二話目ー!
テレビ局が用意したクルーザーにて、プロデューサーとディレクター、和田による説明が終わったところで、参加者紹介として全員が並び立つ。並び方は自然と小城が連れてきた人員と芸能関係者にわかれて向き合うよう形となっており、そのどちらとも知り合いである金田一と美雪は真ん中に立った。
「えっと・・・ まずは両方の知り合いである俺から自己紹介します!」
そう言ってわざとらしく手をあげて場を盛り上げる金田一にあちこちから笑いがうまれ、そのままの勢いで自己紹介が始まる。
「俺は不動高校 二年 金田一 一!
今はこっちの所長がやってる探偵事務所でアルバイトしてて、いろいろお世話になってます!」
「えっと、じゃぁ私も。私ははじめちゃんの幼馴染で、七瀬 美雪です」
二人の自己紹介にささやかな拍手を贈られ、次に自己紹介へと一歩踏み出したのは速水玲香だった。
「トップアイドルの速水 玲香で~す。宝探しとか凄いワクワクしてま~す」
ウィンクしながら元気に彼女が言えば、玲香の手をとって同じように楽しそうに夕凪はるかが続く。
「同じくトップアイドルの夕凪 はるかです!
絶海の孤島で金塊探し、しかもプロのトレジャーハンターさんと一緒なんて凄いドキドキしてます! よろしくお願いします!」
トップアイドルの二人の自己紹介が終わったところで視線が小城に向けられ、おもわず『僕でいいのかい?』と自分を指させば他の面々が頷いた。
「僕はトレジャーハンターの小城 拓也だ。いつもは探偵事務所の所長をやっていて、さっき紹介にあったように金田一くんのアルバイト先でもある。
今回、トレジャーハンターとしては金塊捜索の手伝いを。探偵としてはテレビ関係者の皆さんに危険がないように警護させてもらうことになるのでよろしく」
「警護って・・・ 何か危険なことがあるんですか?」
はるかの不安そうな問いかけに小城はゆっくり首を振る。
「そうそうないとは思うんだけど、念のためにね。
家主であった絵崎 蔵人はあの家で姿を消しているし、彼が錬金術師であったことを考えるとあの建物にも何か危ないことがないとも言い切れないんだ。まぁ、大人達による君達子どもへの過保護だと思って欲しい」
冗談のように告げればアイドル二人から心配そうな表情が消え、小城は連れてきた所員二人に挨拶を促した。
「所長の助手として参加します、狩谷 純です」
「オナジク、助手のマリア・フリードリヒです」
二人がごくごく簡単に済ませたところで、マリアの隣にいたえみりがカーテシーをしてみせた。
「小城さんを師事している、駆け出しのトレジャーハンター 美浦 えみりです。
得意なのはダウジングで、探し物は任せてください!」
「僕は赤門 秀明。小城さんと同じプロのトレジャーハンターとして活動していて、あちこちの宝を発見した実績を持っています。
フフッ、しかし建物一つしかない絶海の孤島で宝探し。今回はすぐ終わってしまいそうですね、小城さん」
ニヤリと笑う赤門に何人かが嫌そうな顔をするが、当然その筆頭は金田一である。現に今、小城に近づいて耳打ちする。
「所長~、もっとまともな人間いなかったんすか?
なんであんな外見から厭味ったらしさが溢れてる男を呼んじゃうんすか」
「君ねぇ、そうやってすぐに人を判断する癖はやめなさい」
呆れながら言っても金田一は秀明に対する視線はけして好意的ではなく、そんな目で見られれば当然彼も気づく。
「あぁ、君がいつきさんが話していた金田一耕助の孫の・・・ 小城さん、どうしてこんな知性の欠片もなさそうな子どもを所員に?」
「赤門くん・・・「んだと~! ワカメみたいな髪しやがって! どーせお前だって所長にくっついてたからお宝ゲットできたようなもんだろ!!」「なんだと!」
男二人が顔をくっつけて喧嘩を始めたので、小城は間に入って引きはがそうとする前に狩谷がニコニコしながら二人に拳を落とした。
「イッデ!」 「っ!? 何をするんだ!!」
「あーもう、うるさいなぁ。自己紹介の場で喧嘩する二人は仲良くデッキで喧嘩してなよ。
それとも僕が引き摺って連れていってあげようか?」
「だって狩谷さん!」 「このボーヤが失礼なことを・・・!」
まだ喧嘩を続けようとした二人の間で小城が手を叩き、視線を集める。
「まだ自己紹介が終わってないんだ、喧嘩はそのあと存分にやればいい。
――― ただし、こんな場所で喧嘩する馬鹿二人だと判断されるけどね」
ニコリと笑ってない目が向けられ、何故か二人仲良く汗をかきながら後退りをして沈黙する。
(こういう時は仲良く同じ行動をするんだよなぁ、人って不思議)
「まぁまぁ小城さん、そんな厳しい視線を向けなくていいんじゃない?
私の自己紹介なんて、大したことを言うわけじゃないんだから」
フチなしの眼鏡をかけたどこか知的な高校生ぐらいの女の子が笑いながら告げるものだから、金田一は慌てて両手を振り回して否定する。
「そそそそ、そんなことは! それで君は?」
「フフッ、私は絵崎 アリス」
「え? 絵崎ってまさか・・・」
「そう、私は絵崎 蔵人の娘なの。
もっとも父と母は籍を入れてなかったし、父も私を認知しなかったから公には親子ではないんだけどね。母もあんな父に関わってほしくなかったみたいだし」
肩を竦めながらそれっぽく語る彼女の経歴は真っ赤な嘘であり、その真の姿は変装した怪盗紳士である。
(流石怪盗、ペラペラと口先だけの嘘をつくのが得意だなぁ)
一周回って感心しながら笑顔を貼り付け、自己紹介から交流の場へと変わっていく。そんな中で親友であるはるかや金田一、美雪やえみりと仲良く話している姿に目を細めてから、不自然にならないように視線を逸らす。
「しかし、三億円相当の金塊ね・・・
まだまだ最近だから
「そりゃそうですよ、こんな場所で一人で暮らしているような人物のことなんて誰も調べません。
ましてや、天才物理学者が突然道を外したんでしょう? 金塊よりももっと面倒なものを見つけてしまいそうだし、金になるかはほぼ賭け、ロマンがあるかと言われると微妙じゃないですか」
「確かにね」
赤門とそんな話をしていれば、今回は留守番になったマガドリ様から小城を守るように言われているマリアが彼に紅茶を差し出してきて、狩谷もまるでボディガードのように小城の隣を陣取っていた。
(さて、どうなることやら)
いろいろと思考を巡らせつつ、マリアが入れてくれた紅茶を味わった。
ようやく到着した恋琴島で、事前に建物などの手入れもされているらしく数日ならば生活に困らないような設備が整えられていた。適当に部屋の割り振りが決められ、番組に使うために参加者女性陣によるカレー作りが行われている姿を小城は微笑ましく見守っていた。
(原作じゃ裏方が用意したレトルトカレーをそれっぽくやって出すだけだったけど、本当に手作りするところなんて本当に微笑ましいなぁ。まぁ番組的にはトップアイドルによる料理風景なんていいネタになるから、普通はシーンとして使うよなぁ)
「所長~、なーに女の子達見てニヤニヤしてんすか?」
「常に発情してる高校生のお前と小城さんを一緒にするな、クソガキ」
「お前には言ってねーんだよ! 赤門!!」
グルグルと牙をむき出して喧嘩する二人を放っておけば、狩谷がニコニコしながら見守りに参加する。
「料理の音っていいですよね」
「そうだね・・・」
しみじみといった狩谷に小城が頷けば、料理する女性陣達のおしゃべりが聞こえてくる。
「美雪ちゃん、上手だね。すごーい」
「そ、そうかな? でも、はるかちゃんも慣れてるじゃない」
「うん、お手伝いしてたし、たまに会うお兄ちゃんにも料理作ってあげたいからちょっとずつ練習したの」
「イイデスネ、そういうの。ステキです」
人数が多いため大きな鍋で役割分担をして調理しつつも話は盛り上がり、親友である怜香も話に参戦する。
「はるかちゃんはお兄さん大好きだもんね、お兄さんもとっても優しくて頭のいい人だし、よく自慢するぐらいだし」
「うん。事情があってずっと別々に暮らしてたから、やっと最近会えるようになったの。
歯科医師を目指して勉強してて、私と違って頭もすごくいいの」
ニコニコとしながら兄のことを語る彼女に美雪はおもわず驚いて、少し迷うように微妙な顔をするのでそれを察したはるかが『あっ』と声を漏らした。
「あ、ごめんなさい。
こんな言い方したらやっぱりいろいろ気になっちゃうよね」
「ううん、こっちこそごめんね。
人にはいろいろな事情があるってわかってるのについ気になっちゃって・・・」
手を動かしつつもお互いのことを気にして謝り合う二人を見て、えみりが溜息を零す。
「謝り合って落ち込んでも話が進まないですよ?
それなら詳しく話すか、話題を変えるかの二択じゃないですか?」
「美浦さん、かっこいい~。でもホント、その通り!
七瀬さんも気にしすぎだし、はるかちゃんも今はもうお兄さんのことを公式でも隠してないんだし、気にせず話しちゃっていいんじゃない?」
きっぱりと言い切るえみりに玲香が同意すれば、はるかも顔をパッと明るくし、申し訳なさそうにしていた美雪もおずおずと顔をあげる。
「あー、そういえばはるかちゃんって小さい頃にご両親を亡くしてる~とかどっかの週刊誌で見たことあるかも」
「え、えみりちゃん!」
お互いに気を使って話し出しそうもない二人にえみりが助け舟を出すように棒読みで言えば、狙い通り美雪が彼女を注意するように名を呼ぶ。
「ううん、いいのいいの。
それも全然隠してなくて、むしろお兄ちゃんと会いやすくするためにわざと情報を流してくれたの。
ほら、アイドルが男の人と会うとすぐにスキャンダルになっちゃうし、隠してるとかえって怪しく思われちゃうからってあたしが義父母育てられたこともあえて公開してるんだ」
「そうなんだよね。私達アイドルってある程度の情報は明かさないとかえって怪しまれちゃうっていうか、おもわぬところを指摘されてすぐに槍玉にあがっちゃうもんね~。
だから私も、お母さんが私が二歳の頃に亡くなってお父さんが一人で育ててくれたことを明かしてるし。だから、実は兄妹って憧れてるの。
いいなぁ~、私もはるかちゃんみたいな優しいお兄ちゃん欲しかったなぁ」
(なるほど、ね・・・ あれはこの子にそういう風に話してるのか。
確かにそう言えば、母を亡くしたショックと年齢で記憶が曖昧で誤魔化せる。あぁ、本当によく考えたもんだ)
玲香の何気ない一言に小城が静かに立ち上がり、その姿を見て金田一が首を傾げる。
「所長? 便所っすか?」
「あぁ、いや・・・ 完成するまでまだかかりそうだし、建物を一周してこようかと思ってね」
「あっ、私も行きまーす!
なんかこれだけ女性がいるから私が抜けても問題ないし、建物の中はインゴットだらけだからダウジングの感度が悪くて、外で試したいんです! 師匠、付き合ってもらってもいいですか?」
「そうだね、行こうか。建物の中は軽く見て回ったけど外周はまだだし、ちょうどいいね。
狩谷、君は金田一くんと一緒にここに居てくれ」
「いいですけど、何かあったらすぐにトランシーバーで連絡をください。駆け付けますから」
「そうするよ」
小城がえみりと共にダウジングをしに部屋から出ていけば、玲香はニコニコしながら味見の小皿を持って金田一に差し出した。
「はい金田一くん、味見。あーん」
小皿に少しのご飯とカレーがかかっていて小さなカレーライスをスプーンで口に運ばれ、金田一はそのまま口に入れて大袈裟に喜び出す。
「うっま!」
「それならよかった。
・・・あれ? 所長さんは?」
「所長ならさっき弟子のえみりちゃんとダウジングしに行ったよ。
なんかインゴットがいっぱいあるみたいだから、ちょっとした練習も兼ねてんじゃないかなぁ? 所長がどうかした?」
「ううん、なんでもないけど・・・ あの人ってなんだかはるかちゃんのお兄さんと雰囲気似てるから、妹さんがいるのかなってちょっと気になっちゃったの」
「あ、あー・・・ うん、家族については詳しくは知らないけど、すげぇ面倒見良い人だから兄貴みたいだよな」
金田一は少し迷ってから勝手に話すことはよくないと判断して、詳しく話すことはせずに玲香に同意する。
「それになんか変わった人だなって。
普通はアイドルと仕事一緒にしたらもっと話しかけたり、興味を示すものじゃない? 挨拶とか、話しかければ答えてくれるし、なんだか気を使って力仕事とかもしてくれるけど、ディレクターとかにもごますりとかご機嫌取りもしないし」
「所長、人脈広いから慣れてるのもあるかも。
なんか詳しくは知らねーけど大御所作家にも知り合いるし、テレビ業界にも知り合いがいるんだってさ」
「へー? そうなんだ。
でも、全然有名じゃないっていうか、名前出たりしないよね。なんだか不思議」
小城が出ていった扉をじっと見る怜香に金田一も不思議そうに首を傾げ、話しかけようとした瞬間、狩谷のトランシーバーから彼の声が響く。
『こちら小城、外周のマンホールで秘密の通路を発見。繰り返す、外周のマンホールで秘密の通路発見』
「了解。
とりあえず食事をしてから全員で調査になると思うので、一度戻ってきてくださいね。所長」
『了解。一度戻る』
応答が終わったところで、内容を聞いていた赤門が変な顔をしていた。
「あの人、本当にもってますね。
道具とかも一切持っていかなかったし、何か見つかるなんて思ってなかった様子なのに何かありそうな通路を発見するなんて」
「なんかえぇもんやとえぇけど、もし死体なんて出たらウチはともかくテレビ放映はあかんかもなぁ・・・ ちょっとディレクターと話してきますわ」
和田がディレクターと話をしに行き、小城とえみりが戻ってきて皆で仲良く食事となった。
そして食事を終え、大人数名に金田一を含めた面々で探索に向かえば、そこには館の主 絵崎 蔵人が屍蝋となって発見されたのだった。
ようやく会えた二人・・・ いや、こんだけ話数進んでやっとかよ。って感じですが。
原作では確か会ってない筈のえみりちゃんと玲香ちゃんですが、割と気が合う気がする。
どっちも割とこざっぱりしているというか、根に持ったりとかそういうのをしない気持ちよさがあるというか・・・