小城探偵事務所   作:無月

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独自解釈、原作改変、盛沢山。

珍しく平日の朝に投稿ですが、書けたのでやっちゃいます。
が、本当はこの話で事件の始まりまで書きたかったのですが、書けなかったので土日に頑張ります・・・ どの事件かは決まってる、決まってるんや・・・

さて、次の事件かが何になるかを考えながら、今回も楽しんでください、


食事会

 電脳山荘組の殺人計画を未然に防ぐことに成功してから早一週間が経過し、小城は今日、明智に呼び出される形である高級レストランの個室にいた。

(だから、なんで男同士でこんなデートみたいなことしなきゃならないんですかねぇ!?)

 いくら明智が多忙になって昼間に時間がとれないとはいえ、高級レストランで、男同士が、夜に食事会(ディナーデート)。一体誰得なのかと頭を抱えたくなるのだが、元々は食事に誘ったのが自分であったこともあって、場所までセッティングしてくれた明智に文句を言える立場になかった。

(まぁ、どのみち明智さんにはいろいろと聞かなきゃいけなかったからいいんだけどさぁ)

 が、男と二人で食事会(状況)はともかく、明智との二人きりでの話し合いは小城としても望むところであった。

 

「待たせてしまいましたね、小城くん」

 

 そんな言葉と共に入室してきた明智に立ち上がって頭を下げれば手で制され、互いに席に座り、見計らったように運ばれてきた食事と酒を楽しむ。

 

「本当ならもっと早く時間を作りたかったのですが・・・ 先日の事件で類似の事件がないかなどの捜査などが始まりまして、近く法整備の動きへと変わるでしょう」

 

「僕が仕事を作ったようで、なんだか少し申し訳ないですね」

 

 先日の一件から調査や捜査の幅が広がった事実を知って苦笑いと謝罪をするが、明智は『かまいません』とばかりに手をあげる。

 

「むしろ私達は君に感謝する立場ですよ。まだまだ新しい技術であるパソコンの、無限に広がるネットという世界 ――――― 君はその危険性をいち早く理解し、危うく殺人に至っていたかもしれないこの件を事前に防いでくれた。

 本来なら感謝状を贈られるべきにもかかわらず、皮肉なことに事件が起こらなかったことによってそれすらも贈ることが出来ない。私はそれがとても心苦しい」

 

「やめてください、明智さん。

 事件が起こらなかった、これ以上の結果はないでしょう?」

 

「いいえ、君はわかってない。君の働きは正しく評価されるべきです。

 君の貢献はもはや一言では済まされない。いっそ君の功績を一覧にして、警視総監に提出したいくらいですよ」

 

(なにそれ、本気でやめてほしいんだけど?)

 明智だったら本気でやりかねないことを言われて何も言えずにいると、彼の妙にニコニコとした表情に気づく。

(あ、こいつ、本気で提出する気だわ)

 

「明智さん、いくら僕の実績を見せつけて警察にしようとしても無駄ですよ。僕はそもそも制服を着れません」

 

「制服を着れない、とは?」

 

「バルト城の時も少し話しましたが・・・ 僕は幼い頃妹ともに誘拐に遭い、結果妹は今も攫われたまま、父は僕の目の前で殺されました」

 

 淡々と語ると明智は知っていたとばかりに頷くを見て、言葉を続ける。

 

「その時の父の死がトラウマになっていて、僕はネクタイを首に巻けないんですよ。いえ、より正確にいうならば首にかかるネックレスやマフラーなどの類いも全て、つけられないんです。

 だから僕は、就職活動がまともに出来ませんでした」

 

「それは・・・」

 

「困ったことに、このトラウマに気づいたのは面接直前でしてね。

 お恥ずかしい話、ネクタイを締めようと必死になっていたら意識を失ってしまいまして・・・ 面接時間に間に合わなかったんです」

 

 大袈裟に身振り手振りをして笑いを誘っても明智は神妙な顔をして聞いており、小城は苦笑する。

 

「笑ってくださいよ、明智さん。

 これまでもネクタイをしてきたにもかかわらず、これからの人生を左右するような時になってフラッシュバックが襲ってきて、自分の中に刻まれていたトラウマと忘れていた記憶を思い出すなんて・・・ なかなかドラマチックで笑える人生でしょう?」

 

「笑いませんよ」

 

 明智の即答に戸惑っていると、彼はもう一度言う。

 

「他の誰が君を笑っても、私は君を笑いません。確かに傍から見れば、君の就職を失敗し、君がこれまで築いてきた全ては無駄に終わったように見えるかもしれません。

 ですが、君はそこで立ち止まることはなかった」

 

(やめろ・・・)

 まっすぐで、まるで射貫くような目が小城を映していた。

 

「探偵とトレジャーハンターと言う立場を柔軟に使いこなし、仕事という括りがなくとも人を助けることに躊躇いがなく、その利益すらも慈善団体を使って社会的弱者を救うことに費やし続けている」

 

(頼むから、やめてくれ)

 

「それだけで君は・・・ いいえ、『それだけ』などという言葉は失礼ですね。君の行動は全て、評価に値するものです。あなたは胸を張るべきであり、相応の報酬と対価を得るべきです」

 

(頼むから、そんなまっすぐな目で・・・ 俺を見るな)

 目を逸らしたくなる衝動と今にも崩れてしまいそうな表情を精神力のみで押さえつけながら、小城はやんわりと首を振る。

 

「いいえ、僕はただ身勝手なだけです。

 目の前に突然起こったことを必死に対処し、僕は僕の良いように様々なところから力を借りて行動している ――――― ただそれだけです」

 

 再び場に沈黙が訪れ、明智と小城の視線が混ざり合う。

 互いに信頼を置き、友好を向け合っている間柄でありながら、互いの腹の中を探り、本心がどこにあるかを見定めようとしている。

 

「・・・そう言えば金田一くんから聞いたのですが、地獄の傀儡師が君のことを知っているようですね?

 何か心当たりはありますか?」

 

「いいえ、何も。

 知り合いは多いと自覚していますが、犯罪者の知り合いはいませんよ」

 

(彼が明智さんに話した、か・・・

 ということは、高遠さんが金田一に何か吹き込んだ可能性があるな。そこから金田一くんが剣持さんに相談、そこから明智さん・・・ そう考えると、剣持さんが様子がおかしかったのも納得がいく)

 何かが一本につながったような感覚を感じて、小城は偽りの仮面を被る。

 地獄の傀儡師との接触も、怪盗紳士からの依頼も、警察である彼らに話すわけにはいかない。

(・・・なんて、警察に話せない後ろ暗いことがある時点で僕は明智さんの言うような人物からは程遠いんだよなぁ)

 

「そうですか。では、今後彼が君に接触してくる可能性があります。

 その場合は身の安全を優先し、関わることを徹底的に避けてください。最悪の場合、君は彼に誘拐される可能性があります」

 

「大袈裟ですよ、明智さん。

 成人男性を誘拐して、彼になんの利点があるんですか」

 

「利点だらけですよ。

 君を誘拐するだけで君に関わる全ての業界への接触が簡単となり、利用することが出来る。さらに私や剣持さん、茅さんとも関わりがあることを考えれば、警察の動向を把握することも出来る・・・ 私が彼だったらまず間違いなく、君を狙うでしょうね」

 

「明智さんも、スカウトという点においては彼とそう変わらないじゃないですか」

 

「それだけ君は魅力的、ということですよ」

 

(だから、なんで男にこんなこと言われなきゃならんのだ・・・)

 ある意味、熱のある視線を向けられ、わざとらしく肩を竦める。

 

「同性から言われても嬉しくないのでやめてください」

 

「フッ、これだけ私を袖にするのは君ぐらいなものですよ」

 

「それなら女性を口説かれてはどうです? 明智さんを袖にするような女性はまずいないでしょう」

 

「君にも覚えがあると思いますが、経歴や地位を求めて集るような人間にはうんざりしているんですよ。

 小城くん、君の知り合いで素敵な女性はいませんか?」

 

 見るだけで冗談だとわかる発言に、小城は少し考える素振りをしてから迷いながらも言葉を選んだ。

 

「身内贔屓だと思われますし、最悪セクシャルハラスメントになるかもしれないので発言を控えたいのですが・・・ 舘羽くんとかどうでしょう?」

 

 言った明智もまさかそんな言葉が返ってくるとは思わなかったのだろう、珍しく無言で目を丸くする。

 

「彼女なら経歴や地位で人を見ることはありませんし、常識やマナー等も申し分ありません。仕事に関しても何事卒なくこなし、人員の配置については副所長であり兄である徹よりも優れているぐらいです。

 ですが、彼女もわけあって恋愛から距離を置いていた身です」

 

「つまり君としては、下手な男が近づくよりもある程度信頼のおける者に彼女を任せたいと?」

 

「えぇ、その通りです。まぁ僕がこうして守らずとも舘羽くんはしっかりしてますし、心配はないと思いますが・・・ 土日は下のカフェでは接客をしていることが多いので、それとなく食事などに誘ってみてはいかがでしょう」

 

「では、君の厚意と勧めに従って、まずは交流を深めていくことから始めるとしましょうか。

 彼女と交流を持てば君の事務所に足を運ぶ理由も出来ますし、カフェにも何度か足を運んでいますがコーヒーも食事も美味しいので気に入ってるんですよ」

 

「所員から警察関係者がカフェに出入りしていることは知っていましたが・・・ 明智さんが通われていたのは知りませんでしたよ」

 

 そうして穏やかな、仕事と関係のない話に花を咲かせながら、その日の夕食会を終えることになった。

 

 

 

 

 

 明智との食事会を終えてから初めての週末、今日は舘羽が非番ということもあって揚羽とマリアが事務仕事に励み、本日非番の狩谷と千家を除く男性陣も揃・・・ 寝坊か何かしている金田一以外はその場に揃っていた。

 

「あいつ、遅刻確定したんだったら連絡しろっつってんのに」

 

 檜山の苛立ちや怒りを交えた呟きに徹を除いた面々が苦笑いすることしか出来ずにいると、助けを求められたヒーローのようなタイミングで金田一(本人)が飛び込んでくる。

 

「所長! 徹さん! 緊急事態です!!」

 

 半ば事務所に転がり込んできた彼に何事かと全員の視線が集中すると、これまでのどの瞬間よりも真剣な表情で彼は叫ぶ。

 

「明智の野郎が舘羽さんをコンサートに誘ってました!

 俺達の姉ちゃんがあのいけ好かないエリート野郎にデートに誘われてるんすよ!? 緊急事態なんで所長も徹さんも今すぐカフェに降りてきてください!!」

 

 が、言葉の内容を理解して全員の目は真剣や真面目からはかけ離れたものに戻り、代表して小城が深い溜息を零した。

 

「君さぁ・・・ 明智さんへの対抗心だか、敵対心を本当にどうにかした方がいいと思うよ?」

 

「それは向こう(明智さんも)でしょ!?」

 

 二十八歳が十七歳に対抗心と敵対心を持っている事実を否定できず頭を抱えたくなるが、今はそんないつものことよりもさっきの情報(別件)だと思い、さらに注意の言葉を投げる。

 

「それは紛れもない事実だけど、別に明智さんが舘羽くんをコンサートに誘うことに何が問題があるんだい?

 明智さんもいい歳だし、舘羽くんだって自分で判断して行くか行かないかを決められるんだ。たとえ同じ職場でも、他人の恋愛事情に首を突っ込むんじゃない」

 

 明智に舘羽を勧めた当人が言っていいかわからない発言を口走りながら、金田一に呆れたような溜息を零す。

 

「だって嫌じゃないっすか! 俺らの姉ちゃんである舘羽さんと嫌味な明智がくっつくなんて!!」

 

「いや、お前の姉じゃねぇし。『俺ら』って複数形にしてんじゃねぇよ、俺は別に舘羽を姉だなんて思ってねぇよ」

 

「え? そうなんすか?

 だって、檜山さんが舘羽さんにとる態度って反抗期の弟とかによく似てますよ?」

 

「はぁ!? そんなんじゃねーし!

 つーかそれ、いつから思ってやがった!」

 

「俺個人の意見っていうか、森下が言ってたんすよね。

 俺が『バイトとはいえ、彼氏があんな美人に囲まれて不安になんねーの?』って聞いたら、『達之は浮気なんかしないし、舘羽さんとのじゃれ合いなんて反抗期の弟みたいだから全然心配してないんだよねー』って」

 

「麗美のやつ・・・!」

 

 絶対の信頼を置かれる一方でそんな生暖かい目で見守られていると知って複雑な顔をし、小城は深く溜息をつく。

 

「だからね、君がそう思っていたとしても舘羽くん次第だし・・・ って何、下に戻ろうとしてるんだい、こら! 待てと言ってるのに!」

 

 小城の制止も聞かずに再び下の階へと戻っていく金田一に呆れていると、次に先程から不自然なほど黙っている徹へと視線を向けると、眉間に皺を寄せて複雑な表情の彼がそこに居た。

(話しかけたくねぇ~・・・)

 当然そんな本心を口に出すわけがなく、困った顔をする揚羽やどうすればいいか迷っているマリアを安心させるように軽く手をあげる。

 

「徹、その複雑な表情はなんだい?」

 

「そこらの外見しか見ないようなくだらない男だったら反対も出来るのですが、明智さんほど優秀で所長の知り合いというお墨付きならば妹を幸せに出来る可能性が非常に高い・・・ けれど、兄として妹が自分の傍から離れるのはとても寂しい・・・」

 

「兄心は複雑だね」

 

(それは多分、お前がまだまだ婚約者時代の気持ちも抜けきってねーからじゃねーのー?)

 なんてことも、婚約者ではなく兄妹として切り替えようとしている二人(徹と舘羽)に言える筈もなく、苦笑交じりの溜息が零れた。そこで突然徹が小城の目の前まで来たかと思ったら土下座せんばかりに深く頭を下げ、声を張り上げる。

 

「所長、お願いがあります! どうか、どうか妹と明智さんのデートを見守っていただきたく・・・!!」

 

「あのねぇ、徹。僕だって兄だった身だから君が妹を大切に想う気持ちは痛いほどわかるけど、あんまりかまいすぎると本格的に嫌われるということを自覚した方がいいよ?」

 

「それはわかっています! ですが、最初のデートだけは・・・!」

 

(わかってないんだよなぁ~、最初のデートを実の兄で元婚約者に監視されてると知ったら、普通に許されないんだよなぁ・・・

 しかも実際に監視されてたのが職場の上司とか、頼んだ方も受けた方に対しても嫌悪感しかないわ)

 

「兄様、姉様の恋に口を出すのは・・・」

 

 控えめながらも揚羽からも注意が飛べば、徹もわかってはいるらしく肩を落とす。

 

「しかし、明智さんがねぇ? まぁ年齢差はともかくとして、すげぇ唐突だよなぁ」

 

「ヒヤマさん、そういうことはアマリおっしゃられない方が・・・」

 

「とにかくだね、妹の恋路に首突っ込むのは・・・「かまいませんよ、小城くん」

 

 締めくくろうと徹へと再度注意をしようとしたところで話題の中心にある明智と金田一が入室し、表情を取り繕うことも出来ずに固まってしまう。

 

「明智さん・・・」

 

「最初から二人っきりのデートが出来ると思っていませんし、私は恋愛に焦っていません。ですから、小城くんや金田一くんも連れて・・・ いいえ、時間が合うのなら希望する方も共にコンサートに行きませんか?」

 

 何かのチケットをちらつかせながら、歩み寄ってくる明智は室内にいる全員に微笑みかけた。

 

「まだ私と彼女が恋仲になるかどうかもわからないですが・・・ 事務所の皆さんに私という人間をわかっていただく貴重なチャンス、見逃す理由がありません。

 かまいませんよね? 小城くん」

 

 有無も言わさぬ明智の言葉に、小城は本日何度目かの深い溜息を零した。

 

「それ、僕の返答は実質一択じゃないですか・・・ 今の明智さんは、どう反論しても搦め手をとろうとするでしょう?」

 

「流石、私の友人だ。よくわかっていてくれて助かります。

 それでは所員の皆さんの参加の有無についてわかったら、君から連絡をください。あぁちなみに・・・ 舘羽くんからは色よい返事を既にいただいておりますのでご安心を」

 

(安心する要素はどこかな?)

 

「わかりました。

 人数が決まってから、改めて日取りを決めましょう」

 

 もう思考が考えることを放棄しつつあり、小城は諦めたように頷くほかなかった。

 

 





こいつ、女性にも割と好かれてるのに男とばっかりデートしてるな?
なんでかなー? 不思議だなー?


さて、実は書き出して割と早い段階で決めていたカップリングの一つを稼働させられました。この二人の恋はどうなるのか、見守ってあげてください。

さぁ、ここからどの事件に繋がるのか、皆さんお楽しみに(^▽^)/
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