サブタイトルで誰を救いたいかわかった方。作者の好みをわかってきましたね(⌒∇⌒)
そして、同じ想いを抱いてくれる同士の皆さん、握手しましょう!
さぁ、楽しんでください。
午前中に顧問弁護士の繁樹とある一件についての話し合いを終えて十四時過ぎに事務所へと戻ってくると、通りかかった一階のカフェで窓越しに緑に『お昼を食べていきなさい』というように手招きされた。
(緑さんにまで一人じゃ食事を取らないって思われてるなぁ・・・)
いくら午前中に外出したことを知られているとはいえお昼時を過ぎた時間である今、普通ならば食事を終えて戻ってきたと考えるだろう。
(あ、今から事務所に戻る連絡を入れたからか。それで舘羽くん辺りが察して、緑さんにも話したって感じかな)
須賀親子にいろいろと把握されてしまっていることに若干頭を抱えたくなるが、間違っていないのがまた何とも言えない気持ちが苦笑に変わり、店内に入ってカウンター席の隅に腰かける。
「おかえりなさい、今日は外のお仕事だったから疲れたでしょう?
でも、どんなに大変でも食事をとらないと倒れてしまうから、どうか体は大事にしてね」
緑から言われた
一般的に飲食店が込むお昼から時間がずれているということもあって店内はすいており、いつもなら誰かしら接客に入っている須賀姉妹も昼時の混雑時を終えた今は誰もいなかった。
(この時間帯が一番のんびり出来るんだろうけど、普通に学生とか社会人やってるとまず暇ではないんだよなぁ)
仕事の昼休憩を取らなかった結果、強制的に昼休憩を取らされている事実に見ないふりをしているとカフェに三人の少女が入店してくる。
「あら、るり。おかえりなさい。
時雨ちゃんもフミちゃんも、いらっしゃい」
「ただいま」
「おっじゃましま~す」
元気よく駆け足で店内の奥、人目があまり気にせずにすみ尚且つ迷惑にならない角のテーブルにフミが向かえば、るりが慣れた手つきでお冷の用意に動き、最後に会釈をして入ってきた時雨と小城の目が合った。
「小城さん、お久し振りです」
「あぁ久しぶりだね、時雨ちゃん。
体の調子はどうだい?」
「体がよくなったかはわかりません。けど、お母さんは村にいた時よりもずっと明るくなったので、ここに来てよかったと思います。
それに・・・」
色白の肌と表情の薄いことは相変わらずだが、彼女が視線を向けた先にはフミとるりがいる。
「私もここにいると楽しいって、思います。
・・・ひと夏だけなんて馬鹿なことを考えずに出来るだけ長く、一緒に居たいなって」
「そうかい」
時雨の前向きな言葉に嬉しくなって微笑んでいると、彼女がいつまでも来ないことを心配したフミがこちらにやってきた。
「ゲッ、いたんだ。うさんくさい所長」
一切の容赦ない、歯に衣着せぬ物言いに一周回って小城が噴き出すと時雨が注意するようにフミを見る。
「フミちゃん?」
「だ、だって、時雨姉! この人の笑顔ってなんか凄い胡散臭いっていうか・・・
ほら、ウチって親父が飛び出してくまでペンションやってたから人の観察を良くしてたからさ。あたし、笑顔を貼り付けてる人とかってわかっちゃうんだってば!」
「今、君の発言で笑ったのは本心のつもりだけどね」
「わかってるから、んなこと言わなくていいから!
っていうか! それ以外は本心じゃないってゲロってるから!!」
「さて、どうだろうね? アハハハ」
時雨に対してフミが必死に言い訳じみたことを言っている中、小城は笑い続ける。
「いやぁ、金田一くんもだけど君達は本当に素直だよね」
「それ、褒めてないだろ!」
「褒めてる褒めてる」
「同じ言葉を二回繰り返すって嘘をつく時の行動って知ってる?」
「おや、物知りだね。フミちゃんは」
ガルガルと威嚇する犬のように小城の言葉に噛みついていくフミを笑って相手していると、お冷を自分達のテーブルに置いてきたるりも合流してきた。
「フミちゃん、また小城さんに突っかかってるの?」
「だってるり姉! こいつが・・・!」
「フミちゃん、言葉遣い。
どうして他の人の前では出来ることが、はじめお兄ちゃんや小城さんの前では出来ない時があるの?」
自分と身長がほとんど変わらないフミを注意するように頭を撫でていると、フミが不満げに頬を膨らませながらも小城に噛みついてくるのをやめる。
(フフッ。優しくたしなめてくれる相手には弱いところも、いとこ同士でそっくりだ)
同性同士だがまるで美雪と金田一のやり取りを見ているようで微笑ましく、ニコニコしながら眺めているとフミは小城をキッと睨みつけてきた。
「見せもんじゃねーから!」
「「フミちゃん?」」
「うぅ~、時雨姉、るり姉。だってこいつが笑うから~」
注意する声のるりと微笑みながらたしなめる時雨の声が重なり、フミが情けない顔になる。
「そうだね、僕が悪かった。
さっ、三人もここでのんびりするために来たんだろう? 僕なんかにかまってないで、ケーキでも食べるといい。勿論、無駄な時間を使わせてしまったから僕の奢りだ」
「小城さん、それは・・・」
「拓也お兄ちゃん、私達もお小遣い貰ってるから・・・」
「え、マジで? ラッキー! いっぱい食べよーっと」
「「フミちゃん?」」
二人の姉から注意に今度は舌を出してお道化ながら自分達のテーブルに向かうフミに追いかけるるりと、一礼してからテーブルにむかう時雨に手を振って見送った。
三人と入れ替わる形でホットサンドと紅茶を手にした緑が顔を出して、小城の前においてくれた。
「ありがとうございます、緑さん。
いただきます」
「えぇ、どうぞ召し上がれ」
緑からのそんな言葉にどこかくすぐったくなりながらホットサンドを口にすればカリッとしたパンの間から溢れるチーズと食べ応えのある厚みのあるベーコン、チーズとベーコンにも負けない濃厚なトマトとシャキッとしたレタス。それぞれのうまく合わさることで絶品のサンドイッチが完成していた。
「美味しいです」
「よかった。
ホットサンドならボリュームのあるメニューが増やしやすいから作ってみたのだけど、男性のお客様達にもうけているようで嬉しいわ」
「これだけ美味しいんですから納得です」
客が小城とるり達だけということもあって、一息つくように飲み物を飲みながら軽い休憩に入っていた。
「時雨ちゃんとるりちゃん、フミちゃんと仲良く出来ているようですね」
「金沢にいた時はあまり自由にお友達を呼んだりもできなかったから、るりがあぁして笑っていてくれると嬉しいわ。
特に時雨ちゃんとは気が合うみたいでよく病院や自宅にも行っていて、私も葉月さんと親しくなれて今度ちょっとした食事会を開こうかってお話もあがっているの」
「それはいいですね、どうか楽しい時間を過ごされてください」
「ありがとう、小城さん。
でも、葉月さんはあなたにもお礼を言いたがっていたから、ぜひ会ってあげて」
「時雨ちゃんの件について、僕はほとんど何もしてませんよ。
確かに彼女の治療には僕が作った団体の一部から支援のお金は出ていますが、それだって秋絵ちゃんの相談から始まったことですから」
事実を口にしても、緑は優しい微笑みを浮かべて首を振る。
「そうだとしても、あなたがしたことであることに変わりはないもの。
どうか葉月さんの感謝の気持ちを受け取ってあげて」
「・・・わかりました」
彼女の言葉を受け止めながら、フミにはばれない程度に三人のいるテーブルをちらりと見る。
不幸な死を迎える筈だったるり、金田一同様に様々な事件に巻き込まれるフミ。そして奇病に侵され、母の再婚相手である義父に手を出され、挙句叔母の痴情のもつれに巻き込まれ、母のために被害者のとどめを刺し、自ら命を終えることを選んだ少女 朝木 時雨。
(出身が同じ長野の山村だからって麗美ちゃんと
秋絵が愚痴として零した話を麗美が真剣に耳を傾け、檜山を通して小城の慈善団体の活動を確認。その結果、葉月と時雨は東京に引っ越し、団体の支援を受けながら最新の医療で時雨の延命。そして、完治に向けて行動している。
(でも、この間の想子ちゃんの一件でも思ったけど・・・)
テーブルの上に勉強を教え合っている三人、
(いろいろと便利でお金を使いたいから用意した団体だったけど、作ってよかった)
小城が直接かかわっていないため、現在の朝木家の家庭内の事情については不明だが、少なくとも義父から離れている以上は時雨が性的虐待を受けてはいない筈だ。
「ねぇ小城さん、もしかしたら今度弁護士さんを紹介してもらうことになるかもしれないの」
「どうかしましたか?」
「あぁ、私ではないの。
葉月さんと秋絵ちゃんからね、ちょっと相談を受けていて・・・ いろいろとあって、離婚を考えているみたい」
そう言いながら緑が視線を向けていたのは時雨であり、その視線の意味を理解して小城の中で激しい怒りが生じ、遠い長野の山奥で陶芸家をしている男へと殺意を向ける。
(
どのタイミングかはわからないが、葉月と秋絵は時雨が冬生に性的虐待をされていることを知ってしまったのだろう。
(どいつもこいつも・・・! なんで理性を持たない獣のような大人がこの世界には多いんだ!)
少女に手を出す男への言いようのない嫌悪を表情に出さぬように拳を握り締め、気持ちを誤魔化すように紅茶を口にする。
「わかりました。
ですが、弁護士に相談するほどのことなら僕から繁樹さんに話を通して、そこから離婚に強い弁護士を紹介してもらいましょう。その方が詳細を知る人間をより少なく出来ますから」
「ありがとう。
葉月さん達の日程を合わせて、一度事務所に行くように伝えておくわ」
「いえいえ。僕はただ繁樹さん達との仲介するだけですので、今回は本当に大したことは出来ませんよ。
それに・・・」
勉強をしながらも三人の少女は顔を合わせて笑い合い、その光景を見て、何故か無性に涙が出そうになる。
「家族を守りたい気持ちと思うのは当然のことですよ。
もっとも、僕には無縁なんですが」
少しお道化ながら肩を竦めると、緑が悲しげな表情を見せるものだから慌ててしまう。
「緑さ 「今度、あなたのお父様のお墓参りをさせてもらってもいいかしら?」
想定外の申し出に小城は困ってしまい、何も言えずにいると緑は変わらぬ優しい目で彼を見ていた。
「同じ親として、あなたのお父様に教えてさしあげたいの。あなたの息子さんはとても立派ですって」
「・・・エリート街道からはずれて、こんなことをしている息子でも、そう思ってもらえるものでしょうか?」
『こんなこと』には緑が知るはずもない多くの意味を含めて、誰にも出来ない問いかけを父と同じ人の親である緑に問うてしまう。
「あなたがどんな仕事に就いても、世にいうエリート街道からはずれていても、子どもが幸せに生きててくれたら、親としてこれ以上に嬉しいことはないわ。
それだけでも十分なのに、あなたはたくさんの人を幸せにする手助けまでしている。お父様はきっと、あなたを誇りに思ってることでしょうね」
微笑みながら告げられた言葉は、小城の心に突き刺さる。
(あぁ・・・ 重いなぁ)
嬉しい言葉の筈なのに、父の行動から見てもわかっていた筈なのに、それでもどこかが重くなる。
その重さが責任なのか、息子に復讐をさせぬための父からの重石なのか。それともこの重さすらも幸せを壊したあの男へと向けるための凶器なのか、小城にはわからない。
「そうだったら、嬉しいですね」
心にもない言葉を返しながらホットサンドを食べ終えるとフミが緑の元にかけてきて、いくつかのケーキを注文していく。
「で、このケーキ全部、そこの所長さんの奢りで!」
「おい、フミ! 何やってんだ!!」
フミが元気よくそう言ったところでバイトの時間になった金田一がカフェに突貫し、フミを猫掴みする。
「あんだよ、離せよ! はじめ!」
「お前、所長にケーキ奢らせてんじゃねぇよ! つーか、いつもなら被る猫どこやった!?」
「うっせーな、あたしだって猫被る相手ぐらい選ぶっつの!
大体、こっちを見透かす奴に猫被るだけ無駄じゃん!」
目元と眉毛がそっくりないとこ同士が顔付き合わせて喧嘩している姿を笑っていると、時雨とるりが二人の元によってくる。
「あん? るりちゃんと誰? この美少女は」
金田一がそう言った瞬間、フミによって金田一への鳩尾に鋭い蹴りが入る。
「フミ、おまっ・・・ 何、人の鳩尾に蹴り叩きこんでくれてんだ!」
「時雨姉とるり姉を変な目で見たり、手ぇ出したらしばくから、覚悟しとけよ?」
「フミちゃん! はじめお兄ちゃんに酷いことしちゃ駄目!」
やや強い口調でるりがフミを注意していると、蹲っている金田一へと時雨が声をかけた。
「大丈夫ですか? 金田一さん」
「えっと? 俺らどこかで会ったっけ?」
「いいえ、初めましてです。
でも、秋絵義姉さんやるりちゃんやフミちゃんから話を聞いていたので、なんだか自分の中で知り合いみたいな気持ちになってしまっていて・・・ 不快にさせてしまったらごめんなさい」
「全然そんなことないから謝んなくたっていいよ。秋絵って、朝木秋絵? あいつ、こーんな可愛い妹居たんだ・・・ って、いっで!」
「お前、数秒前に注意したばっかだろうが!」
時雨と仲良くおしゃべりしようとした金田一の足をフミが両足ジャンプで踏み込めば、いとこ同士とはいえ兄妹喧嘩の第二回戦が勃発する。二人を止めようとるりが動いているが、一人ならば止まるが金田一が二人もいるとなかなか止まらない。
「人がいない時間帯でよかったなー」
「小城さん、それは現実逃避だと思います」
棒読みでそんなことを言ってると時雨からなかなか鋭いツッコミが入り、苦笑いしてしまう。
「そうだね。
ちょっと上の電話を使って美雪ちゃんを呼ぶから、時雨ちゃんはここを見ててくれるかい?」
「はい、わかりました」
「ありがとう、よろしくね」
この場を時雨に任せ、小城はもう一人の仲裁役を呼ぶために事務所へ向かうのであった。
キャラ紹介行きます!
朝木 時雨
→ 『雷祭殺人事件』における犯人・・・ ではなく、被害者である武藤恭一にとどめを刺した子。原作の七年前から奇病に侵され、その命は事件があった夏が『最後の夏』とされるほど短命であることを運命づけられていた。また、陶芸の才に秀でている。
が、今作では彼女のことを心配する秋絵によって小城と繋がり、最新の医療や金銭的支援もあり、すぐに死ぬという事態を避けることが出来ている状況。今後も継続的な治療を受けていく予定である。秋絵から麗美、麗美から事務所のメンバーという繋がりを持ったことでるりと知り合い、年は二つ離れているが気が合う模様。また、るり経由でフミと出会ったことで遊びを知り、とても楽しい日々を送っている。
朝木 葉月
→ 時雨の母にして秋絵の義母、原作では冬生を殺し、それを目撃した被害者である武藤恭一に脅され、体の関係などを強要されていた。原作では事件解決と時雨の死後に村を出て、冬生を殺したことで警察に出頭した。
今作では秋絵から話を聞いて小城が作った慈善団体の支援の下、時雨の治療もあって東京に引っ越している。またその際に判明した冬生による時雨への性的虐待を知り、離婚に向けて動き出している。
朝木 秋絵
→ 冬生の実子であり、時雨の義姉、葉月の義娘。原作では父が亡くなったことから故郷に戻り、雷祭に金田一と美雪を誘ったことが事件の始まりである。父も、叔母も、義母も、義妹も全て失った彼女は陶芸家として名前を『秋雨』としており、時雨に対する彼女の想いが垣間見える。作中でも彼女が時雨に向ける言葉は優しく、とても血の繋がりのない関係とは思えないのだが、一方で時雨から彼女に話しかけるシーンはあまりない。
今作では彼女が麗美に相談したことで誰も死なずに済んだ一方で、父が時雨にしたことを知ってしまった。そのため、彼女は父との縁切りも視野に入れており、陶芸家になるにしても朝木は途絶えることになるかもしれない。
朝木 冬生
→ 義理の娘に手を出したクズ。殺されたのも完全に自業自得である。
ひと夏なんて言わずに少しでも長く、可能ならこの先もずっと生きててほしいよ。
蝶にも蝉にもならないで、ずっとずっと笑っていて(´;ω;`)