小城探偵事務所   作:無月

73 / 78
独自解釈、原作改変、盛沢山。

閑話というには結構重要且つ重め話なので、時間かかった上に文字数多っ!
ですが、どこで分けても微妙なので一話として投稿します。

次はあの事件かな、この事件かなと考えつつ、私は書いてて非常に楽しい。
皆さんもどうか、楽しんでください。


疑問と違和感

 金田一は北海道から東京という長い帰り道の中で、ぼんやりと外を眺めていた。

 昨日の朝に行った謎解き後、約束通り神明と犬飼からは謝罪を受けた。だが、その謝罪は『トラブルを抱えていて精神的に余裕がなかった』『よく知りもせずに悪く言って悪かった』という表面上のものだった。

(いや、しゃーねーのはわかるよ。

 宝田さんみたいに所長に嫉妬すんも、梅園さんみたいに金目当てで集まってくる奴がいるってのも、結局会ったこともない奴らが所長のことも好き勝手言うのもさ)

 それよりも引っ掛かるのは高遠が言っていた言葉の数々であり、他ならぬ小城が所員達には黙って彼に接触し、共に今回の一件を仕組んだということ。

(いや、『仕組んだ』は正確じゃない)

 頭をガシガシと掻きながら、高遠の言葉の数々を必死に思い出す。

 

 

『この遺産相続の催しの台本を、私と小城くんで書き換えたんですよ』

 

『言った通りです。山之内 恒聖という人間は世に知られているような人格者ではなく、その最期に残された催しも遺書も美しいものではなかった。

 人格者の仮面の下に隠れていた彼の素顔は陰湿で執念深く好色、強欲で残忍なものでした。そして、この館で彼が書いた事件の脚本もまたしかり』

 

『山之内の脚本を理解した小城くんは、私に提案しました。

 彼の遺書を書き換え、最後に残した遺作をこの世から消滅させ、ありもしない・・・ いいえ、ある意味で世に知られたままの山之内 恒聖の最期を作り上げることをね』

 

 

 彼の言葉に嘘偽りなかったとするならあの場で公表された遺書は二人によって変更されたものであり、また所長の判断でなかったことにされた山之内の遺作があった。

(変更する前の遺書と作品で、何かが起ころうとしてたってのか? だとしたら所長は、何かを防ごうとした?)

 だが、これら全ては想像の域を抜けることはない。

 何せその『何か』を証明する手立てもなければ、あの高遠と所長がした行動を探らなければならないのだ。

(それに高遠もだけど、所長が正直に答えてくれるとは思えねーんだよなぁ)

 

「はぁ~・・・」

 

「どうしたの? はじめちゃん」

 

「んー・・・ いや昨日さ、誰だって仮面を被って生きてるって話しただろ?

 そんでさ、所長とかもそうなのかなーってちょっと考えちまったんだよ」

 

「突然どうしたの? やっぱり推理とか、あんまり北海道でのんびりできなくて疲れちゃった?」

 

 さっき金田一本人がぐしゃぐしゃにした髪を頭を撫でながら優しく整えつつ聞いてくる美雪に、子ども扱いされてると思った金田一は頭を振る。

 

「ちげーよ、もう。

 所長ってさ、こないだのバルト城の時もだけどなんか俺らにはいろいろと教えてくんねーじゃん? それにあの地獄の傀儡師も所長のことを知ってたみたいに言ってたしさ」

 

「大事なのは何のために仮面を被るかで、他人を傷つけないために被る仮面だったら、それは悪いことじゃない」

 

 グダグダと言葉を並べようとした金田一に彼女は、昨日彼自身が教えてくれた言葉を繰り返す。

 

「はじめちゃんから見て小城さんは、何のために仮面を被ってるように思う?」

 

 いつものようにまっすぐこっちを見つめながら、まるで金田一が次になんていうかもわかってるみたいな顔をする彼女に、金田一は自分の心を霧みたいに覆っていた不安が晴れていくのを感じた。

 

「そう、だよな・・・ そうだよなぁー!」

 

(他でもない俺が所長を信じなくて、どーすんだって感じだよな)

 

「サンキュ、美雪」

 

「でもね、こんなことを言ってから言うのはあれだけど・・・ はじめちゃんがそう思っちゃう気持ちもちょっとわかるの」

 

 礼を言う金田一の言葉に半ば被せるように、美雪は少し遠い目をする。

 

「小城さんが他人を傷つけないために仮面を被ってるのは間違いないと思う。

 でも、小城さんって・・・ 時々凄く寂しそうに見える時があるの」

 

「寂しそう?」

 

 美雪から飛び出したおもわぬ言葉に、金田一は少し驚いて聞き返す。

 

「うん。

 困ったように笑ってる時とか、私達から一歩距離を置いて見守ってる時の小城さんって、手を伸ばせば届く距離にいる筈なのになんだか遠いなって思う時があって・・・ なんて、私が小城さんに変に距離を感じちゃってるのかなぁ?」

 

「手を伸ばせば届く距離にいるのに遠い、か。

 なんとなくわかる気がするなぁ、それ」

 

 二人が共通して感じている何かについて話していると、黙って景色やらを撮影していた佐木兄弟が一斉に顔を向けてきた。

 

「それなら一つだけ僕らでもとれる方法がありますよ、先輩方」

 

「うわっ!?」 「きゃっ!?」

 

 二人が同時に視線を向けてきたとあって驚いていると、何故か佐木兄弟は二人のその反応に嬉しそうに笑っている。

 

「驚かせてしまってすいません、先輩方。

 でも、僕らのこれは体の一部で、突然湧いて出てくるのもよくあることなのでいい加減慣れてくださいよ」

 

「無理に決まってんだろ!

 ま、まぁとにかく方法ってなんだよ、一号」

 

「簡単ですよ、知ってそうな人に聞けばいいんです」

 

「事務所の皆に~? 知ってても教えてくれっかわかんねーじゃん、それ」

 

 一号の意見に金田一が微妙そうに顔をしかめていると、『それもあってますが不正解です』とばかりにやれやれと首を振られた。

 

「あぁ、明智さんに聞いてみるのね?」

 

「その通り。

 明智さんと小城さんは同じ大学の出身ですし、それに加えて明智さんは用心深い警察官ですから親しい小城さんのことであっても不審に思ったらあれやこれやと調べててもおかしくありません」

 

「俺も明智さんに対して失礼だけど、お前(竜太)も大概だよな・・・」

 

「僕は先輩と違って口は悪くない上に、本人の前では言わないので見落とされてるだけですね」

 

「それ、俺よりもタチ悪くね!?」

 

 心強い幼馴染と後輩のおかげで幾分か楽になった気持ちの中で、高遠が小城に対して向けた言葉を思い出していた。

 

 

『彼(小城拓也)は私と同じ ――― その手の中で多くの人間を自由自在に操ることが出来、命すらも刈り取ることが出来てしまえる存在。そして、彼の心の奥底には私が感じている高揚感が潜んでいる』

 

『えぇ、彼はまだ自分を解放していない。いいえ、出来ていないのが正確ですね。

 彼はまだ思いのままに自分を解放させる、鍵を開けていない』

 

 

(所長はあいつなんかとは違う・・・ あの人の心にそんなもん(高揚感なんて)、ありっこないんだ)

 昨日同様に内心で否定しながらも、何故か脳裏にはもう一つ ――― 高遠がローゼスの仮面を被っていた時の言葉が蘇った。

 

 

『人は誰しも仮面をかぶり、何かを隠して生きているもの・・・ その目的も意図も、仮面の下に隠された本心すらもわかっているのは自分自身だけ ――――― もしかしたら自身ですら把握出来ていない本音も、あるのかもしれませんね?』

 

 

(あぁくそっ! なんだってんだよ!

 あいつは所長の、何を知ってるってんだよ・・・!)

 もはや自分だけじゃわかりっこない謎を抱えながら、三人とくだらない会話をしながら家路につくのであった。

 

 

 

 

 

 北海道から戻ってきて数日、金田一は警視庁のすぐ近くにあるファミレスで二人を待っていた。

 

「警察を何度も呼び出すなんて君ぐらいなものですよ、金田一くん」

 

 挨拶よりも先に嫌みが投げかけられて金田一は嫌そうな顔をしてそっちを振り向くと、無駄にキラキラとした雰囲気でファミレスを闊歩する場違いな明智が剣持を連れてこちらにやってきた。

 

「今回はわりぃとは思ってるよ。ホント、こんな個人的なことで警視であるあんたを呼び出したのは・・・ いや違うか」

 

 少し頭を掻いて考えがまとまったらしい彼は席から立ち上がって、明智へと頭を下げる。

 

「わざわざ来てくれて、ありがとうございます」

 

 素直に感謝を告げる金田一に明智と剣持は驚くが、それだけ彼が真剣だということを理解して席に座りつつ言葉を告げる。

 

「頭をあげてください、金田一くん。

 小城くんの話をしたいとのことですが、何が聞きたいんですか?」

 

「何っていうかさ、明智さんは所長についてどこまで知ってんの?」

 

「どこまで・・・ また随分と話しにくい聞き方をしますね」

 

 剣持が明智の分のコーヒーも頼んでいる最中も二人の話は続き、『自分はあくまで仲介しただけ』とばかりに見守る姿勢に入った。

 

「それに相手に情報を求めるのなら、君が持っている情報を公開するのが先では?

 七瀬くんから聞いていますよ。先日、あの山之内 恒聖の遺産相続の催しに立ち会うために北海道まで出向いたのだとか・・・」

 

「美雪の奴、あんたにそんな話してんのかよ」

 

「七瀬くんが話さなくても山之内 恒聖の遺産相続は彼が有名なことに加えて、額が額です。普段ニュースにちゃんと目を通している人間なら知っている常識なんですよ。もっとも君は知らなかったかもしれませんが」

 

「あんたさぁ、一つの台詞の中に一つ嫌味を入れなきゃ死ぬ病気にかかってたりしない?」

 

 自分から頼んできてもらった立場だとわかっているが、どうしても言わずにはいられないとばかりに睨みつけながら言っても、明智は涼しい顔をしている。

 

「それだけ普段の君の言葉は隙だらけで、思考は穴だらけということですよ。

 小城くんのように言葉一つ、行動一つ、表情一つにまで神経を使った方がいいとは言いませんが、君が彼から見て習うことは多くあります」

 

「そんなことはわかってるっつの! じゃなくて・・・ はぁ」

 

 明智の言葉で苛立って大声を出した金田一は、冷静になるためにグラスに入ってジュースを一気に飲み干す。

 

「地獄の傀儡師が、魔術列車の時には既に所長を知ってた」

 

 金田一の口から飛び出した予想外の発言に明智らが何かを発する前に、情報をさらに上乗せした。

 

「しかも、この間の山之内の遺産相続の一件の時、地獄の傀儡師本人の口から所長と接触して、その上協力して行動されて、所長の何もかもを知ってるようなことまで匂わされました」

 

「おい、それが本当ならシャレにならんぞ?」

 

「ジョークで警察の二人に相談なんかしねーよ。

 魔術列車の時は所長にも聞いたんだけど、本当に会ったことなかったみてーで殺人鬼に知られてることに顔を青ざめてたから俺も気にしてなかったんだけどさ。こないだ会った時、あいつ(高遠)が気になることを言ったんだよ」

 

「その気になること、とは?」

 

「『この遺産相続の催しの台本を、私と小城くんで書き換えたんですよ』ってね」

 

「っ!?」 「そう、ですか・・・」

 

 驚いて腰を浮かす剣持とは違い、明智は考えるように顎に手を当てる。

 

「その前に小城くんが不在にするようなことは?」

 

「仕事の依頼で俺らと入れ違いで北海道から帰ってきてたよ」

 

「つまり、彼が言っていた内容を行う時間は十分にあるということですね」

 

「警視、これは小城に任意聴取を・・・ 「出来なくはありませんが、これらの一件は何の罪になるんですか? 剣持くん」 は? い、いや地獄の傀儡師と接触して遺産相続の一件を 「接触だけでは犯人隠避罪などに問われることはありませんし、仮に彼が言っていた通りなんらかの行為をしていたとしてもあの地獄の傀儡師が人殺しの生じない犯罪で証拠を残すようには思えません」

 

 剣持が言わんとすることを全否定し、金田一も険しい顔で頷いた。

 

「あぁ、現にあの遺産相続の一件で高遠は本当に何もしてない。仮面を被って参加者の一人としてあの場にいたってだけだ。

 それに所長にしたって、依頼で北海道に向かった以外は何もわかってない。依頼として仕事をしてたのも事実でこっちは詳しく知ろうと思えば出来っけど、所長が俺なんかがわかるようなへまをするとも思えない」

 

 打つ手なしとばかりに両手をあげると、明智は『それはそうでしょう』とばかりに頷き、剣持は溜息をついた。

 

「結局、高遠と小城の繋がりはわからんどころか、あるかどうかもわからんってことだろ。

 それにだ、その遺産相続の一件をどう変えたかもわかっとらんのだろ?」

 

「そこなんだよなぁ~。書き換える前はどうなるはずだったのか、それはもう誰も・・・ それこそ書き換えた高遠と所長(あの二人)にしかわかんねーんだよ」

 

 そこまで言ったところで金田一はずっと考えている様子の明智に視線を向ければ、彼も意図を察したらしく頷いた。

 

「君からの情報は確かにいただきました。

 といっても、私から君に渡せる情報などたかが知れてますよ」

 

「はぁ!? 俺、結構いい情報をアンタに今、渡したと思うんですけど!?」

 

 席を立ちながら叫ぶ金田一に対し、彼はいつものすました顔で続ける。

 

「何せ今から語ることは全て僕の推測でしかなく、それを裏付けるだけの証拠があるとは言えません。ましてや、小城くん自身についてもこれから話すことの真偽や裏付けがあるわけでもない。

 一人の警官としては、口にするのも憚られるようなことばかりです」

 

 長ったらしい前置きをしてから、明智はテーブルの上で腕を組んで金田一をまっすぐ見つめた。

 

「それでも君は、私の話を聞きますか?」

 

「もったいぶりすぎじゃね?

 俺だってあいつが話した不確定な情報を伝えたんだ、あんたの情報を疑う理由はねーよ。それに俺、あんたのことは正直好きじゃねーけど、真剣な話し合いにふざけたこと言う奴だとは思ってねぇから」

 

 金田一の意見に無言で剣持が頷くのを見て、明智はフッと笑ってから口を開く。

 

「では、まず君に一つ聞きたいのですが・・・ 君は所員の皆さんの事情をどこまでご存知ですか?」

 

「は? それが所長とどんな関係が「あるから聞いたに決まってるでしょう?」 檜山さんが黒坂村全焼事件の生き残りだってことぐらいしか知らねーよ。でも、所長も含めて全員に何かあったってことは普段話しててもわかる」

 

「それだけ知っていれば結構。私から全てを知るのは不愉快でしょうから簡単に済ませますが、小城くん自身を含めた所員の全員が大小さまざまな問題にかかわっており、それぞれがもはや一つの事件と言ってもいいほどのことばかりです。

 ですが、どの事件も過去はどうあれ新たに誰かが死ぬような事態にはならず、それぞれの形で解決に導かれました ――――― そう、彼によって」

 

 ニコリと微笑みながら告げられた、この場には居ないただ一人のことだけを示した言葉に驚く者は誰もいない。

 剣持も金田一も小城ならばそうすることに違和感を感じることはなく、簡単に納得できてしまう。それだけのことを、彼はこれまで成してきたのだ。

 

「ですがそれは逆を言えば、何か一つでも違っていたら簡単に殺人事件が起きていたということです。

 例えば、君が知っている黒坂村全焼事件の関係者である檜山くんですが・・・ もし彼が小城くんよりも先に放火した彼らのことを知っていたら、何が起こっていたでしょうね?」

 

「・・・檜山さんが殺人事件を起こしてた可能性があるって言うのかよ?」

 

「ないと言えますか? 彼に限らずあの村の関係者の多くはあの日、これまでの生活の全てが一変したことは簡単に想像できます。

 現に不幸な事故として済まされる筈だった黒坂村の火事は、彼による綿密な調査と集められた証言から再度警察によっても現場検証や調査が行われ、彼らは法の下で裁かれることになりました」

 

 金田一の問いかけに対しあえて問いかけを返しながら、彼はその後に小城によって行われた事実だけを淡々と告げる。

 

「そして、似たようなことを彼は幾度となく行ってきた。

 副所長である須賀 徹を始めとした須賀親子も、狩谷 純も、君の友人である千家 貴司も・・・ そしてこれは所員に限ったことではなく、私が知っている範囲だけでも片手の数どころか、両手の数では足りないかもしれません」

 

「なんでそんなに知ってんだよ? つーか、明智さんも所長の何かを疑ってるっての?」

 

「やれやれ・・・ 本当に失礼ですね、君は。

 私は小城くんを疑っているわけではありませんよ」

 

 睨みつけてくる彼に、明智はわざとらしく肩を竦めてみせる。

 

「ここまであげた彼の行動を考えれば『罪を犯した者を決して許さず、一切非のない被害者の救済を目的とし、また被害者である彼らの怒りや無念を公の場で正しく晴らそうと動いている』ことがわかります。元々彼の優秀さは大学の知り合いから聞いていましたから、私は彼が警察と接触するタイミングで知り合いとなり、彼を勧誘したんですよ。

 ですが、かえってきた言葉は丁寧な断りの言葉と『警察という立場では出来ないことがありますので』といったものでした」

 

 その言葉の意味がわからなかった明智は小城のことを調べ、それによって彼が経験した誘拐事件について知ったのだという。

 

「そこでようやく私は彼が探偵事務所を開いた理由が、誘拐され行方知れずとなった妹を探しているのだと理解しました。

 そして、彼がしている行動はある種の代償行為だということもね」

 

「警視、どういう意味です?」

 

「わかりませんか? 剣持くん。

 小城くんが最も憎み、許さずにいるであろう犯人は今もまだ捕まっておらず、父と妹を理不尽に奪われた被害者である彼の怒りや無念は晴らされていない。

 無意識なのか、それとも自分のような気持ちを抱える者が一人でもいなくなるようにしているのかはわかりませんが、彼は慈善活動も含めて少しでも不幸が減るように動いています。

 私には彼のそんな行動が、迷いの表れのように見えてなりません」

 

「おい、待てよ明智さん。

 その言い方じゃ、所長が今もまだ心のどこかで誰かもわかってない誘拐犯を憎んで殺したがってみてるじゃねぇかよ」

 

「ご名答」

 

「ご名答って、ふざけんなよ! 所長はそんな人じゃ・・・!!」

 

 おもわず席から立ち上がって怒鳴ろうとする金田一に、明智はどこまでも静かで冷静だった。

 

「そんな彼の迷いや彼らの復讐を正攻法で果たそうとする行動を、高遠 遙一が興味を持つ可能性は十分にあると思いませんか?」

 

「なっ!?」

 

 剣持が驚く中で、金田一は高遠が言っていた言葉が次々と浮かんで繋がっていく。

 

「あいつが所長を自分と同じだって言ってたのは、そういうことなのかよ」

 

「えぇ、察するに高遠は小城くんの経歴を知った上で、自分側に彼が来るのを望んでいるのでしょう。もっと言えば迷っていることすらも高遠は楽しみ、接触することで揺さぶりをかけている可能性が高い」

 

 早く堕ちてこいとばかりに揺さぶりをかけ、甘く優しい言葉を投げかけ、彼の抱いている怒りや復讐心を肯定する。そして、地獄の傀儡師は自分と同じ位置に立つにふさわしい彼を両手を広げて待っている。

(なんてことしてやがるんだよ、あいつは!)

 闇の中で両手を広げる高遠が簡単に想像できた金田一は、心の中で吐き捨てる。

 

「じゃぁ、北海道の一件は友人を通してわざと接触して、所長がどうするかを見たがってたって言うのかよ?」

 

「おそらく、そうでしょうね」

 

「なんで我々警察に言わないんだ! あいつは!」

 

 どうしてしないのかも理解していながらも憤らずにはいられなかった剣持の言葉に、明智は溜息をつく。

 

「剣持くん、君の言うことは正しいですが、高遠は全てを知った上で彼に接触しているんです。

 危険を承知で高遠と二人きりになるしかない中で、何らかの交渉を行って、殺人を事前に防いだであろう小城くんを責めるのはお門違いですよ」

 

「そりゃそうですが、それでも一般人であるあいつが一人で殺人鬼と接触することは危険なことに変わりはないでしょう!」

 

「その通りですが、小城くんならこう考えるんですよ。

 『危険であることに変わりがないのなら、自分一人がその危険に晒された方がいい』とね」

 

「で、実際に交渉だけで遺産相続を丸く収めたって言うのかよ」

 

「そうとも取れますし、友人としてはそれを信じたくもあります。

 ですが、警察官としては別の可能性を捨てることも出来ません」

 

「そこから先はもう聞きたくねーからいいよ、もう。情報サンキュ、明智さん。

 じゃ、悪いけど今日はもう帰るわ」

 

 彼が何を言おうとしているかを理解した金田一は聞きたくないとばかりに席を立って、彼の横を通り過ぎようとするが、『現実から目を背けるな』とばかりに明智はあえてはっきりと金田一が聞き洩らすことのないように告げた。

 

「もう既に高遠と小城くんは協力関係にあり、何らかの目的を持って行動を別にしている。

 そう言った可能性があることを心の隅に置いておくことですよ、金田一くん」

 

 

 

 

 明智が最後に言った言葉に苛立ちを隠すことなく去っていく金田一の姿を見送りながら、剣持は溜息をついた。

 

「警視、お考えはもっともだと思いますが、さっきの発言はいかがなものかと」

 

「よく理解していますよ。ですが、頭の片隅に置いておくべきです。小城くんが本心を語らず全てを明かさない以上は、ね」

 

「・・・しかし、妹さんの件、まったく知らなかったぜ。

 俺は次から、どんな顔してあいつに会ったらいいんだ」

 

 同じ立場にある剣持はそれ以上強く言うことは出来ず、これまで知らなかった小城の情報に関して思わず溜息が零れてしまう。

 

「知らなくて当然です。たとえ我々が警察であっても、身近な人間が以前起こった事件の関係者であるなんて考えませんから。

 接し方についてアドバイスするのなら、君はこれまで通り接すればいい。彼が憐れまれることも、被害者の一人として見られることも望んでいないことは事件の関係者であることを言いふらしていないことからも明らかでしょう?」

 

「それは、そうかもしれませんが・・・ はぁ~、できっかな」

 

「・・・剣持くんには無理でしょうね」

 

「そんなはっきりと言わんでもいいでしょう」

 

 きっぱりと告げる明智に対して剣持が苦い顔をしていると、明智は冷めきったコーヒーを口に運んだ。

 

「友人であることも関係なく疑う私にはない、人の不幸を我がことのように悲しむことが出来る熱血漢・・・ ですが、それが君らしさでもあります。

 実に古臭い、昔ながらの警察をやっている君なりにこれまで通り彼に接すればいい。きっと小城くんもそれを望んでいますよ」

 

「それは褒めているのか、馬鹿にしているかわからんのですが・・・」

 

「私は私が思ったようにしか言っていないので、好きなように解釈してくれて結構。

 我々が小城くんの復讐を防ぐ方法は唯一つ、我々警察が彼より先に誘拐犯を見つけ逮捕することです。

 そうすれば彼は復讐者などにはならない」

 

 言葉とは裏腹に『復讐者などにはさせない』という決意を宿した彼の目を見て、剣持も自然と姿勢を正した。

 

「警視」

 

「我々警察は嫌われることも仕事の内です。

 精々憎まれ役となるために彼よりも早く復讐対象を逮捕し、あの誘拐事件での汚名を返上するとしましょう」

 

「ハッ!」

 

 年若く、キャリアや性格を考えるとどうしても好きになれない上司である明智のわずかながらの本心と、警察官としての正義感へと敬意を示すように剣持は敬礼をするのであった。

 





金田一がどんどん何かに気づいていき、一方の明智は既に何かを知っている。それら全てをさらに楽しむ強者は原作においてもチートな高遠!
・・・なんで男どもが小城を挟んで変な関係築いちゃってんのかな?(;^ω^)

そして、美雪ちゃんの圧倒的光属性っぷり・・・ 眩しくてまっすぐ見えないんだな・・・
こういうヒロイン、最近全然見かけないので浄化されそう・・・
でもごめんね、私の好みはほんのり陰あるタイプの美人なんだ・・・(オイ)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。