小城探偵事務所   作:無月

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独自解釈、原作改変、盛沢山。

小説版の事件、二本目ー!
三話構成なので、明日明後日はいつもの朝六時に予約投稿しておきます。
個人的には金田一の中でトリックがピカイチだと思っている今回の事件、楽しく書けました。

さぁ、皆さんもどうか楽しんでください。


電脳山荘殺人事件 (上)

「今日も今日とて、俺、参上!

 というわけで、おはよーございまーす! 今日も金田一 一、元気にバイトに出勤しました!」

 

 いつも通りアホなことを言いながら事務所に入ると神棚の前には前回の出勤の時にはなかった新しいパソコンが置かれ、画面の前にはマガドリ様が当たり前のように座っていた。

 

「え? ・・・え!?」

 

 誰も何も言わずにそれぞれの仕事に向き合っていることもあって、一度はスルーしかけたがおもわず振り返って二度見する。

 

「えっ!? なんでマガドリ様がパソコンいじってる上に、黒河さんまでこっち(事務所)にいるんすか?」

 

「こんにちは、金田一くん。

 私がここにいるのはそうね・・・ マガドリ様のお導き、とでも言っておけばいいのかしら?」

 

「え? 尚更意味わかんないから後ろから見守ってる所長、説明してもらっていいっすか?」

 

 パソコンの真正面にマガドリ様、その右隣にはサバト三人娘こと不動芸術高校 映研部のマドンナ 黒河 美穂が座り、その後方から見守るようにしている小城へと説明を求めると彼は困ったように笑う。

 

「いや、マガドリ様・・・ ミコトちゃんが夢にまで出てきてパソコンをねだるものだから買ってあげたんだけど、そうしたらブログをしたいって言いだしてね?」

 

「ブログ!? なんのっすっか!?

 っていうか、言葉わかるようになったんすか!?」

 

「お告げというか、占いをメインに据えたいみたいでね・・・ それで知り合いの何人かに協力してもらうことになったんだよ。あと僕は流石にミコトちゃんの言葉はわからない、仕草とかそういうのでわかる時が多いだけで」

 

 誰が言葉がわかっているかを明言を避けつつ、驚きまくりの金田一が美穂とは逆側から画面を覗き込む。そこには『神降臨!』と題されたブログが完成していた。

 紹介文中にはホロスコープだけでなく手相とダウジングの説明もあり、古典的な占い師のような顔を隠すようなローブを頭からかぶり、手元だけが映るように撮影された女性三名が映っていた。

 

「って、残り二人も舘羽さんとえみりちゃんじゃん!? なんで身近で占いの人員が全部揃っちゃってんの!?

 っていうか俺、舘羽さんが手相占い出来るとか初耳なんですけど!? どゆこと!?」

 

 マガドリ様と美穂の間近で叫ぼうとする金田一の頭を鷲掴みにすることで無理やり方向を変更し、小城は徐々に手に力を籠める。

 

「金田一くん? 君の素直なところも大きな声が出せるところも非常に良いところだと思うんだけど、周りを見ないで行動しがちなところは本当にどうかと思うんだ。

 僕が何度注意すれば、君は改善してくれるのかな?」

 

「いっだだだだだ! だから、所長って握力いくつあるんすか!? その女の子みたいな白い手で、実はリンゴ握り潰せたりしません!?」

 

「いちいち測ってないから正確なところは知らないけど、リンゴを握り潰すのに必要なのは八十キロの握力だとされているね」

 

「それが出来た時点でゴリラだから!」

 

「アハハ、ゴリラの握力が八十程度なわけないだろう?」

 

 ちなみにゴリラは四百から五百の握力があるとされており、一般的な成人男性の握力は四十後半とされている。さらに詳しく言うとリンゴを潰すという握力も軽度から完全なものまでに幅があり、六十から八十とされている。

 

「というか舘羽くん、手相占いが出来ることを話していなかったんだね?」

 

「手相占いは元々趣味の延長だもの。占いで生活していけるのなんて本を執筆したり、しっかり店舗構えたり、メディアに出演しないと無理なんじゃない?

 それに・・・ ちょっと自信なくしたのよね、結構大きな占いを外しちゃったから」

 

「それは僕も初耳だな、揚羽は知ってたかい?」

 

「はい、知っていました。

 ですが、姉様ご自身の手相だったらしいので、兄様が知らなかったのは無理がないかと」

 

 自分の席から発言する徹に揚羽は苦笑しながら答えるあたりで彼が関係する内容であることを周囲が察して深く追求することをやめ、舘羽が自分の手を軽く見て、溜息を零す。

 

「しばらくやってなかったんだけど、趣味の一環としてちょっと手伝うくらいならまた初めてもいいかと思って。これでも評判良かったのよ? 結構当たるって。

 金田一くん、見てあげましょうか?」

 

 何かを誤魔化すように笑ってから得意げにする舘羽に金田一が自分の手を見つめ、すぐに隠した。

 

「いやぁ、当たったら怖いし、当たんなくても怖いんで遠慮しときます」

 

「それがいいかもしれないわね、占いなんて当たったら嬉しいぐらいが程よい付き合い方よ」

 

「同感です。見えすぎる未来なんて凶器と同じで、何かのきっかけで簡単に結果が変わってしまうのもまた未来・・・ 占いなんて、その瞬間に見えている未来を伝えることしか出来ない不安定なもの。

 もし結果が変わらないものがあるとしたら、それはもう何かが終わった後ということですから」

 

 意味深に自分のノートを見てから、彼女はパタリと閉じてしまう。

 

「それではマガドリ様、小城さん、皆さん、今日はこれで失礼します」

 

「あぁ、わざわざありがとう。

 また何かあったらミコトちゃんが夢枕に立ったり、烏の遣いを出したり、僕から連絡すると思うからその時は頼むよ。勿論、バイトとして給与も出すからね」

 

「なんで連絡よりも前にその二つが来るんだよ!」

 

 芸人のように胸を軽く叩くツッコミを金田一がしてきたが痛くもかゆくもないのでスルーしていると、マガドリ様が『(#^ω^)お前、何してくれてんだオラ』と飛び上がって彼の頭に蹴りを叩きこんだ。

 

「いっだ!? ミコトちゃん、これは軽いノリツッコミだから! 所長に怪我をさせるとかそういうのじゃないから!」

 

 蹴りから飛行での突き攻撃に転じ、金田一を追い掛け回すマガドリ様を小城が溜息交じりに優しく掴んで止める。

 

「はい、そこまで。

 ミコトちゃんもこれぐらいで怒らなくていいから、おやつにしよう」

 

 マガドリ様が(・´з`・)という不満げな顔をするが、目の前に本日のおやつであるカステラを出すと°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°と上機嫌に変わり、飲み物も牛乳と緑茶などを書いて渡すと迷いなく緑茶を指差した。

 

「所長、ミコトちゃんのことを甘やかしすぎじゃないですか?」

 

「僕は所員全員に同じ対応をしているつもりだけどね」

 

「いや、そもそも神様を所員扱いするってのがあれなんすよ・・・」

 

 同じように配られたカステラをバクバクと食べる金田一を見ながら、その場にいる他の面々が『お前が言うな』と思うが、小城は涼しい顔で紅茶を口にする。

 

「ミコトちゃんも遊び道具としてパソコンが欲しかったわけじゃないし、収益はこっちに納めてくれるとのことだから僕が反対する理由はないよ。

 それにこれまで面倒だったから事務所用のサイトを作ってなかったからね、ミコトちゃんが使い方に慣れてきたらそっちの運用も任せようかと検討中だよ」

 

「マジで所員として働かせる気なの!?」

 

(いや、貢献度で言ったら結構働いてくれてるからな? この子)

 内心で思ったことを口にするようなことはせず、わざとらしく少し考える素振りをする。

 

「ミコトちゃんがやりたいっていうならやってもらうのもいいかなぁって思ってるってだけで、無理に働かせる気はないんだけどね。

 マリアくん、ミコトちゃんはなんて言ってる?」

 

「ミコト様は凄く楽しんでマスヨ? むしろブログをやらせてくれるコトモ、今後事務所のサイトをマカセテクレルコトも、楽しみにしています」

 

「マリアさん、ミコトちゃんの言葉がはっきりわかってんの!?」

 

「アゲハさんもわかってますよ?」

 

「いえ、私はマリアさんほどはっきりと言葉を聞けていなくて・・・ 最近、少しずつ聞こえるようにはなってきたんですが」

 

(え? 言葉がわかるようになってるのは初耳なんだけど・・・?

 聞こえたりしてる条件、マジでなんなんだ?)

 まったく知らなかった事実に内心驚きながらも、おやつを食べ終えたマガドリ様はパチパチとキーボードを叩き、また作業を始めてしまう。

 

「ミコトちゃん、そこまで根を詰めてやらなくて、も?」

 

 声をかけながらパソコンの画面を覗くとそこにはどうやってログインしたかもわからないチャットルームが開かれており、知りもしない数名の仲の良い会話文が表示されていた。

(は? チャットルームっていろいろと許可されたり、登録したりしないと見れないんじゃなかったっけ?)

 見てはいけない他人の、それも仲間内のような会話を覗き見ているようで気まずくなり、マガドリ様の手に自分の手を重ねる形でマウスを操作し、すぐに表示を消そうとしたのだがそこに表示されていた数名の名前と会話文から目を見開いて固まった。

 表示された名前は〈僧正〉 〈ぱとりしあ〉 〈スペンサー〉 〈乱歩〉 〈アガサ〉 〈ワトソン〉 〈シド〉の七名。スクロールすればミステリー好きが集まって自分が好きなミステリーや最新作などについて語り合う何気ないものなのだが、一番新しい会話に表示されていたのはそんな微笑ましいものとはかけ離れた完全犯罪の計画書。

(電脳山荘殺人事件、なのか?)

 手が震え、彼らの・・・ 〈僧正〉の発言から始まった七名による完全犯罪の計画は、皮肉なことに実によく出来ていた。

 一人一人が行うことは些細なこと、しかも互いに顔を知らない他人であることで候補があがった被害者も含めて一見では繋がりも見られず、その場での連携はとらずチャットのみでの連絡しか取らない。このチャットルームの存在を知らなければ、彼らはあくまでただの他人でしかないことが警察の捜査を難航させることは間違いなく、だからこそ原作においてきっかけとなったこの事件は事故として処理されたのだ。

 

「小城さん、どうかなさったんですか?」

 

「カオイロが悪くなってマスヨ?」

 

「あ、あぁ・・・ いや、ちょっとね」

 

 咄嗟に二人から画面と自分の顔色を隠しながら、マガドリ様の隣にいた金田一が小城の目を盗んで画面を覗きこんだ。

 

「え? これって・・・」

 

(隠してることは見てわかんだから、お前も見てんじゃねーよ!?)

 声に出すわけにはいかない叫びを心の中に押しとどめて、金田一に『シーッ』とジェスチャーする。そのジェスチャーに金田一も真剣な表情で頷いたのを確認してから、マガドリ様にも視線を向けると静かに頷いてくれた。

(なーんでミコトちゃんの方が理解力が高いのかなぁ?)

 マガドリ様が何やらいろいろと操作しつつ、所長室を指差したので三人でアイコンタクトを行う。

 

「あぁそうだ、金田一くん。青森の子達からその後の話とかを聞きたいから、所長室で話そうか」

 

「うぃーっす。

 所長、聞いてくださいよ。都の奴がこの間、書き始めたミステリーの原稿渡してきてさぁ。まだまだしょぼいトリックだったから速攻解いて駄目だししてやったら、次の日には電話で怒鳴られちゃって~」

 

「うん、君が悪いね。というか、君からしたら大抵のトリックはしょぼいでしょ。

 都ちゃんに美雪ちゃんやるい子くんを紹介して、その原稿を試し読みしてもらうようにした方がまだマシだと思うよ」

 

 この人選も結構シビアな意見を返してきそうだが、トリックをボロクソに言われるようなことはない・・・ 筈だ。きっとおそらく、多分。

 

「それいいっすね! 都もこっちで友達出来たらもっとこっちに顔出すかも知んねーし、ミコトちゃんもあっちの神様と交流とかしたらどうよ?」

 

 さりげなくマガドリ様を抱っこしながら一緒に所長室に入り、小城のパソコンにもさっきと同じ画面を出すようにマガドリ様を促すと、どうやったか全くわからないが先程のチャットルームが画面に表示された。

 

「所長、これって一体どういうことっすか?」

 

「チャットルームは本来特定の人間しか入れないようして仲間内での会話を楽しむものだから、なんで画面に映ったとかは正直わからない・・・ 問題は会話の内容だ」

 

 会話は既に計画実行を残すのみとなっており、計画の詳細の最終確認と場所の選定、ターゲットの選定、場所として選ばれた喫茶店には既に〈乱歩〉がアルバイトとして潜入が終わっている。

 

(まずいまずいまずい! これはまずい!!

 どうする? どうすれば彼女を『トロイの木馬』とせず、彼女を救ってくれた婚約者を守れる!?)

 

「所長、俺、おっさんに連絡取ります。

 で、俺達はこのままここで待機して、仕事終わりに来てもらいましょうよ」

 

「そう、だね。

 仕事終わりなら警察としてじゃなく、『警察官の知り合いに相談』という体が取れる。そうしよう」

 

(落ち着け、突然事件に関わることになったからって慌てるな。パニックになっても動きが悪くなるだけだ)

 金田一の申し出に小城は冷静を取り戻すために深く呼吸し、胸ポケットから飴を取り出して口にくわえる。ストロベリーとカスタードクリームが合わさった甘酸っぱくもミルキーな味わいに癒されていると、マガドリ様にも『(/ ´▽`)ノチョーダイ』とねだられたのでコーラ味を手渡すと慣れた手つきでめくって上機嫌に棒を揺らす。

 

「ミコトちゃん、また菓子食って~。さっきカステラ食ったばっかなんだから太るぞ~?」

 

 金田一の揶揄いに対して、マガドリ様が『(# ゚Д゚)お前、マジ不敬』とじゃれ合うのを見ながら、考えることに集中する。

(剣持さんに状況を説明しても、いたずらの可能性もある以上は警察はまだ動けない・・・ そうなると、この計画をどこかで狂わせることで防ぐしかない)

 この事件の最大の皮肉は亡くなった被害者が前を向くきっかけにもなったことであり、犯人である琢磨 ゆりが調査を始めた理由も彼が救おうとしていた自殺志願者の女子高生を思い留まらせるためだった。

 だが、調査の末に彼女が知ったのは自殺志願者の女子高生は真っ赤な嘘で、事故で片付けられた婚約者の死の真相と彼らの計画、さらに各自の行動が些細なことだったが故に『人を殺した』という認識すらも持っていなかった ――― それらの事実が彼女を、『トロイの木馬』へと変えたのだ。

 

 

 

『気がついたら、あの子が ―― 〈アガサ〉が目の前でぐったりしてた。

 頭がガンガンして、全身がシャワー浴びたみたいに汗でびしょ濡れで・・・ でもね、あたしは感じたの。頭の奥の方に、冷たい氷の塊みたいなものが生まれたような感覚を。

 スイッチが入った気がしたわ、復讐ゲームのスイッチが』

 

 自分を変えてくれた恩師であり、人を殺してしまったとずっと俯いていた彼が前を向き、婚約指輪を渡してくれた日。そして、これからも続いていくと思っていた幸せな未来を奪い、壊した七人を。

 

『賢くて正確で無機質で、それに何より悪意に満ちているの。

 パソコンに入り込んでプログラムを滅茶苦茶にするコンピューターウィルス〈トロイの木馬〉のようにね』

 

 彼女はもう感情もなく、ただ淡々と死というウィルスをもって破壊しよう(殺そう)としたのだ。

 

 

 

 画面に映った彼らのやり取りを見ながら、犯人の婚約者である『榊原秋男』が選ばれた理由を思い出す。

(『過去に重い罪を犯していながら、大した罰を受けてない人物』、か。

 そういう意味では僕がしていることも、こいつらと大差なんてないのかもしれないな)

 生徒を正そうとした結果、ビンタをした日に女子生徒は昏睡状態となり、三日後に亡くなった。それだけでなく学校側が揉み消してしまったことで、正義感が強かった一人の教師の心は壊れ、潰れてしまった。

 多くの人間は彼を罪人と判断し、当人もまた自分の罪だということを認め、藻掻き足掻き苦しみ、そこに蜘蛛の糸のように垂らされた『自殺志願者の生徒を思い留まらせる』という贖罪への道。

(高遠さんと俺がしたこととこいつらがしようとしていること、一体何が違う?)

 北海道で殺人鬼である彼と共に闇に葬ったある男の素顔を思い出し、それ以外にも殺していないだけで罰を与え続けた多くの者達が脳裏をかすめながら、心の中で自嘲するような笑みが浮かぶ。

 

「所長? どうかしたんすか?」

 

 何も言わずに黙っていた彼の顔を金田一が覗き込んでおり、小城は冷え切った心を隠すように笑顔を貼り付ける。

 

「なんでもないよ。

 ・・・ターゲットにされてる私立高校の元教師に、仕事を紹介しようかと考えてただけさ」

 

「え? この人のこと知ってんすか?」

 

「君、もう少しニュースを見る習慣をつけようね。

 それとも事務所に来たら、日常的に最新のニュースについて話題にするようにしないと駄目かな?」

 

「そんな子どもみたいな!?」

 

 そんなやり取りをしてから金田一はすぐに剣持と連絡を取り、終業後にファミレスで待ち合わせることとなった。

 

 





マガドリ様が定期的にとんでもないことをやらかす二次創作、小城探偵事務所(笑)
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