小城探偵事務所   作:無月

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独自解釈、原作改変、盛沢山。

ラストー!
なので、後書きではキャラ説明行きます!

さて、金田一視点を書かないと邪宗館の面々が見えてこないぞぉ(;^ω^)



邪宗館殺人事件 ④ (終了)

 龍之介による罪の告白と自首を見届け、小城は宿泊させてもらっている橘の別荘に戻ると何かを予感していたらしい橘が玄関で待っていた。

 

「仕事と言って出ていった今朝の時点で顔色はよくなかったが、また随分と酷い顔になって戻ってきたな」

 

 からかうような言葉だが彼の表情には真面目であり、じっと小城のことを見つめてから肩を叩いた。

 

「詳しくはまだ聞かん、休んでなさい。

 食事は食べやすいものを用意させるし、あとで部屋に漢方薬を届けさせる。夕食後に飲むように」

 

「お手数おかけします・・・」

 

「なに、気にするな。

 君に恩を売っておくと何かと便利だからな、存分に頼るがいいさ」

 

 ニヤリと笑って自室へと戻っていく橘に深く頭を下げ、借りている客室へと向かう。質のいいソファに体を預け、深く呼吸をする。

(橘さんにまで気を遣わせる顔色、か・・・ 相当だな)

 吐き出した息は溜息になり、わざとらしく伸びをする。

(とりあえずこれで、勝負は勝った。

 高遠さんはあの子に手を出さない、それが出来ただけでも今回は良しとしよう)

 そんな考えていると控え目なノックの音が響き、扉の向こうから葵の声が聞こえてきた。

 

「小城さん、来客です。

 常葉様と名乗る女性なんですけど、お知り合いですか?」

 

「っ! あぁ、今行くよ」

 

 慌てて飛び起きて扉に開けると葵が小城の顔色の悪さを見て少々驚き、すぐに心配そうな顔に変わる。

 

「その、顔色が凄く悪いので・・・ ご無理はなさらない方が」

 

「ハハッ、先生にもそう言われたよ。

 でも大丈夫、今日行ってきた仕事の続きみたいなものだから・・・ 僕がしないといけないんだ」

 

「はい・・・ サイドテーブルにお薬を置いておきますので、夕食後に飲んでください」

 

「ありがとう」

 

 葵と別れ瑠璃子を待たせている部屋へと向かえば、彼女は先程の取り乱した様子はなく、ただ静かにソファに座っていた。

 

「やぁ、常葉さん。僕を追ってきたということは、何か聞きたいことでもあるのかな?」

 

「あなたにいろいろと言いたいことも、聞きたいこともあるの・・・ でも、まずは」

 

 そう言って彼女はソファから立ち上がり、深く頭を下げた。

 

「両親と弟達の死の真相を調べてくださって、ありがとうございます。

 あなたが来なかったら私はずっと、家族を殺した人を尊敬して生きていくところでした」

 

「僕は君に感謝されるようなことはしていな「したわ」

 

 小城の言葉を遮り、彼女は不思議とすっきりした顔で笑っていた。

 

「あなたは私に、家族の死の元凶が誰かを教えてくれた」

 

「だが、僕は同時に君の居場所を・・・ 大切にしていた場所を奪いもしたよ。

 子ども時代の六年はあまりにも大きい。ましてや、それが心の支えである家族を失った君や井沢くん、荒木くんにとって絵馬さんと邪宗館がどれだけ大きなものかは誰が見てもわかる」

 

「じゃぁあなたは、私があのまま家族を殺した人の庇護下にいることが幸せだと思う?」

 

 瑠璃子の言葉に小城は硬直し、口を噤んだ。

 

「沈黙は肯定、あなたもわかっているんじゃない。そうよ。私は今、知らなかった時よりも幸福なの。

 私はもう、あの館には帰らない。

 比呂達とは・・・ 連絡は取り合うとは思うけど、少なくとも今は近くで暮らせないっていうのが私の結論」

 

 きっぱりと答える彼女の即断即決っぷりに小城は何も言えず、瑠璃子へと困ったような顔を向けた。

 

「どうして、助けてくれたあなたがそんな顔をするの?

 六年ぶりに初恋の人・・・ 金田一くんとも再会出来て、真実も知れたのよ? 私は幸せなのに、どうして幸せを運んでくれたあなたの方が辛そうなの?」

 

「一つだけ、君に聞いてもいいかな?」

 

「えぇ、かまわないわ。それがあなたへのお礼になるなら」

 

 ポンポンと返される言葉はまるで演奏のようで、不思議な気分になってくる。

 

「君は今、絵馬さんをどう思っている?

 君をこれまで育てた彼を・・・ しかし、君を偽り、事故とはいえ家族を奪った彼のことをどう思っている?」

 

 あまりにも唐突なその問いかけに、瑠璃子は首を傾げる。

 

「それは好奇心? それとも・・・ そんな難しい顔をするってことは、あなたにも何か事情があるの?」

 

「僕は幼い頃、妹とともに誘拐に遭ってね。僕はこの通り帰ってこれたけど、妹は誘拐犯に攫われてそれっきりになってしまった。

 僕が探偵になったのはたまたまだけど、せっかくこの仕事に就いたからいろいろ調べてね。ごく稀に誘拐犯が誘拐した子どもを育てるっていう事例がある」

 

 そこで言葉を区切り、息苦しさを感じる喉をさすってから、嘘と真実が入り混じる言葉を吐き出していく。

 

「もし、もしも妹が生きていて・・・ 君と同じように憎むべき犯人に育てられ、同じように真実を突きつけることになったら、どうなってしまうのか。

 君に尋ねることで、一つの答えが知りたいんだ」

 

 真実によって傷ついたばかりの彼女にとんでもない質問を投げていることは自覚している小城は俯き、手を固く握りしめる。そんな小城の姿を見て、瑠璃子はクスッと笑った。

 

「あなた、金田一くんにちょっと似てるかも。全然雰囲気違うのに、凄くお人好しなところが似てる気がする」

 

「僕はあそこまでまっすぐじゃないよ。もっと捻くれてて、卑怯で、ろくでもない。

 今も君の傷を抉るような、最低な質問をしている」

 

「頭がいいのに馬鹿な人なのね? 本当に最低な人間はね、自分が口にしている質問の善悪なんてわからないし、考えないわ。

 質問に答えてあげるわ、よく聞きなさい」

 

 クラシック界のアイドルは、既に女王の風格を感じさせた。

 

「いくら幸せを積み重ねても、悲しみがなくなることも、憎しみを打ち消すことも出来ないわ」

 

「っ!?」

 

「確かにおじさまは・・・ あの人は私を施設から引き取って育ててくれた。プロのバイオリニストになるために最高の教育を与えてくれたし、実の娘のように愛してくれたことも間違いない。

 でも、だから何?」

 

 それまで表情豊かに話していた彼女の目が、暗く夜の闇のように虚無に染まる。

 

「私は確かにあの人を養父として慕い、敬い、父として愛していたわ。

 でも、あの人が誤表記をしなかったら、私は家族を失わなかった。両親も、弟達も生きていて、今も私と一緒にいれる筈だった!

 私は今、おじさまが・・・ あの人が憎い。家族を奪い、私に全てを隠していたあの人が! 憎くて憎くて仕方がないのよ!!」

 

 意識せずに大きな声になってしまった自分を恥じるように声量を元に戻し、虚無と激しい怒りを一度目を閉じることで納めていく。

 

「確かに邪宗館は居心地のいい場所だったわ、どこで公演に出ても帰ってくるぐらい大好きな場所だった。

 でも、真実を知っていたら、そうならなかった。

 家族の仇だとわかっていたら、私は最初から全てを憎んでた。それも含めて気遣いだったのかもしれないけど・・・ きっとそうじゃない、あの人は誰かに憎まれることが怖かっただけだわ」

 

 フッと龍之介を嘲笑するように嗤いながら、彼女は自分の手を見つめた。

 

「でも、私は何もかも失ったわけじゃない。

 私には母さんが守ってくれた命もあって、家族が愛してくれたバイオリンの才能もある。それに・・・ 取り乱した私を抱きしめて止めてくれる、大好きな人だっているわ」

 

 幸せそうに彼が触れた場所であろう自分の体に触れてから、小城へと視線を向けた。

 

「だから、私を可哀想な女だなんて思わないで。

 私、同情と哀れみが一番嫌いなの」

 

「思わないよ、君は強い子だからね。

 それでももし、生活に困るようなことがあったら・・・ ここに連絡を取るといい」

 

「ありがたく頂いておくわ。

 天涯孤独の天才バイオリニストには後ろ盾がないものだから」

 

「あぁ、是非とも有効活用してほしい。

 答えにくい質問に答えてくれてありがとう」

 

 小城が頭を下げれば、瑠璃子は気にしなくていいとばかりに手を振って、部屋から出ていく。

(本当に・・・ 強い子だ)

 波乱に満ちた人生を歩んでいる十七歳の少女の強さを目の当たりにし、自分の弱さを改めて突きつけられて苦笑する。

(あぁでも、そんな君(瑠璃子)を助けることが出来てよかった)

 ホッと息をついて安堵していると、どこからか拍手の音が聞こえてくる。

 

「高遠さん、あなたらしくもない随分とリスクの高いことをするんですね?」

 

「ご心配なく。橘先生と使用人の三名は、所用で二時間ほどお出掛けしていますよ」

 

 その言葉を合図のように、音もなく天井から彼は降りてきた。

 

「実に鮮やかなお手並みでした。このゲームの勝者は小城くん、君ですよ」

 

「負けた割には随分とご機嫌ですね?」

 

「フフッ、君が苦悩する顔が見れただけでも私としては十分楽しめたので」

 

 愛しげに小城の頬に触れ、心底楽しそうに笑う彼の手を振り払う気力もなく、溜息を零す。

 

「そうですか・・・

 では、約束は果たしてもらいますよ」

 

「えぇ約束しましょう、君の大切な妹さんに私は絶対に触れません。

 ・・・このまま、私と堕ちていってください。小城くん」

 

「ハッ、馬鹿なことを。

 僕はもう堕ちるところまで堕ちてますよ、わざわざあなたと共に堕ちる必要もないほどにね」

 

「いいえ、残念なことに君はまだ堕ちていない」

 

 高遠は大袈裟に首を振ってから肩を竦め、小城の顔には触れないようしながら包むように両手を添えた。

 

「君はまだ崖の上に立っているだけ。

 危険なことを理解しながら覗き込み、その先に何が待っているかもわかっていながら飛び込まずにいるんです」

 

 そこまで言って、高遠は小城の頭を掴んで至近距離から瞳を覗き込む。

 

「何も怖いことはありません、私が導いてあげますよ。

 君とならどこまでも深く堕ちていけると確信しているんです。そう、どこまでもね」

 

(やめろ・・・)

 疲労によってされるがままとなり、麻痺しそうな頭で自分の拒否の声が聞こえる。

 

「小城さーん、勝手に入りますよ・・・ って、高遠!? アンタ、所長に何してやがんだ!」

 

 突然、金田一の声が聞こえたかと思ったら、顔を覗き込んでいた高遠が飛びのいて窓へと立っていた。

 

「おやおや、本当に君は想定外ですね。金田一くん。ですが、君の神出鬼没なところがなかなかに面白く、非常に楽しいものだと思いますよ」

 

「何わけわかんねーこと言ってやがるんだ!」

 

「それでは小城くん、またお会いしましょう」

 

 叫ぶ金田一と高遠の楽しげな声が妙に遠く聞こえ、意識して呼吸する。

(頭が全然回らない・・・ クソッ、冷静さが足りてない。流石に強行軍過ぎたか? それともストレスか?)

 どちらも否定できずに動けずにいると、高遠が立っていた窓のところで金田一が叫んでおり、何とか立ち上がる。

 

「所長! 大丈夫っすか!?」

 

「あぁ大丈夫・・・ 駄目だね、少し徹夜やら無理な仕事をすると体調を崩すような年齢になるなんて」

 

「いや、それは年齢関係なくて所長の健康管理の問題じゃ・・・」

 

「おや、君にそんなことを言われる日が来るなんてね」

 

 笑いながらそれだけ言うと小城はソファに腰かけ、金田一にも座るように促した。

 

「所長、あれが高遠っすよ」

 

「そう、だったんだね・・・

 さっきまで常葉さんが僕のところに来て、話をするためにこの部屋にいたんだけど・・・ その後突然、彼が現れてね。そうしたら体調も悪くなってしまって、このざまさ」

 

 嫌な汗を拭うように顔を隠しながら、高遠は知らなかったことにして押し通す。

 

「そう、なんすね・・・ あいつ、もしかして瑠璃子を」

 

 何やら都合よく他のことを考え出した金田一に、小城は複雑な視線を向ける。

 

「どうしたんすか? 所長。

 そんな変な顔して」

 

「僕は・・・ 君に謝らなきゃいけないことがある」

 

「謝るって何を・・・ 「僕は君の大切な人を自首させた」 所長、それは違うっしょ」

 

 金田一の否定の言葉に、小城は首を振る。

 

「違わないよ、何もね。

 犯罪を犯していたとしても、絵馬くんにとって彼は実父で、彼ら三人にとっては恩人同然の養い親で、君にとっても・・・ かつて自分を歓迎してくれた、お世話になった人であることは変わりはない。

 本当に、すまなかった」

 

 そう言って金田一へと深く頭を下げれば、金田一は慌てて小城の肩を掴んで頭をあげさせる。

 

「だから、謝んないでくださいよ!

 所長が行動したってことは誰かのためだったんでしょ? 実際、瑠璃子は・・・ そりゃ苦しい気持ちにもなってるけど救われたんすよ。

 だから、だからさぁ! そんな自分ばっかり責めて、傷つかないでくださいよ」

 

「僕はどこも怪我なんてしてないよ、ボウガンは一発たりとも当たらなかった」

 

 わざとズレたことを答える小城に溜息をついて、金田一は小城の胸に拳を押しあてた。

 

「体じゃなくて、ここ(心)っすよ。

 人のことばっかり気にして、傷だらけになってさ・・・ 少しは大事にしてやってくださいよ」

 

「傷ついてないよ、少しもね。

 僕の心はそんなやわなものじゃないさ」

 

(そんな(傷つく)資格すら僕にはないんだ)

 小城のその言葉に金田一は渋い顔をして何か言おうと口を開きかけたが、結局何も言えずに口を閉じる。

 

「さっ、何の用事で勝手に入ってきたかは知らないけど、今日は友人達の傍にいてあげた方がいい。

 傷ついたのは常葉さんだけじゃないだろうからね」

 

「所長のそう言うところが、人のことばっかりだって言ってんすよ。

 じゃぁアンタのことは、誰が大事にするんだよ」

 

「何を言ってるんだい、事務所の皆から僕はとても大切にされてる自覚があるよ」

 

 サラッと答えるとまた金田一が渋い顔をするが、何も言い返さずに大人しく邪宗館へと戻っていった。

(薄々何かを勘づかれているなぁ・・・)

 

「困ったもんだね」

 一人になった部屋で、小城は困ったように笑うのだった。

 




金田一に限らず、それぞれのキャラにしっくりくる台詞を考えるのが楽しい✌('ω'✌ )三✌('ω')✌三( ✌'ω')✌
瑠璃子ちゃんの台詞考えるのめっちゃくちゃ楽しかったです。

キャラ説明、行きます。多いからしんどいけど、これも恒例になりつつあるので!

↓↓↓

絵馬 龍之介
→ 上田理科大学の元教授であり、菌類の研究者だった。絵馬 翠の夫であり、絵馬 純矢の実父。後述する三名の養い親。
  が、タウン誌にて食用キノコと毒キノコの誤表記により常葉瑠璃子の家族の食中毒事故を起こし、その一件により出島丈治に強請られるようになる。その末に出島を監禁し、殺害する。
  何もかも選択を間違えた人。

絵馬 翠
→ 龍之介の妻であり、純矢の実母。龍之介に罪の告白を受け、警察への通報を委ねられた人であり、悩んだ末自殺を図ったが軽度の怪我で済んだが医者に頼んで周囲に半身不随であると偽り続けた。

絵馬 純矢
→ 絵馬夫妻の実子であり、既に展覧会などで高く評価されている少年画家。

荒木 比呂
→ 養子の一人、芥川賞候補として名前があがる若手作家。生まれた直後に捨てられ、施設で虐待を受けていた。が、才能を見出され、引き取られた。
  彼だけが六年前に龍之介が出島を殺したことを知っており、原作では瑠璃子と致命的な行き違いが起こり、殺された。

井沢 研太郎
→ 養子の一人であり、プログラミングに才能を持っている。後に別の事件の犯人となる。

常葉 瑠璃子
→ 養子の一人であり、プロのバイオリニスト。龍之介の誤表記によって家族を失い、原作における犯人である。しかも、金田一が来てから真実を知ってすぐさま二人を殺害するという、原作においても最速の決断力と行動力を発揮している末恐ろしい子。行き違いにより仲間を殺してしまったことで一時は自殺を図ろうとするが金田一と他二名によって阻止されている。


原作で登場しているけど今作では出さなかった遠藤樹里、三島幾真、管理人夫妻と長島警部は省略します。
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