小城探偵事務所   作:無月

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独自解釈、原作改変、盛沢山。

後編ー。
さぁ、次はどの事件になるかなー?


小城不在 (後編)

 剣持からの連絡が来るまでの事務所での待機時間はただただ長く、ある時間を過ぎたあたりでそれまで皆に飲み物や夕食、仮眠などの声掛けをしていた揚羽が顔を青ざめて立ち上がった。

 

「ミコトちゃん、それは・・・ 本当ですか?」

 

 舘羽と徹、そして千家が何事かと視線を向ける中で、狩谷と檜山も揚羽の視線の先にいる何かを見ており、何かを察して顔色を変えていた。

 

「おい、そいつは今なんて言ったんだよ? まさか、あいつらに何かあったんじゃねぇだろうな!?」

 

「その子がそんなに怒りを露にしてるんだ、事態はもう一刻も争うと考えた方がいい」

 

 その状況で何事かわからなかった三人も事態をうっすらと理解し、徹が険しい顔で問う。

 

「揚羽、マガドリ様は一体何を伝えてきたんだい?」

 

「所長が・・・ 小城さんが襲われた、と」

 

『!?』

 

 全員の目の色が一斉に変わり、様々な感情が事務所の中に溢れていく。

 

「どこかに運ばれて、そこからは先はこちらからではよくわからない、と・・・ 小城さんが、小城さんが・・・!! 今すぐ行かないとあの人がまた怪我を・・・! いいえ、それ以上だって起こってしまう可能性も・・・」

 

 それ以上が起こるなんて信じたくないと思いながらも何かしなければ、彼の元へ向かわなければと動き出そうとする妹を舘羽は抱きしめ、無理やりに動きを止める。

 

「揚羽、大丈夫。大丈夫だから。

 所長なら・・・ きっと大丈夫よ」

 

 妹を落ち着かせるために繰り返す言葉に何の根拠もなく、舘羽自身も混乱していることがわかる。事実、抱きしめている彼女の体も震えており、その目は小城を害した何者へと静かな怒りを宿していた。

 

「副所長、嵐で交通状態もどうなっているかわからないとか言って、先に出発しちゃいましょ。で、突撃自体は警察を待つけど、出来るだけ近くで待機で」

 

「狩谷さんの意見に賛成です!

 バルト城の近くまで行って現場待機。そうすれば最悪、マガドリ様か、俺らが見える範囲まで行って通信機器を投げ入れ、はじめか七瀬にでも受け取ってもらいましょう!!」

 

「どうするであれ、俺は車で待機する。

 けど、一時間してお前らが来なかったら、俺は一人でもバイクかっ飛ばして向かうからな」

 

 そう言って事務所を出ていこうとする檜山を、徹が机に拳を叩きつけることで止める。

 

「檜山、止まれ」

 

「あんだよ、副所長。決断するなら早くしろよ」

 

「今すぐに駆け付けたいのがお前だけと思ってるのか? だとしたら、ふざけるなよ?」

 

「あ? そんなことは言ってねぇだろうが」

 

「言ってるも同然の行動だが?」

 

「二人とも、喧嘩するだけなら帰ってくれないかな?

 今は一刻も争う状況なんだ、くだらない喧嘩を始める君達がいても邪魔なんだけど?」

 

 口論が始まりそうな檜山と徹に対し、狩谷は笑いながらも容赦なく告げる。

 上層部三人の緊張感あるやり取りを見て慌てる千家に対し、舘羽は冷静に未だに震えている妹に尋ねる。

 

「揚羽、剣持さんに電話出来る?」

 

「はい、大丈夫です。

 先程の狩谷さんが言っていた内容でよろしいですか?」

 

「えぇそれでいいわ、剣持さんだったら私達の動きで緊急事態だと理解してくれる可能性が高いもの」

 

 そう言いながら舘羽は県を超えてる以上、管轄が違ってくる。それを考えれば剣持が動くのは聞いた時間か、諸々の連絡を終えた後になる。いずれにせよ、あまり期待できないのが実情だった。

 

「兄さん、檜山、狩谷、揚羽が電話するまで待てないなら、邪魔だから来るんじゃないわよ」

 

 睨み合う男三人をさらに睨みつけながら言うと、我に返った徹が舘羽を見る。

 

「舘羽・・・」

 

「あとあんた達が感情的過ぎるから、現地に着くまで突入組と後方支援組は分けない。

 一台目は兄さん、私、千家くん。二台目は狩谷、檜山、揚羽に変更。反論は聞かないわよ」

 

「・・・チッ! わかったよ」

 

「舘羽さんには敵わないなぁ。徹さん、副所長の座は舘羽さんに任せた方がいいんじゃない?」

 

 さらに冷静に続ける舘羽に檜山は舌打ちし、狩谷は肩を竦めて苦笑いしてしまう。

 

「それも含めて所長の決定であり、僕は決める立場にない」

 

 徹がそう言ったと同時に揚羽が剣持との連絡を終え、徹達はバルト城へと急行することとなった。

 

 

 

 

 逸る気持ちと道すがら雨に降られたり、乱れた交通状況に振り回されながらバルト城近くで待機していると、予定よりも早めに到着した剣持からのゴーサインの元で突入組三名とマガドリ様が警察と共に城に突っ込んでいく。

 車での待機を支持されていると舘羽と揚羽、そして突入組との連絡役としてトランシーバーを持たされた千家はただ静かに城を見守ることしか出来ず、表情はずっと厳しいままだった。

 

「皆さん・・・ どうか無事で」

 

 祈るように手を組む揚羽の言葉が車中に響き、舘羽はそんな妹の手を静かに握ってやることしか出来ない。

 

『こちら突入。事件は既に収束済み、犯人も警察が拘束。

 が、負傷者あり』

 

「こちら待機! 負傷者って誰ですか!?」

 

『こちら突入。今から中庭へ降りていく。

 警察からも中庭までなら入っていいとの許可が下りた、車ごと中庭に移動するように』

 

 トランシーバー越しでの徹の声が硬く、なるべく感情を露にしないようにと事務的に内容を伝えていることがわかった。

(感情的に暴れてないのは助かるけど、冷静過ぎる兄さんもかえって心配になるわね・・・)

 内部から密室を作り上げた跳ね橋が無事に降り、舘羽運転の元で中庭へと進めば、そこには見慣れた小城の車。そして、玄関は警察関係者や小城らと共に城に閉じ込められていた人達が出てきており、その中に近代と美雪、明智と続いて徹達三人に囲まれる形で小城が出てきた。

 

「っ・・・!」

 

 無事に歩いている小城の姿に妹が一瞬駆け出そうとするが、感情を押しとどめるように自分で足を押さえるようにスカートを握り締める。

(ホント、この子は・・・)

 

「揚羽、行ってきなさい」

 

「姉様、ですが・・・」

 

「あなたは自分の感情を抑えすぎなの。片想いでも、好きな人のことで我慢しない」

 

 姉の言葉に揚羽も少しずつ歩き出し、出てきた小城も揚羽の姿を確認していつものように困ったような笑顔を向けた。

 

「千家くん、私達も行くわよ」

 

「はい!」

 

 揚羽から少し遅れる形で二人も向かえば金髪碧眼の美女が揚羽に向かって深く頭を下げており、舘羽が首を傾げていると彼女や他の面々が何かを言う前に小城が口を開いた。

 

「皆、心配かけたね。でもこの通り、僕らは無事だから・・・「小城さんはワタシのせいで「いや、マリアさんのせいじゃねーから!!」「無事って! 小城さん、自分が怪我人である自覚がないんですか!?」

 

 小城の言葉が遮られまくって会話になりそうにないので、舘羽は数歩離れたところにいた明智へと視線を向ける。

 

「お久し振り、明智さん。

 あっちは全然話にならなそうだから、何があったか簡潔に説明してもらっていい?」

 

「城で殺人事件が起き、その末に彼とその隣にいるマリアさんが私達と同様に巻き込まれた一人にあらぬ疑いをかけられました。その際に傷害罪と監禁罪にあたることをされ、小城くんはマリアさんに被害が出ないように行動した結果あばらにヒビが入るという重傷を負いました」

 

「どうもありがとう、そこまででいいわ。たった今、私達は犯人が誰とか、事件の全貌とかどうでもよくなったもの。

 で、ウチの所長に手を出した不届き者は誰かしら?」

 

 望み通りの簡潔な説明に感謝を告げつつ、城から出てきた他の人を見るとすぐに目を逸らす男がいた。

(見ーつけた)

 

「舘羽くん、そんな怖い顔で睨まないであげてくれ。

 不便な城に閉じ込められて、もしかしたら隣にいるのが犯人かもしれないと精神的に追い詰められた末の行動なんだ」

 

 本当にどうとも思っていないとばかりに小城は真木目に視線を向けることもなく、舘羽をやんわりと注意する、

 

「所長、それ、本気で言ってる?

 私達の誰かが同じことされたら、その人を許すの?」

 

「いいや、許さないよ」

 

 こちらの怒りを止めた割には即答する小城を軽く睨んでも、彼は涼しい顔で笑っていた。

 

「なら、私達の怒りもわかるわよね? 揚羽とかが見えてるマガドリ様も相当怒ってるんじゃない?」

 

「わかるけど、君達があの程度の人間に手を出して罪に問われるなんて馬鹿らしいからやめなさい。

 それに僕も監禁されて冷静じゃなかったとはいえ、かなり二人を煽ったからね」

 

『二人?』

 

 気まずそうに目を逸らした男のみが小城を害した人間だと思っていた面々が、『もう一人は誰だ?』とばかりにぐるりと視線を向けても、判りやすく視線を逸らすような人間は見つからなかった。

 

「金田一くん、ウチの所長を監禁したもう一人は誰かな?」

 

「ちょっ!? 狩谷さん、その超怖い笑顔引っ込めてくんない!? そんな笑顔の人に素直に教えられるわけないでしょ!」

 

「じゃぁ、俺になら教えてくれるよなぁ? き・ん・だ・い・ち?」

 

「そんな不良みたいな檜山さんに教えるとか、絶対ないから!」

 

「・・・所長、そいつはそんなに庇う価値のある人間ですか?」

 

 狩谷と檜山が金田一に集中してる間に未だに静かな怒りと殺意を宿している徹が小城へと問えば、彼は苦笑しながら答える。

 

「ないよ、そんな価値」

 

「それなら・・・」

 

「でも、この怪我を問題にすると気にしてしまう人がいるんだよ。徹」

 

 そう言って小城が視線を向けた先にいる女性は申し訳なさそうに身を小さくし、目が合った徹へと深く頭を下げた。

 

「彼女を庇ったんですか?」

 

「庇ったというより、僕と彼女が共犯だと思われたみたいでね。その結果、男である僕の方が手ひどく痛めつけられただけ「小城さんはワタシがボウリョクを振るわれないように庇ってくださったんです! ワタシがそもそも気絶しなければ・・・」

 

 彼女の言葉に状況が理解できてきた徹と舘羽が殺さんばかりの視線を実行犯であろう真木目()に向けていれば、揚羽が明智と剣持へと深く頭を下げた。

 

「剣持さん、明智さん、もう小城さんをここから連れ出してもいいでしょうか? お怪我もあります、今すぐ近隣の病院に向かいたいのですが」

 

「あぁ。犯人についても、この事件に関しても明智警視がいる。最悪金田一がいりゃ事件の詳細も聞けるからな、早く連れてってやれ」

 

「え!? ってことは俺は居残り!?」

 

「学校じゃないんだから居残りじゃないでしょ、はじめちゃん。

 それに小城さんは怪我人なんだから、ちゃんと病院に行って処置してもらわないと駄目でしょ」

 

「七瀬くん、君も事務所の方々と一緒に病院に行ってもかまいませんよ」

 

「私ははじめちゃんと一緒に居ます。怪我もしてませんし、はじめちゃんを一人に出来ませんから」

 

 ニコニコと金田一のお守りを申し出る美雪に明智が視線と態度で金田一を嗤えば、金田一も負けじと明智を睨みつけた。

 

「ではマリアさん、小城くんの怪我についてあなたが一番詳しく知っているので付き添っていただけますか?」

 

「えっ、えぇ、ワカリマシタ」

 

 明智の指名に等しい言葉に彼女は戸惑いながらも頷き、未だに納得できずに真木目を睨みつける面々に小城が手を叩いて促す。

 

「皆、もう行こう。

 明智さん、金田一くんと美雪ちゃんをお願いしますよ」

 

「えぇ、きちんと送り届けるので心配しないでください。

 君もしっかり治療を受けて、体を大事にしてください」

 

「えぇ、ではまた。

 あぁそうだ、明智さん。先ほど話した件、お願いしますよ」

 

「えぇ、この城の所有権についてでしたね。わかり次第、君に情報を送りますよ」

 

 軽い挨拶をして別れる二人に、所員の多くがもやもやとした気持ちを抱えながらも山を降りて病院に直行することとなった。

 

 

 

 

 事件から早数日が経過し、怪我をしているにもかかわらずバルト城の権利や土地について動こうとする小城の書類仕事を舘羽と揚羽が片っ端から奪って彼の希望通りの結果を生み出している、と突然やってきた金髪碧眼美女のマリア・フリードリヒが受付として事務所で働くこととなっていた。

(所長って本当に人誑しよねぇ。本人にその気がないのはわかってるけど、あんな美女まで連れてきちゃうんだから)

 笑いながらそんなことを考えていると、視界の隅にどこからか話を聞きつけた関係者の皆さんから送られてきた手紙や贈り物一覧のメモがあり、おもわず拾い上げてまじまじと眺めてしまう。

(今回は珍しくいつきさんが良い仕事してくれたのよね。

 まぁ犯罪ルポライターが犯罪起こしたなんて同業者への良いネタ提供だし、あの人の人脈を総動員した上で、所長の知り合いにまで知れ渡ったらライター業界からの締め出しは確実よね)

 この二人の人脈がフル稼働しているとライター業界のみならず、あちこちの業界や機関からも締め出しをくらっている可能性が高いのだがそれもまた自業自得であろう。また、実際に彼の所業がどこか記事にされている可能性もあれば、まだされていなかったとしてもいったいいつ・どこで言い触らされるかもわからない現状で彼ははたして日本で生きていけるのだろうか?

 そんなことを考えているとまだまだ駆け出しの事務員のマリアが、書類を持って舘羽へと近寄ってきた。

 

「タテハさん、書類の確認をしていただいてもイイデスカ?」

 

「えぇ、勿論。

 ねぇマリアさん、あなたって所長のことを狙っているの?」

 

 舘羽の何気ない問いかけにマリアは少々驚いた顔をしてから、ゆっくりと首を振った。

 

「ソウトモ言えますし、ソウデナイとも言えます」

 

「あら、ドイツ人とは思えないような難しい言い回しね。

 それってつまりどういうこと?」

 

「ワタシハ小城さんに返し切れないほどの恩をウケマシタ。

 デスガ、『恩だけここにいるのか?』と聞かれるとワタシハ『いいえ』と答えたい気持ちもアルノデス」

 

 そう言いながら所長室の方を向ける彼女の表情は優しく、小城に恋をしている自覚がある妹に似ているようで少し違う気もする。

(まだこれから、ってところかしら? これは育ったら強力なライバルになるわね)

 姉としては妹を応援したい一方、今まさに恋が始まろうとしている彼女の気持ちを止めるなんてことも舘羽には出来なかった。

 

「恋って素敵ねぇ~」

 

「・・・コレハ『恋』なんでしょうか?」

 

「えぇ。あなたがまだ認めていなくても、聞いてる私からすれば立派な恋よ。

 その気持ち、大事に育ててあげればいいわ」

 

 舘羽が笑顔で告げれば、マリアは不思議そうな顔をして胸のあたりに手を当てて『これは恋』と繰り返す。そして、唐突に神棚の前に行ったかと思ったら自然と手を合わせて、肩に鳥か何かがとまりじゃれ合うように目を閉じて何かを撫でていた。

 

「力のないただの家妖精に過ぎない私を眷属にしてくださり、ありがとうございます。

 これからは誠心誠意あなたに仕え、あなたが愛するこの事務所の方々を私も守りたく思います」

 

 とても小さな声で囁かれた彼女の決意にも似た言葉は不思議と誰の耳にも入ることはなく、眷属とした家妖精に寄り添うカラスの神様だけが確かに聞き入れていた。

 

 





『家妖精が、神の眷属に進化した』

この二次において、高遠さんに次いでなんか凄い好き勝手してない? この神様。
というか自分で書いといてあれだけど、マガドリ様をレギュラーメンバー入りとか奇抜過ぎない?
人外ハーレムタグはもう一人(?)くらい増えたら足そうと思います。
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