本作の主人公はテンプルナイトの部隊長をしている人物です。
メガテン基準だとレベルは30前後くらい。一般テンプルナイトが作品にもよりますが20代が普通なので、それよりは少し強い程度ですね。
勿論強力な悪魔相手では手も足も出ません。
原作でも真Ⅱではテンプルナイトは作られたメシア、アレフの前座としてセンターに使われていたように。
完全に決まった時間に目を覚ます。今は朝の五時。これが起きる時間だ。並んだベッドの中で、私が一番最初に起きだす。自らを律する事を義務づけられているテンプルナイト……このTOKYOミレニアムの守護者たる戦士達。その精鋭部隊であるからには、これくらいはしなければならない。
私は起きだすと、そのまま顔を洗って歯を磨く。歯ブラシの質がますます落ちてきている。
世界中で核が落ちて、悪魔が出るようになってから幾星霜。
もはや人類が暮らせる場所なんて一握りしかない。ここTOKYOミレニアムもそうだ。だから護り手がいる。
どれだけ腐敗していようともだ。
後輩達に声を掛けて、起こしていく。
女性のテンプルナイトは別に珍しくもない。魔術を使えるものは特に多く、抜擢されやすい。
古い時代の騎士と違って、鎧なんかつけない。
つけたところで悪魔には役に立たない。
十字が刺繍されている青と白の隊服を着る。祝福されているとかいう話だが、どこまで本当だか。
夜番のテンプルナイトもいる。
朝起きて、食事を済ませた後。
最初にするのは、夜番からの引き継ぎだ。疲れ果てている様子だが、それでも引き継ぎはしっかりやらなければならない。
人間力を重視するテンプルナイトでは、AIによるレポートの自動生成なんて事は禁じられている。
だから全て直に聞き取りをし。
それを自分の手で書き下ろさなければならない。
夜番のテンプルナイトは夜勤明けで無精髭が出ている上に。
悪魔も出る場所を警備してきたのだ。死相さえ見えるテンプルナイトから。皆で引き継ぎを受けた。
「ホーリータウンでまた悪魔が出ました。 幸い雑魚ばかりでしたが、それでもこのままではいずれ市民達にも知られる事でしょう」
「またか。 悪魔の種別は分かっているか。 倒したのなら、全て列挙してくれ」
「はっ」
私は一応それなりに戦歴を積んで来ているから、TOKYOミレニアムで喧伝していることが嘘だらけな事は分かっている。
此処では幾つかの区画が作られていて、それらに人が住んでいるのだが。明確な階級分けがされていて。
特にいわゆる上級国民とでも昔は言われていたような人々が住んでいるのがホーリータウンだ。
雑多な民はバルハラと言われるエリアや、工場地帯であるファクトリーに住んでいる。
更にごく一部、TOKYOミレニアムに多大な功績を挙げている存在は、アルカディアという特別なエリアに住んでいるのだが。
此処にはきな臭い噂しかない。
出来れば近寄りたくないというのが、私も本音だった。
バルハラエリアの警備に出ていた部隊のメンバーが戻ってきた。
酷い負傷をしていた。
引き継ぎに遅れた事なんてどうでもいい。すぐに手当ての準備をさせる。
テンプルナイトはこのTOKYOミレニアムを支配するメシア教の精鋭部隊とされている。故に負傷する姿を見せることなどは禁忌とされていて。場合によっては死体を装備ごと焼却しろ等という命令が出ているのだが。
私はそれを無視していた。
そのせいで上から目をつけられているという噂があるが。だが、それだけの武勲は立てているつもりだ。
「どうした!」
「す、すみません。 強力な悪魔と遭遇して……」
「タナベとイシハラは……」
「……」
首を振る小隊長。腕を失っている者もいる。
すぐに医療施設に運ばせる。青ざめている新人が、吐きそうな顔をしていた。こんな程度で吐いていたら、とてもテンプルナイトなんてつとまらない。
かろうじて無事だった副隊長に話を聞く。
「下級でしたが、堕天使でした」
「堕天使が出たのか。 名前はわかるか」
「いえ……」
「すぐに画像を用意しろ」
あまり上級のものは出ないが、堕天使。神を裏切り、悪魔に落ちた天使は、TOKYOミレニアムにたまに出る。
実力は他の悪魔とは段違いで、雑魚でも要注意として扱われる存在だ。
そういった相手の中で特に手強い奴が出た場合は、テンプルナイトが十人単位で殉職する事もあるし。
場合によっては掃除屋と言われる、メシア教の暗部に属する戦闘部隊が出る事もある。
掃除屋は一度見た事があるが、感情などを切除されてしまっているらしく、完全に戦闘マシーンだった。
中級くらいの堕天使となら互角に渡り合う実力を装備を持っているが。
それでもそれ以上の相手が出た場合には、どうしようもない。
普通のテンプルナイトでは、下級の堕天使が相手でもこの有様だ。
それはもう、どうしようもないこと。
それなりの戦歴を重ねて来た私も、ずっと見てきた現実だった。
殺された隊員二名。
再起不能レベルの負傷者が三名。
そして、現れた堕天使は、特定出来た。
堕天使オロバス。
直立した馬のような姿をしている堕天使だ。
古い伝承によると、そもそも人間に敵対的な存在ではなく、召喚者に忠実で様々なよい効果をもたらす存在である。
だが、メシア教では悪魔は全部悪魔。
唯一絶対の神以外は、全てが悪魔と言う扱いである。
故にオロバスも、本来は邪悪な存在ではないはずなのだが、今ではすっかり人間を襲うようになっていた。
人前に現れ。
しかも倒されたと言うことは、分霊体だろう。
だが、分霊体でさえ、手練れのテンプルナイトの小隊を半壊させ。貴重な実戦経験者を二人も殺した。
悪魔と戦うというのはこういうことで。
堕天使と戦うというのもこういうことだ。
ちなみに殺されたテンプルナイトの葬儀なんていちいち行わない。
テンプルナイトの何割かはクローンで培養されているという説があり、実際テンプルナイトになる前はどこで何をしていたか分からないという奴と頻繁に出会う。同じ顔もよく見る。
私は一応過去の記憶があるが、それでも孤児をメシア教の教義に沿って育てる孤児院の出身だ。
此処は過酷で、あまり思い出したくない場所である。
ともかく、引き継ぎを終える。
そして、死んだ隊員の名札を外させた。私は書類仕事で、人員の補充要請を出しておく。まだ見習いの人員が昇格し、派遣されてくるだろう。そして雑に殺されて死んで行く。悪循環だ。
もう此処にしか、人間は住めないのに。
引き継ぎを終えた後は、パトロールの指示を出す。
経験が浅い部隊はホーリータウンに。
私のようなベテランはバルハラに出向く。
バルハラはそもそもとして、コロシアムで剣闘士が殺し合うのを見て楽しむような連中が住んでいるエリアで、破落戸だらけである。
テンプルナイトに手なんか出したらどうなるか分からないからある程度の身の安全は保証されているが。
それでもガイア教徒……混沌を貴ぶメシア教の敵が入り込んでいる事もあり。
何より割と当たり前のように悪魔が出る事もあって。
一秒だって気を抜けなかった。
ミーティングを終えると、私は九人のテンプルナイトを率いて現場に出る。
ターミナルという一種の空間転移装置を用いて現地に一瞬で出勤できることだけは助かるが。
それ以外は。あらゆる全てが劣悪だった。
バルハラの街は雑多でごみごみしていて、辺りは薄暗い。
激しい放射能汚染は未だに衰えておらず、それらから身を守るためのドームが存在しているからだ。
太陽は今や人間の味方では無い。
核戦争……何故に起きたのか今でもよく分からないらしいが。ともかくそれが起きた時にオゾン層が吹き飛び。
それまで人間を守ってくれていたオゾン層が消し飛んだ事で、宇宙放射線が地上にダイレクトに降り注ぐようになった。
地上だけではなく、オゾン層が消し飛ぶように核兵器が撃たれたのだという話があるのだが。
そんな事をすれば人間が全て死ぬ。
誰がどんな目的でそんな事をしたのか、よく分からない。
テンプルナイトは歩いているだけで敵意を受ける。
私もそれはそうだろうなと思う。
これほど特にバルハラエリアで嫌われている人間なんてそうそういないだろう。此処では特に、ガイア教団の方が好かれていることがあるくらいだ。
センターにいる上層部は、バルハラエリアに嫌がらせのように予算を削り、シェルターとしての劣化はそれでますます進んでいる。ホーリータウンがどこもしっかり放射線から守られるようになっているのに。
此処は放射線でやられて、体をおかしくしてそうそうに死んでしまう人が後を絶たない地獄だ。
だから皆、殺し合いのコロシアムに集まって、殺し合いに熱狂する。
衣食足りて礼節を知るの言葉通りだ。
此処では衣食が足りていない。
だから皆、獣になってしまうのだ。
此処の管理人はマダムというよく分からない女性で、私も立体映像でしかあった事がない。
ずっと年を取っていないと噂される怪人物で。
その正体は、古参のテンプルナイトも知らないと言う事だった。
「テンプルナイトさんよ……」
弱々しい声が掛けられる。
威圧しようと前に出る新人を手で制止。声の主は、年老いた老人だった。酷い臭いがする。
「三日も何もくってねえんだ。 何かくれよ……」
「救貧院は?」
「追い出されたよ。 役立たずの爺にくれてやるメシはないとよ」
「すぐに水と食糧を手配してやれ。 救貧院は私から声を掛けておく」
頷くと、すぐに部下達は動く。
その間に軽く生体検査の装置で調べるが、確かに酷い栄養失調だ。
こう言う人間を助けるために救貧院があるのに。
まるで機能していない場所もあることは分かっていた。
すぐに問題の救貧院が特定されたので、私が直に出向く。真っ青になっている院長に、私は面罵していた。
「メシア教の許可を得て救貧院を経営しているだろうに、この為体はなんだ!」
「ひっ! お許しください!」
「この内部の無駄に華美な様子からして、どうせ支援金を懐に入れているんだろう! 貴様は更迭だ!」
「ち、畜生! だ、誰でもやってることじゃねえか! くたばりぞこないの爺が、余計な事をいいやが」
言い切ることは出来なかった。
私が即座にその場で斬り伏せたからだ。
悲鳴を上げたのは、院長の部下だったらしい女だ。
此奴らも取り調べる必要がある。
すぐに増員を派遣して貰い、救貧院の人員を連行させる。それを見て、バルハラの住人はひそひそ話していた。
「やっと彼処に手が入ったのかよ」
「あそこってガイア教団に人間を売ってたって話の場所だろ。 今まで放置してやがったのは、無能だからじゃねえか」
「あの女テンプルナイト、仕事がおせえんだよ」
「だから役に立たないって言われるのにな」
陰口は全部聞こえている。
ともかく仕事をする。
嫌われるのは理解している。
悪魔との戦いの最前線に立っていても、幾らでも次から次へと悪魔は湧いてくる。それに殺される人々は多い。
バルハラだと特にそれは顕著だ。
不満が誰かに向かうとすれば。悪魔と戦いはするが、それ以上に弾圧だのなんだのしているテンプルナイトへだろう。私にもそれは分かる。
メシア教の人員全てが悪人というわけじゃない。
それは街の人間も、誰もが分かっていると思う。
それでも、怒りのはけ口は必要で。
それが我々、ということなのだ。
増援が来たので、その場で引き継ぎ。手分けして調査を行う。調査をする捜査官がくる。テンプルナイトと違って戦闘力は無いが、メシア教の不祥事を調査する面子で、テンプルナイト以上の狂信者揃いだ。
後は引き継いでしまう。
此奴らは拷問も平気でやるような連中だが、今はパトロールが先だ。バルハラでは油断するとすぐに弱者が悪魔に殺される。
それを防ぐには、テンプルナイトが警備するしかないのである。
だが、どれだけやれば成果が出るのか。
それも分からないこの状況。
心がすり減るのは、どうしようもない。
コロシアムで喚声が湧いている。誰が凄い技でも披露したのかも知れない。だが、披露したと言う事は、その技を誰かが受けたと言う事だ。
無事かどうかすら分からない。
そういうものだ。
手分けして、パトロールをする。
その途中で小型の悪魔を数体見かけ、テンプルナイトに仕込んでいる集団戦術で倒させる。
そうして鍛えさせるのだ。
私は、今の時点では出無くて良い。
此処までの小物だと、今更だからだ。
それでも新人が苦労している場合は、剣を振るって加勢する。もしくは、魔術を放って仕留める。
魔術と言っても中級程度のものまでしか私は使えないが。
それでも、この辺りに出る雑魚程度ならどうにでもなる。
対応できない相手に会ってしまったら、死ぬだけ。
今まで六度、そういう場違いな相手に遭遇した。それらと戦って生きているのは、ただ運がいいからだ。
見回りを終える。
戦闘の経過は記録させておく。
いずれにしても大した悪魔ではなかったし。戦闘訓練を受けたテンプルナイトの集団戦術でどうにかできる相手で助かった、
点呼をしたあと、宿舎に戻る。
其処で引き継ぎをして、解散とする。
仕事はシフトで回しているが、危険な悪魔が出た場合は休暇を返上して現地に出向かなければならない。
テンプルナイトで功績を挙げるとセンターやアルカディアの住民として抜擢されるという話があり。
今までに数名、そうしていなくなった者を見たことがあるが。
それらの者達が、その後どうなったかは知らない。
メシア教が裏では様々な後ろ暗い事を抱えている事を、私は知っている。
あの腐った救貧院だって、本当にガイア教団と通じていたのか、私は疑わしいと思っている。
ともかく、先にシャワーを浴びる。
シャワーを浴びるときには、義手になっている左手を外す。肘から先はもうない。以前、場違いに強い悪魔に遭遇して、仲間33人が殺された時に。片手間にその悪魔が振るった腕に擦って、それで消し飛ばされたのだ。
支給された義手はそれなりにちゃんと動くし痛覚もあるが。
やはり本物には及ばない。
シャワーを浴びて、義手をつけなおした後は、しばし書類仕事をする。食事も取れる時にとっておく。
いつ任務が来るか分からないからだ。
だから、気が休まる時など、一秒だってない。
支給されている剣を整備する。
チタンとモリブデンの刀身に、更にはプラズマが通るようにしてある対悪魔用の剣。この剣はセンターの技術が詰め込まれていて、戦車の装甲でさえ切り裂くほどの切れ味を誇る。
ただし、私のような隊長格にしか支給されない。
一般のテンプルナイトは剣どころか、最悪体術で戦う事を強いられる。それも悪魔相手にだ。
せめて銃を支給してやってほしいものだが。
神に仕える者が銃を使うのは良くないとか言う理由で、テンプルナイトには「神の加護」で戦う事が要求される。
ばかげた話だった。
ちなみに掃除屋の連中は、普通に重火器を使っている。
その弾丸には神経毒なども仕込まれているという話を聞いているから、センターの連中の二枚舌には怒りすら感じるが。
誰かが、市民を守るために戦わなければならない。
それを理解しているからこそ。
私も、あまり不満ばかり口にするわけにもいかないのだった。
「リンネ隊長」
「どうした」
書類仕事をしていた私に、部下の一人が来る。
敬礼をすると、その部下がいう。
「以前失踪した隊員について、調査が出ました。 どうやら逃げたわけではなく、消失したようです」
「消失だと?」
「はい。 何かしらの儀式をした後が部屋に残されており、高度な術を用いた事が分かりました。 術式を解析した結果、転移のものだったようです。 ただ、何処にその術を用いて転移したかまでは……」
「分かった。 いずれにしても、もう戻る事はないだろう。 戦死扱いにしておけ」
頷くと、部下が行く。
テンプルナイトも見回りなどをしていない時は、こうやって書類仕事をしているのである。
人間力を試すだかなんだか知らないが。
いずれにしても非効率と無駄の塊でしかない。世界が核兵器で滅ぶ前は、AIの進歩でこの程度の作業は自動化されていたと聞いているのに。今ではAIは禁忌中の禁忌扱いされている。
失踪してしまった隊員は、かなり高度な魔術を使い、噂によると悪魔召喚までこなしたと聞く。
すぐれた人材だったが、私以上にテンプルナイトにもセンターにも不満を持っていたようだから。
いずれ処分されてしまったかも知れない。それに、優秀なテンプルナイトでも、センターは容赦なく使い潰す。
それが、このTOKYOミレニアムという、最果ての時代の最果ての土地に生きる。人々を守る戦士がおかれている現実だった。
ここで言う掃除屋は、原作におけるターミネイターなどです。
真Ⅱの悪魔図鑑(書籍)などで詳細が記されていますが、ロウ勢力でも切り札扱いの人間兵器みたいな存在のようですね。