不遇相伝術式で目指せアッチ側!   作:ズズツカイチェン

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処女作で初投稿なのを謝罪して明日も投稿します。


目指せ井の中の蛙!

 

 流練 拳士(りゅうれんけんし)17歳男性。

 平均をやや下回る身長に程々に鍛え上げた肉体を持ったイケメン。それが俺である。

 彼女とかできたことないし誰からもそう言われたことないがイケメンである。俺がそう決めた。

 

 そんなイケメンな俺は闘いが好きだ。

 肉と肉のぶつかり合い、互いの技術の横行。最高の一言に尽きる。

 

 だが俺はある時パタリと闘うことをやめた。

 

 理由はある、噛み砕いて言うならば人の限界を理解してしまったからだ。

 肉体が限界に至ればできることが減り必然的に技術の限界を知る。

 限界に至ればそれまでになり衰える一方である。俺はそれに耐えられなかった。

 

 ならばいっそのこと弱いままの方がマシだと思い、弱いままであることを選んだ。

 

 闘うことをやめたことにより空いた時間で俺はバトル系の漫画を読み始めた。

 純然たる格闘漫画から異能バトル漫画まで読んだ。

 

 因みに今読んでいるのは呪術廻戦という漫画の1話目なのだが主人公の身体能力の高さに嫉妬が止まらない。

 

「はぁ……。なんか腹減った」

 

 嫉妬を落ち着かせるために一度、漫画を読む手を止めて息を大きく吐いた。

 思惑通り落ち着くことができたのだが今度は別の思考が俺の脳を埋め尽くし始める。

 この状態で漫画を読んでも集中できないだろうし、ご飯を食べに行こう。

 

 ベッドで横になっていた体を起こして自室を出ると階段を降りて一階へと進む。

 リビングのテーブルに手紙の上にお金が置いてあるのを確認した俺は手紙を読むことなく、お金だけ持ってコンビニに出掛けることにした。

 

 外に出てみると冷気が俺の身体を撫でた。

 思わず手と手を擦り合わせつつ吐息を吐くと白色のそれは夜空にすぐに溶けていった。

 

 こうやって自分の身体を触ったりすると傷が少なくなってきた、なんて思って自分から逃げ出したくせに複雑な感情が湧き上がってくる。

 

「そういえば今日日曜か。学校ダリィ」

 

 明日の気温もこんなに寒いのだろうかと想像して無意識に言葉が出てきた。

 寒いしさっさとコンビニ行こう。

 

「……ん?」

 

 コンビニに向かって歩みを進めていると路地裏に大柄な男が震えているのを見て思わず足を止めた。

 震えているのは寒いからだとして、ならば何故半袖に半ズボンというワンパクな小学生みたいな格好なのだろうかと疑問に思いつつも止めた足を進めようとした時だった。

 

「おっおおおおまえが!!!きょッたんだろ?!なぁ?!取ったんだろ!返せ返せ返せ!うわぁぁぁぁ!」

 

 大柄の男がいきなり叫び声を上げながら隠し持っていた包丁を振りかぶってきた。

 

「ちょッ!」

 

 後ろに軽く飛んでそれを避けたと同時に相手の手首になにか刺したような跡が気持ち悪いほどについていて肌の色も変色しているのを確認した。

 その事実に一瞬身体が硬直した俺に向かって今度は大柄な男が包丁をこちらに向けて突進してくる。

 

「この状況マジで怖すぎッ!」

 

 すぐさま足に力を入れて前に出す。

 突進に対して俺が取った一手は逃走だ。普段は表情があまり動かない俺だが今はそれが少し崩れていると思う。本当に怖い。

 

 そうして逃げていると右足ら辺に痛みを感じた。

 

「イッ!ガ……ッ!ヤッバ!マジでッ!」

 

 あの男が持っていた包丁が俺の右脹脛に刺さっており投擲が見事成功したことはすぐ理解できた。

 とんでもない投げの技術だ。まぁ間違いなく偶然なのだろうが。

 

「血が止まらなッ……はぁ、終わった」

 

「殺さなっないと!ナァナァ!殺さなっ返してよ!ナァ!」

 

「わかったから顔は辞めてね?せっかくのイケメンがイッタ!こォんのラリパッパ優しく抜けよ!初めてか?!チェリーが!」

 

 あいつが俺の足に刺さった包丁を辺な方向に抜いて更に脹脛が裂けた。

 肩甲骨を粉砕した時と同じぐらい痛くて泣きそうになっていると目の前に既に振り下ろされた包丁が心臓に突き刺されているのが見えた。

 

 俺は死を確信した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 流練 拳士17歳イケメン男子高校生改め田中中田 凛月(タナカナカタ リンツ)生後10ヶ月の男の子です。なんだこの苗字!おんぎゃあ!

 

 因みに酷いのは苗字だけじゃなく家庭環境もだ。

 

 本来生まれてくるはずだった赤ん坊とか中身が誰かも知らない赤の他人である赤ん坊を育てなければいけない親がとかそういう罪悪感を感じない。産まれたのが俺で良かったと思うぐらいには酷い。

 

 家の空気は常に居心地悪く、父親は仕事から帰ってくると舌打ちと貧乏揺すりをしながらご飯を食べていて母に対して何かしら文句を言って喧嘩になる。母は酒臭い匂いを常に漂わせて最低限の家事をして外に遊びに行く。

 

 ちゃんと家の中掃除してくれないと赤ん坊の俺は怪我しちゃうんだからもっとしっかり掃除してくれや。

 

 あと家に誰もおらず死ぬかと思うくらい腹が減る時がときどきある。本当に俺が生まれて良かった。

 なんたって必要な時しか泣いてなくてこれだからな?夜泣きとかしていたら捨てられていたんじゃなかろうか。

 

 こんな酷い空気を漂わせているからかこの家には異形のバケモンが心なしか多い気がする。

 因みにこのバケモン共はなんと普通の人には見えない。これはきっと転生したことによって芽生えた俺の力だろう。

 

 そう確信したのは家に誰もいないときに掴まり立ちを実践していたら間違えて手を離してしまい転びそうになって宙を浮くバケモンを咄嗟に掴んで転倒を防いだのがきっかけだ。

 

 バケモンはグロテクスな見た目をしているので今まで触らなかったのだが、それ故に実在しているのか俺がおかしくなってしまったのか分からなかった。

 だが触れてしまえるということは実在しているわけで、俺がおかしくなったのではなく皆が見えないだけであるとわかった。

 

 因みにだがこいつらは雑魚だ。

 

 この家にいる奴らは掌サイズで攻撃性もないが外で見かけたやつは俺よりデカい奴もいて強そうな見た目をしていた。怖い。

 あいつらと比べればこいつらは可愛いもんである。呼べば来るしな。

 

「おっい!ちえ!」

 

 俺の声に反応して不細工な身体の作りをしていて額に第三の目が開眼している掌サイズのツチノコが寄って来る。

 この小汚い天使みたいな羽で浮いているやつは俺の転倒を防いでくれた命の恩人である。

 あの後思いっきり床に叩きつけてしまってから言うことを聞くようになった。

 

 ソーリー命の恩人。人じゃないけどね。

 

 なぜこいつが俺の言うことを聞き入れるのか理由はわからない。まぁ俺が可愛いすぎるせいだと思う。

 前世はイケメンで今世はプリティーの魔性な俺はなんて罪深き人間なんだろうか。

 そのせいでこんな家庭環境のところに生まれたのかもしれない。

 

 俺を見つめているツチノコもどきが首を傾げた。おっと目的を忘れるところだった危ない危ない。

 俺はツチノコもどきを握り始めた。

 

 目的はある。

 

 こいつを握ったときに気がついたのだがなんとこいつらはエネルギーみたいなもので身体を作っており、こいつらを握っているとそれを良く感じることができる。

 そしてどうやらこいつらの身体を作っているエネルギーは俺の中にもあるみたいで最近は瞑想しながらそれを感じるのがマイブームなのである。

 

「……あぅ?」

 

 なんか今エネルギー動いたな。今までそんなことはできなかったのだが、勘違いだろうか?もっかいやってみるか。

 

 一度動かせたらこっちのもんで割と自由にエネルギーを動かすことができた。これは楽しい。

 肘から先にエネルギーを集めることはできるが指さきだけに集めるといった

器用なことはできない。

 それはたぶん俺が未熟だからだろう。もっと練習していけばできるようになるかもしれない。

 

 フ……フハハ!マジで楽しい!思い出してしまったぞ、己を鍛えるという楽しさを!

 正直これをやったとしても強くなれるかどうかはわからないのだが、まぁ自己研鑽には変わらない。

 今世では前世にない力もあるし、とことん鍛えるというのもありだと思えてきた。

 

 そうと決まればまずはこの家の中での頂点を目指そう。今に見てろ!異形のバケモン!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 田中中田 凛月。2歳のプリティーな男の子でありながらもこの家の頂点になりそうな子供です。

 

 あれからエネルギーの操作と筋トレをやり続けている。筋トレと言ってもハイハイや歩いたりするだけだけどね。

 

 筋トレの伸びはいまいちだがエネルギーの操作の成長は著しく、エネルギーの放出が可能になった。

 これによりにぎにぎしては床に叩きつけて倒していた異形に対して有利に立った。あいつらから攻撃されたこととかないし、この家で頂点を取るにはいきすぎた力かもしれないけど。

 だがこのエネルギー放射は不必要ではないはずだ。

 

 あれからまた外に出たときにデカくて強そうなやつを見かけたのだがエネルギーの量もこいつらより段違いに多かった。

 それでも俺の方が圧倒的にエネルギー量は多そうだったけどね。

 だが肉体スペックは相手の方が強そうなので外のやつらに襲われたとき用に遠距離攻撃は覚えていて損はないだろう。

 

 まぁ、外に目を向けるより今は家の中だ。俺が倒していないバケモンは残り一匹しかいない。

 頂点を絶対に取ってやると心に決めながらスプーンをテーブルに置いた。

 

「ごちしょしゃまでした。なにゃじゅーごてんくりゃいのおあじ」

 

 戦う前の微妙に美味しい離乳食の補給は終わった。一人で食事を取れるようになってから親が家にいることも少なくなったが今は好都合。

 

 さぁ、取りにいこうか!頂点を!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リビングから脱衣所へと向かう。洗面台の下の棚を開ける。

 

 ——いた。

 

 ソレを言い表すならばカブトムシの角を持つクワガタ、もしくはクワガタの角を持つカブトムシ。

 3本の角を持つソレの足は四対であり通常の昆虫より一対多いがサイズは小さめで掌が二つあれば包めそうな程度しかない。

 それが円な赤色の瞳で俺を見た。

 

「ッ!しぇんてひっしょお!」

 

 俺に向かって飛んできたソレを叩き落とす。

 

「じゃふく!」

 

 蛇福(じゃふく)。ツチノコもどきの名前であり、その名の由来はツチノコって珍しいし福を運んできそうじゃない?てかツチノコって福を運んでくる蛇だった気がする。

 そんな感じのテキトウな由来である。

 

 すぐ近くに待機させていた蛇福は名前を呼ばれ、ソレに巻き付いた。

ソレは羽を広げることもできず飛び立つことも叶わなければ歩くこともままならない。

 俺はソレに巻き付いた蛇福ごと掴み投げた。

 

「いーよ!じゃふく!」

 

 俺の合図と同時に蛇福がソレを離した。

 壁にぶつかり、地面に落ちたソレに追撃するように掌を上から押しつける。

 モゾモゾと最初は羽や八本もある足を動かしていたが徐々にソレは動きを止めていった。

 

「おれのかちだよ。いいね?」

 

 動かなくなったそれに言葉をかけるが何の反応もない。

 死んでいるわけではない。不死身ではないだろうが少なくとも俺がどんなに攻撃してもこいつらが死んだことはなかった。

 そして倒されたやつが俺にやり返したこともない。

 

 だから。

 

 だから油断してしまった。

 

 ソレが俺に向かって一直線に空を駆けてくる。このままいけば俺の目にその角が突き刺さる。

 俺は咄嗟にエネルギーを放出させようと体内のエネルギーを操作して一箇所に集める。

 

 指先から放出するのが一番やりやすく的を絞れるのだがそれでは遅れてしまう。

 故に今からやるのは恐らく2番目に的を絞れるもの。

 

 それは目からビームだ!

 

 操作は雑で碌に威力なんて出ないだろうが急いで終わらせた。後は放出のみ。

 

「ッ!?」

 

 急に視界の端からソレでも蛇福でもない異形が現れた。

 掌サイズの極太い棒人間に唇のついたその異形は俺が3ヶ月ほど前に倒した異形であった。

 

「くっしょ!」

 

 手を振り上げながらこっちに全速力で疾走する極太棒人間に向かって思わずエネルギーを放った。

 エネルギーは俺が物を投げるより少し早い程度の速度で進み、極太棒人間に当たる。

 

 音を立てて溶けるようにボロボロと崩れていく極太棒人間。

 呆気に取られて固まる俺と宙に浮かぶソレ。

 思ったよりも強い目からビームに変な空気が流れ始める。

 

「えっと……どおすりゅ?」

 

床に落ちてからソレは頭を下げた。

 

「えー。じゃあ、はさみかぶとってなまえをつけゆね?みためがかっこいーからなまえあげる」

 

 下げていた頭を上下に振って頷く鋏兜(はさみかぶと)。俺に抗議の視線を向ける蛇福。

 いや君もかっこいいからって名前つけたやん。





◦田中中田家
アパート一階の端の部屋。
親が負の感情を良い感じに撒き散らしていた結果、良い感じに負の感情が分散され、そこそこレベルの呪霊が一体発生するはずだったのだが、クソ雑魚呪霊が一部屋に一匹ずつ発生する結果になった。
基本的に発生した呪霊は己が発生した部屋から出ることはなかった。

◦極太棒人間
負けて服従するフリをしながら復讐の機会を伺っていた。

◦鋏兜
「呪力を扱えない赤子に負けるわけがない!」とやり返そうとしたら急に呪力放出とかやり始めて「ならなんで呪力で身体強化しないの?」と困惑していた。

◦流練拳士
中の中の上ぐらいの顔面。イケメンと呼ぶのには抵抗があるレベル。
ナルシストで誕生日は5月5日。
英才教育により幼い頃から身体と技術を鍛え上げられたが自らそれを辞めると断言した。
脳が筋肉だった両親は才能があるのに関わらず鍛えることを辞めた息子との接し方がわからず徐々に疎遠になった。


元々は呪霊操術を持った少年が夏油傑の秘蔵っ子として育てられる話を作ろうとした名残りのせいか気付けば呪霊を仲間にしていた。なんとかなれ。
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