基本的に本作は真Ⅱの少し前から同時間帯くらいの時系列の物語です。
つまりアレフが登場したため、その名声を作るために、センターが悪魔を放ち退治させていた時期ですね。
その悪魔の脅威を示すには、まあテンプルナイトをかませにするのが一番な訳です。
主人公であるリンネは、それにもろに巻き込まれていくことになります。
それ以前にも、散々使い捨てにされていたわけですが。
「左側に回り込め!」
「くそっ! 神の加護が我々には……」
「ぎゃあああっ!」
怒号が交差する中、私は印を切り、魔術を発動する。
雷撃の中級魔術を叩き込む。
巨大な牛と人間をあわせたような悪魔の脳天から雷撃が直撃し、竿立ちになった悪魔は。立て続けに繰り出された隊長格のテンプルナイトの剣を突き刺され。更には、私の後方から放たれた魔術を受けて、頭を吹き飛ばされていた。
どうと倒れる。
辺りは死屍累々。
増援が来たので、すぐに手当てを任せる。私も、左手の義手を吹っ飛ばされていて。それを拾って、どうにかつける。
一度太い腕を振るわれて、その直撃を受けたのだ。必死に義手で体を庇って、それで即死は避けたが。
酷く全身が痛む。
「大丈夫ですか」
「あまり大丈夫ではないな」
後ろから魔術を掛けて、援護してくれた新米が、回復の魔術を掛けてくれる。心優しい目をした。まだ幼ささえ顔に残っている女の子だ。名前はベス。
実は、このことは縁があるのだが、それはいい。
ベスは信じられないくらい優秀だ。
この若さで私より既に魔術の出力が高い。もう二三年経って背が伸びきった頃には。きっと次世代のテンプルナイトを担う精鋭の中の精鋭になるだろう。だけれども、センターがそんな逸材だろうと、容赦なく使い潰す事を私は知っていた。
どうにか動けるようになったので、もういいと告げる。
回復魔術は傷などの回復は促すが、病気などに対しては限界があるし、内出血などはどうにもできない。
体を半分潰されて、痛い痛いと呻いているテンプルナイトが担架で運ばれて行く。
こんな巨大な悪魔が出たのだ。
さぞやスラムの最下層かと思いきや、違う。
この悪魔、魔獣ミノタウルスが暴れたのは、なんとホーリータウンの繁華街である。
すぐに駆けつけたが。
駆けつけるまでにも、市民が食い殺され。車がひっくり返されている。最終的な被害がどれだけになるか、知れたものではなかった。
後続の部隊には、周囲の警戒と、人を遠ざけて貰う。
近頃、バルハラエリアでも大物が立て続けに現れている。其処でもベスが活躍したと聞いている。
なんだか作為的なものを感じてしまうのは気のせいだろうか。
それくらい、私はセンターを信用していない。
まだ少年といっていい年のテンプルナイトが来る。なんと、私より一つ上の階級章をつけていた。
「ザインです。 この場は引き受けます」
「君が。 天才と言われる」
「此処に駆けつけることさえ出来ませんでした。 天才などではありませんよ」
年長者と言うだけの私にも、態度が柔らかい。
幼い顔立ちに対して、背丈は高く、そして頭の中央に髪を集めるような独特な髪型にしている。
このザインの噂は聞いている。
なんと単騎で中級の堕天使を倒したとか。
この年で、である。
だが、活躍はたまにしか聞かない。出世のために必要なだけ悪魔を倒しているという噂さえあった。
まあ、センターが何を目論んでいてもおかしくないだろう。
引き継ぎをするが、記憶力も凄まじく、ザインはすぐにメモを起こし。部下にレポートを渡していた。
それを見て、戻る事にする。
医療センターに入って、治療を受けるが。ベスの回復魔術の出力が非常に高かったようで、入院は必要ないそうだ。
ただ、後から上がって来た報告を見ると。
私達が駆けつける前に殺された市民が八人。
殉職したテンプルナイト七人。
大きな被害だった。
これでも、毎日のように喧嘩が起き。悪魔が出て。命がゴミのように吹き飛ばされているバルハラよりはマシ。
そう思うと、やるせなくなってくる。
シャワーを浴びて気分を切り替える。
義手だけはどうにもならないので、調整に出した。ただ、義手が支給されるまで相応の期間があったこともある。
別に右腕だけの生活には、苦労はしないが。
さっぱりして、デスクにつくと、部下の一人が来る。
険しい顔をしていた。
「リンネ隊長」
「どうした」
「実は、気になるデータが出て来ました」
頷いて、先を促す。
この部下は腕っ節はともかく頭はいいので、重宝して使っていた。他の同僚からは頭でっかちとか言われていたが。支援用の魔術を使えることもあって、たまにその有用性を言い聞かせている。
攻撃魔術だけでは戦闘も集団戦も出来ない。
そう現実的に、神の加護があれば何にでも勝てると思い込んでいる阿呆どもに言い聞かせるのも、私の仕事だった。
そうしないと、一度の戦闘で、テンプルナイトが全滅しかねないのだから。
「実はザインの戦闘データが消されているようなのです」
「なんだと……」
「近々ザインはセンターにいくという話があります。 経歴だけ積んだ後は、センターに行くのかも知れません。 ただそれにしても、記憶にあるだけでもザインが倒した悪魔は、本来はテンプルナイトが百人以上で対処し、数十人の被害が出る事を覚悟しなければいけない相手ばかりで……」
「ああ、それは覚えている」
だが、それは忘れた方が良い。
咳払いして、周囲を見る。
センターの統治は独善的で苛烈だ。はっきりいって、何を目論んでいるか分からない。不穏分子とみなされた場合。
悪魔同様に消される可能性さえ、考慮しなければならないのである。
「その事は忘れろ。 何かしらの嫌な感じがする」
「は……」
「センターはクリーンな組織ではない。 お前も知っているとおりな」
「分かりました。 しかし、誰かしらがこういうのは情報として集めておかなければなりません」
分かっている。
だから、少なくともベラベラ喋る事はするな。
そういう意味で、忘れろと私は言った。
部下、ロムスはそれを受けて、頷いていた。意図がそれだけで伝わるのは良い事だ。私も、優秀な部下を失うのはあまり良い気分はしないのである。
そのまま、食事を取れるときにとっておき。
眠れるときに眠っておく。
おきだしたのは、ぴったり五時。
昨日の一件で、また名札を外すことになったが。ここのところ、補充の人員が来るのが速い。
見た覚えが明らかにある顔の者もいる。
やはりクローンでテンプルナイトを増やしている。
その噂は、嘘ではないらしい。
実は、噂に聞いている。
センターは科学を否定する癖に、遺伝子に関する技術を用いて、いわゆるスーパーソルジャー計画。遺伝子強化兵士を作り出すプロジェクトを動かしているのではないか。そういう噂があるのだ。
こういう経歴が分からない新人が、いやに戦闘力ばかり高いことや。
何度も同じ顔のテンプルナイトが姿を見せること。
これが、噂の論拠だが。
実際問題、隊長格として最前線に出ている私としては、それはどうも噂として笑い飛ばせないと思っている。
実際問題、「優秀な人間」とやらを掛け合わせて「優秀な子孫」とやらを作り出すような長期計画は。悪魔は出る、宇宙放射線がダイレクトに降り注いでシェルターの内部でしか生きられない。
その状況から考えて、現実的とはとても言えない。
ましてや、これだけ恐ろしい悪魔がわんさかTOKYOミレニアムにすら現れる今、メシアの誕生などを悠長に待って等いられない。
メシア教の狂信者には、メシアが必ず来ると無邪気に信じている者もいるが。
私には、そんなのは絵空事にしか思えない。
いっそのこと、メシアを造れるなら造ってくれ。
そうとさえ思っているし。
もし造れるなら、それでいいではないかとさえ思ってしまうのが事実だった。
「それともう一つ。 ベスに関してですが、後方部隊に異動させられるようです」
「あれほど有能なのにか」
「はい。 一定の戦果を積んだ後に、センターに行ったり後方に異動したり。 何かきなくさいですね」
「……それももう忘れろ」
やはり特大の不穏の臭いがする。
だが、それを追求したら殺される。そうとしか思えない。
嘆息すると、書類仕事に没頭する。
そして時間が来たので、眠る。眠ると言っても、最近は眠りがどんどん浅くなってきていた。
そうなると、夢を見るのだ。
孤児院では、明かな選別が行われていた。
魔術の訓練をさせられたし。戦闘の適性も見られた。
それでいながら反抗的な態度を示す子供は、すぐにいなくなった。悪魔のエサにされている。
そんな噂さえあった。
ただ、少し前に。バルハラで、孤児院時代に一緒にいて、途中でいなくなった者とあった。
あっと、お互いに声が出た。すぐにお互いに視線を外した。まずいと、両方とも分かったからだろう。
孤児院からいなくなった子は、コロシアムの剣闘士になっていた。つまり、孤児院から捨てられ。
恐らくはバルハラに放置されたと見て良いだろう。
彼処は、孤児をテンプルナイトに育てる場所だったのだ。
或いはだけれども。
似たような孤児院でも、本当に見込みがないと判断した子供は、殺処分している場所があったのかも知れない。
一歩間違えば、自分だって。
そういう記憶で、何度も夢が覚める。
実際問題、何度も場違いに強い悪魔に殺され掛けた時の記憶よりも。幼い頃、抑圧されていた頃の事の方が心に大きな傷を穿っている気がする。
無理矢理に寝る。
いつまで眠れるか分からないからだ。
おきだしてからは、すぐに引き継ぎを行う。
昨晩のパトロールでは、幸い欠員は出なかった。それだけで、どれだけほっとするか分からなかった。
ファクトリーに出向く。
工場と言えば聞こえは良いが、働いている人間はみんな目が死んでいる。それに、ファクトリーの中央には何か塔のようなものがあり。
それを忌々しげに見ている労働者と。
気付いてもいない労働者がいるようだった。
あれは恐らく、特級の危険なものだ。
部下にも、あれには視線を向けないようにと告げておく。たまに部下にも見えていない者がいるようだが。
それについては、見えていなくていいとだけ告げておく。
ファクトリーも悪魔が出るエリアだ。
此処ではデミナンディと言われる悪魔を改良した巨大な牛を飼育していて、それらをTOKYOミレニアム中で食肉として利用している。ちなみに筋っぽくて肉の質はとても低い。
元々インド神話のナンディという神の乗る牛を改良したらしく、インド神話の神々を貶める意図があるのでは無いかという話もあるが。
私には関係無い。
他にも工場はあるが、此処に送り込まれてくる人々は。犯罪を犯したか。犯罪を犯さざるをえなかった人々だ。
此処には人工的に作られた悪魔が多数いて、それらの中には労働者を監視するためだけにいるものもいる。
中には擬似的に労働者として作られた悪魔もいて。
それらが死ぬまでこき使われる事で、ファクトリーは回っている。
テンプルナイトも、此処の有様を見て、平静でいられるものはあまり多くは無い。昔、ずっと昔に。
存在した強制収容所というものがこれに近いと言われているらしいが。
核戦争前の歴史なんて、基本的に教わらない。
だから、そういうものがあったらしいということしか、私には分からない。
「東エリア、問題ありません」
「西エリア、異常なし!」
点呼を受けて、戻ろうとした時だった。
ぞくりと、嫌な気配がした。
振り返ると、ピエロみたいなのが一瞬だけ見えたような気がしたが、気のせいだろうか。いや、どうにもそうとは思えない。嫌な予感というのは馬鹿に出来ない。
魔術は誰もが使えるわけじゃない。そして魔術が使える人間は、勘が優れているのだ。
核戦争後の大混乱の収束に一役買ったザ・ヒーローと言われる人物の伝承が残っている。
まだ若い青年だったそうだが。
このザ・ヒーロー。
凄まじい剣腕を有していたそうだが、魔術は一切使えなかったそうだ。
ザ・ヒーローでさえ魔術は使えなかった。
そういって、剣闘士達は己を鍛えるらしい。
実は、それは私に取っても幼い頃は心の支えになった。
半端な魔術と。半端な剣腕。
それしかなくても、出来る事はあるのではないか、と。
だから私は勘を使う。信じる。それで今まで、随分助かってきたのだから。
ファクトリーでの見回りを終える。一瞬だけ見えたような気がするあのピエロみたいなの、悪魔かも知れない。
一応、後で報告書は挙げておくことにする。
戻って、書類仕事をしていると、報告を受ける。
後方任務に移っていたベスが、戻って来たらしいということだった。
確かあれから二年ほど経過しているはず。
そうかと思って、執務をしていると。
誰かが声を掛けて来た。
顔を上げると、そこにいたのは、分かる。ベスだった。とても美しく成長している。驚かされた。
「リンネ隊長、お久しぶりです」
「ベスか。 綺麗になったな」
「リンネ隊長こそ、相変わらずおきれいですよ」
「嘘はいい。 私は化粧で誤魔化しているだけだ」
ベスは本当に綺麗になった。古い表現で言うと、すれ違った男の何割かが振り返りそうな容姿だ。
それも花が咲くような控えめな姿。
だが、なんだろう。
文字通りの花のように思えてしまっていた。
花は咲いた後、散るものだ。
どうにも嫌な予感がする。
「後方勤務から此方に出て来たと言う事は、何かしらの任務か。 見た所、私よりも階級はとっくに上だろう」
「いえ、最前線で常に戦って来た隊長は立派です。 私は神に一日も早く人々が平穏に暮らせるように祈ることと、メシアの再臨を祈る日ばかりでした」
「そうか……」
やはり、妙だ。
同時期に姿を見せたザインも、今では全く話をきかない。センターに出向いたという事は聞いているが、それ以上の事がまったく分からないのである。
ロムスが少し前に戦死して、ますますそういう話は分からなくなった。
「コロシアムにて、新しいチャンプが出た事を知っておいでですか」
「いや、興味がない」
「そうですね、隊長はそういう方でした。 アレフというその方は、私が知っているかもしれない方なんです」
「……」
アレフ。
確かそれは、ヘブライ語で始まりを意味する言葉であったはず。男爵と聞いて芋の名前くらいしか思いつかないだろう人間だらけのバルハラで、そんなしゃれた名前をつける奴がいるだろうか。
コロシアムに出ていると言う事は、当然バルハラ出身者の筈だ。というか、あんな場所バルハラ出身者くらいしかいかない。
コロシアムで剣闘士を殺しまくってチャンプになった人間は、問答無用でセンター市民になれるらしいが。そもそも殺されるリスクの方が遙かに高い。コロシアムでは悪魔とも戦わされると聞くし、センター市民というエサがあっても、あまりにもリスクが高すぎるのだ。
センター市民になった後、チャンプがどう生活しているかは分からないし。
どうにも胡散臭いとしかいえなかった。
「ベス」
「はい」
「私は平凡な才能しか持ち合わせていない、普通のテンプルナイトだ。 たまたま運が良かったから生き残れてきた。 ただそれだけの存在だ。 だから、お前の助けにはならない。 ただこういうことしか出来ない。 気を付けろ。 センターは、クリーンな組織じゃない」
「分かっています。 ですが、それでも行ってきます」
それだけいうと、ベスは行った。
しかし、たった二年で本当に綺麗になったものだな。同性ですら見ほれる程の容姿だった。
それに良い評判を聞かないメシア教の教会で祈っていたというにしては。心が綺麗すぎる。
あそこは狂信者を育成する施設であって、綺麗な心なんて間違っても育てない。
ふうと、嘆息する。
また、いやなものを見るかもしれない。
そう感じたのだ。
勘は適中した。それから、立て続けに事件が起きたのだ。
テンプルナイトがばたばた殉死するような事件が連続で起きた。それほど強力な悪魔が幾度も出現したのだ。
それらを打ち倒して行ったのは、ベスが言っていたアレフという青年だった。
アレフはバルハラ育ちのコロシアム出身者とはとても思えない。育ちが良さそうな青年だった。
何しろセンターが大々的にその業績を褒め称えたので、嫌でも顔を見ることになったからだ。
そして、その側には。
最初ヒロコという女性(元テンプルナイトらしいが、私には記憶がない。私とは接点がない部隊の出身者だろう)がいたようだが。
いつの間にか、それがベスに変わっていた。
テンプルナイトでも屈指の俊英であるベスが、多数の悪魔をなぎ倒して名声を高めている青年の側にいる。
それも、どう見ても幸せそうな顔をしている事からして、アレフに気があるのは一目で分かった。
それに、私に会いに来たとき、明らかにアレフを知っている事をほのめかしていた。やはりこの件。闇が深いと判断した。
私は嫌な予感しか感じなかった。
実際問題、それらの強大な悪魔がでた時に、大量の部下を失い。しかも、その部下は補充もろくにされなかったのだ。
既にテンプルナイトは用済みとでもいうように。
今までたくさん送り込まれてきていた同じ顔のテンプルナイトすら来なくなった。生き残りは容赦なく各地のパトロールにかり出され。明らかにレベルが上がっている悪魔によって、容赦なく殺された。
必死に私は戦い続けたが、傷が毎日増えるばかりだった。隊長格のテンプルナイトも次々に戦死していった。
アレフという青年の名声を引き立てるための土台になるかのように。
同時に、掃除屋が動いているという話もあった。
今までは余程の悪魔か、それともガイア教団に対する大規模な摘発でもない限り動かないという話であったのに。
休暇などなくなった。
手が足りないのだから当たり前だ。
医療品すら支給が滞るようになった。まるでもはやお前達に出す予算などないというかのように。
そんなとき、様子を見に来たのが。
センターにいる大物の司教だった。左右に連れているのは掃除屋の中でも特に危険と噂されている存在。
バケツみたいなヘルメットで顔を隠し、それに十字を刻んでいる殺し屋。
ターミネーターと言われている。
このターミネーター、背負っているジェットパックで飛行し、飛行する悪魔に対しても全く問題なく戦えるとかで。あまりにもテンプルナイトとは装備からして違っている存在だ。
技術を失っているのではなく。
センターが独占しているだけ。
それが分かるような、生きた証人である。
僅かに生き残っているテンプルナイトを見て、老いた司教は言う。
「随分とやられているようだな。 鍛練が足りていないのではないのか」
「お言葉ですが、このシフトを見てください。 鍛練などする時間もありません。 今や二時間程度の睡眠を一日取れれば良い方。 それ以外は、全てパトロールを行い、そうでない時間は書類を作成しています」
「足らぬ足らぬは工夫が足らぬといってな。 自分で考えて工夫せよ」
「それが物理的に出来ないと言っています」
元々センターの連中は気にくわなかったが。
流石に私も限界だ。
ターミネーター達が殺気を感じたか、前に出ようとするが。司教はふっと笑うだけだった。
「まあいい。 いずれにしてもお前達が無能だと言う事は確かだ。 実際問題、今まで現れた悪魔達にもまったく歯が立たず、犠牲ばかりが増えていただろう」
「装備にしろ人数にしろ足りていないからです」
「違うな。 信仰心が足りないからだ。 真摯に祈れば神は救ってくださる」
「そんな精神論で何かが解決すると本気でお思いか!」
ついに声を荒げた私だが、司教は全く揺るぎもしない。
いや、違う。
この老司教、どこか変だ。
そもそも何故今頃センターが視察に来た。或いは、ひょっとして。テンプルナイトの破滅を見届けにでもきたのではあるまいか。
「いずれにしても、無能者にくれてやる物資も人員もない。 そなたらは自分らで工夫して指定している任務をこなすことだな」
「物理的に出来ないと言っています!」
「戻るぞ」
司教が促すと、ターミネーター達がそれに従う。
まったく感情がない動き。
掃除屋は感情が見えない連中だが、これはもう、中身が機械なのかも知れない。
テンプルナイト達の生き残りが集まってくる。負傷者だらけだ。それに、今のを見て、心が折れてしまっている。
もうテンプルナイトはダメだな。私は、そう思った。