるなら、免許のない君よりも持っている私が隣にいるのは自然なことでしょう」

 

 明智を睨みつけながらそんなことを言う金田一に明智は涼しい顔をし、しれっと答える。

(それもそうだけど、美雪ちゃんの隣に明智さんが座っても金田一はご機嫌斜めになると思うが・・・)

 そう思いつつちらりと後部座席を見ると、もはやついてくるのが当たり前となっているマガドリ様は美雪の膝で大切そうに抱えられてご機嫌の様子である。

 

「小城くん、一つ聞きたいんですが・・・」

 

「なんでしょう?」

 

「七瀬くんの膝にいるカラスのような存在はなんですか? 剣持警部に聞いても要領を得ませんでしたし、金田一くんの答えは全く意味がわかりませんでしたので」

 

「金田一くんがどういう説明をしたかはわかりませんし、正直オカルトじみた返答になることをご理解の上で聞いてもらいたいのですがかまいませんか?」

 

「オカルト、ですか?

 わかりました、たとえどんな話であったとしても君が言うんです。信じましょう」

 

(なんでこんなに明智さんからの信頼度と好感度がマックスなんですかねぇ!?)

 原作で聞いたこともないような明智からの絶対的信頼の言葉に冷や汗が出るが、再度後方を見ればマガドリ様が(⌒∇⌒)と笑っているのを見て、説明を始める。

 

「以前、トレジャーハンター業で関わった村の有力一族に祀られた神様がいたんですが・・・ 自分の今後をその一族に任せるのが不安だったらしく、僕のところについてきてしまったんですよ」

 

「おやおや、神様にまで気に入られてしまったんですか?」

 

「『にまで』ってなんですか・・・ 僕が他の何かにも気に入られてるみたいな言い方やめてください」

 

 ある意味、神様よりもヤバい奴に気に入られてる事実には蓋をして運転をしていると、景色を見ていた美雪が外を指さした。

 

「あっ、バルト城が見えてきましたね。ほら、ミコトちゃん見える?」

 

「うひゃぁ~、あれがバルト城か」

 

「そう・・・ しかし、この辺りであれをバルト城と呼ぶ人はいないそうです」

 

「じゃぁ、なんて?」

 

「地元の人はこう呼んでいるそうです。死霊の棲み処、『蝋人形城』」

 

 おそらくは見たことがないであろう西洋の城を見て、マガドリ様は(o´∀`o)スゴイ!とニコニコと笑う。マガドリ様と一緒に驚く金田一に、明智からの情報追加に小城はどこかで方向転換して帰りたくなる衝動に駆られていた。

(もう絶対何かの事件としか思えないのに、まったく思い出せない・・・

 というか、こんなことを言われたら知識があろうとなかろうと常人なら帰りたいと思うのはおかしくない筈だよな? なんでこいつら逆に興味津々なの? ミステリー好きとかって危機管理能力とか持ち合わせてないの?)

 頭の中が騒がしくなっている彼の心中を誰も知ることはなく、明智が二人へとバルト城の説明を行っており、以前この地でテーマパークを開くつもりでドイツより移築されたが、開発会社の父さんにより計画が頓挫したことにより城だけが残されたこと。そして、あの城こそが今回の企画の賞品だという。

(いや、信州の山奥にある城なんて貰っても困るだろ・・・)

 そう考えていると道の途中に白い影があり、よく見ればその影は女性でこちらに向かって手をあげていた。そこで小城は車を徐行にし、怪我の危険がないように近づいて運転席側の窓を開けて声をかけた。

 

「どうかしましたか? 何か困りごとでも?」

 

 だが、彼女は手をあげていたにもかかわらず、少しだけ驚いた顔をしていた。

 

「ワタシが見えるんですか?」

 

「? 見えるも何もここにいるじゃないですか?」

 

 どう見ても日本人ではない女性に問い返せば、女性は首を振って微笑んだ。

 

「イエ、忘れてクダサイ。

 ワタシはアノ城でミステリーナイトに招待されてイマス」

 

 彼女を見て、小城は違和感を覚えるがその違和感がなんなのかが理解できないまま、そのまま放っておくのも城で会った時に気まずくなると判断して、まだ席が空いている後部座席を指さす。

 

「よかったら乗りませんか? 僕らもミステリーナイトの参加者なんですよ」

 

「ダンケシェーン!

 ワタシハマリア、マリア・フリードリヒと言います」

 

「僕は小城 拓也です。

 さぁどうぞ、マリアさん。他の皆との挨拶はとりあえず車の中で」

 

 小城の言葉に甘えて車に乗り込み、車内でそれぞれが彼女と挨拶を交わし、彼女は美雪の膝にいたマガドリ様に触れるなど交流を行っている微笑ましい姿をチラ見しつつ、一行はバルト城に到着した。

 城の周りは深い堀が用意され、城から出るには跳ね橋一本のみ。

(わかりやすく密室が作られようとしています・・・ 帰っていいですか?)

 なんて絶対に言える筈もなく、覚悟を決めて跳ね橋を超えて城の中へ。中世ドイツの城を再現しているということもあって駐車場などなく、やむなく玄関前にあるスペースへと車を停車させることとなった。

 

「誰も出ないな・・・」

 

「とにかく入ってみようよ!」

 

 明智が扉につけられたドアノッカーを叩いても反応はなく、美雪と金田一が慎重に扉を開いても仲は薄暗くて何も見えない。

 

「ごめんくださ~い、誰もいないんですか~?」

 

 金田一が呼びかけても反応はなく、明智が持っていたライターで辺りを照らせば現れたのは人影・・・ ではなく、ずらりと並んだ人形の兵士達だった。

 

「なるほど、これが呼ばれている名前にある蝋人形ですか。確かに暗がりにこんなものがあったら気味が悪い」

 

「いや、所長はなんでそんな冷静にこんな薄気味悪いもんを観察できるんすかね!?」

 

「ハッハッハ、暗がりや人形よりも怖いものなんてたくさん見てる筈の君が言ってると思うと不思議な気分だね」

 

 納得しながらどこまで続いてるかと奥へと視線を送れば、蝋人形の兵士達の兵士の真ん中に強面の執事服が立っていた。

 

「いらっしゃいませ」

 

 気味悪さに更なる気味悪さが追加され、その場の多くが体を強張らせる中、小城はその相手へとにこりと笑いかける。

 

「この城の使用人の方であっていますか?」

 

「はい、私はここで皆様のお世話のいたします。南山と申します。

 明智様と小城様、フリードリヒ様。そして、金田一様と七瀬様ですね?」

 

 全員が頷くのを見てから南山は全員を案内するように身を翻して自ら先導し、手で通路を促した。

 

「お待ちしておりました、どうぞこちらへ」

 

「な、なんでぇ。待ってたなら早く出ろって・・・ 「金田一くん、他人には?」 は、はい! 失礼な物言いをしない! お客様は特権じゃない!」

 

「よろしい、その心がけを忘れちゃいけないよ。

 例え相手がこちらをもてなすことが仕事だとしても、相手も感情のある人間だ。失礼なことをされれば腹も立つし、不快にもなるんだから」

 

 小城が注意を促したところで突然現れた南山に驚いた金田一がマリアへと抱き着いているのをやや不機嫌な声で美雪が指摘している中、明智が小城の隣で笑っていた。

 

「フッ、大変ですね。小城くん。まさか一般常識から教えているとは」

 

(いや、元はといえば金田一を押し付けてきたのあなたなんですよ・・・)

 

「覚えはいいんですけど、どうにも口が軽いんですよね・・・ 事件なんて呼びこまなくても、その内最悪の状況でうっかり発言をして大怪我しそうで怖いですよ」

 

 大怪我で済んだら儲けものだが、そこまでは言うのは流石に自重する。

 

「どうぞ、お入りください。他の皆様もお揃いです」

 

 南山に促されて室内に入ればそこには既に他の五名の参加者が待機しており、自然とその視線はたった今来たばかりの小城ら一行に向けられた。

 木真面目そうな眼鏡の男性と恰幅の良い外国人であることが一目でわかる男性、ふくよかで化粧の濃い女性と化粧っけなど全くない目つきの鋭い女性。そして、まだ若く髪が天然パーマの青年。年齢は青年を除いてほぼ同世代と思われる集団にまだ若く探偵である小城、三十にもならず警視となっているエリート警察官である明智。さらに何かと事件に関与している金田一と先程車内でドイツの監察医であることが語られたマリア。

 統一性も共通点もなさそうな参加者を前にして、小城は少し考えるようにじっと見てしまう。

(なんか見覚えがある気がする・・・ 原作云々もだけど、特にあの化粧の濃い人はどこかで会ったことがあるような?)

 が、深く考えようとしたところで室内にあった振り子時計が鳴り、それが合図だったかのように南山が伝える。

 

「あとお一方到着していないようですが、時間ですので場内をご案内いたします」

 

 薄暗い廊下を歩いていってしばらくすると道はさらに暗くなっていき、南山は注意を促しながら案内をしていく。

 道の途中で美雪が壁の違和感に気づいて、それがなんなのかがわからずに疑問を口にすれば目つきの鋭い女性が一歩前に出た。

 

「漆喰の壁にはこんな形の亀裂は入らないわ。それは明らかに人為的なもの・・・ 色の感じからしてつい最近埋め込まれたものね」

 

「あの人、推理作家の多岐川かほるよ!」

 

「えっ!? あのおば・・・ この女性が!?」

 

 彼女の顔を見たことで誰かがわかり、流石の金田一も有名作品の作家の名前は知っていたらしく驚いているとまた失礼な物言いをしかけたが、小城の視線に気づいて別の言葉をひねり出した。女性はさらに続けて死体が埋まってる可能性があることを口にすれば、眼鏡の男性が失笑気味に告げる。

 

「死体ねぇ? ハッハッハ。流石、売れっ子推理作家さん。発想が突拍子もない!」

 

「じゃぁ、あなたはなんだと・・・?」

 

「あ~、ちょっとすいません!

 いやぁ、ウチのおばさんがね! そりゃぁもう部屋の模様替えが大好きでしてね!」

 

 揉め事になりそうだった二人の間に割って入ったのは天然パーマの青年。だが、その青年の物言いも勿体ぶるような言い方をしながらおばさんがしてしまった失敗談を交えて、壁の出っ張りが電灯のスイッチだったんじゃないかと語る。だが、場内に電灯は見当たらないことを多岐川が指摘すれば、天井にある照明を繋げるシーリングを指さした。

 

「すごーい! 流石このミステリーナイトの参加権を貰っただけはあるわね!」

 

「へっ、俺だってそんなのこの壁を見てすぐわかったさ」

 

 美雪が青年を褒めれば、金田一はすぐに出っ張りの周りの黒ずみが人の手あか出ることを指摘。そして、それは多くの人が手探りでここにあったものを探したからだと断言する。

 

「やれやれ、二人ともそれだけの結論を出すのに随分遠回りをしていますね」

 

 が、そんな二人の推理を呆れたように明智が鼻で嗤う。明智はこの建物が移築された目的を考えれば答えはわかりきっており、元々はテーマパークとして利用される筈だったこの城は消防法によって厳格な規定が課され、蠟燭やランプを証明として使われることが許可されることがない。だからこそ、この城に電灯がつけられていることなどわかりきっていたのだと嫌味交じりに説明した。

(なんでこの人は自分より頭が回る若い男を毛嫌いするのやら・・・)

 

「でも、最初からついてた電灯をどうして取っちゃったのかしら?」

 

「ミステリーナイトの雰囲気づくり、と考えるのが妥当だろうね。

 だとしたら、ここの企画主は随分とロマンチックというか・・・ 舞台の準備を念入りに行う完璧主義なのかもしれない」

 

 自分で言っておきながらどこかの傀儡師を思い出して寒気を覚え、それが他の面々にばれないように視線を巡らせる。

 

「皆様、時間の都合もあります。先を急ぎましょう」

 

 南山に促されながら、面々は地下へと降りていく。

 

「これより皆様に見ていただくのは『魔女狩りの間』でございます」

 

「魔女狩りの間!?」

 

「はい。中世ドイツの資料展示の一つとして、城の地下に作られたものです」

 

「魔女狩りって・・・」

 

「今から三百年前」

 

 金田一が何かを言うよりも先に化粧の濃い女性が唐突に語りだす。

 

「十七世紀ヨーロッパで行われた異教徒弾圧のことよ。

 キリスト教の支配者にとって目障りな異教徒や思想犯は、悪魔に魂を売ったと魔女として血祭りにあげられたの。当時は流行病や飢饉も全て魔女の仕業とされて、そのたびに男女問わずに多くの人間が処刑されたわ。その数はざっと九百万人とされているわ」

 

「へー! 随分と詳しいんですねぇ」

 

 淡々と語りながら、彼女は金田一から小城へと視線を向ける。

 

「中世ヨーロッパ史は私の大学の専行だったのよ、金田一くん」

 

「え? どうして俺の名を・・・」

 

「あら、小城さん。あたしのことをせっかく手に入れた金田一耕助のお孫さんに教えてないなんて悲しいわね」

 

(あ、思い出したわ・・・ 探偵関連の集まりで妙に絡んできた、規模はでかいけど良い評判聞かないとこだ)

 

「お久し振りです、当麻さん。

 ですが、彼を『金田一耕助の孫』とだけ見るのはやめてあげてください。彼は僕の事務所の一アルバイトであり、大切な所員です。それに各探偵事務所の代表の交流会について、所員にまで話すわけないでしょう?」

 

「そうね、小城さんは秘密主義ですものね」

 

「ハハハ、探偵が秘密主義じゃなかったら仕事にならないじゃないですか。当麻さんも上に立つ者としても、私情に関わるところでも、所員に話さない仕事の一つや二つはおありでしょう?」

 

 探偵事務所の代表同士のどこか緊張したやりとりに金田一が冷や汗をかきながら一歩引き、自分ではあまり見ることの出来ない小城の一面を見れたことによって明智はどこか満足げで、小城の肩に止まっているマガドリ様は静かに威嚇を始める。

 そうこうしている間に広い場所に着けば、そこには玄関を開けた時と同じように様々な状態で飾られた蝋人形が並べられていた。魔女とされた者達が拷問にかけられていく姿の状態の展示がされている部屋は薄気味悪く、金田一が『趣味が悪い』と言いながらギロチンへと近づけばそこに飾られていた蝋人形が突然目を開けた。

 

「ぎゃああぁぁぁ!」

 

「ろ、蝋人形が・・・!」

 

 金田一と美雪のみならず、その場にいる他数名も驚く中、小城は『こいつもどっかで見たことあるなぁ』とじっと見下ろした。

 

「やだなぁ、小城さん。そんな冷めた視線で見下ろさないでくださいよ。ちょっとした悪ふざけでしょ?」

 

「えっ・・・ 所長、この人とも知り合いなんすか?」

 

「不本意なことにね。

 いつきさんの知り合いだとライターとの交流が多くなるし、真木目さんは特に犯罪ルポライターなこともあって探偵やら警察やらにも頭つっこ・・・ 顔見知りが増えやすい人だから」

 

「ちょいちょい小城さん、俺に対して当たり強くね?」

 

(好きこのんで犯罪を記事にするようなライターを、優しくする人間っている?)

 親し気に肩を叩いてくる真木目からあからさまに視線を逸らして溜息をつけば、当の本人は開き直ったように全員に自己紹介をして、南山に勝手な行動をしないように注意をされる。

 そうして参加者全員が揃ったところで、最後の部屋に案内された。

 

「皆様、お待たせいたしました。

 この城の主、レッドラム様がお待ちです」

 

 扉の開けられた先に広がった部屋にはずらりと人影があったかと思えば、そこには壁に沿って並べられた蝋人形。

 

「こ、これは!? 俺達そっくりの蝋人形じゃないか!?」

 

 そして、その蝋人形は全て参加者を模して造られており、中世ヨーロッパの衣服が着せられていた。

 

『ようこそ我が蝋人形城へ、私の名はMr.レッドラム!

 私の心ばかりのプレゼント、気に入ってもらえたかね?』

 

 どこからか聞こえてくる声に全員が驚き、辺りを見渡しても姿はなく、館の主である彼の言葉はさらに続いていく。

 

『英国犯罪心理学の権威、リチャード・アンダーソン!

 ロサンゼルス市警の刑事を叔父に持ち、自らもまた多くの事件を解決してきたエドワード・コロンボ!

 当麻探偵社 社長、当麻 恵!

 推理小説評論家、坂東 九三郎!

 日本ミステリー界の女王、推理作家、多岐川 かほる!

 十九歳でドイツ警察の監察医となった天才少女、マリア・フリードリヒ!

 新鋭犯罪ルポライター、真木目 仁!

 警視庁捜査一課きってのエリート警視、明智 健吾!

 たった数年でいくつもの事件に携わってきた小城探偵事務所 所長、小城 拓也!

 そして高校生でありながら多くの難事件を解決した金田一 一とそのパートナー、七瀬 美雪!』

 

 全員が何者であるかを知り尽くしていると言わんばかりにレッドラムによって参加者全員の名前が紹介され、この企画の始まりを告げるように城の鐘が鳴り響く。

 

『以上十一名により、このバルト城所有権及び移築費用二億円を賭け、バルト城ミステリーナイトツアーを開始する!』

 

 そこで一度、もったいぶるように間を開け、それはこの音声の向こうでレッドラムが笑っているようにも感じられた。

 

『さぁ! 全世界からお集りの名探偵諸君!

 そのたぐいまれなる推理力で、私を楽しませてほしい!』

 

 その言葉が終わるか否かというタイミングで城中に響き渡る音と振動に慌てく周囲。そして、誰か一人が音のする方へと駆け出して行けば全員がそれに従っていく。

 が、そんな中でも小城は一人、のんびりと歩いてついていく。

(ここまで事態が動いているのに思い出せない。

 つまりこの事件はあの子が関与しておらず、手に入れるのが困難・あるいは手に入らないと判断して俺が脳内から排除していた事件の可能性が高いな・・・)

 どうしたものかと思いながら玄関へと辿り着けば、城と外を繋ぐ跳ね橋があがってしまい、扉は固く閉ざされてしまった。パニックになる面々に、南山が丁寧に告げる。

 

「どうか落ち着いてください。

 皆様には推理に集中していただくため、この四日間、城の外には出られないようにさせていただきます」

 

「四日もこの城を出られんだと!?」

 

「そんなの一言も聞いてないわ!」

 

 坂東と多岐川の当然の反応に対し、南山はあくまで冷静だった。

 

「これもレッドラム様の御趣向でございます。

 従えない方は棄権と見なし、ミステリーナイトの参加権はなくなります」

 

「なぜだ、なぜここまでする? たかが推理ゲーム一つに・・・」

 

 あまりにも突然すぎる事態にが参加者はどこは不満や不安、戸惑いを隠せないでおり、小城はそんな空気が悪い中で胸元から棒付きの飴を取り出して口に運ぶ。そうしていると肩に止まっていたマガドリ様も(○´∀゚)ッチョウダイと手を差し出してきたので、包装をはがしてからプリン味を手渡す。

 

「あの、所長・・・ 周り見えてます? 今、めっちゃシリアスな状態なんですけど」

 

「いいかい? 金田一くん。

 おそらくこの状況を誰よりも楽しんでいるレッドラムを冒涜できる一番の方法は、この状況で本来陥るべき精神状態にならないことだよ」

 

 飴の棒を揺らしながら、小城は徐々に暗くなってきた空を見上げる。

 

「それに夜の闇は人の心を負の感情で支配するからね、自分からそれを加速するような感情は持たない方が吉さ。

 甘いものは元気が出るし、気持ちを変えてくれる。君もいるかい?」

 

「あ、あざーっす」

 

「ほら、美雪ちゃんも」

 

 そう言って二人にも棒付き飴を渡せば、彼女は不思議そうに飴を見る。

 

「ありがとうございます。

 でも、この飴ってどうしたんですか?」

 

「いや、最近の僕を見かねた舘羽くんが持たせてくれてね・・・ どうも最近、考え事をしていることが増えてしまったからか、煙草を吸っていた時の仕草が出てしまっていて『口に何か咥えてたいなら、これでも咥えておきなさい』だってさ」

 

「アハハハ! さっすが舘羽さん!

 でもこれじゃ、この飴って赤ちゃんのおしゃぶりと同じじゃないっすか」

 

「じゃぁ必要なのは小城くんではなく、金田一くんの方ですね」

 

「んだと~!」

 

 明智による失礼な物言いに金田一が怒り、小城は男同士の至近距離のやり取りを両手で遠ざける。

 

「それでは、皆様のお部屋へご案内します」

 

 南山の言葉に全員大人しくついていけば、レンガ造りの部屋に鉄製の扉はなんというか・・・

 

「うひゃ~、まるで牢屋じゃん」

 

 金田一が思ったまま口にした言葉は、その場にいる全員の気持ちの代弁に等しかった。

 だが、そんな感想を気にすることもなく、南山は夕食の時間と部屋の中にある衣装を着用してから大暖炉の間に来るように告げられる。そして、明智が金田一に遅刻しないように釘を差し、それぞれが部屋へと消えていく。

 

「それじゃ僕が出る時間に声をかけるから、それまでは部屋でのんびりすると良い。

 あぁ、そうだ。美雪ちゃんが嫌なら金田一くんは僕の部屋で引き取るから、遠慮なく言うんだよ」

 

「所長までそんなこと言うんすか!」

 

「いや、別に金田一くんがどうこうじゃなくてね。年頃の女の子なんだから幼馴染でも着替えの時とか嫌だろう? それなら男同士の方が同室の方が楽だし、明智さんの部屋には行きたくないだろう?」

 

「大丈夫ですよ、小城さん。

 着替える時ははじめちゃんに部屋から出てもらいますから」

 

「そうかい?」

 

「ありがとうございます」

 

 部屋の数の関係で金田一と美雪が同室となったことで小城なりの配慮の言葉だったのだが、本人達が良いというのだからいいのだろう。なので、二人が三番の部屋に入ったところで、小城もまた二番の部屋に入った。

 

「はぁ・・・ どうしたものかな」

 

 作り上げられた密室に、控えめに言っても怪しい状況。しかし、何も起こってない今、何もすることは出来ない。

(何も起こらないなんて、楽観視は出来ないよなぁ・・・)

 

 

 

 

 

 一方その頃、城のどこかの部屋である三人の人影が集まって何やら会話をしていた。

 

「まずいことになったな、このミステリーナイトに警察の人間が参加してるなんて・・・!」

 

「あの男、まさか俺達のこと・・・」

 

 不安そうな声を打ち消すように女の声が響く。

 

「考えすぎよ。でも、用心に越したことはないわね。

 あたし達の関係を悟らせないようにしましょう」

 

「勿論、俺らはあくまで初対面だ。いいな!」

 

「あぁ」

 

 三人共通の決め事が確定して、暗闇の中にわずかに入った光が煙草を吸っていた女の顔を露にする。

 

「どんな手を使ってでもこの城を手に入れさえすれば、全ては闇に葬られる・・・

 あたし達の忌まわしい過去もね」

 

 そう語るのは当麻探偵社 社長 当麻 恵、その人だった。

 

 

 

 

 曇っていた空から一つ、また一つと雨粒が零れ堕ちて大雨へと変わっていく中、明智は一人ベッドに腰かけて、手帳に挟んだ幼き日の自分と今は亡き父の写真を眺めていた。

 

「あと少し・・・ あと少しなんだ・・・!」

 

 その言葉の意味を、今はまだ彼以外は誰も知ることはなかった。

 





この話を書いてて思ったんですが、原作で乗ってきた明智さんのベンツって原作における事件のラストで燃えてない?(中庭に置かれて密室に巻き込まれてる)
べ、ベンツー!? 磨陣村の時も金田一に扉大破されたベンツー!?
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