小城探偵事務所   作:無月

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独自解釈、原作改変、盛沢山。

二話構成なので、明日の朝六時にも投稿します。
なんとか書きあがったので投稿ー。

ぎりぎり日曜! ただ来週は厳しいかもしれない、いつもは仕事じゃない日が仕事なので描くのに集中できる日がないかも。


首吊り学園殺人事件 (前編)

 金塊探しツアーから数日が経過し、怪盗紳士からの報酬と共に、運び出した時には既に偽物だとわかっていた金塊についてと彼女の元に現れた想定外の人物への苦情が書かれた手紙が届いていた。

(なんだ、金塊についてはわかった上で盗んだのか。わざわざ工夫を凝らして重量まで調整したのに、その方がより滑稽だったのに少し残念。『私に偽物を掴ませようとするなんて、仕返しのやり方が陰湿じゃない?』とか、あんな方法で人を強制参加させようとしたあいつにだけは絶対言われたくない)

 手紙を目で追っていると文章の中に突然現れた想定外の人物に少々驚き、軽い頭痛を覚えて右手で頭を支えた。

(『地獄の傀儡師が私のところに来て、警告していったんだけど?』に関しては知らん。頼んでないし、別に友達でもなんでもないんだわ。むしろ勝手に執着されていつの間にか自分に関すること全てを把握しているヤバいストーカーでこっちも被害者で、そんな奴の行動なんて把握出来るか!)

 小城としては仕返しとしてしっかり怪盗紳士に黒星を与え、企画も表立っては成功。番組のスタジオでは鑑定士が偽物の三億円の金塊を鑑定した結果、丁寧に作られた偽物だということが証明され、三億円の金塊の噂も家主であった物理学者が意図的に広め、金塊を欲しがった愚か者達を罠にはめるためのものだったのではないかということに落ち着いた。最終的には今回の企画で出会った仲間達との交流こそがかけがえのない宝と締めくくられ、番組内や放映されなかった範囲で撮られた写真などはそれぞれに記念品としてフォトブックにまとめられて送付されていた。

 そして、『あの怪盗紳士すらも騙してみせた』ということになった絵崎蔵人の名は話題にあがり、彼の生涯や物理学者として残した功績などが特集が組まれているのは何とも不思議な気分だ。

(しかし、家主の名前がここまで話題にあがることは想定外だったなぁ・・・

 あの(偽物)を設置するのに都合が良かったとはいえ、あの島を買ったのは結果的に正解だった)

 話題にあがって面白半分に他の誰かに所有されたり、島を荒らされることは本意ではない。

 だが、マリアの言葉からあの館の今後をどうするかを迷っているのもまた事実だった。

(問題はあの館の今後、か・・・

 いっそのこと、話題になってるのを利用して観光地みたいにすればいいのかな?)

 手間は手間だがあり余る資金を使うのはちょうどいいし、どの地方にもある偉人が住んでいた邸宅のようなに取り扱えば館を改装したりする必要もない。一般的な観光地ならば利益が上がらないことや、金を無駄に消費するだけに過ぎないこんなことはしないのだろうがあくまで館の維持などが目的なら理由はなんだっていい。

(年に数回のツアー的みたいなものにすれば、そこまで負担もないだろうしなぁ)

 そんなことを考えていると突然マガドリ様が小城の正面に降り立ち、( ・´-・`)『島、聖域にしたろか?』とばかりの得意げな顔をする。

(得意げな顔してるのはわかるし多分善意で何かをしてくれるようとしてるのもわかるのに、簡単にイエスとか答えちゃいけない予感がするのはなんでだ・・・!?)

 完全に言葉を理解していない小城が何かを察して冷や汗を流しつつ誤魔化すように撫でていると、マガドリ様に好意と敬意を払っている揚羽は微笑み、自身の神が自分の同胞に等しい存在まで守ろうとしてくれていることにさらに深く忠誠心を寄せていくマリアもまた笑んでいた。

 

「そういやさ、千家。

 お前、利緒ちゃんとどこまで進んでんの?」

 

「ブホッ!」

 

「うわっ!? きったねーな、思いっきり吹きかけることないじゃん」

 

 バイト中の雑談として金田一と千家が雑談を始めたが、その話題があまりにも唐突且つ直球な質問だったからか千家が飲んでいたお茶を金田一の顔面に向かって思いっ切り吹きかけた。

 

「お、まえが・・・! 突然、変なこと、言うから・・・ だろ!」

 

 千家は千家で咳き込みながらも必死に息を整えているが、金田一は反省する様子を見せるどころかいやらしい顔でにんまりと笑った。

 

「え~? 何が~? それともお前、なんかいやらしい想像でもしちゃったとか? 檜山さんみたいなことしちゃってんのかぁ?」

 

 うりうりとばかりに脇腹を突く金田一に千家が嫌そうな顔をしつつ、溜息をついた。

 

「それ、檜山さんがいないから殴られてないだけだかんな?

 俺はもう利緒との将来だって考えてて、大学についてももうざっくりとは決めてるよ」

 

「え? そっち?」

 

 話題がおもわぬ方向に舵をきられていることに戸惑う金田一を放置し、千家はさらに言葉を続けた。

 

「はじめ、俺さ、医者になる」

 

「医者って・・・ それって利緒ちゃんが体弱かったとかに関係してんの?」

 

「あぁ。利緒さ、結構でっかい病気してて、さらにその病院のせいで治る病気も治らないようにされるとこだったんだ。

 医者を信じられないって怖いなって思ったし、考えたくないけど・・・ もしまた利緒になんかあった時に何も出来ないって嫌だなとも思った」

 

 何を思い出したのか、千家は覚悟をを決めたように拳を固く握る。

 

「本当は高校卒業後にはすぐ結婚したいし、この事務所も好きだし、小城さんには返しきれない恩もあるから辞めたくはないけどさ。

 医者になって、あの時の利緒みたいに辛い思いをしてる人達を助けたいんだ」

 

 小学生からの幼馴染が様々なことを考えた末に決めた将来の夢を聞いた金田一は驚いた顔をするが、すぐに千家の首に腕を回して明るく笑う。

 

「いいじゃん、いいじゃん! 千家ならぜってぇなれるって!!

 しかもあれだろ? お前、元々成績よかったのに所長とか徹さんに勉強見てもらうようになってさらに成績あがってだろ? 医大の一番頭いいところも余裕なんじゃね?」

 

「バーカ、そんな簡単に行くかよ。でも、やれるだけやってレベルの高いところを選ぶつもりではいるよ。それに・・・」

 

 肩を組んできた金田一の振り払いもせずに、千家も笑いながらも金田一の腹部をちらりと見た。

 

「事件に巻き込まれがちで、生傷絶えなさそうな幼馴染も心配だしな」

 

「千家・・・」

 

 金田一はまた驚いた顔して、すぐにそっぽを向いて鼻を啜って、誤魔化すように目をこすった。

 

「ったく、他人のことばっかかよ?」

 

「そりゃこんだけ人のために動く人に囲まれてたらそうなるって」

 

 同じ室内ということもあって二人のやり取りを聞いていた小城は、それとは真逆な気持ちされていた手紙を握りつぶしてからポケットに放り込む。

 

「でも所長達だって仕事があるから、あんまり俺の家庭教師みたいなことをしてもらうのもさ・・・ ていうか、東大卒のエリートである所長を座学って理由つけてタダどころか、バイト代貰って勉強教えてもらってんのも申し訳なさすぎるし、予備校通おうか迷ってるんだ」

 

「へぇ? 予備校の目星はもうつけてんの?

 つーか俺の方がバカなこと考えると、予備校とか聞きつけた母さんが千家がいるってだけで俺も放り込みそうでこえーな・・・」

 

 が、微笑ましく思っていた会話から『予備校』が出た時点で、小城の顔から微笑みが消える。

(ちょっと待て。

 二人の学力が上がってたから問題ないと思ったし、彼女(森 宇多子)が何事もなくカフェに来てたから終わってるもんだとばかり思ってたんだけど、まさかまだ首吊り学園殺人事件って起きてないのか?)

 番組からの感謝状やら、都築から送られてきた絵崎 蔵人の生涯を語るドキュメンタリーにあの島を使いたい要請などの書類に目を通しつつ、内心で冷や汗が噴き出た。

 

「予備校ねー? 所長って独学で東大入ったのよね、勉強方法ってどうしてたの?

 兄さんはひたすら努力したとしか言わないから、あの子達の参考にならないし。狩谷はあんなに頭の回転早いのに実は高卒だし」

 

「えっ!? 狩谷さんって高卒なんですか!?」

 

「え、そうなんすか!?」

 

 舘羽が小城に向けた質問に含まれた内容に千家と金田一が席から立ち上がるほど驚くが、その姿に小城はフッと笑った。

 

「そんなに驚くことかい?

 利緒ちゃんみたいに高校に行かずに働いてる子だっているんだ、高卒だって珍しくはないだろう」

 

(まぁ実際に高校になんて通ってなくて、公認で得た資格だけどね)

 しかしわざわざ公認であることを伝える必要はないし、仮に話すとしてもそれは本人の口からであるべきと思い、全ては語らない。

 

「それに僕みたいに東大出たのにこんな変わった仕事をしてる人間もいるしね。学歴なんて何の保証にも、あてにもならないことを僕自身が証明してしまってる。

 その内、東大関係者に『東大法学部の恥さらしめ!』とか言われながら、背後から刺されそうで怖いなぁ」

 

 自嘲するように笑っていれば、『何言ってんだ、この人』という視線が不在の狩谷と檜山以外の数だけ突き刺さった。若干気まずくなった空気から目を逸らしながら咳払いし、気を取り直す。

 

「正直、僕の勉強法もあてにはならないと思うよ。勉強以外はほとんど何もしてこなかったに等しいし、僕は他の人といると集中できないというのもあってとにかく静かな場所で参考書やら問題集を開いていたんだ」

 

「完全に実力で東大に受かったってことじゃないですか、それ・・・」

 

 若干引き気味の千家に笑顔を向けていると事務所の扉が叩かれたことで、受付であるマリアが動いた。

 

「どうぞ」

 

 扉を開いた先にいたのは二人の少女、もはやカフェどころか事務所の常連になりつつあるるい子と彼女の友人だと紹介された森 宇多子が立っていた。

 

「時間通りだね、二人とも。今日はどうしたのかな?」

 

 応接机に二人が座ったのを確認してから小城も座り、揚羽がお茶と菓子を並べれば準備万端であり、金田一と千家も自分の席からチラチラと気にしている。

 

「この子が通ってる予備校で問題があったみたいなのよ」

 

「フフッ・・・ フフフフ、本当にこの探偵事務所は興味深いわね。ルイ。

 事務所に入っただけで感じる神の気配、そして彼女は眷属? それにこれは古い城の香り・・・ 日本ではないわ、欧州かしら?」

 

 るい子が彼女に説明を促そうとするが宇多子は何が面白いのかクスクスを笑いだし、小城の肩に映っていたマガドリ様とマリアへと意味深な視線を向け、マリアは怯えるように数歩下がってしまう。

 

「ウタ、自重しなさい。マリアさんが怯えているわ。

 あなたが何を感じて、どう判断しているかは聞いているけど、付き合いの長い私とミホすら半信半疑だわ」

 

「あら? ルイ。あなたらしくないわね。周りがどう思うなんて関係ないでしょう?」

 

「同意見だけど、あなたのリアクションは私とミホに比べるとオーバーなのよ」

 

 呆れていることを態度と溜息で示し、『早く小城さんに説明しなさい』と手で示するい子に宇多子は小城に向かってニッコリと笑う。

 

「ごめんなさいね、小城さん。実は私が通っている予備校 四ノ倉学園というのだけど・・・ そこは多くの生徒が入学し希望校に進学する一方で、受験ノイローゼによって年に何人もの生徒が命を絶っているの。

 あなたには、あの学園で命を落とした生徒の魂を解放させてもらいたいの」

 

「えっと・・・ 僕は探偵であって、そういう霊的な分野は専門外なんだけど」

 

 困った顔でそう告げると、宇多子は不思議そうに首を傾げる。

 

「何をおっしゃっているのかしら?

 あなたなら可能でしょう、そちらの荒ぶる神を守り神とするほどの力を持っているのだから」

 

(この子、どこまで知ってるんだ!?)

 るい子どころか磨陣村の出身であるさつきですら、マガドリ様について知りようがない筈。というか、事務所に住み着かれている小城ですらマガドリ様が奉遷した理由は推測でしかなく、何を気に入ってここを次の棲み処にしたのかもわかっていないのが現状だ。

 だというのに、何も知らない宇多子は全てを見通しているとばかりに発言し、マガドリ様とはっきり目を合わせている。

 

「僕はそんな力はないし、この子に対しても特別なことは何もしてないよ。

 それに正直言うとこの子がどうしてここに居つくようになったのかも、僕にはよくわかってないんだ。ここに居るなら穏やかで幸せな気持ちであってほしいとは思っているけど、それはこの子に限ったことじゃないしね」

 

「能力を自覚していないのね・・・ いえ、自覚していないからこそ神に愛されてるのかもしれない・・・」

 

 何やらブツブツと言い出す宇多子に戸惑い、助けを求めるようにるい子に視線を向ければ彼女も肩を竦めていた。

 

「霊がいるかどうかはともかく、四ノ倉学園で毎年のように自殺者が出ているのは事実よ。

 ウタ、霊の件以外にも話すことがあるでしょう?」

 

「あぁ、そうだったわね・・・ あの学園でね、また死の予感がするのよ。

 それもあの学園でよくある自殺なんかじゃない。一人の死から次々と死を呼ぶようなことが起こってしまうような、ドミノ倒しような死が始まりそうな予感がね」

 

 視線だけを動かして千家と金田一を見て、彼女は首を傾げる。

 

「霊達が囁くのよ、『今ならまだ間に合う』『彼は死なずに済む』とね。

 だから小城さん、あなたにはあの学園の自殺者達について、探偵として調べてほしいの」

 

(なんで初めからそう言わないんだ、このホラー娘・・・)

 頭を抱えたくなる衝動にかられつつ、彼女の言葉に引っ掛かりを覚える。

 

「『今ならまだ間に合う』? どういうことだい?」

 

「聞こえている私自身、よくわかってないわ。向こうから一方的に、一部しか聞こえてこない彼らの声を問い返すことも出来ないから。

 そうでなくともあの学園は一度しっかり調べた方がいい。年に何人もの自殺者が出ているのは異常だもの」

 

 彼女の発言に思わず溜息が零れ、天井を仰いだ。

(この世界の大人は、何をしてるんだ・・・)

 怒り、呆れ、悲しみ、絶望、様々な感情が巡り、目の前にいる二人の少女に向ける。

 

「君達子どもにこんなことを依頼させるような大人ばかりである事実が、僕は一人の大人としてとても恥ずかしいよ」

 

 そして、小城は二人に向かって頭を下げる。

 

「本来なら僕ら大人こそが問題として認識し、解決に動かなければならないことだ。

 本当にすまない、君の依頼を確かに受けたよ」

 

 頭を下げた小城に宇多子は目を丸くし、るい子はそんな幼馴染を見て得意げな顔をする。

 

「ウタ、彼はこういう大人なのよ」

 

「・・・えぇ、ルイが気に入った理由がわかった気がするわ。

 頭をあげて、小城さん。あなたが私達に頭を下げるようなことではないし、この依頼だって私達子どもの戯言と笑ってもおかしくない。でも、あなたは笑わずに受けてくださるのね」

 

 顔をあげた小城が見たのは、原作の奇行ばかりで彼女ではない。

 まっすぐとこちらに視線を合わせ、どこ大人びていながらも年相応笑う彼女だった。

 

「あなたは信頼に足る大人だわ、小城さん。

 どうか、あの学園を変えて頂戴」

 

 





宇多子さんの独特な感じも好き・・・ 他にあんまりいないキャラというか、全体像がつかめないからこそ知るのが楽しい✌('ω'✌ )三✌('ω')✌三( ✌'ω')✌
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