小城探偵事務所   作:無月

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独自解釈、原作改変、盛沢山。

一話にする『つもりでした』。ダイジェストにする『つもりでした』・・・
書き出したら、出来ませんでした!
金田一って名言多いからどうしても書きたくて、あのシーンとかどうしても出したくて、長くなった結果、四話構成です。なんで小城側より長くなってんだよ!
なので、予約投稿をして日曜日まで連続投稿になりました。明日からはいつも通り、朝の六時に投稿されます。

さぁー、楽しんでください。


金田一 露西亜館にて ① (開始)

 いつきを経由した宝田 光二からの何故か名指しの依頼を受け、金田一は今、小城と入れ違いとなる形で北海道の奥地にある湖畔に立っていた。

 

「しっかし、変な形の屋根だなぁ」

 

 湖の中央にあるタマネギの形をした屋根をした館を一緒に来た美雪と佐木兄弟と見て、素直な感想を口にしていると美雪に軽く頭を叩かれる。

 

「もう! はじめちゃんったら、失礼なこと言わないの!

 ああいうのはロシア風建築って言って、歴史あるものなのよ」

 

「よくご存じですね」

 

 美雪の言葉に宝田は感心したように建物の説明をするが、金田一は適当に聞き流していると館から迎えに来た執事の田代によって露西亜館へと入って行った。

 

「やぁやぁ! よくいらっしゃいました!

 おや? そちらの可愛いお嬢さんは?」

 

 が、館で出迎えたのは酒が入ったグラスを持った酔っ払いのジジイで、美雪はそのジジイを見て、すぐに彼がミステリー評論家の神明 忠治だと気づいた。

(こいつ、なーんでドマイナーな評論家のことまで知ってんだろ?)

 

「ははぁ~、ひょっとして例の助っ人がこの美少女かね?」

 

 雑学も含めて知識の幅の広い幼馴染を見つつ、女子高生に名前が知られていることに気を良くしたらしいジジイは酒臭い息を吹きかける距離まで近寄ってきていた。

 

「い、いえ! それはあたしじゃなくて・・・ 「そう、俺こそがかの有名な小城探偵事務所の秘蔵っ子、金田一 一だ!」

 

 得意げな顔をしながら美雪とジジイの間に割って入ることで二人の間に強制的に距離を作りつつ、金田一の言葉に神明はおかしな顔をする。

 

「はぁ? 小城探偵事務所?」

 

「はじめちゃんったらもう! それが自慢なのはわかるけど、そっちじゃない伝わらないでしょ!

 彼はかの名探偵 金田一耕助の孫なんですよ!」

 

「へぇ、それは驚いたな!」

 

 美雪の言葉に少し驚いた様子でこちらに近づいてきた男は、動きやすい格好をした金田一達とそう歳の変わらなそうな青年であり、さわやかな笑顔を向けていた。

 

「金田一耕助といえば、戦後まもなく起きた犯罪史上に残る大事件 獄門島の連続殺人を解決に導いた不世出の名探偵。それに小城探偵事務所と言えば探偵としては無名でありながら、つい最近あった長野のバルト城での事件や金塊ツアーでも関与していた事務所だ。

 そんな君と謎解き合戦が出来るとは光栄だね」

 

「あんたは?」

 

「僕は犬飼 高志。

 山之内の先生の隣の家に住んでいたのが縁で、親戚同様のお付き合いをさせていただきました。今回はどういうわけか遺産相続人の候補者に選ばれましてね。

 よろしく、金田一くん!」

 

「はぁ・・・ どうも」

 

 どこかテンション高い犬飼に置いてきぼりにされていると、そんな金田一に気づくこともなく犬飼はそのままの今の状況が山之内の初期の傑作である『露西亜人形殺人事件』と同じだと語り、金田一が作品を読んでいないとわかればどこか馬鹿にしたように小さく笑う。

 

「いや、これは想像してたのとイメージがだいぶ違うなぁ。でも、君のお祖父様も一見飄々とした方だったようだし・・・ 油断は禁物だ。

 ねぇ、神明先生!」

 

「フンッ、相変わらず素人探偵気取りだな!」

 

 金田一の態度と犬飼に対して気分が悪いとばかりに言い捨て、田代を呼びつけてブランデーを持ってくるように指示する彼を犬飼と宝田は呆れた様子で見送った。

 

「最近、酒の量が増えておられるようで評論の原稿も以前のようなキレがなくなっていて、単なる悪口で終わっているようなものも多くなってきましたね」

 

「離婚がよっぽど堪えたんじゃない?」

 

 二人のそんな会話に煙草を吸いながら参加してきたのは、目を引く花柄の体のラインを露にするタイトワンピースと派手な化粧をした女性であり、正直キャバ嬢にしか見えない彼女はこの露西亜館に酷く不似合いである。

 

「もっとも、その離婚も身から出たサビだけど・・・」

 

「梅園先生!」

 

 その姿と名前を聞いて美雪は感動したように彼女がある作品で有名になったミステリー作家であることを語り、佐木二号が彼女の格好をバッチリ撮影しており、梅園に嫌悪されていた。

 

「あ、ひょっとして梅園先生も遺産相続の候補者なんですか?」

 

「らしいわね、山之内先生は私の師匠みたいなものだから。

 もっとも遺産なんかなくても、あたしは自分の稼ぎだけで充分潤ってますけど!」

 

 遺産など興味ないとばかりの梅園に対して宝田はこっそりと金田一に彼女が一発屋であり、処女作以降はまったくミステリーになっておらず盗作の疑惑があったことを耳打ちしてきた。だが、そんな宝田を睨みつけるように『編集長に言いつける』と脅しつけ、それを金田一との打ち合わせと誤魔化す彼を鼻で嗤う。

 

「あっそ! 遺産相続戦、やる気満々ってわけね! あさましいこと!

 大手出版の副編集長ともあろう人が・・・!」

 

 軽蔑しているとばかりに吐き捨てる彼女は、表情を変えて馬鹿にするように笑いだす。

 

「それとも、株で大借金を抱えたって噂は本当なのかしら?」

 

「そういう話はやめてください!  単なる噂ですよ!!」

 

 彼女の言葉にムキになって宝田が言い返すあたり、その噂が事実であることは間違いないのだろう。

(しっかしま~、所長とか副所長とかしっかりした大人ばっかに普段会ってると感覚マヒすっけど、そういや俺が知ってる周りってまともな大人ってすくねーよな)

 そんなことを考えていると別の部屋から何かが割れる派手な音が鳴り響き、その場にいる全員が音のする部屋に向かえば、先ほどの酔っ払いジジイこと神明が頭から酒を浴びている姿だった。

 

「だ、大丈夫ですか? 神明先生」

 

 駆け寄る美雪に対して金田一が室内を見渡せば彼の背後には高価そうな酒が並んだ棚があり、さらには彼の周りには割れた酒瓶が転がっていた。

 

「な~んだ。酔っ払いがけっつまずいて、望んだ通り酒を浴びただけかよ」

 

「なっ! き、貴様ぁ~、天下の神明忠治に向かってその口の利き方はなんだ!!」

 

「わわっ!!」

 

 安心と呆れの混じった金田一の言葉に羞恥と怒りで飛び掛かろうする神明を余裕綽々で逃げながら、その背後から黒いスーツの女性が現れる。

 

「相変わらずお見苦しいですね。

 それじゃ、最初から遺産相続ゲームの勝負から降りたも同然ですわね」

 

 そう言って微笑みながら現れた女性について宝田に尋ねれば、彼女が挿絵画家の幽月来夢であり、候補者の一人であることを教えてくれた。

 

「フンッ! 挿絵画家ごときが古今東西のミステリーを全て読破しとるこの私と勝負だと? 片腹痛いわ!」

 

「私もそう思ったので、ちょっと助っ人を連れてまいりましたのよ」

 

「へぇ、幽月さんも助っ人を?」

 

 彼女の挑発に等しい言葉に怒りを露にし、ミステリー評論家としての自負とプライドを叫ぶ神明。そして、彼女が助っ人を連れてきたことに驚く犬飼に彼女は連れてきた人物を紹介した。

 

「えぇ!

 ご紹介しますわ、奇術師のスカーレット・ローゼスさんです」

 

 紹介されたローゼスは幽月と同様シンプルなスーツを身に纏っており、房のような飾りを両側に垂らした仮面で顔の上半分を隠していた。

(スカーレット・ローゼス・・・)

 紹介された男に何故か金田一は不思議な嫌な予感を感じ、ボーっとしてしまっているとスカーレットの方から声をかけてきた。

 

「どうかしましたか?」

 

「あ! いや・・・ その仮面は?」

 

「あぁ・・・ これは傷跡を隠してるんです。

 以前、奇術の練習中に酷い火傷を負いましてね」

 

「そう、ですか・・・」

 

 そんなやり取りをしていればその場に遺産相続候補者である五人とその助っ人の全員が揃っていることに気づき、金田一はぐるりと見渡す。

 年齢も、性別も、職業も何もかも違う五人の共通点は山之内 恒聖に関わっていたという事実のみ。そして、そこに金田一らと同じ助っ人の謎の奇術師の男が混ざっていた。

 

「あぁ、あなたが小城さんのところの金田一くんね」

 

「え?」

 

 幽月に突然声をかけられた金田一が戸惑っていると、彼女は一歩ずつ近づきながら優しい声で話しかけてくる。

 

「あぁ、ごめんなさい。

 小城さんに仕事を依頼して、つい最近お話をしたからあなたや他の所員についてもお話を伺っていたの」

 

「あぁそうなんすね、ご依頼ありがとうございます! ・・・で、いいんすかね?」

 

「フフッ、お礼を言われることなんてしてないわ。むしろ小城さんには私の方がお礼を言いたいぐらいだもの。

 きっとこの中で一番手強い相手は、彼の事務所に所属しているあなたね」

 

「い、いやぁ・・・ 俺なんて所長と比べたら全然」

 

 彼女の誉め言葉に金田一はらしくもなく照れてしまい、佐木一号がそんな珍しい様子をじっと撮影していく。

 

「照れてる先輩なんて珍しい・・・ これは激レア映像、貴重な資料になりますね」

 

「うっせーよ! 一号!」

 

「はじめちゃんってば照れちゃって。

 小城さんのところでのバイト、はじめちゃんにいろんな経験や良い影響ばっかりで、はじめちゃんが毎日楽しそうでよかった」

 

「えぇ、本当に。

 小城さんは先輩を様々な場所に連れてってくれるので、僕らとしてもいろんな映像が撮れて楽しいです」

 

 金田一は照れ隠しとばかりに佐木一号を追いかけながら、美雪と佐木二号が嬉しそうに笑っていた。

 

「え~では皆さんお揃いでしたら、そろそろ応接間の方へお越しください」

 

 そんなやり取りをしていると眼鏡をかけた気の弱そうな男性が全員に聞こえるように声をかけ、彼の言葉に従って全員が応接間へと移動して、説明が始まった。

 

「では、これから山之内先生からのメッセージを公開させていただきます。

 私、先生の顧問弁護士の代理人として派遣されました、有頭 大介と申します」

 

 頭を下げて自己紹介した彼はあくまで自身が山之内の指示を守る監視役であり、これから開ける遺言状の中身は勿論探し当てなければならない二つ目の遺言状の隠し場所についても知らず、そのため遺言状の質問等には答えられない旨を告げられた。

 

「前書きはいいから、さっさと始めたまえ」

 

「では・・・」

 

 神明に急かされる形で有頭は厳重に封をされた書類を取りだして開封、機器を操作する。

 始まった映像には瘦せ細った体と白い髪をした老人、生前の山之内 恒聖の親しい五人への挨拶から始まり、これを見る時には既に自分がこの世にいないことが告げられた。

 

「おぉ! 先生・・・」

 

「あんなにやつれてしまって・・・」

 

『私の最期のミステリーに付き合っていただき、心から感謝する。

 早速だが、あらかじめお伝えしていた暗号文についてお話ししよう』

 

 感謝を告げながら全員に手紙と共に送った暗号文を画面に映し、改めて全員にその重要性を示していた。

 

【楽団は朝礼で前から順に首を刈られた

 さぁお次は数合わせ

 2番の子の首を5番目の子の首の

 右に並べてみてごらん

 楽しいリズムの始まり始まり】

 

『実はこの暗号文はこれだけでは意味を成さない。もう一つ、暗号文と対になったメッセージがあるのだ。

 後ろを見たまえ』

 

 山之内の言葉と共に映像が彼ではなく背後に並んだ露西亜人形を映し、映像はさらに続いていく。

 

『第一バイオリンのコンスタンチン、第二バイオリンのターニャ、ビオラのオリガ、チェロのエミール、コントラバスのイワン。

 この君達と同じクインテットを構成する五体のロシア人形こそが、全ての謎を解き明かす第二の暗号なのだ』

 

「ロシア人形・・・」

 

 金田一はさっき犬飼が言っていた初期の作品と同じシチュエーションであることを思い出して、冷たい汗が流れていくのを感じた。そして、そんな彼の様子を見て、隣に立っていたローゼスがクスリと笑っているのを誰も気づくことはない。

 それは当然と言えば当然だろう。

 この場にいる遺産相続の候補者は皆、自分こそが遺産を手にするためのヒントである映像を食い入るように見つめているのだから。

 

『この君達と同じクインテットのロシア人形と事前に渡したあの詩を合わせた謎を解いた時、私の第二の遺書はその者の手に渡る』

 

 『その者こそが莫大な遺産を全てを手にするのだ』と場にいる全員が認識するような口振りの山之内は楽しむ様子も馬鹿にする様子もなく、むしろその無表情がどこか気味悪くすらあった。

 

『なお、この推理合戦の参加者は期限の五日間、強制的に館に留まってもらうことになる。

 さぁ! 参加する意思があるなら受け取ってほしい。用意された君達のパートの楽器を!』

 

 そう言って彼が指さした先には、先程のロシア人形が持っていた同じ楽器がソファに丁寧に並べられていた。

 

『では、また夕食前にお会いしよう。クインテットの諸君』

 

 映像はまだ続いていることを暗に示しながら映像は途切れ、有頭が電源を落とした。

 

「では、参加意思のおありの方はご自分のパートの楽器をお受け取りください」

 

「言われるまでもないな。

 やる気がなければ、こんな北海道の山奥くんだりまでくるものか!」

 

「まったくね・・・ あたしはこのバイオリンいただくわ」

 

「僕はこの第一バイオリンをいただきます」

 

「あたしはビオラね!

 よろしくお願いするわよ、助っ人のローゼスさん?」

 

 そんなことを言いながら神明はコントラバス、梅園がバイオリン、犬飼が第一バイオリン、幽月がビオラをそれぞれ持つことで参加を表明する。そして、幽月は頼りにしているのだろうローゼスへと声をかけた。

 

「どうしたんですか、宝田さん? 取りに行かないんですか?」

 

「え!? えぇ、勿論行きますよ。

 このチェロをいただきます」

 

 四人に遅れる形で宝田も自分のパートであるチェロを持ったことで全員の参加が表明され、すぐに話は一つ目の暗号である手紙について全員での話し合いが始まった。

 梅園と犬飼が最初の一行目が気になると語り、『そんなものは誰でも気づく』と神明が探偵気取りの犬飼を馬鹿にする。だが、犬飼も神明のそんな物言いに慣れているようで軽く言い返し、掴み合いの喧嘩になろうとする。

 

「おやおや、皆さん。

 仲がよろしいのは結構ですがそんな風にお互い知恵を出し合って、他の参加者に出し抜かれてもいいんですか?」

 

 だが、そんな三人を放置して、幽月と共にお茶を楽しんでいたローゼスが警告するように告げる。

 

「ふと、口にしたヒントが競争相手が得をすることもありますからね。気をつけなくては」

 

 彼の一言に全員がようやく気付いたらしく黙り込み、完全に他人事であり、もはや何故ついてきたのかもわからない佐木兄弟は彼らの華麗なる(醜い)遺産争いをニコニコしながら映像におさめていると、美雪から注意される。

 

「ねぇ? はじめちゃ・・・ あら? どこ行ったのかしら?」

 

 金田一に同意を求めるように振り返ってもそこにおらず、空腹に耐えきれなかった彼は既に厨房に消えてピロシキを貰って空腹を満たす。そこで田代にこの露西亜館の始まりや人形の置かれている部屋がある東側の塔、マスターキーについての説明を受けたのであった。

 

 





小城がいろいろした後の露西亜館がどうなるか、お楽しみに(^▽^)/
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