小城探偵事務所   作:無月

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独自解釈、原作改変、盛沢山。

四話目-!
今回の投稿のラストです、楽しんでください。

さぁー、次はあの事件かなー? それともあれかなー?


金塊探しツアー ④ (終了)

 長考する時間を取ったとはいえ、あまりにも突然すぎる金田一の言葉に全員が信じられないとばかりに視線が集まっており、その中で赤門だけが座った目で口にする。

 

「はぁ? これだから注目を浴びたいだけの考えなしの馬鹿は困る。

 小城さん、いくらあなたが子どもに甘いからって、こいつのことを甘やかしすぎなんじゃないですか?」

 

「赤門くんがそう言いたくなる気持ちもわかるんだけど、彼の推理を聞いてからでもいいんじゃないかな?」

 

「そーだそーだ! それともお前には、人の話を聞く余裕もないのかー!」

 

「金田一くん、君のそういうところが赤門くんや明智さんに嫌われる一因なんだからやめようね」

 

 人の背中に隠れながら赤門に向かって野次を飛ばす金田一を見下ろしながら呆れると、美雪がそんな金田一の耳を掴んで引っ張り出す。

 

「赤門さん、はじめちゃんが失礼なことを言ってごめんなさい。

 でも、言葉遣いも態度はこんなですけど、はじめちゃんは適当なことは絶対言ったりしません」

 

「七瀬さんの言う通り。金田一くんは面白いけど、バカなんかじゃないだから」

 

 頭を下げる美雪に対し、赤門から金田一を庇うように舌を出す玲香に苦笑いしか出てこず、助けを求めてマリアに視線を向けると彼女は何やら壁に向かって頷いている。

(なんだ? 俺の記憶違いじゃなければこの一件にオカルトなんて関わってない筈なんだが)

 最近の事件を考えると自分の記憶が曖昧になっている自覚があるため自信がないが、彼女が何かしているということは何かしら霊がいる可能性は高い。

(家主の霊だったら、かなり嫌だなぁ)

 昨日えみりと見つけてしまった屍蝋になっていた遺体を思い出してゾッとしつつ、午後には死体回収に剣持が率いる警察が来てくれることになってはいるが一度マリアと話すタイミングを作らなければならないだろう。

 

「ハッ、女二人に守られるなんていい御身分だ」

 

「赤門くんも流石に言い過ぎだよ。君のプライドはわかるけれど、それで無駄に敵を作るのはやめなさい。

 トレジャーハンター界隈では僕も含めて君もまだまだ若輩者だから失礼な物言いも見逃してもらっているけど、敵を作って得をすることは何もないんだ」

 

「ぐっ・・・」

 

 言葉が過ぎる赤門にもしっかり釘を刺したことでようやく静かになり、小城は気を取り直して金田一に視線を向けた。

 

「それで金田一くん、君の推理を教えてもらえるかな?」

 

「うっす!」

 

 元気に返事をした金田一が全員を引き連れて辿り着いたのは玲香が使っている部屋、七十九番の扉の前だった。

 

「んっとさ、最初から説明するとこの家の二階の部屋には全部番号がついてて、扉の形もかなり奇妙じゃん?」

 

 まるで板チョコレートのような形をした扉をコンコンと叩きながら、皆に説明を始めていく。

 

「金属を精製した塊であるインゴットを敷き詰めたような形だけど、こんなのどう見たって板チョコだよね」

 

 狩谷がそんなことを言えばはるかが楽しそうに笑い、えみりが首を傾げる。

 

「でも先輩、これが何かの金属の板なのは私のダウジングでわかってますけど、それだけじゃどれが金塊なんてわかりっこないんですよね?」

 

「そう、これだけじゃまだわからない。

 どの扉も金属のスタンダード色の銀だし、三十番(マンガン)の扉以外はインゴットがある上に全部に銀箔が貼ってある可能性もある」

 

 その時点で扉一枚にも湯水のように金が使われていることがわかるし、資料庫やキッチンがある一階とは違い、二階に何故これだけ部屋数が必要だったのかはわからないままであり、賢者の石を意味する図を模している部屋の形と化学の周期表を用いた番号は何故だったのか。

 趣味に生きる人間のこだわりや天才と呼ばれた人間の思考は他人には理解されない何かがあるものだ、と無理に納得するしかない。

(しかもこんだけ部屋数があるのに、家主が最期を迎えることになった部屋はよりにもよってマンホールを開けなきゃ入れない地下の部屋というね・・・)

 そんなことを考えていると金田一が扉全体の厚さの平均値と時価三億円相当の金塊の重さについて説明され、目の前にある七十九番の扉を再び叩いた。

 

「ちょっ・・・ ちょっと! それって・・・」

 

「そ! やっと気づいた?

 ドアの幅は一メートル、高さは二メートル、厚さは二・五センチ。それにさらに純金の密度である十九・三二を掛け合わせると」

 

 金田一が皆の前で計算しながら出てきた数字はこの島にあるとされる金塊の同じ重さとなり、アリス(怪盗紳士)が目の色を変える。

 

「そ・・・ それじゃぁ、まさか!」

 

「ああ、この部屋番号七十九番の扉そのものが、三億円相当の金塊なんだ」

 

 金田一の宣言によって一瞬の沈黙が降り、そのすぐ後に爆発的な歓声があがった。

 

 

 

 

 企画の目的だった金塊が見つかったことにより、金田一を中心にして昼間から飲めや歌えやの大騒ぎ。

 その騒がしさから逃げるように屋敷の外に出ていれば、追いかけてきたらしいマリアがグラスを差し出してきた。

 

「オツカレサマデス、小城さん」

 

「僕は何もしてないけどね。

 マリアくんは女の子達を見守ってくれてありがとう、僕ら男だけじゃどうしても限界があるから助かったよ」

 

「イイエ、大したことはしていませんから」

 

 そう言って互いに笑い合い、グラスをぶつけ合って労をねぎらう。

 

「狩谷はまだ絶賛仕事中なのが申し訳ないけどね」

 

「フフッそうですね、剣持サンもいますから気持ち的にはだいぶ楽だとは思いマスヨ。

 デスガ・・・ 今だけは二人っきりで」

 

 風を受けて輝くマリアの淡い髪を見ながら、何も語らずに二人でぼんやりと海を眺めていると、ふと金塊が見つかる前のマリアの様子を思い出して聞いてみることにした。

 

「そういえば金塊探しが始まる前に誰かと話しているようだったけど、聞いてもいいかな?」

 

「見ていらしたんですね」

 

 いつもの不自然な日本語ではなく発音を流暢なものに変えたことに小城が体を固くすると、安心させるように微笑んだ。

 

「小城さんが心配なさるようなことは何もありませんよ、ただこの館と少し話していただけです」

 

 マリア曰く、一つ一つの家には出来た瞬間から命が宿っており、相応の年月によって姿を現すことが出来るのだという。そして、マガドリ様の眷属となってマリアの力が強くなったこともあって彼らとの会話は出来るようになっており、あくまで建物である彼らの視点からの話を聞くことが出来るのだという。

 

「といっても、この子が知っていたことはそう多くありませんでした。

 自分達が何で作られているかなんて家妖精(私達)には関心がないことですし、人間基準のお宝なんて訳がわかりませんから。

 この子が話してくれたのは、ただ熱心に錬金術の研究をしていた家主がこの家を出てから姿が見えなくなったことだけ」

 

 マリアは悲しげな表情を誤魔化すように海を見つめ、静かに目を閉じる。

 

「この子にも・・・ あの日の私のような長い孤独が始まってしまうのですね」

 

「マリアくん・・・」

 

 彼女を慰める言葉をかけようとした瞬間、どこからか突然ヘリの音が響いて、建物の上空で高度を維持していた。

(ヘリって・・・ まさか!)

 

「マリアくん、行こう!」

 

「ハイッ!」

 

 皆がいる部屋に向かえば既にヘリの音に気づいて、既に何名かが屋上に向かったらしい。

 だが、絶対安全であるべきトップアイドルの一人の玲香の姿もなければ、プロデューサーやカメラマンなどのテレビ関係者のほとんどがおらず、室内残っていたのは和田とはるか、えみりだった。当然、アリス(怪盗紳士)はいない。

(怪盗紳士はともかく、なんであの子がいない!? というか! 美雪ちゃんもなんで金田一くんが行くからって危険に飛び込んでいくのかなぁ!?)

 

「マリアくん、君はここに残ってくれ! 僕は屋上に行くから!!」

 

「っ! ワカリマシタ! ドウカご無理はなさらずに!」

 

 一瞬、マリアは拒否しようとしたが狩谷がいること、剣持が既に到着していることで小城を送り出した。

 階段を駆け上って屋上に辿り着けば男性陣がヘリがいる上空を見上げており、警戒態勢に入っていた。

 

「あのヘリはなんだ!?」

 

「所長! 一体何が起こってるんすか!?」

 

「小城、どこ行ってたんだ!」

 

 現状把握をしようと小城にも情報を求めて駆け寄る金田一と剣持ではなく、何故かフロアランプを槍のように構えている狩谷の背後にいる美雪と玲香を見て、ひとまず胸を撫で下ろした。

 

「わかりません! ですが・・・ 『こんなところまでお勤め御苦労様、剣持警部』

 

 屋上にある部屋の屋根の上に立っているアリス(怪盗紳士)は、どうやって運んだかもわからないあの金の扉に乗っていた。

 

「アリスさん!? なんでそんなとこに・・・ っていうか、どうして扉を」

 

「というかお前、どうして俺のことを知ってるんだ?! お前、一体何者だ!」

 

 ヘリの音に負けない二人の声に彼女は楽しそうに笑い、顔に手をかけてかぶっていた何かをはがしていく。だが、彼女の顔は逆光で見えず、何者かもわからないままいつの間にか剣持の胸ポケットに入っていたトランシーバーから声が響いていた。

 

「お前はまさか、怪盗紳士か!?」

 

「怪盗紳士って・・・! なんで巷を騒がしてる怪盗がこんなとこにいんだよ!」

 

 剣持の言葉に驚く金田一に、怪盗紳士はむしろ不思議そうに首を傾げている。

 

『あら? 怪盗がお宝のある所にいることの何が不自然なの?

 金田一くん、あなたのおかげでこの島のお宝は回収することが出来たから、本当に助かったわ~』

 

「お、俺のことを体よく利用しやがったのかよ!?」

 

『別に私はあなたじゃなくてもよかったのよ?

 そこに居る頭もよくて、行動力があることで有名な小城探偵でもかまわなかったわ』

 

 話しながらもヘリは彼女に向かってロープを降ろし、彼女は見ることもなくロープを掴んで小城へとちらりと視線を向けた。

 

『でも、その人ってばすっごくつまらないのよね。せっかく可愛く変装して、知的にも装っていたっていうのに私には一切近づかないし、この企画を子どもの遊びとばかりに傍観に徹してるんだもの。

 でも金田一くん、あなたはそうじゃない。

 あなたは剣持警部と同じで、私の手の中で楽しく踊ってくれる素敵な遊び相手になってくれそう』

 

「はぁ!? 遊び相手ってなんでだよ!?」

 

『私、あなたのことが気に入ったの。これからもよろしくね』

 

 語尾にハートがついていそうな彼女の言葉に金田一は意味がわからないと叫ぶが、小城はしらけた目で怪盗紳士を見上げていた。

 

(あーぁ・・・ 金田一くんが怪盗紳士に目をつけられる。

 まぁ怪盗紳士は人間性はクソだけど殺人はしないから危険度は地獄の傀儡師よりも低いけど、用心するに越したことはないかな)

 

『それじゃぁ皆さん、私のために金塊を見つけてくれてどうもありがとう。

 機会があったら、また会い(遊び)ましょうね』

 

 ヘリに回収されていく怪盗紳士に、隣にいる狩谷が笑いながらハンドサインをしてくる。

 

『所長、アレ(・・)落としましょうか?』

『物だけを狙えるかい?』

『勿論』

『なら、落としていいよ(やってよし)

 

 小城のゴーサインを確認した狩谷は持っていたフロアランプの電球を叩き割り、ヘリに吊られている扉目掛けてほぼ槍となったフロアランプを投擲する。

 

『!?』

 

 狩谷の行動に小城を除いた面々が驚愕するが、その槍がヘリによって生じている筈の風圧すら物ともせずにまるで吸い込まれるように扉を固定していた器具を破壊し、落下させた。

 

『はぁ!?』

 

 驚きっぱなしの他の面々を尻目に、小城はもう笑うしかなかった。

(いや咄嗟にOK出したのは僕だけど、本当に落とすとは思わなかった)

 やはりこの世界の犯人達の身体能力はどこかおかしいことを再認識しながら、扉が館の玄関前に落ちたことを確認する。

 

「さて、怪盗紳士の作戦失敗に乾杯しようか」

 

「そ、そーっすね」

 

 気を取り直して小城がそんなことを言えば、金田一の返事同様に場に微妙な空気が漂いながらも、誰もが素直に従うことしか出来なかった。

 

 

 だが、今の状況に戸惑っているのは、何も金塊を奪い返した側である金田一達だけではなかった。

 

 

 既にヘリに中にいたため怪我などはすることがなかったが、見事金塊を奪い返された怪盗紳士は必死に表情を取り繕っていた。

 

「最後の最後で面白いことしてくれるじゃない、小城さんったら」

 

 そう言いながら仲間からお茶を受け取っていると、彼女は目の前にいた人物を見て硬直する。

 

「どうしてあなたがここにいるのかしら? 地獄の傀儡師さん」

 

 そこに居たのは彼女の仲間ではなく、本来いる筈もない地獄の傀儡師(高遠 遙一)だった。

 

「どうしてなんて聞かなくてもわかっているでしょう?

 あなたが私の物に手を出しているので、警告をしに来たんですよ」

 

「あなたの物?

 まさかあの金塊をあなたが狙ってたなんてジョークを言うんじゃないでしょうね、あなたは金塊なんて(あんな物)興味ないでしょう?」

 

 殺人鬼である彼の突然の来訪に対してどうにかいつもの通りの自分を取り繕うが、彼はその場にいる全員を牽制するようにどこからか出したナイフを回しだす。

 

「本当にわかりませんか?」

 

「っ!

 わかったわ、あなたの大好きな小城さんには手を出さない。それでいいんでしょう?」

 

「別に関わることはかまいませんよ、あなたのお遊びなんて私がそうであるように彼にとっても取るに足らないことですから。

 ですが、彼を連れ出したやり方はいただけない。

 彼の逆鱗は、あなたのお遊びのためなどに気軽に触れていいものではありません」

 

 笑顔を貼り付けた彼の目の奥は笑っておらず、回していたナイフの刃を舐めてみせる。

 

「小城くんはいわばもう一人の私であり、金田一くんは私と向き合う存在 ――― わかりますか?

 どちらも私のものです、怪盗風情が雑に扱っていいものではないんですよ」

 

「あらあら、あの二人はご愁傷様。

 よりにもよって殺人鬼であるあなたに目をつけられているなんて、なんて運がないのかしら?」

 

「あの二人には(殺人鬼)に目をかけられるだけの何かがある、ということですよ」

 

 わざとらしく笑う怪盗紳士に対し高遠は貼り付けた笑顔のまま答え、彼の答えに彼女の表情がわずかに固まった。

 

「わかったわよ、これからはあの二人とはほどほどに遊ぶわ。

 深く踏み込まないし、逆鱗に触れるようなこともしないと約束しましょう」

 

「わかっていただけて幸いです。

 私もわざわざあなた達を潰すために新しい舞台を用意するのは余りにも手間なので」

 

 もう用は終わったとばかりにヘリの扉を開け、その身を空へと躍らせた。

 とても人間とは思えない行動なのだが、先ほどフロアランプで(別の)扉を撃ち落と(人外行動)されたばかりでもはや驚く余裕すらない。

 

「それに小城さんは依頼通り『見つける』ことは手伝ってくれたけど、私に持ち帰らせる気はなかったみたいだしね」

 

「どういうことです?」

 

 仲間の一人の問いかけに、彼女は肩を竦めてこたえた。

 

「だってあの扉、金塊じゃないもの」

 

「えっ!? どういうことですか!」

 

「多分彼はこの企画が始まる前に島を訪れた段階であの館の謎を解いて、私の行動を全部見透かして扉を入れ替えた。

 その上で何食わぬ顔で参加し、参加者全員にあの扉が金塊だと信じさせて、誰にでもわかる形で怪盗紳士()に黒星をつける」

 

 自分主導で始めたはずのお遊びを見事に乗っ取られ、欲しかったお宝も手に入らず、それどころか偽物のお宝すらも手に入りそうな所で奪われた。さらに駄目押しとばかりに地獄の傀儡師からの警告。

 怪盗紳士は今回、あらゆる意味で完全敗北させられたのだ。

 

「はぁ~、もう完全にしてやられたわ・・・」

 

 彼の逆鱗に触れたことに激しく後悔し、ヘリの天井を見上げるように大の字になって寝そべるのだった。

 

 





しっかり怒ってた小城さんは、怪盗紳士に黒星をつけることにしました(笑)
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