小城探偵事務所   作:無月

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金田一の二次って母数少ないから読者少ないと思ったのに、意外と多いな???

金田一がバイトになるくだりになりまーす。
本当はもう一話分として分かれてたけど、六話と七話結合したんで、ストックヘル。





祝 金田一 バイト先を得る 

 事務所を構えて数日のこと、その静かな事務所に一人の訪問客が訪れていた。

 

「まずはおめでとうと言わせていただきますよ、小城くん。

 君が警察の組織に入らなかったのは残念ですが、君は優秀ですから探偵としても活躍することでしょう」

 

「ありがとうございます、明智さん。

 しかし、わざわざ来ていただけるなんて思ってませんでしたよ」

 

 いつもなら紅茶を入れてくれる揚羽にも遠慮してもらい、現在は室内に小城と明智のみである。

 

「友人である君へのお祝いです、自ら足を運びたいと思うのは自然でしょう。

 それと、君の耳にも入れておきたいことがありまして」

 

(だと思ったよ・・・)

 内心の絶望顔を噯に出さず、小城は涼しい顔で応対する。

 

「ほぅ、耳に入れておきたいこととは?」

 

「金田一 一という高校生について知っていますか?」

 

「金田一? まさか、かの有名な金田一耕助の血縁なんてお伽噺みたいなこと言いませんよね?」

 

 わざとすっとぼけると明智は小城の勘の良さに目を開き、にこやかに笑う。

 

「そのまさかですよ。

 伝説の探偵の実の孫が存在し、彼のように事件の中にあって推理を行ったんです。この僕を出し抜いて真実を明らかにしてね」

 

「・・・ニュースで見たあの事件ですか?」

 

「えぇ、彼が関わったことは公表されませんでしたが女優である速水玲香も巻き込まれてしまいましたからね。隠すには大事過ぎました」

 

 『速水玲香』の名が出た時、小城は無意識に拳を握りしめたが涼しい顔で応対を続ける。

 

「しかし、それだけでは明智さんが危険視するほどではないのでは?

 推理を行っただけで要注意って、大袈裟じゃありません?」

 

「いいえ、けして大袈裟ではありません。

 市民の安全を守る警察が守るべき市民を危険に晒すことは勿論、彼はきっと同じ状況になった時今回と同じことをするでしょう。自分の身を顧みずにね」

 

 一瞬でも彼のことを『プライドの高い嫌味な男』と思った己を小城は恥じた。

 彼はただ真面目な警察官で、相応の経験をした大人なのである。

 

「だから、君には彼のことを見守ってあげてほしいんですよ。

 僕ら警察では彼のことを守るのには縛りがありすぎるので、動けないもしもの時があるでしょう。ですが、君ならいくらかの自由が利く。彼の目指す探偵である、君ならね」

 

 真剣な明智を他所に小城は内心で首を傾げる。

(あれぇ? あいつ探偵なんて目指してたっけ?

 将来的には『事件なんてこりごりだ』とか言ってたような・・・?)

 

「わかりました、気にかけておきますよ。

 といっても、僕にも動ける範囲がありますが」

 

「それで結構。ご協力感謝しますよ、小城くん。

 それでは私はこれで失礼します。また一緒にコンサートでも行きましょう」

 

「えぇ、喜んで」

 

 明智を見送った小城は一人深く溜息をついて、椅子に座りなおす。

 

「金田一は嫌味嫌味言ってたけど・・・ なんだかんだで彼を助けることが多いのも事実なんだよなぁ」

 

(原作でもきっと、高校生の若者を事件の現場に出すことに危機感を抱いてたんだろうなぁ。

 まぁどこぞの首を突っ込んでいく好奇心旺盛な高校生ボーヤと違って、金田一はガチで巻き込まれてる側だけど)

 

「所長、失礼します。

 お母様の新作ケーキのご試食お願いできますか」

 

 一階にいて明智の退出を知ったらしい揚羽が小城に紅茶を入れに来て、その手には緑特製の新作ケーキも乗っている。

 

「それなら皆を呼んできて休憩にしようか。

 カフェの方にはまだまだいろいろ準備が必要だしね」

 

「わかりました。兄様達も呼んできますね」

 

「いや、僕が下に降りよう。

 ケーキを食べるなら下のテーブルの方が都合がいいし、この後は特に予定もないからね」

 

 小城は自分の茶が冷めるのも気にせず、揚羽を連れ立って一階へと降りていく。

 そうした後、事務所には温かなお茶の時間が訪れるのであった。

 

 

 

 

 

「明智警視の紹介で来た者だが、所長さんはいるかい?」

 

 明智から話が来て半年後、そんな第一声で訪れたのは強面のおっさんである。そして、その横には興味深そうにきょろきょろと周囲を見る高校生が立っていた。

 

「はい、所長ならいらっしゃいますよ。

 明智警視からのご連絡もいただいておりますので、中へどうぞ」

 

「おっさん、俺探偵事務所って初めてだぜ」

 

「うっせーな、俺だってそんな経験ねーよ。

 お前が金ないっつうからバイト探したら、通りすがりの明智警視にここの名刺を押し付けられたんだよ」

 

 須賀徹の他所行きの笑顔で応対されながらも、二人はブツブツと言いながら中に入っていく。

 

「えぇー! あの嫌味明智がぁ~? 何でだろ」

 

「知らん!

 そもそもあのクソ真面目な奴に探偵の知り合いがいるってことがうさんくせぇ」

 

「胡散臭いって・・・ どうしてだよ、おっさん」

 

「オメーや、小説にあるみてーな華麗に推理するようなことが現実にあるわけねーだろ。

 それこそ後ろ暗いことや、俺ら以上に地道なことをするのが普通の探偵って奴なんだよ。大体浮気調査とかしょーもないことだってその仕事の一部だぞ」

 

 次々と当の探偵事務所で言いたい放題な二人に資料に向かいつつも周囲の目は厳しくなり、涼しい笑顔の裏側で徹も苛立ちを募らせていく。

 そのまま所長室に通され、事務所の主である小城はここで初めて金田一を目にした。勿論、二人の声は所長室にも丸聞こえである。

 

「この事務所の所長を務めております、小城拓也です。

 お二人は剣持さんと金田一くんでしたね、どうぞおかけください」

 

 二人の目は小城への好奇心と不審を隠す様子もなく、ただただ向けられた側は苦笑するのみである。

 

「それで浮気調査などのしょーもないことを生業にしている探偵事務所にいったい何の御用でしょう?」

 

 二人の顔が『聞こえてた・・・!』とばかりに固くなるが、小城は優しく笑いかける。

 

「といっても、明智さんからご用件は聞いているんですけどね」

 

「そ、それじゃぁ話は早いな。

 こいつをこの事務所のバイトとして雇ってやってほしいんだが・・・」

 

「はいはーい、バイトの内容って何やるんすか?」

 

 空気を読まず手をあげて元気に質問する金田一に剣持から溜息がでるが、小城は気にせず質問に答える。

 

「実務的な調査なんかを君にすぐにやってもらうことは出来ないので、まずは体力づくりですかね。

 あぁ、実務と言っても推理なんかではなく尾行や資料等を使った調査などになります」

 

「えっ!?」

 

 驚く金田一に気にせず、小城はさらに続けていく。

 

「ですが心配は無用です。

 体力づくりの期間内でも君に給与は支払われますし、順次仕事内容を覚えてもらうために現職員たちによる座学等も挟ませていただきます。学業等に支障がきたさないように時間の融通も行いますし、体力づくりにおいての怪我等の保証もこちらが行います。まぁ普通のバイトで言うところの研修期間だと思ってくれればいいですよ。

 実際の額についてはこちらの書面をご覧ください」

 

 ただのバイトには破格の条件であり、常に金欠状態の金田一には最高の状況。

 

「・・・破格すぎやしねぇか?」

 

 黙っていた剣持が話に割り込み、刑事としての厳しい表情で小城を睨む。

 

「こいつはただの高校生のガキにすぎねぇんだ、ここまで破格の条件に歓迎ってのは怪しすぎだろ。

 お前、金田一に何させる気だ?」

 

(むしろ何もすんじゃねぇ!)

 叫びたい気持ちをぐっと抑え込み、小城はにこやかに対応を行う。

 

「金田一くんに特別待遇なんてしていませんよ?

 これはここの男性所員全員に行っていますし、探偵業は何よりもまず体力が必須です。危険も伴う以上、護身程度には武術を収めていただかないと仕事を任せることは出来ません。

 明智さんから彼の推理の話は伺っていますが、僕らは探偵ではありますが推理を行い、犯人を特定するようなことをしているわけでもありませんしね」

 

(というか、事件の現場で『わからないから、よし探偵を呼ぼう』なんて状況はねぇよ)

 探偵がやるのはあくまで事件以前、事件以後の作業なのである。

 

「それにアルバイトに来ている高校生を危険に晒すなんてあるわけないでしょう。

 探偵なんて評判によって左右されるんです、自ら食い扶持を減らすような真似なんてしませんよ」

 

 手を振って『ないない』と示すが、剣持の視線は柔らかくならない。

 むしろさらに厳しく小城を睨み付けた。

 

「こっちから頼み込んどいて悪いが、あんたがもしこの坊主を使って後ろ暗いことをしようってんなら、あんたの後ろに誰がいようと俺が許さねぇ」

 

「おっさん、俺の親父かよ!」

 

「うるせぇ!

 俺がお前を事件に巻き込んだようなもんなんだ! お前の身の安全を保障しねぇと親御さんに顔向けできねぇんだよ!!」

 

 剣持の怒声にも似たその言葉に、小城は無意識のうちに羨望の目を向けるがすぐにクスクスと笑ってしまう。

 

「心得ておきますよ、剣持警部殿。

 良いお父さんですね、金田一くん」

 

「・・・あんた、そんな冗談言うんだな」

 

 目の前の事態よりも何気ない一言に驚く金田一に、小城は困った顔をする。

(これは体力づくりの前に、社会人としてのあれこれを教える必要があるかな?)

 

「まっ、その方が付き合いやすくていいや。

 これからよろしくお願いします」

 

 金田一のその一言で彼がこの事務所のバイトとなることは確定させ、その後は次の出勤日を決め、その場はお開きとなった。

 

 

 

 剣持と金田一にあからさまに警戒されていたことに彼なりに思うところがあり、小城は事務所の全員の揃っている場にて顔をさすり、首を傾げる。

 

「僕って、そんなに胡散臭い顔してるかなぁ?」

 

『はぁ!?』

 

「どっちが言ったんです? それ」

 

 代表して徹が問えば、小城は肩をすくめる。

 

「いや、言われたわけではないけれど、あそこまで警戒されるとね」

 

「胡散臭いなんてとんでもない、お優しい顔をなさっていますよ」

 

「まぁ、いかにもエリートっつうか真面目そうな面してるけどな」

 

「所長は整ってる方じゃない?」

 

「考えてることを読みづらくはありますが、穏やかな顔をなさってると思いますよ」

 

 全員からのフォローに涙がちょちょぎれそうになるが、一部フォローになっていない。

 

「元々明智さんからの紹介というだけで剣持さんには随分と悪印象を持たれてるみたいだし、明智さんはあのままの人だから金田一くんにもきっと何かしたんだろうしね」

 

「単にエリートを妬んだだけじゃね?」

 

「あぁ、それもあるかもね。

 学歴やら何やらで随分差があるみたいだし、明智さんもいい性格とは言えないからね」

 

(プライドが高いんだよ、あの人。

 生まれとかで嫉妬する人間嫌いだし)

 

 小城が明智に評価をされている面は今まさに小城が考えた通りの点なのだが、彼がそれを知ることはないだろう。

 養子であり、幼い頃から不安定な精神状態にもかかわらず、ただの負けん気だけでエリートになった努力の人である彼を明智は高く評価している。

 

「所長、気にすることはありませんよ。

 それと彼はどうするんですか? バイトとして雇うんですか?」

 

「そのつもりだよ。

 いつも通り、男性所員のメニューからこなしてもらうことになるから檜山くん任せた」

 

「よし、任された。ギッタギタにしてやるよ」

 

「ギッタギタは困るんだけどね?」

 

 やる気満々の檜山を注意しつつ、他所員からのいぶかしげな眼に気づいて視線で問いかける。

 

「しかし明智さんからの紹介とはいえ、あんな無礼な人を雇うなんて」

 

「そうよ、言いたい放題だったじゃない」

 

「そうかい? 良いことだと思うけどね。

 探偵だと聞いて、『俺の推理の力が役に立つ』なんて自惚れ屋より仕事を聞いてがっかりされた方がいい。子どもっていうのはアニメや小説みたいな推理劇に憧れるものだからね」

 

「そういえば彼は難事件を解決したとか・・・」

 

「明智さんから頼まれたのもその辺りが理由でね。

 事件なんか関わりたくないというなら、対処法や護身術は身に着けておいて損はない。それに話を聞く限りだと彼自身が無茶をすることも少なくはないらしいからね。子どもである彼が困った時に助けを求められる場所は多い方がいい、その場所になるぐらいの余裕は僕らにはある。

 そうだろう? 皆」

 

 所長の優しい問いかけに呆れたような溜息が多数漏れるが、揚羽が優しく微笑んだ。

 

「えぇそうですね、所長」

 

「ったく、そんなだからあちこちから面倒事を押し付けられるのよ。所長は」

 

「うぅ、それは皆にとても申し訳なく思ってるよ・・・」

 

 舘羽の忠告にも似た言葉に小城は小さくなるが、そんな小城を包む空気は優しかった。

 

 

 

 

 

「えっ、気持ち悪っ! あの明智がそんな心遣いとかありえねぇ!」

 

 率直な金田一の言葉に小城は苦笑いする。

 

「しかし、鍛えておいて損はなかったろう?」

 

「そーですけど! ていうか、俺が事件に会うこと前提ってその頃からかよ!」

 

「いやね、皆最初は信じていなかったんだよ?

 普通に生きてて殺人事件に会うことなんて然う然うないって、なのに二件三件と君が遭遇するうちにどうしてもね・・・」

 

「それに関しては俺の所為じゃないって言いたいけど、実際に遭遇してるから反論できねぇ!」

 

「その確率がもっと良いことにあたればいいのだけどね、宝くじとか」

 

 溜息まじりに意見を告げれば、金田一は勝手に凹んでいく。

 

「当たれよ、宝くじ! 今度買いに行くけども!!」

 

「それが次の事件への始まりだった・・・ 皆、用心しておこうね」

 

「流石に酷くないっすか! 所長!!」

 

 金田一をべちゃりと河原に放り、小城は河原に座り込む。

 

「おーい、そろそろ焼きそば始めんぞ」

 

「よーし、俺のナイアガラ食いを見せてやる!」

 

 駆けていく金田一を見送って、小城は溜息をついた。

 

 

 

 

「秘技、ナイアガラ食い!!」

 

 大皿に盛られた焼きそばを水を飲み込む滝つぼがごとく吸い込んでいき、次々と麺が皿から姿をけしていく。

 

「ちょっ、はじめ! 何、一人で食ってやがんだ!!」

 

「いい! いいですよ! 先輩!! 輝いてますよ!」

 

「そう、これこそが探偵の孫である金田一 一の姿なのです!」

 

「君達にとって金田一くんって何なんだろうね? 珍獣?」

 

 佐木兄弟の視線を疑問視しつつ、狩谷は止めない。

 

「はじめお兄ちゃん、もっともっと!」

 

「任せとけ、るりちゃん!」

 

「「人の可愛い(恋人)の声を間違えるな(んじゃねぇ)!!」」

 

「・・・揚羽、ちょっと変わってくれない?

 次、これ入れなきゃだから」

 

「ね、姉様、何を・・・?」

 

「なんでもないわよ、味に飽きないように少しスパイスを足してあげるだけだから。

 千家くん、クーラーボックスにアレ入ってたわよね?」

 

「はい! 刻んだハバネロとジョロキュアの準備は万端です!」

 

「皆が食べないようにしっかりと金田一くんに渡してあげてね」

 

「了解です!」

 

 元気よく返事をした千家によって、金田一が火を噴くのはこの五分後である。

 

 

 

「どーすんだよ、舘羽。お前のせいで鉄板使えねーじゃねぇか」

 

「悪かったわよ、でも所長がフライパンとか用意してくれてたし大丈夫でしょ」

 

「まぁ、もう〆だったからいいけどよ・・・ あれ、どうすんだよ」

 

「金田一くんだから大丈夫よ」

 

 先ほどの惨状によって、金田一は現在簡易テントの中で美雪に介抱されていた。

 

「もうはじめちゃん、いくら楽しいからってはしゃぎすぎよ?

 舘羽さんも怒っちゃったじゃない」

 

「あのさ、美雪。俺、嬉しかったんだよ」

 

 唐突な金田一の発言に美雪は目を丸くするが、言葉を遮らずに視線で先を促した。

 

「すげぇ嬉しいんだ。こうやって、皆と馬鹿やってはしゃいでられるのが」

 

「てんめぇー、はじめ!

 いつも人のデートお釈迦にしてやがるテメェが、なに幼馴染とイチャラブしてやがんだ! 一番下っ端が一番働け!」

 

「ブッブー! その理論で行くとお前が一番下っ端ですぅー、残念でした~!」

 

 クスクスと笑う金田一に千家の怒りが天元突破し、金田一を引きずり出す。

 

「いいから、て・つ・だ・え!」

 

 千家が金田一を連行したのち、女性陣が入れ替わりで入室すれば複雑そうな顔をした美雪を慰めた。

 

 

 





次は事件だよー、私の推しを殺しやがった事件だよ(怨嗟)
この世界では殺させねぇよ(#^ω^)
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